訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その3

前回の続きです。

 

パートスタッフは報酬よりも居心地の良さを優先する

 

 パートスタッフにとっての居心地の良さとは以下のような指標に集約されると考えます。

1 仕事への不安が無い、もしくはすぐに解消される

2 仕事に自信が持てる、適切に評価されていると感じる

3 良好な人間関係

4 自身の生活(子育てや家族)やライフスタイルとうまくマッチングしている

5 肉体的・精神的な負担が少ない

 

※この指標はあくまでパートスタッフの定着を意識したものです。正社員の場合はまた別の指標になるかと考えます。

 

 各指標について詳しく説明します。

 

1 仕事への不安が無い、もしくはすぐに解消される

 すでに述べたように、仕事に不安があると、スタッフは定着しません。特にその仕事が初めての新人の時期は不安でいっぱいです。パートスタッフの場合、自分がその職業に適しているかどうか不安に感じると、すぐに別の職業に移ってしまいますので、新人の世話はスタッフ定着への第一の要諦となります。

 

 不安解消に仕組みとしては以下のように整理できると考えます。

(1)何でもすぐに相談できる体制(詳しくは前回の記事参照)

(2)月1回のスタッフ会議、研修会の開催で疑問や不安の解消

※訪問介護の場合これにより特定事業所加算も算定できるようになります

(3)充実した利用者情報のファイリング(当然スタッフで共有)

 

2 仕事に自信が持てる、適切に評価されていると感じる

 仕事に自信が持てると継続してその職業に就いていくモチベーションとなります。これにキャリアアップの仕組みが組み合わされれば、一生この業界で仕事をしていく人材となるでしょう。

 幸い介護業界はキャリアアップの仕組みを充実させようと取り組んでいる最中です。介護給付的にキャリアが反映できるようになってくれば(例えば医療的ケアには別給付が出るなど)、パートスタッフのモチベーションも高まると考えます。

この指標を実現するためには、上述の不安解消の仕組みとともに、以下のような取り組みが必要になります。

(1)職業能力評価の導入

  厚生労働省では介護事業別の職業能力評価シートを作成しています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093927.html

 簡単に説明しますと、年1回スタッフが自分の技術や能力について自己評価し、それに対して管理者などが評価する形式です。

 パートスタッフ用には少し細かすぎるので、評価項目を簡略化しても良いかもしれません。

 仕事の評価は、スタッフと管理者が個人面談により行うので、仕事に対する不安や疑問などを話し合う場にもなります。その際に、管理者はスタッフに自信を持たせ、目標に向かって仕事に取り組むように動機付けを行います。

 訪問看護についてはまだ国は評価シートを示していませんが、東京都が「訪問看護OJTマニュアル」の中で評価シートを示していますのでご利用ください。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/hoken/houkan/ojtmanyual.html

 

 評価制度が導入できない場合でも、年1回、管理者とスタッフが個人面談をして、仕事の振り返りなどを行うことはとても有効です。

 

(2)仕事に対する興味を引き出し養成する仕組み

 新しい知識の獲得やキャリアアップの取り組みを支援する仕組みを作っていくと、自発的な自己研鑽につながります。

 具体的には、「資格取得費用の支給」「外部研修の受講」「参考図書やソフト、DVDの購入」などに対する金銭的な支援です。

 

 なお、評価制度の導入や資格取得・研修費用などについては補助金を利用できる場合があります。以下は厚生労働省の補助金です。社労士さんに相談すると申し込めます。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html

 介護実務者研修や介護福祉士の受験費用については、各自治体で補助金を出している場合がありますので問い合わせてみてください。

 

3 良好な人間関係

 職場での人間関係は退職理由の上位に来る指標です。

 筆者が東京都で人事の仕事をしている時、新入職員などの研修で以下のようなガイダンスをしていました。

 

 【入職時の心得】(3か月は無理をしない原則)

(1)入職後3か月は無理して仕事をしようとはせず、上司や先輩に言われたことを淡々とこなすこと。

 職場では入職したばかりの新人スタッフの仕事にほとんど何も期待していません。使い物になるようになるまでは1年程度必要だと考えています。従って周りの期待に応えようとして無理をして仕事をする必要は無いのです。

 無理をすると失敗します。失敗すると自信を失います。自信を失うと仕事が楽しくなくなり、職場に行くのが苦痛になるという悪循環に陥ります。

 

(2)入職後3か月は無理に人間関係を密にしようとしない

 人間関係は自然に形成されるものです。職場になじもうとして無理に周りと仲良くする必要はありません。少々、さみしいかもしれませんが、周りにいる人たちがどのような人なのか分からない時点では、無理に仲良くしようとすると逆に関係をこじらせたり、傷ついたりする場合があります。

 入職後3か月は、周りの人間関係をじっくり観察するようにしてください。どの人がどのような性格で、誰と誰が仲が悪いとか、誰が嫌な奴だとか、そうしたことが見えてくると、自然と人間関係は形成されていきます。

