実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その6

 

 

 

ご利用者ファイルの工夫

 

 ご利用者ファイルにどのように書類関係を整理すればよいのか、一つの例を示します。

 行政が見に来た時だけでなく、担当外のヘルパーなどが見てもわかりやすいようにファイリングしておくことが大事です。

 各種資料のファイリングの順番と内容及びポイントは以下の通りです。

 

 
要介護  
インデッスク 内容及びチェックポイント
1 連絡調整記録 メモなどもクリアポケットなどに逐一入れる
2 状況報告 ケアマネージャー等への状況報告
3 利用申込 FAXでもOK
4 保険証 原本確認の月日と確認者印を含む
5 アセスメント 基本情報を含む
6 ケアプラン 1表から4表 サ担録・照会文書を含む
7 契約書 緊急時の連絡先未記入に注意
8 重要事項説明書 料金改定時の別紙同意書含む
9 訪問介護計画書 要本人印
10 手順書 ヘルパーへの指示書などを含む
11 その他資料 行政への報告書や苦情関係などその他の資料
12 自費関係 自費契約書など自費関係書類
     
要支援  
インデッスク 内容
1 連絡調整記録 メモなどもクリアポケットなどに逐一入れる
2 状況報告 予防は毎月報告が必要
3 利用申込 FAXでもOK
4 保険証 原本確認の月日と確認者印を含む
5 アセスメント 基本情報を含む
6 ケアプラン 1表から4表 サ担録・照会文書を含む
7 契約書 緊急時連絡先は別に作成
8 重要事項説明書 料金改定時の同意書含む
9 訪問介護計画書 要本人印
10 手順書 ヘルパーへの指示書などを含む
11 モニタリング 定期評価を含む
12 その他資料 行政への報告書や苦情関係などその他の資料
13 自費 自費契約書など自費関係書類
  ※ 各書類は最新のものがトップに来るように
  ※ 緊急連絡表を別に作っている場合は、ファイルの最初に

 

 

 誰でも書類を適切な場所にファイリングできるように、この表を書庫などに張っておいたり、各ファイルのトップに綴じておいても良いでしょう。

書類を綴じる場所がバラバラになると、必要な書類があるのかどうか確認することが困難になってしまいます。結果、書類の整備自体が疎かになり、実地指導で指摘を受けるようになるでしょう。

 

ファイリングは日常業務の中で担当を決めてルーチン化する等、いつでも整理できる体制にしておきたいものです。

 

 

インデックスの作成

 

 ファイリングの際には、インデックスを貼っておくことが大切です。

 インデックスのおすすめは以下のようにパソコンで大量に作成印刷できるものです。

 

  コクヨ「合わせ名人」http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/awase/

 専用ソフトでラベルやインデックスを作成できる。使い方が少しわかりにくいが、慣れてくると非常に便利です。

 余裕がある時に大量に作っておくと良いでしょう。

 

 

 なお、終了したご利用者の書類はインデックスは不要であると考えます。ファイルとインデックスの張られた仕切り用紙は使いまわして、板目紙などに綴じひもで綴じておけば良いでしょう。

 

 ファイルにご利用者名をテプラなどでせっせと作っている事業所も多いかもしれませんが、テプラは結構手間がかかります。

 背表紙のご利用者名は、エクセルなどで作ったご利用者名簿の名前の部分だけを拡大印刷してカットし、「替背紙式」という背表紙に紙を差し込めるタイプのファイルの背表紙部に差し込んだ方が簡単です。

「替背紙式リングファイル」

http://www.kokuyo-st.co.jp/search/1_detail.php?sid=100117035

 

 どうしてもテプラで作りたい方は、パソコンにつながるタイプのテプラを使えば、効率的ですが、少し値段が高いです。

キングジム パソコン接続用テプラ

http://www.kingjim.co.jp/products/tepra

 

 

保存年限について

 

 介護関係書類の保存年限は規定により、

・利用者関係の資料はサービス終了後2年。

・給付関係書類は作成から5年となっています。

 

 給付関係書類が5年になっているのは、国保連などが間違えて事業者に支払ってしまった報酬の債権としての返還請求権が5年となっているためです。

 

 ご利用者の訪問計画書やアセスメントなど記録は、そのご利用者のサービスが終了してから2年間です。

 しかし、自治体によっては独自に規定を作っていて、終了後5年という自治体もありますので確認が必要です。

 最初から一律5年で保存しておいても良いかもしれません。

 

 ご利用者関係の保存ファイルは終了年ごとにまとめておきます。

 前述したように専用のファイルから外して、板目紙などに年を書いて綴りひもでまとめておけばインデックスなどは必要ないと思います。

 

 サービス提供の記録はご利用者情報の記録になります。

 従ってサービス終了後2年以上の保存が必要になるのですが、多くの事業所では月ごとや年ごとにまとめてファイリングしていることが多いと思います。

 そのため、終了したご利用者だけを抜き出して別にまとめるのは手間になりますので、しない方が良いです。

 サービス提供の記録は年月日で管理できるようにしておいた方が、請求関係の書類との突合が楽ですから、できるだけ残しておいた方が良いでしょう。

 5年ほどファイルのまま保存し、その後は年ごとにまとめておけば良いと思います。少なくとも10年程度は残しておいた方が良いかもしれません。

 

 

家族等からの開示請求

 

 亡くなったご利用者がどのような介護を受けていたかを、家族等が情報提供請求してくる場合があります。

 例えば、遺産相続などで係争している親族などが、同居家族がどのような介護をしていたか調査をしてきたりします。

 その場合、終了後2年分は必要に応じて開示する必要が出てきますので、注意が必要です。

 

 情報開示請求の手続き等については以下をご参照ください。

「福祉分野における個人情報保護に関する ガイドライン」第8 保有個人データの開示等に関する義務 P34参照

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/250329fukusi.pdf

 

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その5

 

9 サービス提供の記録(必須)

 

