通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド 最終回

◆加算取得時必ず整備しなければならない書類

 

(1)中重度者ケア体制加算

 

①従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

 人員基準は規定の人員プラス2人以上の看護師または介護職員が常勤で勤務していなければなりません。

 また、サービス提供時間中に看護師が1名以上勤務している必要があります。

 

②要介護3から5の利用者の人数がわかるチェックシート

 都道府県に加算の届け出を提出した際に作成した、チェックシートもしくは確認書を加算を算定している期間分作成しておく必要があります。

 前年度の実績による場合は、前年度1年分の実績、過去3か月分の実績による場合は、毎月分を作成し要件を満たしている必要があります。

 

③その他要介護度の分布がわかる資料

 該当する利用者の被保険者証や名簿、サービス提供票の控えなど利用実績が確認できる書類が必要になります。

 

 

(2)個別機能訓練加算

 

 機能訓練は通所介護サービスにおいて最も期待されているサービスの一つです。この加算は個別の機能訓練に関して計画的にサービス提供している場合に加算できます。

 この加算を算定しなくても、通所介護における機能訓練は必須のサービス内容となっています。

 せっかく機能訓練サービスを提供するのであれば、この加算を積極的に取得していく方が良いと考えます。

 どのようにサービス提供すれば加算が取得できるかは、別の機会に詳しくご説明したいと思います。

 

 なお、サービス内容によって(Ⅰ)と(Ⅱ)がありますが特に記載のない場合は共通の書類と考えてください。

 

①従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表・出勤簿・資格証(写)

 機能訓練指導員の勤務状況がチェックされます。(Ⅰ)は常勤もしくはサービス提供時間中勤務している必要があります。(Ⅱ)は加算が算定している日に勤務していればOKですが、勤務時間は概ね3時間以上(実態として個別機能訓練が提供できる時間)と言われていますが、提供する利用者数により変動してくると考えます。

 

 また(Ⅱ)の場合、地域により週3日以上勤務など規定を設けている場合がありますので、加算を算定する場合は、都道府県に確認しましょう。当然ですが(Ⅱ)の場合、機能訓練指導員が休暇や研修で不在の場合は算定はできません。

 

②重要事項説明書・パンフレットなど加算の算定を周知する書類

 加算を算定する曜日、およびそれが(Ⅰ)なのか(Ⅱ)なのかそうした情報を事業所のパンフレットなどに明記し、利用者やケアマネージャーに周知している必要があります。

 

③機能訓練計画書

 個別機能訓練計画書は、機能訓練指導員が作成しなければなりません。但し、機能訓練指導員が直接訓練しなければならないと明示されているのは(Ⅱ)だけですので、(Ⅰ)は機能訓練が計画的に行えれば良く、直接訓練の要件はありません。 

 

 なお、機能訓練計画は3か月に1度評価し見直していくことが必要です。その際、機能訓練指導員が自宅に訪問することが求められています。

 

個別機能訓練計画書に記入しなければならない内容は以下の通りです。

〇「利用者ごとにその目標」

〇「実施時間」

〇「実施方法」

〇「機能訓練指導員が自宅に訪問した年月日」

などが最低限盛り込まれている必要があります。

 

規定の様式はありませんが、書式については以下をご参照ください。

www.city.yokohama.lg.jp/kenko/kourei/jigyousya/kaigo/dei/kobetukinou.doc

 

③評価書

 個別機能訓練計画に基づいた評価は必ず必要です。評価書自体は計画書と一体的に作成しても構いません。

 以下の事項は必ず盛り込みます。

〇「個別機能訓練の効果(目標の達成状況)」

〇「実施時間についての評価」

〇「実施方法についての評価」

 

④個別機能訓練のメニューやプログラム内容等

 (Ⅰ)の場合、通所介護利用者をグループに分けて選択的にプログラムを提供することが求められていますので、メニューやプログラムの内容がわかる書類が必要になります。

 機能訓練の選択メニューは以下のようなものになります。

 

機能訓練メニュー(選択項目) 例

 

①運動機能向上系メニュー

●ひざ痛対策プログラム

●腰痛対策プログラム

●転倒防止プログラム

●各ADL/IADLに対応したプログラム  etc

 

②口腔機能向上・栄養改善系メニュー

●嚥下能力向上プログラム

●心肺機能向上プログラム

●食事のための作業療法プログラム

●コミュニケーション向上プログラム  etc

 

③閉じこもり・うつ予防系メニュー

●生きがい作りプログラム

●社会交流促進プログラム

●セラピー系(音楽療法など)プログラム

●①、②を組み合わせた複合系プログラム   etc

 

④認知機能低下予防系メニュー

●脳機能向上プログラム(知能系)

●脳機能向上プログラム(運動系)

●①、②、③を組み合わせた複合系プログラム   etc

 

 

 

(3)認知症加算

 

①従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

 人員基準は中重度者ケア体制加算と同じです。規定の人員プラス2人以上の看護師または介護職員が常勤で勤務していなければなりません。

 

②認知症介護実践者研修等の修了証

 サービス提供時間を通じて認知症介護実践者研修等を修了した者を1名以上配置していなければなりません。

 認知症介護実践者研修等とは「認知症介護の指導に係る専門的な研修」、「認知症介護に係る専門的な研修」、「認知症介護に係る実践的な研修」等です。

 

③日常生活ランクⅢ以上の利用者の人数がわかるチェックシートなど

 こちらも、中重度者ケア体制加算と同じです。都道府県に加算の届け出を提出した際に作成したチェックシートもしくは確認書を加算を算定している期間分作成しておく必要があります。

 前年度の実績による場合は、前年度1年分の実績、過去3か月分の実績による場合は、毎月分を作成し要件を満たしている必要があります。

 

④その他日常生活ランクの分布がわかる資料

 該当する利用者の被保険者証や名簿、サービス提供票の控えなど利用実績が確認できる書類が必要になります。

 

⑤認知症の進行緩和プログラムが計画的に提供されている状況がわかる書類

 アセスメントや通所介護計画書以外に、個別に「認知症の進行緩和計画書」(例)のようなものが作成されていることが望ましいでしょう。ただし、通所介護計画書に内容が盛り込まれていればそれでOKです。

 

 認知症加算を算定している場合は、通所介護計画書をカスタマイズして、「認知症の進行緩和プログラム」の内容が記入できるようにしておくと良いでしょう。

 

 

(4)栄養改善加算

 

 本加算を算定するためには管理栄養士を1名以上配置し、専門的な栄養管理を計画的に提供する必要があります。

 管理栄養士がいて利用者が単に要件に該当しているからといって算定できるわけではありません。

 具体的には厚生労働省から出ている「栄養改善マニュアル」などに沿った形でのプログラムを提供しなければなりません。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1_05.pdf

 

 人員基準や利用者の要件などに関する書類だけでなく、プログラム全体がチェックされます。必要な書類が完備しているだけでは算定できないので、説明は省きたいと思います。

 

 

(5)口腔機能向上加算

 本加算も看護師などの資格者が配置しているだけでは加算できません。

 こちらも厚生労働省から出ている「口腔機能向上マニュアル」に沿った形でのプログラムを提供しなければ加算は難しいでしょう。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1_06.pdf

 

 

(6)サービス体制強化加算

 

 こちらは(Ⅰ)と(Ⅱ)と(Ⅲ)があります。特に説明がない場合は共通の事項です。

 

①従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

 常勤換算で介護福祉士が(Ⅰ)は40%(Ⅱ)が30%以上です。また(Ⅲ)では勤続3年以上の職員が30%以上です。

 

②資格証の写しまたは勤続年数のわかる書類

 勤続年数は労働者台帳や労働条件通知書などにより確認します。この勤続年数は加算を算定する通所介護事業所に勤務した年数だけではなく、同一法人の別の事業所(例えば訪問介護など)に勤務していた期間も含めることができます。

 

③人員基準チェックシートなど

 こちらも、都道府県に加算の届け出を提出した際に作成したチェックシートもしくは確認書を、加算を算定している期間分作成しておく必要があります。

 前年度の実績による場合は、前年度1年分の実績、過去3か月分の実績による場合は、毎月分を作成し要件を満たしている必要があります。

 

 

(7)介護職員処遇改善加算

 

 (Ⅰ)から(Ⅳ)までありますが、キャリアパス要件(賃金規定など)など、行政に提出した計画書に添付した書類はすでに整備されているという前提で説明します。

 

①最新の計画書および報告書

 処遇改善加算は毎年、計画書と報告書を提出しているため、その内容で実施されているかがチェックされます。

 

②研修の実施がわかる書類

 「資質向上の目標と具体的な研修計画」を提出していますので、その内容で研修が実施されているかがチェックされます。

 「研修実施報告書」「研修資料」など実際に研修が行われていることが確認できる書類が必要になります。

 

③賃金台帳、給与明細など

 加算が該当する職員に適切に支払われてる実態がわかる書類です。また、管理者や事務職員など実際に介護業務(介護保険給付対象の業務)に携わっていない職員に支給されていないかもチェックされます。

 

④昇進昇格などが確認できる書類

 労働者台帳や辞令の控え、賃金台帳などで職員がキャリパスの計画書どおりに昇進昇格を果たしているかをチェックします。

 

⑤その他計画書に記入された事項が実施されていることがわかる書類

 資格取得のための支援や職場環境改善の状況がわかる書類です。出勤簿など書類だけでなく、購入物品などの確認をする場合もあります。

 

