通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その6

◆事業運営上必ず整備しなければならない書類Ⅳ

 

(2)保険給付関係書類

 

 介護保険給付に関する書類は、ケアマネージャーや国保連から送られてくる書類とパソコンの請求システムから出力される書類などを月ごとに管理します。また、生活保護関係の書類も月ごとに綴っておきます。

 

 介護保険の給付関係書類は、実際に保険を請求し受領した額に関わる証拠書類になります。実際にその事業所が国保連にどのような内容で保険請求をしたかがチェックされるのですが、実地指導においては、これらの請求内容と実際にサービス提供内容が合致しているかが問題になります。

 

 従って以下の書類は必ずチェックされますので適切に保管しましょう。

〇サービス提供票(控)、サービス提供票別表

〇請求書および領収書の控

〇サービス提供証明書控(介護給付明細書代用可)

 

 加算やサービス提供時間はケアマネージャーへしっかり確認し、毎月の請求業務を行う必要があります。

 

≪注意!≫

 請求事務の担当者が現場から離れている場合は注意が必要

 

 現場でサービスを提供しているスタッフと請求事務を行っているスタッフが異なる場合、注意が必要です。

 

 多いケースとしては、各種加算など実際は現場で提供していないのに、ケアマネージャーが提供していると思い請求に載せてしまい、事務担当者もそのまま請求してしまうケースです。

 

 現場の担当者が、毎月のサービス提供票をチェックしていない場合に発生するトラブルです。

 現場が請求事務に関与していない場合であっても、管理者は最低限毎月のサービス提供票をチェックしたいものです。

 

 このミスが実地指導で発覚した場合は給付金の返還だけではなく、是正処理の際にケアマネージャーやご利用者に対して、事業所としての信頼を損ねる可能性がありますので注意してください。

 

 

(3)事業所として作成しておかなければならない書類

 

 これまでは、ご利用者一人一人に関して管理しなければならない書類を説明してきました。ここからは、事業所として作成・管理しなければならない書類についてご説明します。

 

 

 ①勤務表(シフト表)=従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

 

「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」

https://www.city.niigata.lg.jp/iryo/kaigo/jigyousyatop/shisetsu_service/shinkishitei/tankinyushoseikatu.files/08-18-02kisairei_kinmukeitaiitiran.pdf

は毎月、月初めに作成し、人員基準を満たしているかをチェックするものです。作成を怠っている事業所も多いかもしれません。

 実地指導では当月を含めて3か月分は必ずチェックされます。少なくとも1年分程度は作成し保管しておきたいものです。

 

 また、これとは別に「勤務シフト表」を作成している場合はこちらもチェックされます。実際の勤務状況を見るためです。勤務シフト表が無い場合は、出勤簿や場合によっては給与明細などと突き合わせてチェックされます。

 

 「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」はあくまで勤務の予定表ですので、例えばシフトの変更や有給休暇の取得、病休、研修参加などにより実際の出勤状況と合わない場合があります。この点については後から修正したりする必要はありません。あくまで毎月の勤務予定です。

 ただし、常勤職員の勤務時間は週40時間を超えてはいけません。つまり、残業をあらかじめ予定勤務時間にしてはいけないということです。これは、パートさんの勤務時間を常勤換算した場合も同様です。

 

 また、生活相談員は、サービス提供時間中(運営規定上明示された時間)必ず事業所に勤務していなければならない決まりになっています。「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」では必ずその要件を満たすように作成しなければなりません。

 

 仮に土曜日営業していたり、サービス提供時間が週40時間を超える規定になっている場合は、必ず足りない部分に別の生活相談員が勤務する形態でなければなりません。

 

 また、生活相談員が有給休暇を取ったり、研修参加などで不在の場合は、他の生活相談員が提供時間中勤務することが求められます。

 

 そうした際、実地指導でもし、事業所に生活相談員が一人しかおらず、その人が不在であるケースがある場合、是正指導を受けます。悪質な場合(長期の病休等)は指定取り消しや業務停止になりますので注意しましょう。

 

 生活相談員は常勤である必要がないので、パートさんなどで生活相談員の資格を保有する人がいる場合は、できるだけ相談員に任命し、主たる生活相談員が不在の場合の補助の生活相談員として勤務してもらった方が良いと思います。

 生活相談員の資格要件についてはこちらをご覧ください。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/tuutitou/7_tuukai.files/28seikatsusoudan.pdf

 

 常勤の必要はありませんが、機能訓練指導員や看護師についても、長期不在の状態に無いよう、同様の配慮が必要です。

 

 

②業務日誌(利用者の数がわかる書類)

 

 こちらは前述の「通所介護記録」で代用することも可能ですが、事業所運営上はスタッフ間の情報共有や事業所運営上の記録として、毎日、記入しておく方が良いかもしれません。

 

 実地指導では主に1日の利用者数をチェックするために利用されます。利用定員を超えていないかを主に確認します。

 

 様式はノート形式でも良いですし、ネット上にあるフォームなどを印刷して利用しても良いでしょう。

 

 記録事項としては以下のような内容となります。

〇年月日

〇天候

〇利用者数

〇出勤スタッフ名

〇記録しておくべき今日の出来事(イベント・ひやりはっと・事故・緊急事態・見学者・訪問者・送迎の遅れなど)