 事業所により任意の様式を使っていると思います。

 名称も「サービス実施記録」など様々なようですが、規定上は「サービス提供の記録」となります。

 2枚複写のものが多いと思いますが、毎回、控えを利用者に交付することは定められてはいません。規程では申し出があった場合に写しを交付すればよいとなっています。

 しかし、サービス提供の内容をご家族などに知っていただくことができるため、控えがあった方が良いとは思います。

 

 

記録の記入ミスは介護報酬返還になる場合も

 

 サービス提供の記録は、介護保険の対象となる適正なサービスを提供したことを証明し、報酬請求の根拠となる書類です。

 そのため、記録に何らかの記載漏れ等の不備がある時は、適正なサービスを提供したことが確認できなくなるため、介護報酬返還の対象となります。

 

 具体的には、ケアプランでは身体介護1生活援助1のプランであるにも関わらず、サービス提供記録には生活援助のみが記載されていたような場合、身体介護の提供記録が確認できませんので、報酬返還の可能性があります。

 

 実地指導ではこの指摘が非常に多く、パートのヘルパー等が不注意で記録ミスを繰り返しており、大きな金額を返還しなければならなくなるケースなどもあります。

 

 そのため、すべてのヘルパーには、記録の重要性について周知徹底を図るとともに、サービス提供責任者等は、訪問介護員が適正にサービス提供記録を作成していることを確認しなければならないでしょう。

 

 通常の業務の流れでは、国保連への請求業務の際(データ入力の際)にチェックするのが良いと思います。この作業時に記録内容をチェックしないと請求ミスになりますので作業するスタッフにはミスが無いようにチェックを徹底する必要があります。

 

 また、訪問するヘルパーは、ご利用者ごとに適切な提供記録の見本を確認することも必要でしょう。ご利用者宅に、正しいサービス提供記録の見本を置いておき、それを見本に記録を付けるように指導する必要があります。

 

 提供する介護サービスの内容が状況により変わる場合は、「身体介護」と「生活援助」の中ではいくら内容が変わっても良いのですが、ご利用者の状態などにより「身体介護」や「生活援助」そのものが無くなってしまったり、プランには無いサービスを緊急に提供しなければならない場合は、必ずサービス提供責任者などに連絡し、指示を仰ぐようにヘルパーに徹底しておく必要があります。

 現場のヘルパーが自己判断でサービス内容を勝手に変えることが無いようにしなければなりません。

 

 

「利用者の心身の状況」の記録について

 

 記録すべき事項は以下の通りです。

 

①訪問介護の提供日及び提供時間

②利用者名及び訪問介護員名

③身体介護・生活援助・通院等乗降介助の別

④提供した具体的な身体介護サービス及び生活援助サービスの内容

⑤利用者の心身の状況

 

 市販の「サービス実施記録」等には「⑤利用者の心身の状況」を記入する欄が無いものがあります。

 バイタルの記録はあるのですが、「心」の記録を書く部分がありません。

 これを記入できる部分としては、様式によって様々ですが「特記事項」「観察内容」「ご利用者の言葉」などといった欄であると思います。

 

 通常はこの欄に「利用者の心身の状況」を記入すべきなのですが、ヘルパーがしっかり理解していないため、「特に変化なし」などと書いてしまい、実地指導などで指摘されるケースが多いです。

 

 「⑤利用者の心身の状況」は必ず毎回記録しなければならない事項です。

 「身」の部分はバイタル記録で良いとして「心」の部分は必ず何か書かなければなりません。

 ここの記録の仕方は行政なども良く指導しているようですが、決して「変化なし」などとは書かず、ご利用者の様子を書くようにしましょう。

 

 状態が安定されているご利用者の場合、記録の仕方はある程度パターン化されてもいかし方が無いと思います。たとえば以下のようなパターンを使いまわすしかない場合もありますが、記録としては成立します。

 

「穏やかに過ごされています」

「痛みや苦痛の訴えはありませんでした」

「時々不安を訴えていらっしゃいます」

「元気で過ごされています」

「不調の訴えはありませんでした」

「口数は少ないですが安定していらっしゃいます」

 

 などなどです。

 

 毎回同じになってしまいますが、変化がない場合でも、上記のようなパターンを繰り返し記入しておくしかないと思います。

 行政は「変化なし」は記録していないのと同等とみなします。

 

 

利用者の確認印

 

  運営基準上、必ず、利用者からの確認の押印を受けなければならないという定めはありません。しかし、多くの様式には確認印の欄がありますので、印欄がある場合は押印したほうが無難でしょう。

 

 様式を選ぶ場合は、上述した記録事項をすべて満たし、無駄に印鑑欄が無い様式を選ぶ方が、業務は効率的だと思います。

 

 

 

 次回はファイリングの工夫や保存年限について述べます。

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その4

 

 

 

 今回はケアプラン関係についてご説明します

 

7 ケアプラン(必須)

 

 ケアプランが無い場合は原則サービス提供できません。最新のものを必ず備えておくようにしましょう。

 ただ、ケアマネージャーによりケアプラン更新の際に作成が遅れたりする場合がありますから、注意が必要です。

 しっかりしたケアマネージャーであれば心配ないのですが、少しルーズなケアマネさんがいる場合は、マークしておいて認定期限が切れたら催促したほうが無難であると思います。

 

 

サービス担当者会議の要点(4表)について

 

 いわゆるサ担録はケアマネージャーが作成するものですが、サービス事業所に配布してくれない場合も多いようです。

 ケアプラン自体もそうですが4表をサービス事業所に配布する義務がケアマネに無いため、そのようになってしまいます。

 そうすると、事業所としてはサービス担当者会議に出席した証明が必要になります。

 欠席時は「サービス担当者会議の照会」を控えておけば良いのですが、出席した場合は、会議の日時、場所、出席者、話し合った内容やポイントをメモでも良いから保管しておくようにしましょう。

 

 問題は、認定更新があったのにも関わらず、サービス内容に変更がないためサ担が開かれない場合です。

 ケアマネの怠慢ですが、サービス事業所にとっては困った問題です。開くように要請するのも憚れたりします。

 そういう場合は電話でも良いですから「サービス内容に変更が無い」かだけはケアマネに確認します。そしてその日時と内容をメモしておき保管します。そのように防衛してください。

