ケアマネ業務 改正により必要になった記録や書類

 

 今回の改正によりケアマネ業務にいくつかの変更点がありますが、具体的にどのような記録や書類が必要になるか整理してみました。実地指導などでチェックされる可能性がありますので早めに取り組んだ方が良いでしょう。

 特に追加業務が無いものは除外してあります。

 

平時からの医療機関との連携促進

 

【改正①】

 利用者が医療系サービスを希望している場合などは、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求める。また意見を求めた主治医等に対してケアプランを交付しなければならない。

 

【必要な作業】

 ①重要事項説明書の修正

 ②支援経過などに医師に意見を求めた記録、およびケアプランを交付した旨の記録

 

【改正②】

 訪問介護事業所等から利用者の口腔に関する問題や服薬状況、その他の状態について伝達を受け、主治医等に必要な情報伝達を行うこと。

 

【必要な作業】

 ①情報を得た旨の支援経過記録

 ②サービス担当者会議録などに、訪問介護事業所等にどのような情報が必要かを指示したという記録。

 

 

質の高いケアマネジメントの推進

 

【改正③】

 利用者や家族に対し、居宅サービス事業所について、複数の事業所の紹介を求めることが可能であることなどを説明すること。

 

【必要な作業】

 ①重要事項説明書の修正

 (注意!)この義務を怠ると、減算になります。必ず重説は修正しましょう

 

【改正④】

 利用者の意思に反して、集合住宅と同一敷地内等の居宅サービス事業所のみをケアプランに位置付けることは適切ではない。

 

【必要な作業】

 ①同一敷地内等の事業所のサービスを使う場合は、同意を得た旨の支援経過記録

 

 

障害福祉制度の相談支援専門員との密接な連携

 

【改正⑤】

 障害福祉サービスを利用する障害者が介護保険サービスを利用する場合、障害福祉制度の相談支援専門員と密接な連携に努める。

 

【必要な作業】

 ①相談支援専門員の情報把握(名前や所属・連絡先)

  ※相談支援専門員が関わっている場合は必須!

 ②情報共有など、連携して業務を行っていることがわかる支援経過記録

 

 

入院時情報連携加算の見直し

 

【改正⑥】

 入院中の利用者にサービスを開始する場合、利用者等に対して、担当ケアマネジャーの氏名等を入院先医療機関に提供するよう依頼すること。

 

【必要な作業】

 ①入院先医療機関に名刺などを渡して利用者に渡してもらう

 ②上記事実の支援経過記録

 

退院・退所後の在宅生活への移行に向けた医療機関等との連携促進

 

【改正⑦】

 

 ①退院・退所時におけるケアプランの初回作成の手間を明確に評価

 ②医療機関等との連携回数に応じた評価

 ③医療機関等におけるカンファレンスに参加した場合を上乗せで評価

 ④退院時の多職種からの情報収集を高く評価していく。

 

【必要な作業】

 ①上記の具体的な連携事実を支援経過に詳しく記録

  

 

 その他加算関係はそれぞれの要件の記録が必要になります。

 また、以下の事項や業務が追加されますが、それぞれ区市町村からの通知や指示を確認しましょう。

 ①生活援助中心型の訪問介護を多くケアプランに位置づける場合は、区市町村への届け出。施行は10月から。

 ②区市町村は必要に応じ、ケアマネジャーに利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、サービス内容の是正を促す。

 

【参考】新しい「重要事項説明書」の例(東大阪市)

https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000009039.html

 

 

 

科学的介護とAIケアプラン

 

 

 厚生労働省の「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」が昨年12月に中間まとめの案を発表しました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000189631.html

 

 介護の仕事に関与している方、特にケアマネージャーの皆さんには重要なことなのですが、この検討会の資料を見ても何をどうしようとしているのか分かりにくい部分があります。

 

 

「科学的裏付けに基づく介護」とは何か

 

 厚生労働省が考えている「科学的裏付けに基づく介護」とは具体的にどのようなことでしょうか?