 

 以上、加算に関する説明でしたが、入浴や送迎に関する加算は前述の通所介護計画書などで分かるので省きました。

 

 

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その6

◆事業運営上必ず整備しなければならない書類Ⅳ

 

(2)保険給付関係書類

 

 介護保険給付に関する書類は、ケアマネージャーや国保連から送られてくる書類とパソコンの請求システムから出力される書類などを月ごとに管理します。また、生活保護関係の書類も月ごとに綴っておきます。

 

 介護保険の給付関係書類は、実際に保険を請求し受領した額に関わる証拠書類になります。実際にその事業所が国保連にどのような内容で保険請求をしたかがチェックされるのですが、実地指導においては、これらの請求内容と実際にサービス提供内容が合致しているかが問題になります。

 

 従って以下の書類は必ずチェックされますので適切に保管しましょう。

〇サービス提供票(控)、サービス提供票別表

〇請求書および領収書の控

〇サービス提供証明書控(介護給付明細書代用可)

 

 加算やサービス提供時間はケアマネージャーへしっかり確認し、毎月の請求業務を行う必要があります。

 

≪注意!≫

 請求事務の担当者が現場から離れている場合は注意が必要

 

 現場でサービスを提供しているスタッフと請求事務を行っているスタッフが異なる場合、注意が必要です。

 

 多いケースとしては、各種加算など実際は現場で提供していないのに、ケアマネージャーが提供していると思い請求に載せてしまい、事務担当者もそのまま請求してしまうケースです。

 

 現場の担当者が、毎月のサービス提供票をチェックしていない場合に発生するトラブルです。

 現場が請求事務に関与していない場合であっても、管理者は最低限毎月のサービス提供票をチェックしたいものです。

 

 このミスが実地指導で発覚した場合は給付金の返還だけではなく、是正処理の際にケアマネージャーやご利用者に対して、事業所としての信頼を損ねる可能性がありますので注意してください。

 

 

(3)事業所として作成しておかなければならない書類

 

 これまでは、ご利用者一人一人に関して管理しなければならない書類を説明してきました。ここからは、事業所として作成・管理しなければならない書類についてご説明します。

 

 

 ①勤務表(シフト表)=従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

 

「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」

https://www.city.niigata.lg.jp/iryo/kaigo/jigyousyatop/shisetsu_service/shinkishitei/tankinyushoseikatu.files/08-18-02kisairei_kinmukeitaiitiran.pdf

は毎月、月初めに作成し、人員基準を満たしているかをチェックするものです。作成を怠っている事業所も多いかもしれません。

 実地指導では当月を含めて3か月分は必ずチェックされます。少なくとも1年分程度は作成し保管しておきたいものです。

 

 また、これとは別に「勤務シフト表」を作成している場合はこちらもチェックされます。実際の勤務状況を見るためです。勤務シフト表が無い場合は、出勤簿や場合によっては給与明細などと突き合わせてチェックされます。

 

 「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」はあくまで勤務の予定表ですので、例えばシフトの変更や有給休暇の取得、病休、研修参加などにより実際の出勤状況と合わない場合があります。この点については後から修正したりする必要はありません。あくまで毎月の勤務予定です。

 ただし、常勤職員の勤務時間は週40時間を超えてはいけません。つまり、残業をあらかじめ予定勤務時間にしてはいけないということです。これは、パートさんの勤務時間を常勤換算した場合も同様です。

 

 また、生活相談員は、サービス提供時間中(運営規定上明示された時間)必ず事業所に勤務していなければならない決まりになっています。「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」では必ずその要件を満たすように作成しなければなりません。

 

 仮に土曜日営業していたり、サービス提供時間が週40時間を超える規定になっている場合は、必ず足りない部分に別の生活相談員が勤務する形態でなければなりません。

 

 また、生活相談員が有給休暇を取ったり、研修参加などで不在の場合は、他の生活相談員が提供時間中勤務することが求められます。

 

 そうした際、実地指導でもし、事業所に生活相談員が一人しかおらず、その人が不在であるケースがある場合、是正指導を受けます。悪質な場合(長期の病休等)は指定取り消しや業務停止になりますので注意しましょう。

 

 生活相談員は常勤である必要がないので、パートさんなどで生活相談員の資格を保有する人がいる場合は、できるだけ相談員に任命し、主たる生活相談員が不在の場合の補助の生活相談員として勤務してもらった方が良いと思います。

 生活相談員の資格要件についてはこちらをご覧ください。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/tuutitou/7_tuukai.files/28seikatsusoudan.pdf

 

 常勤の必要はありませんが、機能訓練指導員や看護師についても、長期不在の状態に無いよう、同様の配慮が必要です。

 

 

②業務日誌(利用者の数がわかる書類)

 

 こちらは前述の「通所介護記録」で代用することも可能ですが、事業所運営上はスタッフ間の情報共有や事業所運営上の記録として、毎日、記入しておく方が良いかもしれません。

 

 実地指導では主に1日の利用者数をチェックするために利用されます。利用定員を超えていないかを主に確認します。

 

 様式はノート形式でも良いですし、ネット上にあるフォームなどを印刷して利用しても良いでしょう。

 

 記録事項としては以下のような内容となります。

〇年月日

〇天候

〇利用者数

〇出勤スタッフ名

〇記録しておくべき今日の出来事(イベント・ひやりはっと・事故・緊急事態・見学者・訪問者・送迎の遅れなど)

〇連絡事項

〇記入者

〇その他(昼食献立・おやつ・金銭出納記録・営業記録など)

 

 こうした記録は何かトラブルがあった際の証拠書類になったり、研修の材料になったりしますので、後々とても役に立つちます。

 

③利用者名簿

 

 現在利用しているご利用者の名簿です。

 通常は業務で作成している、住所や電話番号、要介護度、担当ケアマネージャー、緊急連絡先などを一覧にしたもので良いでしょう。

 実地指導では定員の確認や、利用者記録のチェックの際に使われます。

 

④送迎に関する記録 (車両運行日誌等)

 

 送迎記録は事業所の様式でかまいませんが、送迎時間が給付上のサービス提供時間に重なっていないかをチェックします。

 問題になるのはお迎えや送りの時間を実績で記録するのか、予定で記録するのかです。

 

 各事業所で作成する送迎表は通常「予定」の時間で作成すると思います。しかし、交通事情や利用者の都合で予定が狂う場合(ほとんどが遅れる)が多く、実績で時間を記入した場合、サービス提供時間に食い込んでしまい、規定違反になってしまうというケースが発生します。

 

 サービス提供時間が9時スタートならば9時までに事業所に到着するように予定を組むのは当然ですが、これが9時以降になっている場合は問題です。少なくとも予定はサービス提供時間に食い込むことが無いよう作成する必要があります。

 

 筆者としては送迎実績の時間は、交通事情などで遅れることがあり、記録しておく必要はないと考えますが、実地指導の担当者によっては送迎時間の実績を記録せよと指導する場合があるかもしれません。その場合はそのように対応する必要があるでしょう。

 

 到着が遅れた場合の対応としては、その分サービス提供時間を延ばし、帰りの時間を遅らせ、その旨を業務日誌などに記録しておくことですが、ご利用者も予定がありますし、帰りが遅れることで家族への連絡など煩雑な作業が必要になりますのであまりお勧めできません。

 

 そもそものサービス提供時間を、30分程度幅を持たせておく(7-9ならば7時間30分程度)のが最も適切な対応だと考えます。

 

 

⑤苦情に関する記録

 

 苦情受付簿ファイルを作っておきます。苦情受付用の様式もネットに色々ありますのでカスタマイズして利用します。ただし、苦情の実績がなくても問題にはなりません。

 

 苦情受付簿で処理するような苦情以外に、ケアマネージャーや家族を通じて要望のような種類の苦情もあるかと思います。

 そうしたものは、業務日誌などにその後の対応も含めて記録しておけば良いでしょう。一応それも「苦情に関する記録」になりますので、実地指導の際はその部分を提示すればよいでしょう。

 

⑥指導等に関する記録

 

 こちらは、過去に実施された実地指導などで指摘事項があり、是正処理がされている場合、一連の流れがわかる記録です。

 通常、行政から指導があった場合、文書通知により対応方法などが指示されます。それに適切に対応し、控えをしっかり保管しておけば良いでしょう。

 

 是正指示が出ているのにもかかわらず、実態として是正がされていない場合が良くあります。これは罪が重く、指導内容によっては指定取り消しや、業務停止になる場合もあります。

 過去に指導事項がある事業所はその内容が正されているか、同じ過ちを犯していないか、(特に人員基準)確認しておく必要があります。

 

⑦事故に関する記録

 

 サービス提供中の利用者のケガなどは区市町村に報告しなければなりません。様式は区市町村にありますのでお問い合わせください。

 基本的にはこうした事故報告に関わる一連の記録がファイリングされていれば良いと思います。ただし、報告しなければならないレベルの事故が無かった場合でも問題はありません。

 

 業務日誌にヒヤリハットなどが記録されていればその部分を提示しても良いかもしれません。

 

⑧各種マニュアル

 事業所運営上必要な各種マニュアルがチェックされます。ひな型はネット上にもあります。そうしたものをベースに少しずつ自事業所用に修正するのが望ましいですが、何もあらかじめきっちりしたマニュアルを作るのではなく、事業所内で話し合い、決められた仕事のルールなどをこまめに記録してファイルしておけば、それがマニュアルになります。