 

 

サービス内容に変更があった場合

 

 この場合も、変更したケアプランを配布してくれない場合があります。

 軽微な変更の場合はそうなります。しかし、場合によってはケアプランに無いサービスを提供しなければならなくなるケースがあり、特に生活援助が新たに加わったりすると、問題が大きくなります。

 ケアプランに無い生活援助は不正性請求になってしまう可能性が高く、実地指導などで返還命令が出たりしますので注意が必要です。算定額が変わる場合は何とかお願いしてケアプランを修正してもらいましょう。

 しかし、サ担を開くのが面倒で変更してくれないようなケースもあるようです。その場合は、またメモの登場です。

 ケアマネに変更を指示されたこと、変更したケアプランを配布されなかったこと。日時、対応者などをメモして控えておいてください。

 

 

8 連絡調整記録(必須)について

 

 介護保険法ではサービス事業者は「居宅介護支援事業者・介護 予防支援事業者に対する情報の提供及び保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携」が義務付けられています。

 これを実現しているかどうかを確認するための証拠書類については、ケアマネへの毎月のルーチンの報告書や「連絡調整記録」のようなものが必要になります。

 

 通常の訪問介護事業所は、ケアマネとは電話等で必要に応じて連絡調整をしているでしょう。また、必要に応じて訪問看護や地域の他のサービス主体とも連絡調整しているかもしれません。

 そうしたものを記録しておくのが「連絡調整記録」になります。もちろん上述してきた「メモ」もこの記録に該当します。

 

 タイトルは「連絡調整記録」でも「連絡調整メモ」でも単なる「メモ」でかまいませんが、形式としてはケアマネの「支援経過」に似た様式が良いでしょう。

 日々の電話や直接対面による連絡調整の内容について、メモできるようになっていればOKです。特にパソコンなどで記入する必要は無く、手書きでも大丈夫です。業務負担軽減のためにサッと記録できるように手書きの方がお勧めです。必要な記入事項は以下の通りです。

 

「連絡調整記録」必要事項

 

1 日時

2 相手(連絡調整の相手、ケアマネや家族など)

3 手段(電話や面談など)

4 連絡調整内容

5 対応者(誰が対応したか)

 

 これらをご利用者別にエクセルの表などで作成し、一つにファイリングしておきます。事業所の誰でも記入できるように、わかりやすい場所に置いておくと良いでしょう。

 その後利用者の1枚の表が一杯になったら、それを該当するご利用者ファイルの方に移して置き、新しい表と差し替えます。

 実地指導などで連絡調整の記録を求められたらこれを見せればOKです。上述したメモもこれに書いておけば大丈夫でしょう。

 そのご利用者にかかわる電話等の連絡調整内容はできるだけこれに記入するようにしましょう。そうすることで、サービスの質の実態が浮かび上がってきますので、役所が見に来ても「よくやっているな」と評価してもらえると思います。

 

次回は「サービス提供の記録」や利用者別のファイリングのやり方についてご説明します。

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その2

 

 

 前回の続きです。

 

4 被保険者証と負担割合証は原本確認(必須)

 

 介護保険のサービスを受けるには被保険者証と負担割合証をサービス事業者に提示する必要があります。これは原本を見せる必要があり、サービス事業者も原本で保険証と負担割合証を確認する必要があります。

 

 この原本を確認した証拠として、コピーなどの写しを保存しておきますが、その際、その写しに「○月〇日 原本確認 確認者氏名」と記載すると良いでしょう。

 日付はサービス提供日前が好ましいですが、多少ずれていてもしようがないでしょう。

 

 コピーなどをいつとるかですが、大事なものなので勝手に預かってコンビニなどでコピーしてくるのも少し憚れます。一番良いのは、スマホなどで写真を撮り、事業所に戻ってプリントアウトする方法でしょう。

 写真を撮った日付などが入るようにしておけばより良いかもしれません。サービス担当者会議や初回サービス時にしっかりと確認するのがベターであると思います。

 

 また生活保護の方の介護券ですが、これをご利用者ファイルにファイリングすると量が多くなり一杯になってしまいます。介護券は年度ごとに専用ファイルにファイルしておく方が扱いは楽だと思います。

 介護保険の実地指導の場合、生活保護の介護券を詳しくチェックすることはあまりありませんから、別ファイルでも大丈夫です。ただし、保存年限は同様にサービス終了後2年ですので、ご留意ください。

 

 

5 訪問介護計画書(必須)

 

 最近では介護ソフトなどで訪問介護計画書を作成することができます。しかし、フォーマットが気に入らなかったり、自治体から推奨するフォーマットが出ていたりするとなかなか使いにくいものです。

 

 訪問介護計画書に決まった様式はありませんが、必ず記載していなければならない項目があります。それらが揃っていればどんなフォーマットのものを使っても原則構いません。

 必須項目は以下の通りです。

 

① 計画書の作成者の氏名、作成年月日

 作成年月日は必ずもとになるケアプランの作成日より後か同日でなければなりません。

② 利用者情報等(氏名、性別、生年月日、要介護認定日、要介護度等)

③ 生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

 ケアプランの2表にあるニーズです。訪問介護を利用する理由に該当するところのニーズを転記します。ただし、ケアマネージャーの力量によってあまり適切でない表現もありますので、その場合は実態に合わせて少し改変しても構わないかもしれません。

④ 援助目標(長期目標、短期目標)

 こちらもケアプランの該当部分を転記しましょう。

⑤ 長期目標、短期目標の期間

⑥ ご本人及びご家族の意向・希望

⑦ 具体的援助内容

 以下の記載内容がコンパクトにまとめてあるフォーマットだと使いやすいかもしれません。

 1) 「サービス1」「サービス2」

 援助内容の違い、曜日・時間等の違いによって、「サービス1」「サービス2」などと区

分して記載します。

 2) サービス区分

 これについては厚生労働省から「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」という通知が出ており、この項目に合わせて記載することが求められています。

 この文書は訪問介護サービスの種類や段取りを整理したもので、排泄や入浴介助などの手順を詳しく列挙していますので、訪問介護サービスのマニュアルとしても機能します。

 後ほど説明する手順書の素になるものですので、訪問介護事業者は必携の文書です。

 

訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について

 

 3) サービス内容

 サービス区分に応じたサービス内容を具体的に記載します。例えば、区分が「排泄介助」である時は、内容として、「トイレ利用」、「ポータブルトイレ利用」、「おむつ交換」などの具体的な内容を記載します。

 また、サービスの提供方法もあわせて記載できれば、利用者にとってわかりやすいものになるでしょう。

 4) 所要時間

 サービス内容に記載したサービスを提供する時間です。

 5)留意事項

 各サービス提供に当たり留意することを記載します。

 6)サービス提供曜日

 7)サービス提供時間

 8)算定単位

 「身体1」「生活2」「身体2生活1」など

⑨週間予定表

 「⑦ 具体的援助内容」で週間の予定がわかればこれは必要ありません。

⑩ 説明者・説明日

 計画書の内容を説明した担当者の署名と年月日を手書きで記載します。様式としては空欄にしておけばOKです。

⑫ 利用者又は家族の同意欄

 利用者又は家族が計画内容を確認し同意をした旨の署名欄です。本人の署名捺印が有れば家族のものは必要ありません。

⑬ 事業所情報(事業所名、管理者名、住所、電話など) 

 

 堺市が作成した「訪問介護計画書作成の手引き」がありますので参考にしてください。

訪問介護計画書の作成の手引き

 

 

介護保険で提供できないサービスについて

 

 これは必須ではありませんし、重要事項説明書に記載するものですが、念のために訪問介護計画書の裏などに記載し、利用者や家族に確認してもらうのも良いかもしれません。

 

以下の援助は介護保険の生活援助では提供できませんのでご了承ください

(平成12年11月16日 老振第76号 厚生労働省通知)

 

1.「直接本人の援助」に該当しない行為

  主として家族の利便に供する行為又は家族が行うことが適当であると判断される行為

   ・利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し

   ・主として利用者が使用する居室等以外の掃除

   ・来客の応接(お茶、食事の手配等)

   ・自家用車の洗車・清掃 等

 2.「日常生活の援助」に該当しない行為

  [1]訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為

   ・草むしり ・花木の水やり ・犬の散歩等ペットの世話 等

  [2]日常的に行われる家事の範囲を超える行為

   ・家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え

   ・大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ

   ・室内外家屋の修理、ペンキ塗り

   ・植木の剪定等の園芸 ・正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理 等

 

次回はモニタリングや手順書などについて説明します。

 

 

実地指導が来る前に 訪問介護業務の流れを整理する その1

 

 

 お客様からのお問い合わせが多いのでコンプライアンスを踏まえたうえで、実地指導などで指摘を受けないような、訪問介護事業所の業務の流れを整理したいと思います。

 

 

無駄な業務を減らす

 

 運営基準上、必ずやらなければならないことと、必ずしもやらなくてよいことがあります。またどの程度やるのか、頻度や詳しさなども業務によっては様々であり、わかりにくい部分でもあります。

 

 そんなに一生懸命にやらなくても良い業務に時間を割いてしまって、本来やらなければならない業務が疎かになっているケースも見受けられます。

 

 この仕事はどの程度しっかりやらなければならないのか、その辺のポイントがわかりにくいという声もありますので、そのあたりを整理してできるだけ無駄な業務を減らせるようにしたいと思います。

 

 なお、各種書類のひな型はネットに沢山ありますので、これから述べるポイントを踏まえて使いやすい物を探してください。

 

 

新規ご利用者の受け入れ

 

 新規受け入れの際に必ず行うべきことと、必要な書類を整理して説明します。

 

1 サービス申込書(必須)

 サービスの申し込みは原則、本人が事業所に申し込まなければなりません。利用者にはサービス業者の選択権があります。これは介護保険法の理念の一つであり、非常に重要な要素です。

 申込書は利用者が自らの意思でサービス事業者を選択した証の一つですので、ファックスでも良いですからしっかり貰っておきましょう。

 もし、事業所で使っている申込書の「申込者欄」がケアマネージャー名になっているようでしたら「ご利用者名」に修正してください。申込者はあくまで利用者であり、ケアマネージャーが勝手に申し込んではいけないものです。

 なお、申込書に基本情報をしっかり記入してもらえば、アセスメント情報の収集に役立ちます。

 

 

2 契約書・重要事項説明書(必須)

 

 介護保険制度の重要な二つの理念を具体化している書類ですので、とても重要です。

 

 ① 利用者は契約によりサービスを利用する

 ② サービス事業者は利用者にサービス内容を説明し、同意を得てサービスを提供する

 

 それぞれの内容についてはここでは詳しく説明しませんが、自治体によってローカルルールがある場合があります。また、都道府県が基本フォーマットを提供している場合も多いので、事業地の様式を使うようにしましょう。

 場合によっては、区市町村の担当者に内容を確認してもらっても良いかもしれません。

 

 注意点として、古い様式を使っている場合、法令の改正などによって内容が不適切になっている契約書や重要説明書があります。そのため時々内容を更新しておく必要があります。

 

 基本的には介護保険法が改正する際に内容を更新するようにしましょう。報酬改定や新しいサービスの追加があったりしますので、原則3年ごとに見直す必要があります。

 3年以上同じフォーマットを使っている場合は一度内容をチェックした方が良いでしょう。

 

 なお、個人情報の利用に関する同意は本人と家族の両方から取らなければなりません。時々、本人からしかとっていない場合があります。

 

 

3 アセスメント(必須)

 

 運営基準上サービス事業者は、利用者の「心身の状況」を把握してサービス提供をしなければならないことになっています。

 つまり、ADLなどの状況をアセスメントしろということです。

 

 しかしながら、サービス提供開始時にアセスメントをするのが難しい場合があります。

 介護保険制度では各介護サービスがアセスメントしなければなりませんから、利用者が介護保険サービスを利用しようとした時、各事業者からアセスメント攻めに会ってしまうことがあります。

 