〇連絡事項

〇記入者

〇その他(昼食献立・おやつ・金銭出納記録・営業記録など)

 

 こうした記録は何かトラブルがあった際の証拠書類になったり、研修の材料になったりしますので、後々とても役に立つちます。

 

③利用者名簿

 

 現在利用しているご利用者の名簿です。

 通常は業務で作成している、住所や電話番号、要介護度、担当ケアマネージャー、緊急連絡先などを一覧にしたもので良いでしょう。

 実地指導では定員の確認や、利用者記録のチェックの際に使われます。

 

④送迎に関する記録 (車両運行日誌等)

 

 送迎記録は事業所の様式でかまいませんが、送迎時間が給付上のサービス提供時間に重なっていないかをチェックします。

 問題になるのはお迎えや送りの時間を実績で記録するのか、予定で記録するのかです。

 

 各事業所で作成する送迎表は通常「予定」の時間で作成すると思います。しかし、交通事情や利用者の都合で予定が狂う場合(ほとんどが遅れる)が多く、実績で時間を記入した場合、サービス提供時間に食い込んでしまい、規定違反になってしまうというケースが発生します。

 

 サービス提供時間が9時スタートならば9時までに事業所に到着するように予定を組むのは当然ですが、これが9時以降になっている場合は問題です。少なくとも予定はサービス提供時間に食い込むことが無いよう作成する必要があります。

 

 筆者としては送迎実績の時間は、交通事情などで遅れることがあり、記録しておく必要はないと考えますが、実地指導の担当者によっては送迎時間の実績を記録せよと指導する場合があるかもしれません。その場合はそのように対応する必要があるでしょう。

 

 到着が遅れた場合の対応としては、その分サービス提供時間を延ばし、帰りの時間を遅らせ、その旨を業務日誌などに記録しておくことですが、ご利用者も予定がありますし、帰りが遅れることで家族への連絡など煩雑な作業が必要になりますのであまりお勧めできません。

 

 そもそものサービス提供時間を、30分程度幅を持たせておく(7-9ならば7時間30分程度)のが最も適切な対応だと考えます。

 

 

⑤苦情に関する記録

 

 苦情受付簿ファイルを作っておきます。苦情受付用の様式もネットに色々ありますのでカスタマイズして利用します。ただし、苦情の実績がなくても問題にはなりません。

 

 苦情受付簿で処理するような苦情以外に、ケアマネージャーや家族を通じて要望のような種類の苦情もあるかと思います。

 そうしたものは、業務日誌などにその後の対応も含めて記録しておけば良いでしょう。一応それも「苦情に関する記録」になりますので、実地指導の際はその部分を提示すればよいでしょう。

 

⑥指導等に関する記録

 

 こちらは、過去に実施された実地指導などで指摘事項があり、是正処理がされている場合、一連の流れがわかる記録です。

 通常、行政から指導があった場合、文書通知により対応方法などが指示されます。それに適切に対応し、控えをしっかり保管しておけば良いでしょう。

 

 是正指示が出ているのにもかかわらず、実態として是正がされていない場合が良くあります。これは罪が重く、指導内容によっては指定取り消しや、業務停止になる場合もあります。

 過去に指導事項がある事業所はその内容が正されているか、同じ過ちを犯していないか、(特に人員基準)確認しておく必要があります。

 

⑦事故に関する記録

 

 サービス提供中の利用者のケガなどは区市町村に報告しなければなりません。様式は区市町村にありますのでお問い合わせください。

 基本的にはこうした事故報告に関わる一連の記録がファイリングされていれば良いと思います。ただし、報告しなければならないレベルの事故が無かった場合でも問題はありません。

 

 業務日誌にヒヤリハットなどが記録されていればその部分を提示しても良いかもしれません。

 

⑧各種マニュアル

 事業所運営上必要な各種マニュアルがチェックされます。ひな型はネット上にもあります。そうしたものをベースに少しずつ自事業所用に修正するのが望ましいですが、何もあらかじめきっちりしたマニュアルを作るのではなく、事業所内で話し合い、決められた仕事のルールなどをこまめに記録してファイルしておけば、それがマニュアルになります。

 スタッフ間で共有する仕事のやり方はできるだけ文書化し皆が閲覧できる場所にファイリングしておくと良いと思います。

 実地指導で確認される可能性があるマニュアルは以下のようなものですが、必ずしも同じ名前でなくても、それに類するものがあれば良いと思います。

 

〇業務マニュアル(各種連絡体制・事故対策・緊急時対策などがわかるもの)

〇災害対策マニュアル(避難訓練・消防計画がわかるもの)

 ※避難訓練の記録は業務日誌でOK

〇感染症対策マニュアル(衛生管理・食中毒防止等に関するもの)

  ※感染症対策に関する研修記録が別途あると良い(処遇改善加算の要件である研修に入っている良い)

〇その他 送迎マニュアル、機能訓練マニュアルなど。これらは業務マニュアルに入っていれば可。

 

 以上が業務運営上必要な書類です。次回は加算関係の書類をご案内します。

 

 

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