 スタッフ間で共有する仕事のやり方はできるだけ文書化し皆が閲覧できる場所にファイリングしておくと良いと思います。

 実地指導で確認される可能性があるマニュアルは以下のようなものですが、必ずしも同じ名前でなくても、それに類するものがあれば良いと思います。

 

〇業務マニュアル(各種連絡体制・事故対策・緊急時対策などがわかるもの)

〇災害対策マニュアル(避難訓練・消防計画がわかるもの)

 ※避難訓練の記録は業務日誌でOK

〇感染症対策マニュアル(衛生管理・食中毒防止等に関するもの)

  ※感染症対策に関する研修記録が別途あると良い(処遇改善加算の要件である研修に入っている良い)

〇その他 送迎マニュアル、機能訓練マニュアルなど。これらは業務マニュアルに入っていれば可。

 

 以上が業務運営上必要な書類です。次回は加算関係の書類をご案内します。

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その5

◆事業運営上必ず整備しなければならない書類Ⅲ

 

(1)利用者に関する各種書類 つづき

 

⑩通所介護計画書

通所介護計画書の様式も特に指定されたものはありません。事業所によってはアセスメントやモニタリング、機能訓練の計画書を兼ねているものもあるでしょう。

しかし、基本的な事項として以下の規定がありますので、それらが守られている必要があります。

〇作成者=管理者(他のスタッフと協力して作成)でなければならない

〇アセスメントの結果を踏まえる(従ってアセスメントは必ずしなければならない)

〇利用者や家族の意向を踏まえる(ケアプランの内容で良い)

〇ケアプランに沿って作成されなければならない

〇援助の方向性や機能訓練等の目標(基本的にケアプランの内容で良い)

〇上記目標を達成するための具体的なサービスの内容及び手順等

〇各種加算算定の対象となるサービスを提供する場合はその内容(入浴など)

 

なお、計画書に示されるサービス提供時間は給付単位時間を超えていなければいけません。

7-9単位であれば、7時間ちょうどではダメで7時間15分など7時間を超えていなければなりません。

さらに、この時間の中に送迎時間を含めてはいけません。

 

通所介護計画書の様式として、東京都では下記の書式を提示していますのでご参照ください。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/tuutitou/7_tuukai.files/keikaku-tyuui.pdf

 

⑪通所介護記録

日々のサービス提供の記録です。

様式は特に決まっていません。提供したサービス内容が具体的に分かるようになっていれば、実地指導上は問題ありません。ただし、入浴や機能訓練など加算の対象になっている事項は必ず記録に残さなければなりません。

 

また、ご利用者一人一人個別に記録するか、その日の利用者全員分を1枚の用紙で記録するかも自由です。

筆者としては、日々の記録は、利用者全員分を1枚で記録したほうが効率的だと思います。日々の記録をご利用者のファイルに全部保管することは分量が膨大になるため、お勧めできません。

 

月の提供表などと突き合わせて、サービスを提供している実態が確認できれば良いので、利用者全員分のシートを月ごとにファイルしておく方が良いと考えます。

 

通所介護記録に記入するべき事項としては一般的に以下のような事項ですが、あらかじめ印刷しておいたり、チェックで済むような様式にするなどきるだけ簡便に記録できるようにします。

最近ではタブレットなどを利用して簡便に記録できるアプリなどもあります。

 

〇年月日

〇利用者名(あらかじめ印刷)

〇利用時間

〇バイタル数値

〇服薬

〇水分摂取量

〇レクなどの活動内容(チェック式)

〇個別機能訓練内容(チェック式)

〇食事(主菜・副菜・おやつ)

〇排泄(回数や状況)

〇入浴状況

〇特記事項

〇サービス提供タッフ職・氏名(あらかじめ印刷)

なお、通所介護記録は後に説明する業務日誌とは区別します。

〇通所介護記録=ご利用者の記録、業務日誌=事業所の記録です。

 

⑫連絡帳

ご利用者のご家族との連絡帳も介護記録の一部と考えて良いでしょう。

しかし、運営規定上必要とはされていませんので、サービスの一環で作成するものと考え、ご家族との信頼関係を醸成するツールと考えた方が良いと考えます。

記入する内容は通所介護記録と同じ内容プラスご家族への連絡事項となりますので、どのようなものにするかは業務の効率化とご家族へのサービス向上の観点から選択したいところです。

 

⑬モニタリング(評価)

要介護のご利用者の場合、モニタリングは介護記録や体力測定の記録そのものですので、特定の様式を作成する必要はないと思います。

ただし、短期目標及び長期目標に対する評価はそれぞれ設定された期間で実施する必要があるため、通常は通所介護計画書に一体化する方が便利かと考えます。

 

予防介護の場合はモニタリングが義務付けられていますので、別途「モニタリング評価表」などの様式で作成することが必要ですが、通常、予防介護関係の様式は、各包括で用意している場合が多いのでご相談ください。

 

⑭個別機能訓練関係の書類(体力測定・運動サービスの内容など)

加算を取得する場合の書類については最後にまとめてご説明しますが、加算を取得していなくても機能訓練については記録を残しておきたいものです。

 

運動サービスの提供は介護保険制度における通所介護サービスの役割の中でも特に重要なサービスです。下肢筋力が弱っていない高齢者などほとんどいないわけですから、週1・2回デイサービスに通い適切な運動をすることは、高齢者の体力維持強化のために非常に重要です。国の調査でも要介護度の悪化を防ぐことは明らかになっています。

 

従って、たとえ認知症専門のデイサービスであってもデイサービスであれば運動サービスは必ず提供したいものと思います。

 

加算を取得していない場合は、アセスメント、通所介護計画書、通所介護記録、体力測定記録などで、どのような運動サービスを提供しているかわかりますので、適切な記録が残っていれば専用の様式は必要ありません。

 

⑮当該利用申込者へのサービス提供を他の事業者へ依頼したことがわかる書類等

何らかの都合(満員・日程が合わないなど)で自事業所でサービス提供できない場合、他の事業者にサービス提供依頼をしなければなりません。

そのようなケースがあった場合は、業務日誌などにその旨を記録しておきます。

 

⑯居宅介護事業所への情報提供に関する記録・居宅介護支援事業者へ連絡をしたことがわかる書類等

ケアマネージャーとの連絡はファックスやメール・電話・直接訪問など様々な方法で行われます。

ファックスの場合はその物を該当するご利用者のファイルに綴じておけば良いでしょう。メールの場合は印刷して同様に綴じておきましょう。

電話・直接訪問の場合は、ご利用者ファイルの最初に綴じてある「連絡記録(支援経過)」に記入しておけばよいでしょう。

 

⑰相談・助言を記録した書類等

生活相談員などがご利用者から相談を受け助言をした場合などは、簡単なものであれば「連絡記録(支援経過)」に記入しておけば良いと思います。

その他、こうした相談・助言に関する資料があれば、利用者ファイルに綴じておきます。

 

⑱区市町村に送付した通知に係る記録 (事故報告書など)

サービス提供中に転倒事故などがあった場合は、必ず区市町村に事故報告を提出しなければなりません。

様式は区市町村の介護保険課などに問い合わせてください。

 

⑲利用者の届出書控等及び法定代理受領サービスの提供を受けるための援助

区市町村などへの届出などを援助した場合はその書類のコピーを保管しておきます。

 

⑳その他

事業所によってはご利用者の写真やご家族からの手紙、その他関係する資料をお持ちの場合もあるでしょう。

それらはみな基本的に個人情報ですので、利用者ファイルに綴じて、鍵付き書庫に保管します。

 

以上が個別ファイルに保管しておくものを中心にご利用者様の情報関係書類になります。

なお、「介護予防・日常生活支援総合事業」に関する各種書類は、各区市町村によって違う場合がありますので、各区市町村にご相談ください。

 

次回は保険給付関係の書類について説明します。

 

 

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その4

◆事業運営上必ず整備しなければならない書類Ⅱ

 

今回は業務上必要な書類のうち利用者ファイルの中身についてご説明します。

 

(1)利用者に関する各種書類(基本情報・アセスメントなど)

 

利用者に関する書類は利用者ごとに少し厚めのファイルに整理しておくことが大切です。きちんとしたファイリングできていると、実地指導の際も印象が良く、きちんとやっている事業所として評価してもらえます。

 

以下は、利用者ごとにファイリングしておきたい書類の一覧になります。

 

①連絡記録(支援経過)

個人ファイルの最初の部分に、ご利用者に関する情報や記録をなんでも書き込めるノート形式の用紙を付けておくと良いと思います。

 

ご本人やご家族からのお休みの連絡や、ちょっとした相談、ケアマネージャーへの連絡等をメモします。この記録は連絡の記録であるだけでなく、支援経過にもなりますので、ケアを検討する際、とても重要な情報になります

 

記載する項目は

〇 日付

〇 時間

〇 相手(ケアマネやご利用者)

〇 内容及び対応

〇 受付者氏名

です。

 

いわゆる連絡簿と同じですが、一冊のノートの連絡簿ですべてのご利用者を一まとめに記録するよりも、ご利用者一人一人で連絡簿を分けた方が、記録としては利用価値があります。

まとめたノートですと、支援経過にはなりにくく、実地指導などでは記録が分けられていた方が、この事業所は良いケアをしている印象を得るでしょう。

 

