訪問看護の実地指導・検査対策 その2

前回の続きです。

3 運営に関する基準(運営基準)

運営基準は介護事業所を運営するにあたって、守らなければいけない基準を網羅していますが、

多くの項目があるのでここでは実地指導などで指導されやすいポイントに絞って解説いたします。

基準そのものはこちらをご覧ください。➡ダウンロード 訪問看護基準

ポイントを以下に列挙します。

(1)重要事項説明と同意は本人と家族それぞれ必要

(2)保険証の確認は原本で行うこと

(3)アセスメント=「心身の状況等の把握」は通知文で記入項目が指示されている

(4)訪問看護計画書・報告書についても通知文で記入項目、参考フォーマットが指示されている

(5)訪問看護計画書の目標評価は初回訪問後、1月程度で行う

(6)医師・ケアマネ・連携する介護事業所などとの連絡事項は必ず文書などでその事実が確認できるようにしておく

(7)必要な変更届を正しく届け出ている

 

各ポイントの解説

(1)重要事項説明と同意は本人と家族それぞれ必要

こちらはすでに実施されている事業所も多いでしょう。

介護サービスはケアマネージャーを中心に訪問介護や看護、福祉用具などの各種サービス事業者がチームとなってサービスを提供します。

チームは利用者のQOL向上のためにカンファレンスにより問題点や課題を話し合います。

ご存知のように在宅介護では利用者の家族がキーパーソンとなっている場合が多く、

大概の場合が介護ストレスに晒されており、それが利用者のQOL向上を阻んでいる場合も多いでしょう。

ケアチームはそうした家族の情報も含めて話し合い、課題や問題点を整理しなければなりません。

そのことはご利用者はもちろんご家族にも理解していただく必要があります。

重要事項説明書によるご家族の同意は、そうした介護サービスの在り方に同意していただくためにあります。

老々介護や認々介護など家族ぐるみでの支援が必要なのが在宅介護ですから、

その意義をしっかり理解しておくことが重要でしょう。

 

(2)保険証の確認は原本で行うこと

これは意外に見落とされている決まりです。

通常、コピーをファイルしておくことが多いですが、介護サービスの受給資格があるかどうかを、

被保険者証で確認するのは「原本」を確認する必要があります。

偽造の被保険者証である場合もありますし、コピーですといくらでも内容を改ざんできたりします。

被保険者証は介護保険サービスの要でもありますから、

保険証のコピーに「〇年〇月〇日原本確認 確認者氏名」と記入しておくと良いでしょう。

 

(3)アセスメント=「心身の状況等の把握」は通知文で記入項目が指示されている

厚生労働省から「訪問看護計画書等の記載要領等について」という通知が出ており、

これにいわゆる「基本情報」であるアセスメント=「心身の状況等の把握」の記録を

「記録書Ⅰ」として記録するよう指示されています。

内容は以下の通り。

①訪問看護の依頼目的

②初回訪問年月日

③主たる傷病名

④既往歴、現病歴

⑤療養状況

⑥介護状況

⑦緊急時の主治医・家族等の連絡先

⑧指定居宅介護支援事業所の連絡先

⑨その他関係機関との連絡事項

等とされています。

続いて、「記録書Ⅱ」としていわゆるサービス提供内容について以下の内容を記録するように指示しています。

①訪問年月日

②病状

③バイタルサイン

④実施した看護 ・リハビリテーションの内容等(精神訪問看護に係る記録書Ⅱには、訪問先、食生活・清潔・排泄・睡眠・生活リズム・部屋の整頓等、精神状態、服 薬等の状況、作業・対人関係、実施した看護内容等)必要な事項を記入する こと。

一般的に広まっている基本情報やアセスメント、記録書の様式でおおむねカバーできているとは思いますが、

貴事業所の様式を今一度チェックするとよろしいでしょう。

 

 (4)訪問看護計画書・報告書についても通知文で記入項目、参考フォーマットが指示されている

上述の通知文でこれらの様式も指示しています。

ダウンロードしてご確認ください。➡訪問看護計画書等の記載要領等について

なお、この計画書様式を必ず使用しなければならないわけではありません。

本様式の内容を網羅していれば、他の様式でも構わないと思います。

ちなみに本計画書には計画書作成者を記入する欄がありません。

計画書の作成は看護師でなければなりませんので、この様式を使う際は備考欄などに作成者の氏名を記入しておくべきでしょう(作成者が管理者でない場合)。

 

(5)訪問看護計画書の目標評価は初回訪問後、1月程度で行う

上記に示した訪問看護計画書には「評価」欄が設けられています。

この評価をどの程度の期間で行うかは以下のような解釈通知が出ています。

「訪問看護計画書の評価欄は、

① 計画において、目標、問題点、解決策をたて、

② ①の計画に基づき訪問看護を行い、

③ 訪問後に計画に対する評価を記載する。評価は今後の計画の立て方に活用する。

評価を記載するタイミングは、示していないが、概ね訪問開始後1ヶ月程度で評価を行うことが好ましいと考えられる。

 

ここで、訪問開始後1っか月程度としているのは、訪問看護を利用する方は退院直後や病状の悪化が想定されますから、

容態変動の可能性を考えてのことだと思います。

ある程度安定してくれば、3カ月から6カ月ぐらいでも良いと思いますが、

わからない場合は医師に確認すると良いでしょう。

 

(6)医師・ケアマネ・連携する介護事業所などとの連絡は必ず文書などでその事実が確認できるようにしておく

介護事業において記録は、電話対応時のメモや留守番電話のメッセージ、メールやLINEなどのSNSのメッセージも記録に含めます。

文字になった記録はすべて文書です。

実地指導では医師やケアマネとの連携をしっかりとっているかどうか確認するために、

そうした記録の提出を求められます。

文書にせずに電話だけで連絡を取っていたりすると、そうした記録が残りませんから、記録を残すように指導されます。

文書と言っても形式ばる必要はなく、利用者さんのファイルの最初にノート形式の用紙を一枚つけておき、

その都度、日付・連絡事項・記入者などをメモ書きしておけば大丈夫です。

 

(7)必要な変更届を正しく届け出ている

事業所に変更があった場合は10日以内に都道府県と厚生局事務所(医療)に変更届を提出する必要があります。

東京都の場合、変更届が必要な変更事項は以下の通りです(届け出事項は自治体により微妙に異なります)。

①事業所の名称

②事業所の所在地

③法人代表者(開設者)の氏名及び住所

④定款・寄付行為等及び登記簿謄本等  (訪問看護事業に関するものに限る。)

⑥事業所の建物の構造、専用区画等

⑦事業所の管理者の氏名及び住所

⑧運営規程(電話、ファックス番号、営業日、営業時間、従業者数、通常の事業の実施地域、利用料など)

 

なお、管理者以外の従業者の変更については、変更届の提出は不要です。

従業者の『数』に変更があった場合のみ、変更届が必要です。

(※運営規定の従業員数の記載方法を、「常勤職員〇名以上、非常勤職員〇名以上」としておけば、数の変更も必要なくなります)

加算が増えただけの利用料金の変更は加算届の提出で良く、変更届の提出は不要です。

なお、管理者の婚姻などによる氏名変更で、免許証が旧姓の場合、

氏名変更がわかる戸籍謄本等が必要になります。

 

 

変更届は忘れてしまいがちですが、運営規定以外の①~⑦については必ず提出するようにしたほうが良いと思います。

運営規定の小さな変更についてはついでの時でも良いかもしれませんが、半年に1回程度は事業所に変更点がないか確認するべきでしょう。

 

次回は算定基準です。

 

 

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