 この先輩はなんで自分をいじめるのだろうという人がいたとします。そういう場合は悩んだりせず、右から左に流すようにします。3カ月もするとその人は他の人からも嫌われていることが分かったりします。

 

 新入社員の多くが3か月以内に辞めてしまうというデータがあります。

 新人はすでに形成されている複雑な人間関係の中に一人で放り込まれるわけですから、その環境に慣れるにはそれなりの時間がかかるのです。

 そのことをしっかり認識して、3か月は人間関係のことは考えず、ただ傍観するようにするのが、うまく環境になれるコツです。

 

(3)入職後3か月は分からないことは何でも聞く勇気を持つ

 馬鹿にされたくないとか、恥ずかしいとかいう気持ちは、新人は持ってはいけません。

 何でも聞けるのは新人のうちだけです。明るく元気に何でも聞く勇気をもって過ごしてください。

 

 以上、これは新入社員向けのガイダンスですが、パートスタッフにも当てはまることです。採用時に上記のようなガイダンスをしてあげることで、入職の際のストレスはだいぶ軽減されるでしょう。通常3か月勤務できれば、その後も継続的に勤務できると考えます。

 

 【トラブルメーカーへの対応】

 正社員などで、パートスタッフをいじめてしまい、辞職に追いやるようなタイプの人がいます。これには対策が必要です。

 訪問系のサービスの場合パートスタッフが定着することが収益につながることを、しっかり理解させましょう。

 さらに、正社員の仕事はパートスタッフに安心して仕事をしてもらえるように世話をすることだということを理解させなければなりません。

 訪問系の事業ではパートスタッフの世話ができない正社員は評価が下がることをきちんと説明することが大切です。

 

 

 次回はこの続きです。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その2

スタッフ世話不足悪循環

 

 サ責や管理者が現場に出ずっぱりの事業所の場合、訪問スタッフが現場で対応に困った時、すぐに携帯電話で相談したくてもサ責や管理者が携帯電話に出られない状況がよくあります。

 

 自分一人で対応できない場合、適切な相談と指導が受けられず、スタッフは途方に暮れてしまうかもしれません。新人スタッフであればそれが原因で職場を辞めてしまうこともあると考えます。

 

 現状では、人手不足で、サ責や管理者がサービスに出なければ、とてもご利用者の対応ができないという事業者が多いのではないかと考えます。

 深刻な介護人材不足がそのような状況を作り上げているのですが、場合によっては収益率を上げるために、責任者が現場に出なければならないという事情もあるかもしれません。

 

 しかし、これがスタッフが定着しない悪循環を作り出します。

 筆者はこれを「スタッフ世話不足悪循環」と呼んでいます。

 

【スタッフ世話不足悪循環】

人手不足(又は収益増圧力)→責任者が現場に出ずっぱり→スタッフの世話ができない→スタッフの不安増幅→スタッフが辞めてしまう→スタッフが定着しない→人手不足

 

 

 

訪問系スタッフが安心して働けるようにするためには相談指導体制の構築が重要

 

 まずは、なんとかして【スタッフ世話不足悪循環】から抜け出さなければなりません。

 そのためにはサ責や管理者の訪問回数を減らすのですが、それなりの覚悟が必要になると考えます。

 

 新規利用者のアセスメントやサービス担当者会議などで、まったく外に出ないことは不可能ですが、朝や夕方などサービス利用の多い時間帯、新人スタッフが単独で業務に入っている時や、困難ケースなどでトラブルの発生が予想される場合など、連絡が入ってくる可能性がある時間帯だけでも、できるだけ電話に出られるように工夫することが必要です。

 もしも、サービス提供責任者が複数在籍していたり、サービス提供責任者でなくても利用者情報に詳しいベテランのスタッフなどがいる場合は、シフトを工夫して、相談を受けられる誰かが必ず事務所で待機できるように体制を整備すると良いと思います。

 

 また、特に新人スタッフに対しては仕事に自信が持てるように、仕事の不安を払しょくできるような相談指導体制を作ることが重要かと考えます。

 事業所の中堅以上の職員はそのことを強く意識しながら新人スタッフに当たるように事業所内のコンセンサスとして確立したいものです。

 

 

気軽に相談できる雰囲気作り

 

 新人スタッフの世話では、管理者やサービス提供責任者だけでは目が行き届かない部分もあります。そのため、在籍するスタッフが全員、新人の相談に積極的に乗れる組織作りができると良いと思います。

 

 単独で仕事をしている訪問系サービスの場合、どうしても他人の仕事に無関心になりがちです。気軽に誰にでも相談できる雰囲気作りをするために、スタッフが溜まりやすい休憩場所や事務仕事を共同でできるような事務室を作るのも良いでしょう。

 

 

相談指導体制の整備には情報共有体制の整備から

 

 訪問介護の特定事業所加算ではスタッフが利用者情報を共有することが求められていますが、訪問系サービスでは、この情報共有体制の構築が相談指導体制を充実させるための要件となってきます。