 これを説明するには医薬品の開発と比べてみるとわかりやすいと思います。

 

 医薬品の開発では必ず事前に長い時間をかけ、動物実験や臨床実験が行われ、実際にその薬がどのように効果があり、副作用などの影響があるのかの検証を行います。

 そのような手順を踏み科学的裏付け(=エビデンス)を確実に把握しなければ、薬は製品化することはできません。

 

 介護においても、あるご利用者にある方法の介護をするとどのような効果があるのかを検証しエビデンスを得ようというのが、この「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」の目的でしょう。

 

 「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」を言い換えれば「エビデンスに基づく介護に係る検討会」ということです。

 

 

介護は実験室で行えない

 

 しかし、介護は実験室で行われるわけではありませんから、薬のテストのように、Aを投与すればBの結果が得られるというような検証をすることはできません。

 

 ましてや、ご利用者は個別に様々な心身の状況を抱えているため、検証目的に合った状況のご利用者をどこかから連れてくることも無理のある話です。

 

 それではどのようにエビデンスを得ようというのでしょうか。

 

 

介護は実践でしか検証はできない

 

 介護は現場の実践でしかエビデンスを得ることができません。これはよく言われることでしょう。

 科学的な検証を行うためには絶えず現場からの実証データを吸い上げて、検証するしか方法が無いのです。

 

 その上、介護は「心」を扱わなければならない仕事です。高齢者の「やる気や」「生きがい」を扱うためには、人間の「心」にアプローチする必要があります。

 さらに言えばその「心」は社会の状況や時代によっても変わってきます。外科医が身体を扱うように生物学的なアプローチだけでは結果が出ないのが介護の世界です。

 

 もちろん、精神医学界では、昔から各種療法の積み重ねにり、「心」の治療方法が科学的エビデンスとして蓄積されています。しかし、介護の場合はそのような積み重ねの歴史は浅く実証もありません。

 そもそも、これまでは、老化による心身機能の低下を病気とは考えてこなかったため、治療改善というアプローチは取られてきませんでした。

 今まで高齢者介護は「お世話」程度にしか見られてきませんでしたから、科学的検証など必要なかったともいえます 。

 

 しかし、老化による心身機能の低下は予防することができますし、実践方法により状態の悪化に差が出てくることも周知の事実です。

 

 国としては社会保障費の低減のために、できるだけ、効率の良い介護方法を見出し、介護全体の質の向上を目指したいということでしょう。

 

 

多様な介護実践のデータベースを作りたい

 

 全国各地で行われている多様な介護の実践と、その結果をデータベース化し、ベストな実践(ベストプラクティス)を抽出していく。

 

(※ベストプラクティス=ある結果を得るのに最も効率のよい技法、手法、プロセス、活動などのこと。 )

 

 これが、この検討会が目指しているものだと思います。

 ではどのように実践を蓄積していくのか?

 

 役割はケアマネージャーにゆだねられると考えられます。

 「ケアプランのデータベース化」これが一つの方向として見えてきます。ケアプランにはアセスメントとモニタリングも含まれます。

 

 どのような心身状況の利用者にどのような介護実践を行い、どのような結果を得たか。この情報を大量に集め、データベース化し、その大量のデータの中よりベストプラクティスをピックアップしていくプロジェクトになるのでしょう。

 

 ベストプラクティスをピックアップする作業にはAI(人工知能)技術が活用されると思われます。

 

 

AIによるケアプランの作成が可能に

 

 このようなデータベースが開発されることにより、今度はAIによるケアプランの作成が可能になってきます。

 

 心身状況(アセスメント)を入力すると、AIがデータベースの中から対応するベストな介護方法をピックアップしてくれます。

 

 もちろんそれをケアプランとして採用するかはケアマネや本人・家族の同意や確認が必要になるとは思われます。

 しかし、逆に考えれば、ケアマネージャーがプランニングしにくい、本人にとっては辛い機能訓練系のプランも冷徹にピックアップしてくれます。それにより効果的なプランを導入しやすくなるかもしれません。

 

 ただしこのシステムを製作するためには、最初にケアプラン作成ソフトのフォーマットの共通化が必要になります。そのためのプラットフォームをどうするかなど、検討課題は多く、データの蓄積が始まるまで何年かかるのか?今の雰囲気だとかなり先のことになりそうな気がします。

 

 

 

 

ケアマネ試験勉強法 その2

 

 前回の続きです。

 

ノートの右側に暗記すべき言葉を抜き出す 

 

 過去問が終了しましたら、左側のノートを読みながら、絶対に覚えなければならないワードを右側に書き出していきます。

 できれば赤など目立つ色で書き出すと良いでしょう。

できるだけキーワードを厳選し、ポイントだけを書き出します。あまり量が多いと効率が悪くなります。

 暗記はこれを覚える作業になります。

 

 この時点でかなりの知識が身についていると思います。

 ノートの右側は試験前のラストスパートで暗記し、少しでも多くの点を取ることを目指します。

 