②利用申込書

ケアマネージャーから利用申込書を頂くのが通常の流れかと思います。

利用申込書の内容は特に決まりはありません。

利用を始めるに際して、事業所としてケアマネージャーに提供してほしい情報が簡潔に記入できる様式にすることが望ましいでしょう。

 

あまり、ケアマネージャーに負担をかけない方が営業的にも良いと思いますが、既往歴などの知っておかなければならないアセスメント情報は取得したいものです。

できるだけ簡便に書けるように、チェック式にするなど様式を工夫してください。

様式のひな型はネット上に沢山ありますので使いやすい物を修正して利用しましょう。

 

また、ケアマネージャーが許してくれればケアマネージャーの実施したアセスメントの情報を参考に頂くことも有効です。

しかし、アセスメントはあくまで通所介護事業者が実施しなければならないものですので、ケアマネからのアセスメントをそのまま、自分の実施したアセスメントにしてはいけません。

 

③被保険者証(再掲)

原本確認・絶えず最新のものを保管するよう注意してください。

 

④居宅サービス計画書(1)第1表

第1表には計画に対する利用者の同意の署名捺印欄がない場合があります。

また、サービス担当者会議で渡される計画書原本に署名捺印が未記入の場合があります。署名捺印欄に署名捺印が無い場合は、プラン決定後ファックスなどで署名捺印があるものを送ってもらった方が良いでしょう。

 

1表の様式そのものに署名捺印欄が無い場合は、「サービス担当者会議の要点の写し」に計画が同意された旨の記載があれば良いでしょう。

もしこの記載も無い場合、または原案を修正した場合などは、別途、同意を得たことを確認できる書類が必要ですので、ケアマネージャーから同意書などの写しを貰う必要があります。

 

また、利用期間のものがすべてそろっている必要があります。長くご利用されているご利用者の場合、抜けている場合があります。絶えず最新のものを保管するようにしましょう。

 

利用の長い方のファイルは煩雑になりがちです。古い書類は時々整理して、2年以上前の書類は、年度ごとに全員別ファイルにまとめておいても良いでしょう。5年たったら廃棄するスケジュールで良いと思います。

 

⑤居宅サービス計画書(2)第2表

2表では、通所介護計画書との整合性が問題になります。

通所介護サービスを利用する目的と長期目標・短期目標が、通所介護計画書の利用内容や長期・短期目標と合っている必要があります。

 

ただし、通所介護計画書の長期・短期目標の記載内容がケアプランに一字一句同じである必要はありません。より具体的な記載内容になっているなど、整合性が取れていればOKです。

 

当然、ケアプランに無いサービスが通所介護計画書にあってはなりません。

例えば入浴が必要なのに2表に記載がない場合は、修正してもらう必要があります。入浴サービスの記載がない場合は、入浴加算の返還になります。

 

⑥居宅サービス計画書(3)第3表(週間サービス計画表)

こちらも、通所介護計画書と合っている必要があります。違っている場合は必ず修正してもらいます。

また、保険給付単位のサービス提供時間と計画書の所要時間が合っていないと、給付単位を修正し返還しなければならない場合もありますので、注意しましょう。

 

⑦居宅サービス計画書第4表(サービス担当者会議の要点の写し)

サービス担当者会議に出席していない場合は、かならず「サービス担当者に対する照会(依頼)内容等 が記載されていることを確認します。

 

4表に自事業所の照会内容が記載されていない場合もありますから、できれば照会された際の文書を控えておくと良いでしょう。

 

⑧アセスメント1(基本的な情報)

通所介護のアセスメントの内容には特に決まりはありませんが、必ず、自事業所で実施しなければなりません。ケアマネジャーからアセスメントシートを貰えてもそれでアセスメントを実施したことにはなりません。

 

必ず何らかの様式を使い利用者の心身の状況を把握することが必要ですので注意しましょう。

 

以下はケアマネージャーが行うアセスメントの「課題分析標準項目」です。こうした項目が入っているアセスメントシートを入手し利用しましょう。

 

1.基本情報に関する項目

No. 標準項目名 項目の主な内容(例)
1 基本情報(受付、利用者等基本情報) 居宅サービス計画作成についての利用者受付情報(受付日時、受付対応者、受付方法等)、利用者の基本情報(氏名、性別、住所、電話番号等の連絡先)、利用者以外の家族等の基本情報について記載する項目
2 生活状況 利用者の現在の生活状況、生活歴等について記載する項目
3 利用者の被保険者情報 利用者の被保険者情報(介護保険、医療保険、生活保護、身体障害者手帳の有無等)について記載する項目
4 現在利用しているサービスの状況 介護保険給付の内外を問わず、利用者が現在受けているサービスの状況について記載する項目
5 障害老人の日常生活自立度 障害老人の日常生活自立度について記載する項目
6 痴呆性老人の日常生活自立度 痴呆性老人の日常生活自立度について記載する項目
7 主訴 利用者及びその家族の主訴や要望について記載する項目
8 認定情報 利用者の認定結果(要介護状態区分、審査会の意見、支給限度額等)について記載する項目
9 課題分析(アセスメント)理由 当該課題分析(アセスメント)の理由(初回、定期、退院退所時等)について記載する項目

2.課題分析(アセスメント)に関する項目

No. 標準項目名 項目の主な内容(例)
10 健康状態 利用者の健康状態(既往歴、主傷病、症状、痛み等)について記載する項目
11 ADL ADL(寝返り、起きあがり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄等)に関する項目
12 IADL IADL(調理、掃除、買物、金銭管理、服薬状況等)に関する項目
13 認知 日常の意思決定を行うための認知能力の程度に関する項目
14 コミュニケーション能力 意思の伝達、視力、聴力等のコミュニケーションに関する項目
15 社会との関わり 社会との関わり(社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感等)に関する項目
16 排尿・排便 失禁の状況、排尿排泄後の後始末、コントロール方法、頻度などに関する項目
17 褥瘡・皮膚の問題 褥瘡の程度、皮膚の清潔状況等に関する項目
18 口腔衛生 歯・口腔内の状態や口腔衛生に関する項目
19 食事摂取 食事摂取(栄養、食事回数、水分量等)に関する項目
20 問題行動 問題行動(暴言暴行、徘徊、介護の抵抗、収集癖、火の不始末、不潔行為、異食行動等)に関する項目
21 介護力 利用者の介護力(介護者の有無、介護者の介護意思、介護負担、主な介護者に関する情報等)に関する項目
22 居住環境 住宅改修の必要性、危険個所等の現在の居住環境について記載する項目
23 特別な状況 特別な状況(虐待、ターミナルケア等)に関する項目

 

ただし、通所介護の場合、上記以外に、「機能訓練」や「口腔機能」のアセスメントが必要になる場合があります。加算を取得している場合は必ず必要です。加算を取得している場合に必要な書類は最終回にご説明します。

 

⑨アセスメント2(サービスを利用してから調査する体力測定など)

サービスを開始してから実施する体力測定の内容もアセスメントになります。

機能訓練加算を加算していない場合でも、体力測定を実施している事業所は多いのではないでしょうか。

 

通所介護での運動は今後ますます重要になります。認知症のご利用者の多い事業所でも積極的に運動サービスを提供する必要がありますので、通所介護事業所であれば、できるだけ体力測定を実施したいものです。

 

体力測定は、毎月、継続的に実施することで重要なモニタリングになります。長期・短期目標の評価材料にもなります。

 

事業所によってはこうした記録を個別ファイルにせず、他の利用者と一緒にファイルしている場合がありますが、できれば個別にファイルしておいた方がケアの内容が良くわかり、実地指導などでは好印象につながるでしょう。

 

標準的な測定の項目は以下の通りです。

〇握力

〇開眼片足立ち時間

〇5m間(通常・最大)歩行

〇Timed up go

〇下肢筋力(可能であれば)

 

実際の測定方法については以下のマニュアルをご参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1d.pdf

「運動器の機能向上マニュアル」東京都老人総合研究所

 

 

次回は、通所介護計画書など業務上必要な書類の続きをご説明します。

 

 

 

訪問看護の実地指導・検査対策 最終回

最終回は、行政の実地指導でよく指摘される事項や実際の実地指導が来た場合の対応方法、その他まとめとして特に留意してほしい事項を説明いたします。

 

ます、行政などが発表している、実地指導報告書より、訪問看護事業所の実地指導で指導された事例を、その原因や対応法について説明したいと思います。これまでの説明と重複する部分もありますが、ここで上げている事項は特に重要ですので、復習の意味で再掲していきます。

 

(1)よく指摘される事項(人員・運営関係)

① 保健師、看護師又は准看護師を2.5以上確保していない

この指摘は、規模の小さな事業所では特に注意したほうがよろしいでしょう。悪質な場合は指定取り消しになります。特に訪問の稼働(訪問)時間が常勤換算で2.5を超えていない場合は、稼働していない間、訪問看護師が何をしているか(基本待機)明確にしておきましょう。

② 医師の指示書が無い

病院や医師が変わった場合はブランクができてしまう場合があります。医師の指示が無い期間は訪問しても報酬を算定できません。

③ 従業員の秘密保持体制が不完全 

一番多いのは、業務上知りえた利用者等の情報を漏らしてはいけないことを、看護師等の採用時に誓約書等で誓約させていないケースです。誓約書には秘密は退職後も保持しなければならない旨の記載が必要です。できれば、プライバシーポリシー(個人情報保護方針)を作成し、従業員や利用者に提示していると良いと思います。