 

 もしも、現場のスタッフからSOSの連絡があり、事務所に他のスタッフがいて、そのスタッフが実際にその利用者に直接サービスを提供したことが無くても、利用者について少しでも情報があれば、完璧でないとしてもなんとか対応が取れる可能性があります。

 

 事務所にいるスタッフが利用者ファイルの介護経過やアセスメントなどにより状況を把握し、スタッフ同士で話ができることは、現場スタッフにとって非常に心強いことでしょう。一人で現場で悩むよりもずっと安心感があります。

 

 

情報共有体制に必要な利用者ファイル作り

 

 スタッフが悩んだ時、利用者ファイルを見ればヒントが見つかるようなファイル作りが必要です。

 そのために、利用者ファイルにはあらゆる情報ファイリングしておくことが大切になるでしょう。

 サービス提供責任者は現場からの利用者情報を逐一吸い上げ、ファイリングすることが重要です。サ責の第一の仕事は詳細な利用者情報のファイリングと言っても良いほどです。

 そのため、個人ファイルの最初になんでも書き込める用紙をファイリングしておくと良いと思います。記事とともに日付と記入者を必ず書いておきます。

 

 

現状ではネットやクラウドなどでは詳細な情報蓄積は難しい

 

 ネットを使って利用者情報を現場でもスマホなどで見られるようにすることは情報共有のための方法として有効でしょう。

 しかし、紙のファイルとネット上の情報が二つある場合は、情報が分散し、現場で必要な情報が手に入らない場合がありますので注意が必要です。

 

 現状では、スタッフ間でネットで情報伝達をしたとしても、最終的には紙のファイルに一元集約し管理したほうが効率的に情報管理ができるのではないかと考えます。

 

 ネットでの一元管理するためには、利用申込書からアセスメント、診断書や保険証、薬剤情報などもすべてデジタル化してネットにアップする必要があります。作業が煩雑ですしデジタルスキルに秀でた人でないとなかなか管理ができません。

 

 利用者に関する情報はメモも含めてすべてファイリングするやり方が、今のところもっともすぐれた情報共有方法だと考えます。

 

 

効率的なスタッフ会議の開き方

情報共有及びケアカンファレンスとしてのスタッフ会議はスタッフ間の連携を密にする意味でとても有効です。開き方については前回の記事をご覧ください。

 →訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方

 

 

次回はパートスタッフの定着術についてもう少し詳しく説明します。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その1

 

 

現状では訪問系サービスの収益アップにはパートの活用が肝

 

 訪問介護や訪問看護事業では、正社員によりサービス提供するよりも、登録のパートスタッフにできるだけ仕事をしてもらった方が事業収益上プラスになります。

 

 地域や加算により違いますが、例えば身体2(1時間以内)で約4,000円の給付がある場合、パートスタッフであれば人件費が時給換算で1,500円から1,800円といったところでしょう。

 

 しかし、社員の場合、1日、5時間程度訪問サービスができるとして、単純計算で

 一月100時間×4,000円=400,000円の収益になりますが、社会保険や賞与、必要経費を考慮すると人件費としては300,000円程度が必要になると思いますので、収益率はパートスタッフより少なくなります。

 

 これは訪問看護でも同様のことが言えます。

 つまり、訪問系の介護サービスの場合、現状ではパートスタッフが増えた分だけ、収益率が増すビジネス構造となっています。

 

 

しかし労働環境の流れはパート→正社員化?

 

 もちろん、パートスタッフが増えることはサービスの質の低下につながる場合もありますので、きちんとした研修や指導が必要です。そうした質の低下をさせずに、パートスタッフを獲得し定着させることが、今のところ訪問系事業所経営の要諦となっています。

 

 しかし、国は非常勤や契約労働者の正社員化を目指して労働政策を進めている傾向があります。一方で、主婦や高齢な労働者の中には正社員よりもパート労働者として働きたいというニーズもいまだ強く今後の労働環境の方向性は不透明です。

 

 主婦の場合、夫の扶養範囲や所得税控除、社会保険加入の関係でパート労働の方がメリットが大きかったりしますので、年収100万円程度に収入を押さえたいというニーズも強くあります。

 

 とはいえ、人口減少社会の中で、国は年収制限を撤廃して労働力を確保したい方向です。これに対し、主婦やパート労働者に頼っている業界などのからの反対は強く、綱引きが続いている状況です。

 ファミレスやスーパーコンビニなどの業界では、パートスタッフがいなくなれば根本的にビジネスモデルを変えなければなりません。この点は訪問系介護サービス業界も同様のことが言えるでしょう。

 

 パート労働者の扱いがどうなるか注視していく必要があります。

 

 

今後は柔軟な就労環境の構築が重要

 

 筆者は、いずれパート年収上限の撤廃がありえると考えています。

 しかし、もしも、パート年収上限を撤廃し、仮にすべての訪問介護員を正社員化するのであれば、訪問介護給付は今より20パーセント程度増加させなければならないと考えます。

