介護職員のためのコンプライアンス研修 その1  

 

この研修資料は介護職員がコンプライアンスとは何かを理解するとともに、介護職員にとっての職業倫理とは何かを「日本介護福祉士会倫理基準(行動規範)」に基づき、具体的に理解できるようにまとめてあります。職場におけるコンプライアンス・職業倫理研修の材料としてご活用ください。

 

Ⅰ コンプライアンス(法令順守)と職業倫理

 

1 コンプライアンス(法令順守)とは → 「法令=ルール」を守ること

 

≪法令≫とは (介護にかかわるもの)

(1)憲法

(2)法律=国の法令(介護保険法など)

(3)地方自治体の条例・規則 =各種基準(人員・運営・算定基準など)

(4)各種解釈通知など

 

★背いた場合のペナルティー=刑罰を見れば、重大さが明らか

 

(1)憲法 → 逮捕・刑事罰(基本的人権の尊重 = 虐待や人権侵害)

(2)法律(介護保険法など) → 逮捕・刑事罰・指定取り消し

(3)条例・規則 → 指定取り消し・報酬返還・介護給付の過誤調整・是正報告の提出

(4)各種解釈通知 → 介護給付の過誤調整・是正報告の提出

 

 

2 職業倫理とは

 

「倫理」→ 人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの。

道徳。モラル。(国語辞典)

 

簡単に言うと → 「やるべきこと」と「やってはいけないこと」

 

「職業倫理」とは → その職業の人が(プロとして)「やるべきこと」と「やってはいけないこと」

 

プロフェッショナルな職業の人はすべて「職業倫理」を持っている(医師・弁護士・看護師・介

護福祉士 などなど)

 

≪演習≫

  介護のプロとして「やるべきこと」と「やってはいけないこと」の例を全員で沢山上げてみよう

 

 

Ⅱ 介護福祉士としての職業倫理

日本介護福祉士会倫理基準より

 

1 利用者本位、自立支援のための仕事をする

(1)介護福祉士は、利用者をいかなる理由においても差別せず、人としての尊厳を大切にし、利用者本位であることを意識しながら、心豊かな暮らしと老後が送れるよう介護福祉サービスを提供します。

 →どのような利用者であれ基本的人権を尊重します。最大限その人の希望を尊重する努力をします。

 

(2)介護福祉士は、利用者が自己決定できるように、利用者の状態に合わせた適切な方法で情報提供を行います。

 →高齢者や障害者は情報を積極的に取得することができません。できるだけたくさんの選択肢を提供できるように努力します。

 

(3)介護福祉士は、自らの価値観に偏ることなく、利用者の自己決定を尊重します。

 →介護福祉士が勝手に判断してはいけません。本人が何を望んでいるのかをしっかり理解したうえで仕事をします。

 

(4)介護福祉士は、利用者の心身の状況を的確に把握し、根拠に基づいた介護福祉サービスを提供して、利用者の自立を支援します。

 →自立支援は適切なアセスメントを通じて提供しなければなりません。アセスメントの無い介護は根拠のないサービスであり、介護福祉サービスとは言えません。

 

≪演習≫

  要介護5で寝たきり、意識が不鮮明でコミュニケーションができない状況の利用者にとって利用者本位、自立支援のために何ができるかみんなで話し合おう

 

(ヒント:その人は何を望んでいるのか?家族は何を望んでいるのか?想像力を働かせて考える)

 

2 専門的サービスの提供

(1)介護福祉士は、利用者の生活の質の向上を図るため、的確な判断力と深い洞察力を養い、福祉理念に基づいた専門的サービスの提供に努めます。

 →福祉理念とは「ノーマライゼーション」や「インクルージョン」、「憲法25条(健康で文化的な最低限度の生活の保障=生存権)」、「自立支援」などで、これらの理念をしっかり理解している必要があります。

 

(2)介護福祉士は、常に専門職であることを自覚し、質の高い介護を提供するために向上心を持ち、専門的知識・技術の研鑚に励みます。

 →プロフェッショナル(専門職)とは継続的な自己研鑽により、知識・技術レベルを向上させ続ける人です(どんな職業でも)。

 

(3)介護福祉士は、利用者を一人の生活者として受けとめ、豊かな感性を以て全面的に理解し、受容し、専門職として支援します。

 →どのような利用者でも(例えば人格障害などで社会適応ができない人でも)、その存在を尊重し、受容できる許容力が必要です。豊かな感性とは難しいケースの人を支援する仕事でも、楽しめるような感性です。

 

(4)介護福祉士は、より良い介護を提供するために振り返り、質の向上に努めます。

 →振り返りとはモニタリング=評価のことです。アセスメント→介護計画→実施→評価のサイクルをマネジメントサイクルと呼び、介護の質を向上させる仕組みとして重要です。

 

(5)介護福祉士は、自らの提供した介護について専門職として責任を負います。

 →責任を負うとは、悪い結果が出た場合はきちんと評価をし、再度アセスメントを行い、良い結果が出るよう努力をすることです。

 

(6)介護福祉士は、専門的サービスを提供するにあたり、自身の健康管理に努めます。

 →腰痛や精神疾患などにより現場を離れる介護職が沢山います。職業人として健全な心身を保つための日々の努力(運動・栄養管理・睡眠・ストレス解消など)は欠かせません。

 

≪演習≫

  介護のプロとして医療職(医師・看護師・PTなど)にはできないこととして、どんなことがあるか話し合おう

 

(ヒント:利用者のQOL向上を考えた時、医療職の限界は何であり、介護職は何ができるか)

 

 

次回その2に続く

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