 かといってケアマネージャーが行ったアセスメントを貰う訳にもいきません。なかには参考に自分の行ったアセスメント情報を提供してくれるケアマネージャーもいますが、それでも事業者が独自にアセスメントをすることは必須になります。

 

 

アセスメントはいつやるのか

 

 アセスメントのタイミングとしては、サービス提供担当者会議の際ではなく、サービス調整や初回訪問の時が良いでしょう。

 

 サービス調整の際には、ケアプランに書かれたサービス内容を居宅において具体的に確認していきます。その際にADLやIADLの確認は必ず行いますので、メモなどでそれを把握しておきます。

 サービス開始時は契約や重要事項の説明などやらなくてはならないことが沢山あります。

 また、外部の人たちがたくさん利用者の家に来ますので、本人や家族もストレスを感じて疲れている場合が多いです。ここでアセスメントによる質問攻めは憚られるものでしょう。

 

 従って、利用者の前でアセスメントシートにチェックするようなことは避け、事務所に戻ってアセスメントシートに記載していくやり方が良いと思います。

 

 

アセスメントシートはすべて埋める必要は無い

 

 アセスメントシートにはアセスメントを行った日を記載しますが、必ずしもその日にすべての情報を把握くしなければならない訳ではありません。

 また、アセスメントシートをすべて埋める必要もありません。利用者によっては必要無い情報もあります。例えば、家族構成図や居宅内の図面なども必要に応じて作成すれば良く、必ず作らなければならに項目ではありません。

 

 最低限アセスメントで必要な情報は以下の情報です。

 

 ①アセスメント実施年月日(最初に状況把握を始めた日)

 ②アセスメント実施者(サ責)

 ③基本情報(氏名・年齢・要介護度など)

 ④ADL

 ⑤IADL

 ⑥疾病関係情報

 ⑦本人や家族の意向

 

 

 アセスメントシートは上記の内容が記載できればどんなものでもOKです。

 以下は日本介護福祉士会のものです。集めなければならない情報が沢山ありますが、これらすべてを揃えなければいけない訳ではありませんのでご留意ください。

 http://www.jaccw.or.jp/katsudo_reports/yoshiki.php

 

 

次回は被保険者証や計画書などをご説明します。

 

 

訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方 その2

 

会議の進め方についてです。

 

会議は時間を決めて進行

 

 さて、会議は運営要項に従い開催しますが、概ね1時間程度を目標に簡潔に行う必要があるでしょう。

 利用者数が少なければ、あまり問題がありませんが、扱う利用者数が多い場合はあらかじめ情報を整理して、簡潔に情報伝達し、要点を絞って話し合いを行わないと時間がオーバーしてします。これは、参加スタッフへの負担になり、会議に対する不満となって溜まります。

 司会者は1時間で終了するよう、時間配分に注意して議事進行する必要があります。もしも、時間をかけて議論しなければならないようなケースがある場合は、直接の担当者同士で話し合ってもらい、後ほど報告してもらうような形にする方が良いと思います。

 サービス提供責任者は日ごろより訪問スタッフから担当利用者の情報を受けています。基本的にはそうした情報のうち、他のスタッフが共有したほうが良い情報をピックアップし、会議で伝達すれば良いと思います。

 

 

作成するべき書類について

 

 会議の開催に当たって作成するべき書類について説明します。

 会議を開催していてもそれを証明する書類が整っていなければ実地指導などで指摘されますので、面倒ですが毎月の分を整えておくことが必要です。

 

【実地指導でチェックされる書類】

(1)「会議日程表」

  当然ですが、毎年度作る必要があります。

(2)「会議次第」又は「会議議事録」

  「会議次第」は開催日時・場所とともに、会議で扱う事項を順番に列挙したものです。

 必ずしも作成する必要は無いのですが、会議進行を効率的に行う上で、事前に作って会議ではそれに従って時間配分し、進めたほうが時間の節約になります。

 「会議議事録」は実際の情報伝達内容や話し合われた事項を筆記した記録です。

 発言を一字一句記録せず、要約でOKです。誰かが読んでどんなことが話し合われたのか概ね分かれば良いと思います。

(3)「利用者に関する情報を伝達した文書(会議資料等)」

  ケアプランや訪問介護計画書、アセスメントシートなど会議に使った資料がありましたら、他の書類と一緒に保管しておきます。

(4)「会議出席者名簿」等

 これは議事録と一体化していてもOKです。

 また、全員出席が基本ですので、欠席者だけを記録しておいても良いです。欠席者がいる場合は、その欠席者にどのように情報を伝達したかを記録に残します。具体的には、

「欠席者には、会議次第、議事録、資料を配布の上、ポイントを説明」などと記録しておけば良いでしょう

 

 

欠席者の対応について

 

 会議に欠席した人には上述のように会議次第、議事録、資料を配布の上、ポイントを説明しておけば良いと思います。

 しかし、研修の方は補講を行う必要があります。別日に欠席者だけを集めて補習を実施します。その際、補講を実施したことを以下のように記録で残します。

【補講の記録】の内容

 (1)研修内容

 (2)補講実施日時、場所

 (3)補講受講者

 (4)補講実施者

 

 

 社内研修会の内容は介護福祉士の試験科目で良い

 

 ついでに、個別研修についても説明します。

  時々、どんな研修をやればよいかというご相談を受けますが、基本的には介護福祉士の試験科目から、スタッフの目標に合わせてピックアップすればよいと考えます。

 「認知症」や「移動・移乗」「排せつ」「入浴介助」などは毎年行うような研修になると思います。

 研修科目が毎年同じになっても構いません。介護技術や知識は毎年、新しい考え方や制度改正などがありますので、同じ科目でも学ぶ内容は微妙に変わってきます。

 さらに、興味があればユマニチュードなど新しい介護技術も取り入れれば良いと考えます。

 

 

社内研修会=処遇改善加算の「資質向上のための研修」

 