 そうしなければ、事業者の撤退が相次ぐでしょう。介護保険制度の訪問介護サービスは継続できず、日本の在宅介護は崩壊します。

 

 日本のパート労働者を正社員化するためには、日本の労働者全体の賃金の上昇を前提としなければならないと考えます。

 

 20パーセントというのは、具体的には身体2(1時間以内)であれば5,000円程度の給付です。そうすれば、訪問介護員の給与は今のケアマネージャー程度になり、共働きの既婚女性などが働きやすい職業になると考えます。

 

 蛇足ですが、そもそも、ケアマネージャーよりも訪問介護員の方が給与が安いという考え方はそろそろ変えた方が良いのではないかと考えています。

 家事援助が別のサービスに移行し、訪問介護員は身体介護や医療的ケアなど高度なサービスに特化すれば、20パーセントの賃金上昇は吸収できるのではないでしょうか。

 

 訪問介護のサービス内容の高度化と給付上昇を同時に行えば、訪問回数が減りますので、スタッフ不足も解消するかもしれません。正社員化しても日本の訪問介護サービスがとん挫することは避けられるでしょう。

 

 とはいえ、現状のビジネスモデルとしてはパートスタッフを活用するべきですし、訪問系の事業者としてはパートさんを確保し定着させる方策に取り組まなければならないと思います。

 

 また、パートさん獲得定着の取り組みは、正社員の獲得定着の取り組みにも繋がります。今後は、週休3日制や短時間正社員などの制度が整備され、多様な働き方ができる社会になってくると考えていますので、労働者のライフスタイルに応じた柔軟な就労環境の構築がスタッフ獲得の肝となってきます。

 

 

 

訪問系スタッフは不安を感じやすい

 

 それでは現状でのスタッフの獲得定着について、何が重要なのでしょうか。

 

 通所介護や施設サービスと異なり、訪問スタッフは概ね一人で利用者を訪問し、サービス提供をしなければなりません。

 サービス提供責任者や管理者が同行訪問し指導をしますが、最初の方だけです。

 一方、ご利用者の状態は日々変化するものであり、その変化に対応した適切なサービスを提供することが求められますので、訪問介護員や訪問看護師はそれなりの知識と技術が必要となります。

 

 しかし、知識や技術がしっかりしていても一人では対応に悩むことは当然あります。施設など複数でサービス提供している現場であれば、その場で他のスタッフに相談し、対応することができますが、一人ではそうもいきません。当然、仕事に対する不安を抱えることになります。

 

 一人前の訪問スタッフとしてご利用者宅で不安を抱えずに仕事ができるようになるためには、場数が必要ですし、育成にはきめ細かい指導が必要になってきます。そうでなければ、スタッフはずっと不安を抱えたまま働くことになり、職場の定着率は低くなります。

 

 スタッフの定着にはこの不安をいかに解消し、安心して働けるようにするかが重要となります。

 

 次回は訪問系スタッフが安心して働ける職場づくりについて紹介します。

 

 

訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方 その2

 

会議の進め方についてです。

 

会議は時間を決めて進行

 

 さて、会議は運営要項に従い開催しますが、概ね1時間程度を目標に簡潔に行う必要があるでしょう。

 利用者数が少なければ、あまり問題がありませんが、扱う利用者数が多い場合はあらかじめ情報を整理して、簡潔に情報伝達し、要点を絞って話し合いを行わないと時間がオーバーしてします。これは、参加スタッフへの負担になり、会議に対する不満となって溜まります。

 司会者は1時間で終了するよう、時間配分に注意して議事進行する必要があります。もしも、時間をかけて議論しなければならないようなケースがある場合は、直接の担当者同士で話し合ってもらい、後ほど報告してもらうような形にする方が良いと思います。

 サービス提供責任者は日ごろより訪問スタッフから担当利用者の情報を受けています。基本的にはそうした情報のうち、他のスタッフが共有したほうが良い情報をピックアップし、会議で伝達すれば良いと思います。

 

 

作成するべき書類について

 

 会議の開催に当たって作成するべき書類について説明します。

 会議を開催していてもそれを証明する書類が整っていなければ実地指導などで指摘されますので、面倒ですが毎月の分を整えておくことが必要です。

 

【実地指導でチェックされる書類】

(1)「会議日程表」

  当然ですが、毎年度作る必要があります。

(2)「会議次第」又は「会議議事録」

  「会議次第」は開催日時・場所とともに、会議で扱う事項を順番に列挙したものです。

 必ずしも作成する必要は無いのですが、会議進行を効率的に行う上で、事前に作って会議ではそれに従って時間配分し、進めたほうが時間の節約になります。

 「会議議事録」は実際の情報伝達内容や話し合われた事項を筆記した記録です。

 発言を一字一句記録せず、要約でOKです。誰かが読んでどんなことが話し合われたのか概ね分かれば良いと思います。

(3)「利用者に関する情報を伝達した文書(会議資料等)」

  ケアプランや訪問介護計画書、アセスメントシートなど会議に使った資料がありましたら、他の書類と一緒に保管しておきます。

(4)「会議出席者名簿」等

 これは議事録と一体化していてもOKです。

 また、全員出席が基本ですので、欠席者だけを記録しておいても良いです。欠席者がいる場合は、その欠席者にどのように情報を伝達したかを記録に残します。具体的には、

「欠席者には、会議次第、議事録、資料を配布の上、ポイントを説明」などと記録しておけば良いでしょう

 