④ 利用者と家族の個人情報を使用同意を得ていない

重要事項説明書の修正が行われていない事業所があるようです。

⑤ 訪問看護計画書が未作成

医師やケアマネとの関係がなれ合いになり、サービス内容が変わっているのに計画書がずっと昔のままということがあるようです。

⑥  訪問看護計画書の作成に当たって、利用者の同意を得ていない

訪問看護計画書に利用者の署名捺印を忘れないようにします。もらっていない計画書がある場合は速やかに同意を得ましょう。

⑦ 訪問看護計画書の作成者、説明者が不明確

計画書は保健師、看護師(准看護師を除く)が作成しなければなりません。計画書を作成した担当者、利用者へ説明した担当者が一目で分かる よう「作成者」欄、「説明者」欄を設けるようにします(※注意:厚労省のこの欄がありません)。

⑧ 訪問看護計画書の内容と居宅サービス計画(ケアプラン)の内容が合っていない

ケアプランに無いサービスは提供できません。

⑨  看護師等の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理が行われていない

以下のポイントを押さえておきます。

 ◎感染症予防・食中毒マニュアルなどが完備されている

 ◎手袋など必要な衛生用品が完備されている

 ◎看護師等の健康診断が実施されその内容を把握している(サービス提供強化加算を算定している場合は必ず)

⑩  毎月、勤務表(従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表)が作成されていない

作成する勤務表には、「職務の内容(訪問か事務かなど)」、「勤務時間」、「常勤・非常勤の別」、「兼務関係」が必要です

⑪ 料金表等に准看護師が訪問する場合の単位数が明記されていない

准看護師が訪問した場合は、所定単 位数が 90/100 となる旨の記載をします。

 

(2)よく指摘される事項(算定関係)

①  初回加算

以下の点がよく指摘されています。 

 ◎新規に訪問看護計画書を作成せずに加算を算定してい る。

 ◎初回加算について、過去ニ月間において医療保険の訪問看護を提供した利用者に加算をしている。

 ◎初回加算の算定要件を満たしている場合であっても、算定していない事例があった。(初回加算は利用料負担公平化の観点から、算定要件 を満たす場合は必ず加算)

②  緊急時訪問看護加算

早朝・夜間、深夜の時間帯に緊急訪問した場合に、早朝・夜間、深夜の加算を算定している。

③ ターミナルケア加算に必要な記録が不十分

ターミナルケア加算を算定する場合は記録書に以下の内容を必ず盛り込まなければなりませんので、注意しましょう。

 ◎利用者及びその家族に対して説明を行い、同意を得ていること。

 ◎利用者の身辺状況の変化等の記録

 ア) 終末期の身体状況の変化及びこれに対する看護についての記録

 イ) 療養や死別に関する利用者及び家族の精神的な状態の変化及びこれに対するケアの経過についての記録

 ウ) 看取りを含めたターミナルケアの各プロセスにおいて利用者及び家族の意向 を把握し、それに基づくアセスメント及び対応の経過の記録

④ 医療保険の給付の対象となる場合に、訪問看護費を算定している

末期の悪性腫瘍や厚生労働大臣が定める疾病等の患者については、医療保険が優先されます。

 

(3)東京都の訪問看護実地指導・検査の状況 - 約85%で指摘事項あり、うち80%が報酬算定の誤り

平成26年度、東京都では 訪問看護事業者1,491事業所に対し131の事業所で実地検査が行われました。このうち何らかの文書指摘を受けた事業所は111事業所で約80%以上が指摘を受けている状況です。最も多いのが「介護報酬の算定等に誤りがあるの で、是正すること」(86事業)という指摘です。

この結果、平成26年度東京都では、訪問看護において合計 827,674円(1事業所当たり6,318円)の返還が発生しています。訪問介護は 310,819円ですので、事業所数を考えると訪問看護は返還額が高い傾向にあります。ちなみに通所介護事業 は 8,318,595円です。

介護報酬の算定はできるだけ注意深く行う必要があるでしょう。

 

(4)実地指導の流れと実施方法(通常の場合)

① 指導通知は1月前程度に来る

監査や虐待など不当行為の事実を把握した場合の緊急立ち入りなどを除いて、通常は1月前ぐらいに通知が来ます。かならず事前提出書類があります。この事前提出書類が、検査のガイドラインになっていますから、書類の準備が対策になります。この書類準備をなおざりにすると、当日、指摘を沢山されますのでしっかり準備しましょう。

② 指導には一般指導と合同指導がある

◎一般指導=都道府県が単独で実地指導を行う。

◎合同指導=都が厚生労働省や区市町村等と合同で実地指導を行う。

③ 一般指導は通常2名体制

都道府県の単独指導の場合は2名体制ですが、合同指導の場合は、共に入る役所により、それ以上の人数になります。

④ 実地指導の時間は原則9:00~18:00以内

基本的には営業時間内での検査になります。問題が見つかった場合延長することはありえます。

⑤ 併設する複数の事業所を同時に検査する場合あり

併設する他の事業所も同時に検査する場合があります。その場合、1事業所の検査時間が短くなる場合もあります。

⑥ 医療保険関係に不正の疑いがある場合、保険医療指導の担当者が一緒に来る場合もある

例は少ないようです。

⑦ 検査員にはお茶などの接客行為は不要

場合にもよりますが、役人への便宜供与になりますので、先方から必要ない旨言われることも多いようです。お茶を出さなかったからといって検査員の心証が悪くなるようなことはありません。

⑧ 必ず介護と介護予防の両方をチェックする 

利用者ファイルなどかならず両方見ます。どの利用者ファイルを見るかは事前の提出資料などから判断しているようです。

⑨ 指摘事項が見つかった場合は後日文書で正式な通知が来る

この通知と同時に改善報告書の提出通知が一緒に来ます。おおむね30日以内にどのように改善したかを報告しなければなりません。

⑩ 報酬に誤りがあった場合は保険者に連絡が行き過誤修正が指示されます。

都道府県の検査の場合でも検査内容は区市町村に渡ります。都道府県の検査の後に、すぐに区市町村が実地指導に入ってくるパターンも良くあることのようです。

 

なお、実地指導に入る事業所の選定基準は東京都の場合、以下の通りです。

(ア)過去の指導検査において、指摘事項の改善が図られていない事業所で、継続的に指導を必要とする事業所

(イ)利用者、保険者等から苦情等情報提供が多く寄せられている事業所

(ウ)休止、移転等で指導が必要な事業所

(エ)新規指定後指導未実施の事業所

(オ)集団指導不参加の事業所

(カ)相当の期間にわたって、指導検査を実施していない事業所

※集団指導に参加しないと実地指導の可能性が高くなりますので、都道府県の開催する集団指導には必ず参加するようにしましょう。

 

(5)最後にコンプライアンス(法令順守)の優先順位

最後に介護事業を運営する上で認識しておかなければならない、法律の基本的な知識として、コンプライアンス=法令順守における優先順位のお話をさせていただきます。

ご存知のように日本国は法治国家です。法律により政府や国民の活動は制約を受けており、政府や個人が好き勝手に活動することはできません。

介護事業は国の厚生事業であり通常よりも多くの法律により活動の仕方に制限を受けます。

介護事業を営む人たちは当然その制限やルールを意識しながら事業を運営する必要があります。この業界で働くほとんどの人がそのことは理解していると思います。

しかし、この法律には重要度において優先順位があり、それを意識して働いている人は少ないのではないでしょうか。

現場からの声で、規定などが沢山ありすぎて、混乱するという話を聞きます。その結果よく見受けられるのが、あまり重要でないルールにこだわって、もっと重要なルールをおろそかにしてしまうというケースです。

仕事の進め方程度のルールと、日本国民として絶対に守らなければいけないルールを同じレベルで認識してしまっているケースさえあるのです(犯罪になります)。

介護事業にかかわる日本の法体系は大雑把に以下のような優先順位で構築されています。

① 憲法

② 国の法令(介護保険法)

③ 地方自治体の条例=各種基準(人員・運営・算定基準など) 

④ 各種解釈通知など

 

それぞれの法律の詳しい説明は省きますが、以下はそのレベルの法律に背くような行為をした場合のペナルティーの例を上げています。

 

① 憲法 → 逮捕・刑事罰(基本的人権の尊重など、実際の刑罰は法令によります)

② 国の法令(介護保険法など) → 逮捕・刑事罰・指定取り消し

③ 地方自治体の条例=各種基準(人員・運営・算定基準など) → 指定取り消し・報酬返還・介護給付の過誤調整・是正報告の提出

④ 各種解釈通知など → 介護給付の過誤調整・是正報告の提出

これはあくまで、一つの例ですが、優先順位の高い法律ほど背いた場合の罰は重くなります。

認知症の利用者をケアマネと訪問介護員が自宅に外から鍵を閉めて監禁してしまったケースでは、このケアマネと訪問介護員が逮捕されました。具体的には刑法の監禁罪にあたるのでしょうが、その基にある法律は憲法の基本的人権の尊重でしょう。

逆に、解釈通知程度のルールを守れないからといって逮捕されることはありません。

介護や医療・福祉事業に従事する方はまずこと法律のプライオリティー(優先順位)を意識することが大変重要です。

医師でさえも、基本的な人権を蹂躙する行為を、運営や処置上必要なこととして手を下してしまう場合があります。

「ならぬことはならぬのです」というレベルをまず知ることが、この業界で仕事をする上では大変重要でしょう。

 