 この毎月の研修会は、処遇改善加算の「資質向上のための研修」と同一のものとして実施できます。

 つまり、処遇改善加算が算定できる事業所は、介護福祉士や実務者研修修了者の人数だけ確保できれば、特定事業所加算Ⅱが取得できるということです。

 処遇改善加算が算定している事業所であれば、結局、特定事業所加算を取得するハードルは「会議」の開催だけになってきます。この記事に倣っで研修会と会議を一体的に開催すれば、このハードルをクリアできますので、まだ特定事業所加算を取得していない場合は、ご検討ください。

 

 

もし併設の居宅支援事業所が特定事業所加算を取得している場合は会議は合同開催にすると良い

 

 居宅支援事業所を併設していて、その事業所が居宅の特定事業所加算を算定しているのであれば、月1回の会議を合同で開催することをお勧めします。

 居宅支援事業所の会議は毎週開催しなければなりませんが、月1回は訪問介護事業所と合同で開催します。これにより、よりきめ細かく質の高いサービス提供が可能になります。

 具体的にはケアマネと訪問介護スタッフが一堂に会し、ケアプランが更新・変更になる利用者の情報を交換します。ケアマネの方から毎月の更新者の変更情報などを伝えてもらえれば、事前の情報伝達の時間が省けますし、サービス担当者会議も効率的に行えます。

 居宅と訪問が同じ事務所内で仕事をしている場合、ケアマネとサ責は日ごろから利用者情報の交換をしていると思います。そうした内容をまとめて、他のスタッフに伝達すれば良いだけです。特に難しいことを話し合う必要はありません。

 

以上この回終わり。

 

 

 

訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方 その1

 

 訪問介護の特定事業所加算は、質の高いサービスを提供する事業所に対してインセンティブとして支給される加算と考えて良いでしょう。

 特定事業所加算Ⅱでも10%加算(Ⅰは20%)できますので、単純に事業所の収益を10%増収できます。クオリティーの高いサービスを提供し他と差別化ていくためにも、加算取得を目指した方が良いと筆者は考えています。

 

 しかし、いざ加算を取得しようと思っても、各種要件をどのように整備していけばわからない方も多いでしょう。特に「訪問介護員等の技術指導を目的とした会議」とはどんな会議?研修と何が違うの?という疑問が湧くのではないでしょうか。

 

 

特定事業所加算のスタッフ会議で何をやれば良いのか

 

 国の指針でこの会議では

 

 「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達又は当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等の技術指導を目的とした会議(サービス提供責任者が主宰し、登録ヘルパーも含めて、当該事業所においてサービス提供に当たる訪問介護員等のすべてが参加)を概ね 1 月に 1 回以上開催し、その概要を記録しなければならない。(グループ別開催も可)」

 

となっています。

 

 そして、実地指導などでは、このかいご会議の開催を証明する。

 

「会議日程表」「会議次第」「会議議事録」「利用者に関する情報を伝達した文書(会議資料等)」「会議出席者名簿」等会議の実態が分かる書類

 

 が必要とななります。

 

 

 整理してみますと、この会議では、

 

(1)利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達

もしくは

(2)指定訪問介護事業所の訪問介護員等の技術指導

 

を、行えばよいわけです。

 

(1)か(2)のどちらかで良く、両方やる必要はないようです。

 

 

スタッフ研修と同時に開催すると効率的

 

 (2)の要件は、どちらかというと「社内研修会」です。この研修は特定事業所加算のスタッフ個別に目標を設定した研修と違いがあるのでしょうか?

 この点について国は特に指針を示していませんので、「個別の目標を設定した研修」をこれによって行うことは可能です。

 

 筆者は、お世話させていただいている訪問介護事業所に、月に1回「会議」+「社内研修」を行う日を設定してくださいと提案しています。

 

 非常勤スタッフも含め全員の研修目標を年度当初に作成し、年間の社内研修の中でそうした目標をクリアできるように計画を作成し実施すれば、個別研修計画の要件はクリアします。特別にお金を出して外部研修を受けても良いのですが、社内研修だけでもこの要件は十分クリアするのです。

 

 つまり、「技術指導会議」は「社内研修会」読み替えて良いということです。

 

 

 

「運営要項」を作る

 

 この会議+研修会の運営を効率的に行うには、「運営要項」作成するのが良い方法であると思います。

 

 以下に例を示します。

 

 

〇〇訪問介護ステーション スタッフ会議及び社内研修会運営要項

 

1 目的

 本「スタッフ会議及び社内研修会」は、以下の目的で開催する。

 (1)利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達

 (2)訪問介護員等の介護技術・知識の研鑽

 

2 開催者(会議司会者)

 サービス提供責任者の主宰で開催する

 ※小規模な事業所でしたら事業所で一体的に開催すればよいでしょう。規模の大きな事業所でしたら、サービス提供責任者ごとに開催することも考えられますが、スタッフが重複する場合は非効率です。利用者100名程度までであれば、一体的開催でまかなえると考えます。

 

3 開催日時

 別紙「スタッフ会議及び社内研修会年間開催日程」のとおり

 ※「毎月第〇、△曜日」などと決めておくと良いでしょう。会議と研修で2時間程度が目安であると考えます。

 

4 開催場所

 ○○訪問介護ステーション会議室

 ※適当な会議室が無い場合、区市町村の生涯学習センターや公民館でしたら、安価で会議室を確保できます。

 

5 会議の内容

 「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達」については以下の内容を伝達・話し合う

  ① 前回会議からの持ち越し事項の確認 

  ② 当月、ケアプランの更新・変更を行う予定の利用者について(アセスメント・モニタリング情報)

  ③ 前月、ケアプランの更新・変更を行った利用者について(アセスメント・モニタリング情報)

  ④ 上記以外、サービス変更がある利用者について

  ⑤ 困難ケース等の対応について

  ⑥ 利用者からの苦情及び改善方策・ひやりはっと報告

  ⑦ 制度改正、行政からの連絡事項、感染症情報など 

  ⑧ その他必要な事項(新規営業先の情報・新スタッフ紹介など)

 

6 社内研修会の内容

 訪問介護員等の介護技術・知識の研鑽

 研修会の内容は別途「〇〇訪問介護ステーション スタッフ研修計画表」により実施する。

 ※別途年間計画表を作成します。この研修計画は、加算の要件である「個別研修計画」と一体的です。

個別研修計画の例

 