 

欠席者の対応について

 

 会議に欠席した人には上述のように会議次第、議事録、資料を配布の上、ポイントを説明しておけば良いと思います。

 しかし、研修の方は補講を行う必要があります。別日に欠席者だけを集めて補習を実施します。その際、補講を実施したことを以下のように記録で残します。

【補講の記録】の内容

 (1)研修内容

 (2)補講実施日時、場所

 (3)補講受講者

 (4)補講実施者

 

 

 社内研修会の内容は介護福祉士の試験科目で良い

 

 ついでに、個別研修についても説明します。

  時々、どんな研修をやればよいかというご相談を受けますが、基本的には介護福祉士の試験科目から、スタッフの目標に合わせてピックアップすればよいと考えます。

 「認知症」や「移動・移乗」「排せつ」「入浴介助」などは毎年行うような研修になると思います。

 研修科目が毎年同じになっても構いません。介護技術や知識は毎年、新しい考え方や制度改正などがありますので、同じ科目でも学ぶ内容は微妙に変わってきます。

 さらに、興味があればユマニチュードなど新しい介護技術も取り入れれば良いと考えます。

 

 

社内研修会=処遇改善加算の「資質向上のための研修」

 

 この毎月の研修会は、処遇改善加算の「資質向上のための研修」と同一のものとして実施できます。

 つまり、処遇改善加算が算定できる事業所は、介護福祉士や実務者研修修了者の人数だけ確保できれば、特定事業所加算Ⅱが取得できるということです。

 処遇改善加算が算定している事業所であれば、結局、特定事業所加算を取得するハードルは「会議」の開催だけになってきます。この記事に倣っで研修会と会議を一体的に開催すれば、このハードルをクリアできますので、まだ特定事業所加算を取得していない場合は、ご検討ください。

 

 

もし併設の居宅支援事業所が特定事業所加算を取得している場合は会議は合同開催にすると良い

 

 居宅支援事業所を併設していて、その事業所が居宅の特定事業所加算を算定しているのであれば、月1回の会議を合同で開催することをお勧めします。

 居宅支援事業所の会議は毎週開催しなければなりませんが、月1回は訪問介護事業所と合同で開催します。これにより、よりきめ細かく質の高いサービス提供が可能になります。

 具体的にはケアマネと訪問介護スタッフが一堂に会し、ケアプランが更新・変更になる利用者の情報を交換します。ケアマネの方から毎月の更新者の変更情報などを伝えてもらえれば、事前の情報伝達の時間が省けますし、サービス担当者会議も効率的に行えます。

 居宅と訪問が同じ事務所内で仕事をしている場合、ケアマネとサ責は日ごろから利用者情報の交換をしていると思います。そうした内容をまとめて、他のスタッフに伝達すれば良いだけです。特に難しいことを話し合う必要はありません。

 

以上この回終わり。

 

 

 

訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方 その1

 

 訪問介護の特定事業所加算は、質の高いサービスを提供する事業所に対してインセンティブとして支給される加算と考えて良いでしょう。

 特定事業所加算Ⅱでも10%加算(Ⅰは20%)できますので、単純に事業所の収益を10%増収できます。クオリティーの高いサービスを提供し他と差別化ていくためにも、加算取得を目指した方が良いと筆者は考えています。

 

 しかし、いざ加算を取得しようと思っても、各種要件をどのように整備していけばわからない方も多いでしょう。特に「訪問介護員等の技術指導を目的とした会議」とはどんな会議?研修と何が違うの?という疑問が湧くのではないでしょうか。

 

 

特定事業所加算のスタッフ会議で何をやれば良いのか

 

 国の指針でこの会議では

 

 「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達又は当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等の技術指導を目的とした会議(サービス提供責任者が主宰し、登録ヘルパーも含めて、当該事業所においてサービス提供に当たる訪問介護員等のすべてが参加)を概ね 1 月に 1 回以上開催し、その概要を記録しなければならない。(グループ別開催も可)」

 

となっています。

 

 そして、実地指導などでは、このかいご会議の開催を証明する。

 

「会議日程表」「会議次第」「会議議事録」「利用者に関する情報を伝達した文書(会議資料等)」「会議出席者名簿」等会議の実態が分かる書類

 

 が必要とななります。

 

 

 整理してみますと、この会議では、

 

(1)利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達

もしくは

(2)指定訪問介護事業所の訪問介護員等の技術指導

 

を、行えばよいわけです。

 

(1)か(2)のどちらかで良く、両方やる必要はないようです。

 

 

スタッフ研修と同時に開催すると効率的

 

 (2)の要件は、どちらかというと「社内研修会」です。この研修は特定事業所加算のスタッフ個別に目標を設定した研修と違いがあるのでしょうか?