実地指導の通知が来た時も、その対応としてこのレベルは意識されなければなりません。

まず優先順位が高い①~③について適切にできているかを確認するべきです。

憲法や介護保険法に具体的に当たって検証する必要はありませんが、常識として良くないことだと思えること(例えば不正請求や水増し請求など)が行われていないかどうかを、まずは意識すべきでしょう。

うっかりミスの過誤請求は返還で済みますが、やってもいないサービスを故意に請求する行為は、重大な罪になります。

事業所内でそうした不正行為に対して麻痺してしまっているケースが良くあります。「昔からそうしているから」などと重大な不正行為を見過ごしてしまっているケースも多いのです(三菱自動車やフォルクスワーゲンの不正はそれに当たるでしょう)。

このようなルールの優先順位の麻痺は重大な不正につながります。

④解釈通知などは運営の適正化というレベルです。実地指導で指摘されても、それはあくまで適切な事業所運営を目指した指導と受け止めるべきでしょう。

検査員は何も不正を摘発するためだけに来るのではありません。運営の適正化を通して、我が国の介護事業の質の向上をはかるために、毎日、事業所を巡っているのです。

日ごろ利用者さんに向き合いながら一生懸命に仕事に励むあまり、きちんと記録ができていなかったり、請求事務にミスがあったりするのはどうしようもないことだと思います。そうしたプライオリティーの低いルールは実際に指導を受けて適正化すれば良いのです。淡々と検査員の説明を聞いて修正すればそれで何も問題はないと考えましょう。

 

以上で訪問看護における実地指導・検査対策の説明を終わります。

実地指導・検査はプライオリティーの高い法律をしっかり守っていればあまり恐れることはありません。まずは人員基準などの各種基準についてしっかり確認することが重要でしょう。

 

 

 

 

訪問看護の実地指導・検査対策 その3

今回は介護報酬の算定基準(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準)に関するポイントです。

保険者である区市町村はこの基準により、介護報酬が適切に算定され請求されているかをチェックします。

また、都道府県も加算について基準の要件が完備されているかをチェックします。

いずれにしても、加算については必ずチェックされますので、書面等で必要条件がクリアしていることがわかるようにしておかなければなりません。

従って、ここでは加算を中心にポイントを解説したいと思います。

なお、医療保険の加算もこれとは別にありますが、基本的な必要書類は同じですので、同様に整備する必要があります。

医療保険の算定方法が不明な場合は、悩まずに地方厚生局の地域事務所に確認したほうが良いと思います。

➡地方厚生局地域事務所連絡先 診療報酬に関する紹介先

ここでは、介護保険加算について説明いたします。

 

(1)早朝・夜間、深夜の加算

こちらは訪問介護と同じ扱いになります。

チェックポイントを以下のようになります。

① ケアプランと訪問看護計画書に時間が明示されている(利用者に同意済み)。

② サービス開始時刻が加算の対象となる時間帯にある場合にのみ、算定できます。

③ ただし、加算の対象となる時間のサービス提供時間が全体のサー ビス時間に占める割合がごくわずかな場合においては、この加算は算定できません。

  よく問題になるのが、下線部のごくわずかな時間とはどの程度の時間かということです。1時間のサービス時間の中で30分が加算対象時間であればOKなのでしょうか?実地指導では自治体によって判断が分かれる部分もあるようです。少なくとも全体の時間の1/2以上が加算の時間になっていれば大丈夫だと思いますが、不安な場合は保険者の自治体に確認する方が良いでしょう。

【 確認 】

早朝=サービス開始時刻が6時~8時

夜間=サービス開始時刻が18時~22時

深夜=サービス開始時刻が22時~6時

 

(2)緊急時訪問看護加算

この加算を算定するためには都道府県または管轄の自治体にに算定届を提出していなければなりません。

医療保険では24時間連絡体制加算及び24時間対応体制加算と二つあり、名称も異なっていますが必要な要件はほぼ同じです。

チェックポイントを以下のように整理します。

① 同じ月に医療保険の上記の(24時間)加算を算定している場合は、介護保険の緊急時訪問看護加算は算定できない。

② 当加算は24時間いつでも訪問看護師に連絡が取れる体制が要件とされていますから、実地指導では連絡体制をどのように取っているのかチェックされる。具体的には携帯電話などの持ち方や、連絡を受ける方法を確認されます。

 ◎ 連絡担当が管理者の場合はその携帯電話番号を利用者や家族にどのような文書で知らせているのか書類で確認。

 ◎ スタッフで緊急連絡用の携帯電話を持ち回りしている場合は、その順番を記載した当番表などをチェック。

◎ 相談担当は原則、看護師か保健師とされていますが、准看護師や理学療法士などが連絡を受けて、看護師・保健師に引き継げる体制ができていれば良い。

 ◎ 利用者にはこの加算を算定していることを説明し、同意をえなければなりませんから、通常は重要事項説明書に緊急連絡先の電話番号を明記。

③ この加算を算定する訪問看護サービスを提供した場合は、早朝や夜間であっても早朝・夜間・深夜加算は算定できません。

 ◎ ただし、特別な管理が必要な利用者(特別管理加算を算定している方)の場合、1月に2回以上の緊急訪問を行ったら、2回目以降は早朝・夜間・深夜加算を算定できる。これは、特に手厚いケアの必要な利用者さんの場合、緊急訪問が頻繁に発生する可能性があり、常態化する状況もあるためだと考えます。

④ 複数の訪問看護ステーションからサービスを受けている利用者には他のステーションが当加算を算定していないことを確認すること(一人の利用者に複数の事業所が当加算を算定することはできない)。

 

(3)特別管理加算

この加算も自治体にに届出を提出していなければなりません。

特別管理加算はⅠとⅡがあります。

≪Ⅰ≫

・在宅悪性腫瘍患者指導管理もしくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある利用者

・気管カニューレもしくは留置カテーテルを使用している状態にある利用者

≪Ⅱ≫

・在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養 法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法 指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理又は在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態

・人工肛門又は人工膀胱を設置している状態

・真皮を越える褥瘡の状態(NPUAP(National Pr essure Ulcer of Advisory Panel)分類III度若しくはIV度又は DESIGN分類(日本褥瘡学会によるもの)D3、D4若し くはD5に該当する状態)

・点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態にある利用者(主治医の指示書が必要。かつ実際に週三日以上点滴注射を実施している状態)

 

ポイントは以下の通りです。

① 一人の利用者に複数の訪問看護ステーションで本加算を算定できない。算定する場合は事業所同士で合議し算定する。その情報については文書で残しておく。

② 点滴注射の実施の際は、終了後主治医に報告し、実施内容を記録書(Ⅱ)に記録する。

 

(4)ターミナルケア加算

こちらも届け出が必要です。また、24時間連絡ができる体制が確保されている必要があり、緊急時訪問看護加算の要件を満たしている必要があります。

 

ポイントは以下の通り。

① 算定は死亡月(死亡月に訪問実績がない場合でも)。

② 頻回に訪問看護が必要であり、医療保険の訪問看護が指示されている場合、死亡前、最後の訪問看護が医療保険によりるものか介護保険によるものかにより、ターミナルケア加算をどちらの保険で算定するかが決まる。

例:利用者がターミナル期になり、特別指示書で頻回に訪問看護に入っていて、14日間の特別指示期間終了後(医療保険による訪問)、介護保険の訪問を1日提供し、翌日死亡。

この場合、ターミナル加算は介護保険で算定し、医療保険では算定できない。

③ 以下の内容を記録書Ⅰ・Ⅱに明記しておくこと。

 ◎  終末期の身体症状の変化及びこれに対する看護についての記録

 ◎  療養や死別に関する利用者及び家族の精神的な状態の変化及びこれに対するケアの経過についての記録(例:本人、家族の死の受容に対してどのような対応をしたか)

 ◎  看取りを含めたターミナルケアの各プロセスにおいて利用者及び家族の意向を把握し、それに基づくアセスメント及び 対応の経過の記録(例:本人、家族がどのように最後の時間を過ごしたいと望んでいるのかを把握し、それを実現するために何が課題であり、それをどのように解決するか、また、実際にどのように対応したか)

④ ターミナルケア中に医療機関に搬送された場合、24時間以内に死亡が確定した場合は、本加算を算定できる。

 

(5)初回加算

初回加算は間違えが多い加算ですので、特に注意したほうが良いでしょう。

以下のポイントにご留意ください。

① 初回加算を算定する場合は、必ず新規に訪問看護計画書を作成しなくてはならない。

② 過去2月間において訪問看護(医療保険の訪問看護を含む)の提供を受けていた利用者には加算できない。

◎ 過去2月間とは歴月で丸々2月という意味です。たとえば4月1日に訪問し、4月2日に入院した場合、次の訪問で初回加算が算定できるのは、7月1日以降です。6月ではありません。

③ 要支援⇔要介護と区分が変更になった場合は加算可

初回加算を算定している場合、実地指導では①と②が必ずチェックされますので特に注意しましょう。

 