7 欠席者の扱い

 本「スタッフ会議及び社内研修会」に欠席したものについては、別途担当のサービス提供責任者より、会議内容の伝達及び研修補講を受けなければならない。

 

8 その他

 必要な場合は残業手当を支給

 

次回は実際の運営方法や記録の残し方についてご説明します。

 

 

 

訪問介護で特定事業所加算を算定している場合、実地指導チェックされる書類について

特定事業所加算の根拠となる書類・記録について

 

【根拠となる記録・書類】

(1)体制要件

①「年間研修計画」「個別研修計画」「研修報告書・出欠簿(研修参加を確認できるもの)」「補講実施報告書」等、職場内研修の実態が分かる書類

  • 注意点:

事業所の研修体制及び、訪問介護員(非常勤を含むすべての訪問介護員)ごとの研修計画、当該研修計画に基づく研修の実施状況(又は実施予定)が確認できる書類です。例えば以下のような計画書が必要です。

例:個別研修計画

訪問介護員ごとの研修計画は、当該訪問介護員と管理者やサービス提供責任者が共通認識を持って作成すると良いでしょう。その人の具体的な課題を克服するような内容で計画にします。例のように、社内研修を月に1回、定期的に開催し、個別の研修計画と連携させます。例では個別の目標に対して年間計画で、本人が該当する研修の担当となり、自ら知識を深め、技術を磨くようになっています。なお、その際、勤務の都合等で出席できなかった職員の補講状況についても確認できることが必要です。

 

②ケアカンファレンス=ケース検討会議の「会議日程表」「会議次第」「会議議事録」「利用者に関する情報を伝達した文書(会議資料等)」「会議出席者名簿」等会議の実態が分かる書類

  • 注意点:

利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達、又は当該訪問介護事業所における訪問介護員等の技術指導を目的とした会議が定期的に開催されていることが、確認できる書類になります。

毎月の研修の際に同時に開催すると良いと考えます。具体的には毎月ケアプランの更新者を中心に心身状況の確認、目標達成状況、サービス内容の変更などの確認を行うと良いでしょう。また、その際にヒヤリハット報告や困難事例検討会なども併せて開催し、その資料や記録を保管しておきます。

朝礼、夕礼で情報伝達などを行っている場合は、その内容を簡潔にノートなどに記録しておくと良いでしょう。

 

③「サービス手順書(指示書)」「サービス提供記録」「業務報告(日報)」など

  • 注意点:

サービス提供責任者が、当該利用者を担当する訪問介護員等に対し、当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を、文書等の確実な方法により伝達してから開始するとともに、サービス提供終了後、担当する訪問介護員等から適宜報告を受けていることを、確認できる書類です。

サービス提供責任者が作成したサービス手順書には担当する訪問介護員の確認サインや押印があると良いでしょう。業務報告(日報)はサービス提供責任者ごとにノートにしても良いですし、メールでも構いませんが、サービス提供責任者ごと又は利用者ごとに印刷し、ファイルしておくことが大切です。

訪問介護員にその日の業務内容について記載してもらう際、以下の事項について変化があった場合は必ず記載するように留意してもらいます(「前回のサービス提供時の状況」を除く)。こうした報告は複数回訪問する場合でも、1日1回取りまとめて記録して構いません。

☆利用者のADLや意欲

☆利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望

☆家族を含む環境

☆前回のサービス提供時の状況

☆その他サービス提供に当たって必要な事項

いずれにしても、ご利用者の変化など、職員同士が情報伝達を行う場合は、必ず文書(fax・メール可)により行い、それらをサービス提供責任者が確認した旨の記録(サインなど)をした上で、保存整理しておく必要があります。

※ご利用者に変化があった場合の報告文書例

担当訪問介護員 → 担当サービス提供責任者

報告事例_01

 

④非常勤を含む全ての訪問介護員が「健康診断を実施したことがわかる書類・記録」(予定の場合は計画書等)

  • 注意点:

具体的には受診医療機関から発行される健康診断受診者の名簿や受診表(所属するすべての訪問介護員が受診していることを確認できる内容であること)と医療機関への受診料を当該事業者が支払ったことが認められる領収書などです。年一回するたびに毎年保管します。

 

⑤「緊急時等における対応方法」が明示された書類

こちらは通常、重要事項説明書に明記されていると考えます。

 

(2)人材要件

①「職員の履歴書」「労働契約書又は労働条件通知書」「賃金台帳」「出勤簿」「労働者(職員)台帳」等職員の実態が把握できる書類

  • 注意点:

非常勤を含むすべての訪問介護員についてそろえておくことが必要です。これらは会社役員の場合でもサービス提供を行っている人の分はそろえる必要があります。社長でも管理者などを兼務する場合は、最低、出勤記録は必要です。

 

②すべての訪問介護員の「取得資格証(写)」

  • 注意点:

職員が上位資格を取得した場合は速やかに実物の資格証等で確認し、写しを保管します。写しには管理者等原本を確認した人のサインや印と日付を記入しておくとなお良いです。

 

③「サービス提供責任者の実務経歴書」等

  • 注意点:

当該事業所での実務経歴は資格証や労働契約書等の日付などにより確認できますが、他事業所からの転職者は実務経歴証明書を前職場から発行してもらう必要があります。

 

(3)重度要介護者等対応要件

①全利用者の「介護保険証(写)」(算定期間を通じて)

 介護保険証の写しには原本を確認した日付と確認者のサイン等があると良いでしょう。

 

②「認知症該当利用者の主治医意見書(写)」

 日常生活自立度のランクを確認します。ケアマネから頂く必要があるかもしれません。

 

③「利用者名簿と要介護度分布のわかる集計表」(月毎)

 月毎に整備しておく必要があります。基準を下回る月があった場合は、算定できません。また、届け出が必要になります。

 

④たんの吸引等の業務を行うための登録証(該当事業所のみ)

 

【特定事業所加算(Ⅰ)の場合】

上記書類のすべてを整備しておく必要があります。

【特定事業所加算(Ⅱ)の場合】

上記書類の(1)(2)を整備しておく必要があります。

【特定事業所加算(Ⅲ)の場合】

上記書類の(1)(3)を整備しておく必要があります。

 