 この点について国は特に指針を示していませんので、「個別の目標を設定した研修」をこれによって行うことは可能です。

 

 筆者は、お世話させていただいている訪問介護事業所に、月に1回「会議」+「社内研修」を行う日を設定してくださいと提案しています。

 

 非常勤スタッフも含め全員の研修目標を年度当初に作成し、年間の社内研修の中でそうした目標をクリアできるように計画を作成し実施すれば、個別研修計画の要件はクリアします。特別にお金を出して外部研修を受けても良いのですが、社内研修だけでもこの要件は十分クリアするのです。

 

 つまり、「技術指導会議」は「社内研修会」読み替えて良いということです。

 

 

 

「運営要項」を作る

 

 この会議+研修会の運営を効率的に行うには、「運営要項」作成するのが良い方法であると思います。

 

 以下に例を示します。

 

 

〇〇訪問介護ステーション スタッフ会議及び社内研修会運営要項

 

1 目的

 本「スタッフ会議及び社内研修会」は、以下の目的で開催する。

 (1)利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達

 (2)訪問介護員等の介護技術・知識の研鑽

 

2 開催者(会議司会者)

 サービス提供責任者の主宰で開催する

 ※小規模な事業所でしたら事業所で一体的に開催すればよいでしょう。規模の大きな事業所でしたら、サービス提供責任者ごとに開催することも考えられますが、スタッフが重複する場合は非効率です。利用者100名程度までであれば、一体的開催でまかなえると考えます。

 

3 開催日時

 別紙「スタッフ会議及び社内研修会年間開催日程」のとおり

 ※「毎月第〇、△曜日」などと決めておくと良いでしょう。会議と研修で2時間程度が目安であると考えます。

 

4 開催場所

 ○○訪問介護ステーション会議室

 ※適当な会議室が無い場合、区市町村の生涯学習センターや公民館でしたら、安価で会議室を確保できます。

 

5 会議の内容

 「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達」については以下の内容を伝達・話し合う

  ① 前回会議からの持ち越し事項の確認 

  ② 当月、ケアプランの更新・変更を行う予定の利用者について(アセスメント・モニタリング情報)

  ③ 前月、ケアプランの更新・変更を行った利用者について(アセスメント・モニタリング情報)

  ④ 上記以外、サービス変更がある利用者について

  ⑤ 困難ケース等の対応について

  ⑥ 利用者からの苦情及び改善方策・ひやりはっと報告

  ⑦ 制度改正、行政からの連絡事項、感染症情報など 

  ⑧ その他必要な事項(新規営業先の情報・新スタッフ紹介など)

 

6 社内研修会の内容

 訪問介護員等の介護技術・知識の研鑽

 研修会の内容は別途「〇〇訪問介護ステーション スタッフ研修計画表」により実施する。

 ※別途年間計画表を作成します。この研修計画は、加算の要件である「個別研修計画」と一体的です。

個別研修計画の例

 

7 欠席者の扱い

 本「スタッフ会議及び社内研修会」に欠席したものについては、別途担当のサービス提供責任者より、会議内容の伝達及び研修補講を受けなければならない。

 

8 その他

 必要な場合は残業手当を支給

 

次回は実際の運営方法や記録の残し方についてご説明します。

 

 

 

介護職員のためのコンプライアンス研修 その2

3 プライバシーの保護

 

(1)介護福祉士は、利用者が自らのプライバシー権を自覚するように働きかけます。

 →プライバシー権とは基本的人権の一つです。普通の人がされて恥ずかしいことや屈辱的なことを平気で受け入れる利用者は、自立から遠ざかっています。

 

(2)介護福祉士は、利用者の個人情報を収集または使用する場合、その都度利用者の同意を得ます。

 →アセスメントは個人情報を収集することです。介護は個人のプライベートに介入する仕事ですから、当然本人(もしくは代理人)の同意が必要です。

 

(3)介護福祉士は、利用者のプライバシーの権利を擁護し、業務上知り得た個人情報について業務中か否かを問わず、秘密を保持します。また、その義務は生涯にわたって継続します。

 →介護福祉士は利用者のプライバシーを保護する立場でなければなりません。一度知った個人情報はその職を離れた後も擁護する義務を負います。

 

(4)介護福祉士は、記録の保管と廃棄について、利用者の秘密が漏れないように慎重に管理・対応します。

 →個人ファイルなどは机上に出しっぱなしにせず、鍵付き書庫に保管します。パソコンはパスワード管理し、ファックスやメールも個人名がわからないようにする工夫が必要です。

 

≪演習≫

 利用者や家族のプライバシー保護は介護職の職業倫理の中でも重要なことです。介護現場でプライバシーの侵害に当たる行為として、どんな行為があるか、些細なことでも良いので、みんなで上げて話し合いましょう。