(6)退院時共同指導加算

病院や老健から退院・退所する際に、原則1回算定できますが。留意すべきポイントは以下の通りです。

① 算定は初回の訪問時の報酬に加算する。

② 初回の訪問が退院時共同指導を実施した翌月でも算定可能(翌々月は不可)。

③ 特別管理加算を算定できる利用者については2回算定できる(当然、共同指導が2回行われている場合のみ)。

④ 上記の場合、2か所の訪問看護ステーションでそれぞれ1回ずつ算定可能。

⑤ 1回しか算定できない場合、他の訪問看護ステーションが退院時共同指導を実施していないか確認すること。

⑥ 1回しか算定できない場合、介護保険で算定すると、医療保険では算定できない(2回できる場合はそれぞれの保険で1回ずつ算定可能)。

⑦ 共同指導の内容は必ず記録書に記録する。

 

(7)看護・介護職員連携加算

この加算は訪問介護事業所がたんの吸引等の医療的サービスを行う際に、連携する訪問看護ステーションが算定できる加算です。

連携の枠組みは制度化されており、医師、訪問看護師、訪問介護員がサービス提供体制を構築していなければなりません。

通常ですと訪問介護事業所がたんの吸引等の事業者登録する時点から連携し、研修の指導者として関わっていくことが多いと思います。

詳しくはこちらの資料をご覧ください。➡喀痰吸引等指導者講習会資料

ポイントは以下の通り。

① 訪問介護員によるたんの吸引等のサービス体制を構築強化するために、訪問介護員に同行訪問し業務状況を確認した時や、会議に出席した時に算定できる。

② 上記の連携を行った月の初回の訪問看護報酬に加算する。

③ 緊急時訪問介護加算の届け出が出ていない場合は算定できない。

④ ケアプラン上計画されている訪問看護実施の際に、訪問介護員が同行し、たんの吸引等のサービス実施状況を確認した時に、計画した訪問看護時間を超過しても、当初の計画の訪問時間以上の報酬は算定できない。

⑤ 本加算は訪問看護員のたんの吸引等の技術不足を補うことを目的とするのではなく、安全なサービス提供体制を構築する上で、医療的な知見からサービスの実施状況を評価し、医師への情報提供やサービス向上の取り組みに対し加算するものであり、介護職員の技術的指導や研修を目的した同行訪問では加算できない。

 

(8)看護体制強化加算

算定する場合は届け出が必要。

本加算は医療依存度が高い利用者が多い場合に算定できますが、基準を超えなかった月は算定できません。従ってこの加算を算定する場合は毎月基準を超えているかチェックし、記録に残しておく必要があります。実地指導では当然、すべての月の基準状況について文書でチェックされます。

以下3つの基準をすべてクリアしていなければ算定できません

① 算定する月の前3か月で、緊急時訪問看護加算を算定した利用者が50%以上

② 算定する月の前3か月で、特別管理加算を算定した利用者が30%以上

③ 算定する月の前12か月で、ターミナルケア加算を算定した利用者が1名以上

人数の計算方法は以下を参考にしてください。

 

例)特別管理加算を算定した実利用者の割合の算出方法

※6月に看護体制強化加算を算定

3月 4月 5月
利用者A
利用者B ◎(Ⅰ)
利用者C 入院 ◎(Ⅱ)

〇訪問看護のサービス提供が1回以上あった月

◎特別管理加算を算定した月 

【人数算出方法】

  ア 前3月間の実利用者の総数 = 3人

  イ アのうち特別管理加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定した実利用者数 = 2人 → アに占めるイの割合 = 2/3   ≧ 30% …算定要件を満たす

注意!! 基準がクリアできない月が発生した場合は届け出が必要になります。

 

(9)サービス提供体制強化加算

算定には届け出が必要です。

以下の4つの要件があり、すべてを満たしている必要があります。

① すべての看護師等への研修の実施

② すべての従業者による技術指導を目的とした会議の毎月開催

③ 非常勤職員を含めた健康診断の実施

④ 看護師等の勤続年数について、3年以上の者が3割以上

上記の要件を満たせなくなった場合は速やかに届け出が必要になります。

各要件にかかわるポイントを以下に示します。

① すべての看護師等への研修の実施

 ◎ 従業者ごとに具体的な研修の目標、内容、研修期間、実施時期等を定めた研修計画を作成し実施しなければなりません。届け出時は予定でかまいません。

個別研修計画の見本をダウンロードしてご確認ください。➡訪問看護師研修計画

この研修はパートも含めて全員が受講しなければなりませんので、欠席者は補講する等対策が必要です。実地指導では研修計画と実施記録、出席簿、研修教材など研修の実態がわかる書類をチェックされます。

② すべての従業者による技術指導を目的とした会議の毎月開催

 ◎ いわゆるケアカンファレンスであり利用者のケースをみんなで話し合う会議です。

 ◎ 月に1回以上開催する必要があります。

 ◎ 上記の研修の際に、カンファレンスを同時に開催すると参加しやすいかもしれません。

 ◎ 欠席者は別に集めて同様のカンファレンスをする必要があります。

 ◎ 議事録と参加者名簿を作成し保管しておきます。

③ 非常勤職員を含めた健康診断の実施

 ◎ パートさんも含めて全員が会社の負担で健康診断を受けなければなりません。

 ◎ 年間の健康診断の実施状況がわかる書類(受診した従業員の名前がわかる書類)と法人が支払った領収書を保管しておきます。

 ◎ 扶養の方など区市町村の特定健康診査を受ける方、は診査料を法人が立て替える必要があります。その際は、その方から受領書を貰っておきましょう。

④ 看護師等の勤続年数について、3年以上の者が3割以上

 ◎ 計算方法は次の計算書を使用します。→勤続年数計算書(東京都の計算書です。加算届の様式にエクセルシートが添付されています)

 ◎ 計算の対象となった職員が、在職する(した)ことを示す書類(在職期間と職務内容がわかるもの)=労働者台帳等を保管しておく。

 ◎ 訪問看護ステーションに所属する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士も対象です。

 

以上、長くなりましたが各種加算のチェックポイントでした。

 

 

次回は最終回です。

訪問看護の実地指導でよく指摘される事項やその他の留意事項について解説します。

 

 

 

訪問看護の実地指導・検査対策 その2

前回の続きです。

3 運営に関する基準(運営基準)

運営基準は介護事業所を運営するにあたって、守らなければいけない基準を網羅していますが、

多くの項目があるのでここでは実地指導などで指導されやすいポイントに絞って解説いたします。

基準そのものはこちらをご覧ください。➡ダウンロード 訪問看護基準

ポイントを以下に列挙します。

(1)重要事項説明と同意は本人と家族それぞれ必要

(2)保険証の確認は原本で行うこと

(3)アセスメント=「心身の状況等の把握」は通知文で記入項目が指示されている

(4)訪問看護計画書・報告書についても通知文で記入項目、参考フォーマットが指示されている

(5)訪問看護計画書の目標評価は初回訪問後、1月程度で行う

(6)医師・ケアマネ・連携する介護事業所などとの連絡事項は必ず文書などでその事実が確認できるようにしておく

(7)必要な変更届を正しく届け出ている

 

各ポイントの解説

(1)重要事項説明と同意は本人と家族それぞれ必要

こちらはすでに実施されている事業所も多いでしょう。

介護サービスはケアマネージャーを中心に訪問介護や看護、福祉用具などの各種サービス事業者がチームとなってサービスを提供します。

チームは利用者のQOL向上のためにカンファレンスにより問題点や課題を話し合います。

ご存知のように在宅介護では利用者の家族がキーパーソンとなっている場合が多く、

大概の場合が介護ストレスに晒されており、それが利用者のQOL向上を阻んでいる場合も多いでしょう。

ケアチームはそうした家族の情報も含めて話し合い、課題や問題点を整理しなければなりません。

そのことはご利用者はもちろんご家族にも理解していただく必要があります。

重要事項説明書によるご家族の同意は、そうした介護サービスの在り方に同意していただくためにあります。

老々介護や認々介護など家族ぐるみでの支援が必要なのが在宅介護ですから、

その意義をしっかり理解しておくことが重要でしょう。

 

(2)保険証の確認は原本で行うこと

これは意外に見落とされている決まりです。

通常、コピーをファイルしておくことが多いですが、介護サービスの受給資格があるかどうかを、

被保険者証で確認するのは「原本」を確認する必要があります。

偽造の被保険者証である場合もありますし、コピーですといくらでも内容を改ざんできたりします。

被保険者証は介護保険サービスの要でもありますから、

保険証のコピーに「〇年〇月〇日原本確認 確認者氏名」と記入しておくと良いでしょう。

 

(3)アセスメント=「心身の状況等の把握」は通知文で記入項目が指示されている

厚生労働省から「訪問看護計画書等の記載要領等について」という通知が出ており、

これにいわゆる「基本情報」であるアセスメント=「心身の状況等の把握」の記録を

「記録書Ⅰ」として記録するよう指示されています。

内容は以下の通り。

①訪問看護の依頼目的

②初回訪問年月日

③主たる傷病名

④既往歴、現病歴

⑤療養状況

⑥介護状況

⑦緊急時の主治医・家族等の連絡先

⑧指定居宅介護支援事業所の連絡先

⑨その他関係機関との連絡事項

等とされています。

続いて、「記録書Ⅱ」としていわゆるサービス提供内容について以下の内容を記録するように指示しています。

①訪問年月日

②病状

③バイタルサイン

④実施した看護 ・リハビリテーションの内容等(精神訪問看護に係る記録書Ⅱには、訪問先、食生活・清潔・排泄・睡眠・生活リズム・部屋の整頓等、精神状態、服 薬等の状況、作業・対人関係、実施した看護内容等)必要な事項を記入する こと。