【本加算の意義】

 特定事業所加算は質の高いサービスを提供していることにより、クオリティーの高い事業所を差別化するための加算と考えて良いでしょう。しかしながら利用者の負担も高くなりますから、この加算を取ったとしても利用者増につながらない場合があるのが玉に傷です。算定している場合実地指導では必ずチェックされます。

 

 

実地指導でチェックされる訪問介護の加算について

今回は訪問介護の実地指導などでチェックされる各種加算について、整備しておきたい書類などを中心にご説明したいと思います。

 

必要な書類は事項ごと、利用者ごとにファイルし、日頃から整理しておくと良いでしょう。

介護報酬の加算は算定していても実地指導等で認められなければ、介護報酬の返還になる場合もあります。つまり、加算申請を受理されたからといって、その実態に即した客観的な記録が無ければ、加算は認められないということです。

 

まず訪問介護事業所、整備すべき必須書類・記録は以下の通りです。これらは原則としてかならずチェックされます(必須書類)。

①訪問介護計画書

②介護給付費請求書

③介護給付費明細書

④サービス提供票、別表

⑤サービス提供証明書(発行している場合)

 

続いてQ&A形式で加算ごとに必要な書類についてご説明します。書類の名称については主に一般的な名称を使用しています。

 

Q1:初回加算の根拠となる書類・記録について

A1:

【根拠となる記録・書類】

①「ケアプラン」(当該「訪問介護計画書」にかかわる)

留意点:ケアプランに基づきサービス提供責任者により訪問介護計画書が適切に作成されている必要があります。初回加算を算定している場合は必ず新しい訪問介護計画書が作成されなければなりません。不適切な場合は初回加算が認められないことも考えられます。

②「サービス提供の記録」

留意点:サービス提供責任者が訪問した日時とアセスメント等、状況の把握を行った記録になります。訪問日時や時間は訪問介護サービスの提供時間と同じである必要はありません。

③「利用者の支援経過などサービス導入経緯に関する記録」(同一利用者に初回加算を複数回算定した場合)

留意点:本利用者が新規の利用、過去2か月に当該訪問介護事業所から訪問介護サービスを提供されていないこと、又は、要支援からの要介護への変更など、初回加算の要件を満たしていることが確認できる記録です。再利用の場合、例えば「○月○日~△月△日まで入院によりサービス停止」など、支援経過が記入されていることが必要です。

なお、過去2か月とは月体位の計算であり、例えば、4月20日に訪問介護を開始した場合、同年の2月1日以降に当該事業所からサービス提供を受けていない必要があります。

【本加算の意義】

新しいご利用者に「訪問介護計画書」を作成するための、業務負担に対して支払われる報酬と考えて良いでしょう。なお、前提として料金表や重要事項説明書により加算の説明がされている必要があります。これは他の加算についても同様です。また、初回加算は算定することができる場合は公平性の観点から必ず加算するようにしなければなりません。

 

Q2:処遇改善加算の根拠となる書類・記録について

A2:

処遇改善加算については新たなⅠが設定され、訪問介護では8.6%という高い加算が設定されるようになりました。これは介護における訪問介護の重要性を鑑みての設定であると思います。以下はこの処遇改善Ⅰを算定する場合のケースです。

【根拠となる記録・書類】

以下は算定期間を通じて整備しておく必要があります。

①「介護職員処遇改善計画書」および「職員への周知方法」がわかるもの

職員向けの通知文書や職場での掲示状況がわかるものなどです。

②「賃金台帳」「給与明細等」原則全職員分

賃金の改善状況が分かる書類です。

③その他以下の書類をチェックされる場合もあります。

「介護職員の処遇改善に関する実績報告書」

「労働保険料等納付証明書(原本)」

「就業規則」

「賃金規定」及びそれらの職員への周知の方法が確認できるもの

「介護職員の資質の向上の支援に関する計画の実施状況がわかるもの(研修計画の実施状況)」

「キャリアパス関係書類」などです。

賃金規定では昇給昇格の仕組みがしっかり規定されている必要があります。

賃金規定で規定されていても実態として職員に周知されていなかったり、実際にそのように運用されていない場合は、加算の返還を命じられる場合もあります。

処遇改善加算の必要書類は通常、計画提出時に揃えて提出していますので、後からそろえるという種類のものではありません。ただし、研修だけは実施状況をチェックされますので、研修の出席簿、研修教材、その他研修の実施状況がわかる書類を整えておく必要があります。

 

【本加算の意義】

介護職員の賃金改善のための加算ですが、併せて職員の育成体制などを整備することを求めています。広い意味で介護職員の社会的地位の向上を目指していますので、国としても職員への周知を徹底し、より意識を高めてもらいたいのでしょう。

 

Q3:早朝・夜間・深夜加算の根拠となる書類・記録について

A3:

【根拠となる記録・書類】

①ケアプラン及び必須書類

留意点:当然ながらケアプランに時間設定が無ければ算定できません(緊急時訪問を除く)。

深夜から早朝にかけての訪問では少しでも深夜の時間帯にサービスを開始していれば、深夜加算を算定できますが、そうした時間設定でのサービスが必要な理由、利用者・ケアマネージャーとの合意事項についてはサ担録などで明確に文書化しておき、写しを貰っておく必要があります。

また、加算の対象となる時間のサービス提供時間が全体のサー ビス時間に占める割合がごくわずかな場合においては、この加算は算定できません。

よく問題になるのが、下線部のごくわずかな時間とはどの程度の時間かということです。1時間のサービス時間の中で30分が加算対象時間であればOKなのでしょうか?

実地指導では自治体によって判断が分かれる部分もあるようです。少なくとも全体の時間の1/2以上が加算の時間になっていれば大丈夫だと思いますが、不安な場合は保険者の自治体に確認する方が良いでしょう。

【本加算の意義】

早朝・夜間・深夜労働に対する割増賃金の意義を持ちます。

 

次回は、特定事業所加算についてご説明します。