 

 

4 総合的サービスの提供と積極的な連携、協力

 

(1)介護福祉士は、利用者の生活を支えることに対して最善を尽くすことを共通の価値として、他の介護福祉士及び保健医療福祉関係者と協働します。

 →福祉医療は専門職によるチームで提供されるのが原則です。家族介護と社会的介護の大きな違いはそこにあります。

 

(2)介護福祉士は、利用者や地域社会の福祉向上のため、他の専門職や他機関と協働し、相互の創意、工夫、努力によって、より質の高いサービスを提供するように努めます。

 →チームケアは、多くの人の目で一人のご利用者を見て考えることです。一人では見えなかったことが見えてきます。独りよがりの仕事は利用者にとって不利益になる場合があります。

 

(3)介護福祉士は、他職種との円滑な連携を図るために、情報を共有します。

 →カンファレンスや介護記録は情報共有のための大事な作業です。情報が共有されないケアはチームケアとは言えません。

 

≪演習≫

 末期がんのターミナルケアを例に、必要な専門職をリストアップして、それぞれの役割をみんなで上げてみましょう。特に介護職の役割について重点的に話し合います。また、現場での情報共有の方法としてどのような方法があるかあげてみましょう。

 

 

5 利用者ニーズの代弁

 

(1)介護福祉士は、利用者が望む福祉サービスを適切に受けられるように権利を擁護し、ニーズを代弁していきます。

 →例えば認知症の人は自らの本当のニーズを適切に主張できません。そうした隠れたニーズをしっかり把握しサービス提供することが大切です。

 

(2)介護福祉士は、社会にみられる不正義の改善と利用者の問題解決のために、利用者や他の専門職と連帯し、専門的な視点と効果的な方法により社会に働きかけます。

 →詐欺や虐待行為など、利用者に対する不正義から利用者を守るとともに、利用者の周囲に見守りなどの必要性を訴えていくことも、介護の仕事です。

 

≪演習≫

 社会的弱者である高齢者や障害者が晒されやすい不利益について、考えうることを上げてみましょう。そうした不利益からどうしたら利用者を守れるか、介護職としてできることを上げてみましょう。

 

 

6 地域福祉の推進

 

(1)介護福祉士は、地域の社会資源を把握し、利用者がより多くの選択肢の中から支援内容を選ぶことができるよう努力し、新たな社会資源の開発に努めます。

 →社会資源とは①人的資源(本人・家族・近隣・ボランティア・専門職など)、②サービス(プログラム)、③情報、④空間(居場所・拠点)、⑤財源、⑥制度、⑦ネットワークなどです。

 

(2)介護福祉士は、社会福祉実践に及ぼす社会施策や福祉計画の影響を認識し、地域住民と連携し、地域福祉の推進に積極的に参加します。

 →区市町村や地域包括センターなどの行政組織へ、地域福祉の情報を積極的に発信し、地域の福祉行政の一翼を担うことも介護職の役割です。

 

(3)介護福祉士は、利用者ニーズを満たすために、係わる地域の介護力の増進に努めます。

 →住民向けや介護職向けの研修を実施したり、介護福祉に関する情報を発信する等、地域の介護力が向上するような取り組みをすることが求められます。

 

≪演習≫

 あなたの周りの、高齢者や障害者にとって有用な社会資源はどのようなものがありますか?いろいろ上げてみましょう。さらにどのような社会資源が増えれば地域の介護力向上につながるか話し合いましょう。

 

 

 

7 後継者の育成

 

(1)介護福祉士は、常に専門的知識・技術の向上に励み、次世代を担う後進の人材の良き手本となり公正で誠実な態度で育成に努めます。

 →介護福祉士は現場で働きながら、介護職員初任者研修や実務者研修の講師を務めることが推奨されます。職場研修についても同様です。

 

(2)介護福祉士は、職場のマネジメント能力も担い、より良い職場環境作りに努め、働きがいの向上に努めます。

 →介護職員の処遇を改善し向上させていく努力が求められます。一人一人がより良い職場環境作りに関与していかなければなりません。

 

≪演習≫

 介護福祉にかかわる知識や・技術の向上のために、あなたやあなたの職場ではどのような努力や工夫をしていますか。また、より良い職場環境づくりのためにどのような努力や工夫をしていますか。いろいろ上げてみましょう。

 

 

介護職員のためのコンプライアンス研修 その1  

 

この研修資料は介護職員がコンプライアンスとは何かを理解するとともに、介護職員にとっての職業倫理とは何かを「日本介護福祉士会倫理基準(行動規範)」に基づき、具体的に理解できるようにまとめてあります。職場におけるコンプライアンス・職業倫理研修の材料としてご活用ください。

 

Ⅰ コンプライアンス(法令順守)と職業倫理

 

1 コンプライアンス(法令順守)とは → 「法令=ルール」を守ること

 

≪法令≫とは (介護にかかわるもの)

(1)憲法

(2)法律=国の法令(介護保険法など)