一般的に広まっている基本情報やアセスメント、記録書の様式でおおむねカバーできているとは思いますが、

貴事業所の様式を今一度チェックするとよろしいでしょう。

 

 (4)訪問看護計画書・報告書についても通知文で記入項目、参考フォーマットが指示されている

上述の通知文でこれらの様式も指示しています。

ダウンロードしてご確認ください。➡訪問看護計画書等の記載要領等について

なお、この計画書様式を必ず使用しなければならないわけではありません。

本様式の内容を網羅していれば、他の様式でも構わないと思います。

ちなみに本計画書には計画書作成者を記入する欄がありません。

計画書の作成は看護師でなければなりませんので、この様式を使う際は備考欄などに作成者の氏名を記入しておくべきでしょう(作成者が管理者でない場合)。

 

(5)訪問看護計画書の目標評価は初回訪問後、1月程度で行う

上記に示した訪問看護計画書には「評価」欄が設けられています。

この評価をどの程度の期間で行うかは以下のような解釈通知が出ています。

「訪問看護計画書の評価欄は、

① 計画において、目標、問題点、解決策をたて、

② ①の計画に基づき訪問看護を行い、

③ 訪問後に計画に対する評価を記載する。評価は今後の計画の立て方に活用する。

評価を記載するタイミングは、示していないが、概ね訪問開始後1ヶ月程度で評価を行うことが好ましいと考えられる。

 

ここで、訪問開始後1っか月程度としているのは、訪問看護を利用する方は退院直後や病状の悪化が想定されますから、

容態変動の可能性を考えてのことだと思います。

ある程度安定してくれば、3カ月から6カ月ぐらいでも良いと思いますが、

わからない場合は医師に確認すると良いでしょう。

 

(6)医師・ケアマネ・連携する介護事業所などとの連絡は必ず文書などでその事実が確認できるようにしておく

介護事業において記録は、電話対応時のメモや留守番電話のメッセージ、メールやLINEなどのSNSのメッセージも記録に含めます。

文字になった記録はすべて文書です。

実地指導では医師やケアマネとの連携をしっかりとっているかどうか確認するために、

そうした記録の提出を求められます。

文書にせずに電話だけで連絡を取っていたりすると、そうした記録が残りませんから、記録を残すように指導されます。

文書と言っても形式ばる必要はなく、利用者さんのファイルの最初にノート形式の用紙を一枚つけておき、

その都度、日付・連絡事項・記入者などをメモ書きしておけば大丈夫です。

 

(7)必要な変更届を正しく届け出ている

事業所に変更があった場合は10日以内に都道府県と厚生局事務所(医療)に変更届を提出する必要があります。

東京都の場合、変更届が必要な変更事項は以下の通りです(届け出事項は自治体により微妙に異なります)。

①事業所の名称

②事業所の所在地

③法人代表者(開設者)の氏名及び住所

④定款・寄付行為等及び登記簿謄本等  (訪問看護事業に関するものに限る。)

⑥事業所の建物の構造、専用区画等

⑦事業所の管理者の氏名及び住所

⑧運営規程(電話、ファックス番号、営業日、営業時間、従業者数、通常の事業の実施地域、利用料など)

 

なお、管理者以外の従業者の変更については、変更届の提出は不要です。

従業者の『数』に変更があった場合のみ、変更届が必要です。

(※運営規定の従業員数の記載方法を、「常勤職員〇名以上、非常勤職員〇名以上」としておけば、数の変更も必要なくなります)

加算が増えただけの利用料金の変更は加算届の提出で良く、変更届の提出は不要です。

なお、管理者の婚姻などによる氏名変更で、免許証が旧姓の場合、

氏名変更がわかる戸籍謄本等が必要になります。

 

 

変更届は忘れてしまいがちですが、運営規定以外の①~⑦については必ず提出するようにしたほうが良いと思います。

運営規定の小さな変更についてはついでの時でも良いかもしれませんが、半年に1回程度は事業所に変更点がないか確認するべきでしょう。

 

次回は算定基準です。

 

 

訪問看護の実地指導・検査対策 その1

 

訪問看護の指導検査対策について研修を依頼されましたので、準備の意味も含めて、記事にしてみたいと思います。

指導検査は実地検査とも申しますが、当ホームページでも対策の概要について紹介しています。

 

介護事業の場合、どのような事業でも基本的には都道府県と区市町村がそれぞれ検査に入ってきます。

 

それぞれの役所の検査はほぼ似たような内容ですが、それぞれ立場が異なります。

 

≪都道府県の検査≫

主に事業を指定した立場から(地域密着型・総合事業を除く)検査

➡各事業の指定基準に基づいた検査

≪区市町村の検査≫

主に介護保険の保険者の立場からの検査

➡適切な介護報酬算定管理(請求)をしているかの検査

※地域密着型や総合事業、施設事業を除く

 

すべての介護保険事業について以上のフレームは変わりません。

そして、検査は4つの基準に基づき実施されることになります。

1 人員に関する基準(人員基準)

2 設備に関する基準(設備基準)

3 運営に関する基準(運営基準)

4 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(算定基準)

以上の4つです。

 

当然、訪問看護事業所にもこのフレームにより検査が入りますが、都道府県は主に1~3について、

区市町村は4について、集中的にチェックしてきます。

これは先に述べた、それぞれの立場の違いからくるものです(指定権者と保険者)。

 

各基準におけるチェックポイント

さて、訪問看護の実地検査においてそれぞれの基準がどのようにチェックされるのか、

そのポイントと完備しておかなければならない書類等について、押さえておきましょう。

なお、ここでは病院や診療所の訪問看護ではなく、いわゆる「指定訪問看護ステーション」について、

説明することとします(定期巡回・小規模多機能に併設する訪問看護も除きます)。

1 人員に関する基準(人員基準)

人員基準のポイントは2点です。

(1) 看護職員(訪問看護員)は常勤換算で2.5人

(2) 管理者は常勤で保健師または看護師でなければならない

ここでよく問題になるのは、「常勤換算」ということです。

「常勤換算」とは訪問看護員として従事しているスタッフの稼働時間を足しあげて、

常勤職員が労働するべき時間(通常週40時間~35時間程度)で割った数字ですが、

詳しくは「常勤換算計算シート」(ダウンロード➡常勤換算計算シート 病院用ですが介護でも同じです)をご覧ください。

 

以下、人員基準で注意するべき点を上げておきます。

① 管理者は看護職員として換算できない

② 訪問看護サービスを提供していない時間は換算できない(移動時間を除く)

だとすると、小さな事業所や立ち上げたばかりの事業所で2.5人は無理ではないかと思えます。

まず、管理者の管理業務は1日1時間でもかまいません。

のこりの7時間は訪問看護員として働いていることにできます。

また、利用者が少なく実働時間を足しあげても2.5人にならない場合、

実態として訪問看護員が待機状態であり、利用者がいればいつでもサービスに入れる状態であれば、

実働時間と同じであるとみなしてよいことになっています。

しかし、待機状態になっていない場合(例えばどこかに出かけていたりしている場合)は換算できませんので注意しましょう。

ちなみに、このポイントは訪問介護の場合も同様です。

 

もしも、常勤換算で2.5人分を満たしていない場合は最悪の場合は指定取り消しの可能性もありますので、大変重要な基準です。

スタッフの勤務状態は適切に管理する必要があり、管理がずさんだと行政側が怪しみ、細かいところまで突っ込んでチェックされますので、

以下に挙げる書類は適切に完備しておく必要があります。

≪完備すべき書類≫

① スタッフ全員の免許証の写し

② スタッフ全員の出勤簿

③ 毎月の「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」 見本ダウンロード➡ 勤務形態一覧

④ 訪問シフト表

⑤ サービス提供表などのサービス提供実績がわかる書類

以下、場合によってはチェックされる書類(上の書類で怪しいところがある場合など)

① スタッフ全員の雇用契約書(労働条件通知書)

② スタッフ全員の給与明細または給与支払いを証明できる書類(銀行振り込み票など)

③ 登録スタッフの連絡先(場合によっては本人に勤務実態を確認される)

 

 

2 設備に関する基準(設備基準)

次に設備基準のポイントです。

(1) 事務室が共用の場合は、訪問看護ステーションとしての専用区画が必要

(2) 相談スペース・感染症予防の手洗い所・鍵付き書庫の完備

 

注意すべき点は以下の通り。

① 相談スペースは遮音効果のあるパーテーション(カーテンはダメ)により相談者(利用者など)の

プライバシーが適切に保護できるようになっている

② 感染症予防の手洗い所は実態として感染症予防効果が期待できる設備でなければならない

①については、個室が確保できていればOKですが、フロアーをパーテーションで区切って相談スペースとしている場合、模様替えなどによって、指定申請時と変わってしまっていることがよくあります。

東京都などでは指定申請時に写真により厳しくチェックされるポイントです。

もしも、適切でない場合は改善するように指導されます。

 

②については手洗い所が給湯スペースなどである場合、本当に感染症予防の手洗いが適切にできるかチェックされます。

また、トイレ内の手洗い所は認められない場合もあります。

手洗い場所に消毒液やペーパータオルがきちんとあるか確認しましょう。

 

設備基準に書類チェックはありません。

すべて現場の立ち入り検査によりチェックされます。

指導検査の連絡が来たら上のようなポイントをチェックし、適切でない場合は改善しておくようにします。

 

残りの基準の説明は次回行います。