(3)地方自治体の条例・規則 =各種基準(人員・運営・算定基準など)

(4)各種解釈通知など

 

★背いた場合のペナルティー=刑罰を見れば、重大さが明らか

 

(1)憲法 → 逮捕・刑事罰(基本的人権の尊重 = 虐待や人権侵害)

(2)法律(介護保険法など) → 逮捕・刑事罰・指定取り消し

(3)条例・規則 → 指定取り消し・報酬返還・介護給付の過誤調整・是正報告の提出

(4)各種解釈通知 → 介護給付の過誤調整・是正報告の提出

 

 

2 職業倫理とは

 

「倫理」→ 人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの。

道徳。モラル。(国語辞典)

 

簡単に言うと → 「やるべきこと」と「やってはいけないこと」

 

「職業倫理」とは → その職業の人が(プロとして)「やるべきこと」と「やってはいけないこと」

 

プロフェッショナルな職業の人はすべて「職業倫理」を持っている(医師・弁護士・看護師・介

護福祉士 などなど)

 

≪演習≫

  介護のプロとして「やるべきこと」と「やってはいけないこと」の例を全員で沢山上げてみよう

 

 

Ⅱ 介護福祉士としての職業倫理

日本介護福祉士会倫理基準より

 

1 利用者本位、自立支援のための仕事をする

(1)介護福祉士は、利用者をいかなる理由においても差別せず、人としての尊厳を大切にし、利用者本位であることを意識しながら、心豊かな暮らしと老後が送れるよう介護福祉サービスを提供します。

 →どのような利用者であれ基本的人権を尊重します。最大限その人の希望を尊重する努力をします。

 

(2)介護福祉士は、利用者が自己決定できるように、利用者の状態に合わせた適切な方法で情報提供を行います。

 →高齢者や障害者は情報を積極的に取得することができません。できるだけたくさんの選択肢を提供できるように努力します。

 

(3)介護福祉士は、自らの価値観に偏ることなく、利用者の自己決定を尊重します。

 →介護福祉士が勝手に判断してはいけません。本人が何を望んでいるのかをしっかり理解したうえで仕事をします。

 

(4)介護福祉士は、利用者の心身の状況を的確に把握し、根拠に基づいた介護福祉サービスを提供して、利用者の自立を支援します。

 →自立支援は適切なアセスメントを通じて提供しなければなりません。アセスメントの無い介護は根拠のないサービスであり、介護福祉サービスとは言えません。

 

≪演習≫

  要介護5で寝たきり、意識が不鮮明でコミュニケーションができない状況の利用者にとって利用者本位、自立支援のために何ができるかみんなで話し合おう

 

(ヒント:その人は何を望んでいるのか?家族は何を望んでいるのか?想像力を働かせて考える)

 

2 専門的サービスの提供

(1)介護福祉士は、利用者の生活の質の向上を図るため、的確な判断力と深い洞察力を養い、福祉理念に基づいた専門的サービスの提供に努めます。

 →福祉理念とは「ノーマライゼーション」や「インクルージョン」、「憲法25条(健康で文化的な最低限度の生活の保障=生存権)」、「自立支援」などで、これらの理念をしっかり理解している必要があります。

 

(2)介護福祉士は、常に専門職であることを自覚し、質の高い介護を提供するために向上心を持ち、専門的知識・技術の研鑚に励みます。

 →プロフェッショナル(専門職)とは継続的な自己研鑽により、知識・技術レベルを向上させ続ける人です(どんな職業でも)。

 

(3)介護福祉士は、利用者を一人の生活者として受けとめ、豊かな感性を以て全面的に理解し、受容し、専門職として支援します。

 →どのような利用者でも(例えば人格障害などで社会適応ができない人でも)、その存在を尊重し、受容できる許容力が必要です。豊かな感性とは難しいケースの人を支援する仕事でも、楽しめるような感性です。

 

(4)介護福祉士は、より良い介護を提供するために振り返り、質の向上に努めます。

 →振り返りとはモニタリング=評価のことです。アセスメント→介護計画→実施→評価のサイクルをマネジメントサイクルと呼び、介護の質を向上させる仕組みとして重要です。

 

(5)介護福祉士は、自らの提供した介護について専門職として責任を負います。

 →責任を負うとは、悪い結果が出た場合はきちんと評価をし、再度アセスメントを行い、良い結果が出るよう努力をすることです。

 

(6)介護福祉士は、専門的サービスを提供するにあたり、自身の健康管理に努めます。

 →腰痛や精神疾患などにより現場を離れる介護職が沢山います。職業人として健全な心身を保つための日々の努力(運動・栄養管理・睡眠・ストレス解消など)は欠かせません。

 

≪演習≫

  介護のプロとして医療職(医師・看護師・PTなど)にはできないこととして、どんなことがあるか話し合おう

 

(ヒント:利用者のQOL向上を考えた時、医療職の限界は何であり、介護職は何ができるか)

 

 

次回その2に続く