 

勉強のスケジュール

 

 中央法規のワークブックは春には書店に並ぶはずです。

 法改正があるので少し遅れるかもしれませんが、2017年は2月でした。

 

 勉強のスケジュールを4月スタートでシミュレーションします(当然ですがもっと早くても良いです)。

 試験は10月初めなので期間は6カ月間です。

 

①マーカー付け(1か月)

 ワークブックは420ページぐらいありますので、114ページ 1週間で100ページ程度進めば、1か月で終了します。

 11時間程度あれば可能かなと思いますが、同じ内容のものが何度も出てきたりしますので、早く進む時と、進まない時があるかもしれません。

 単なるマーカー付けですから、電車の中でも可能です。隙間時間に処理していきましょう。

 

②ノートの左側作成(4か月)

 ノート作成作業は時間がかかりますが、ながら作業でできますので、夕食後の1時間程度リラックスしながらやって行けばいいと思います。私はTVを見ながらダラダラとやっていました。

 何も勉強机に向かって必死に勉強する必要はありません。あくまで作業と割り切って、家事の合間や、子供の世話の合間に行ってください。

 

 1カ月で100ページ程度ですから、134ページが目標です。1週間で25ページ程度こなしてください。

 ノート作成ではどうしても見栄えを良くしようとしてしまいます。しかし、見栄えを重視すると時間がかかりますから、自分が分かれば良いレベルで妥協しましょう。

 

③過去問・模擬問題集(1週間)

 試験1か月前です。ここからは少し頑張って、集中して勉強するようにしましょう。

 過去問は2年分で120問です。模擬問題は200問程度あります。両方やる人は少し時間を割かないとならないでしょう。

 答えの確認と知らない知識のノート転記併せて、12時間程度あればすべてやることは可能だと思います。

 

③ノートの右側作成(3週間)

 この作業も12時間ぐらいで完了できると思います。

 ノートが3冊あれば11週間です。

 

④暗記(1週間)

 試験前1週間はノートの右側を中心にただただ暗記します。暗記の作業はこれだけです。

 ノートの内容確認は試験場でも最後の最後まで粘って行いましょう。

 

 

来年度は改正部分が必ず出る

 

 ノートを作成する場合、来年度の法改正部分は重点的にチェックするようにします。

 各種基準や新加算など、必ず出ますので、絶対にマスターするようにしてください。

 

  また、中央法規の過去問には、過去の出題傾向がキーワードで整理されています。これを見ると、毎年必ず出題されるキーワードや1年おきに出題されるキーワードがわかります。ワークブックの出題ランクと合わせてノートを作成する際に参考にすると良いと思います。

 

 

 

加算の算定条件

 

 ワークブックには各種加算の算定条件がすべて出ているわけではありません。

 時間に余裕がある場合は、都道府県などの介護保険セクションのホームページで各種加算の算定条件をチェックしても良いかもしれません

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/tuutitou/index.html

 ちなみに来年度強化される、訪問介護とリハの生活機能向上連携加算は必ず出るのではないかと読んでいます。

 

 

高齢者の病気の知識

 

 高齢者の病気に関する知識は、かなり細かい部分まで出ることがあります。

 簡単ないようでしたらWAMNETの「高齢者に多い疾患の基礎知識」をチェックすると良いでしょう。

http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/caremanagerworkguide/caremanagerworkguide_14.html

 

 もっと深く勉強したい方はNHKの「きょうの健康」が良いと思います。

http://www4.nhk.or.jp/kyonokenko/

 高齢者に多い病気の知識をかなり詳しく解説してくれます。テレビを録画しても良いですが、面倒な人は、図書館でバックナンバーを借りてきても良いのではないかと思います。

 

 「きょうの健康」のテキストはケアマネの仕事をする人なら是非読んでおきたい雑誌です。最新の病気の知識が載っていますので、継続的にチェックしたいものだと思います。

 

 

試験本番は集中力あるのみ

 

 本番は120分で60問を解かなければなりません。

 1問2分しか使えません。私の作戦は以下の通りです。

 

1度読んで明らかに○か×か分かる選択文だけチェックしてどんどん先に進む。

②ただし引っかけがあるので、選択文はかなりじっくり読まなければならない。

③この方式により1時間で60問をチェックする。

④残りの1時間でよくわからない問題に取り組む。

⑤最後の最後まで粘る

 

 前日はしっかり睡眠をとりましょう。

 前日の夜と、当日の朝はしっかり糖質を取り、脳に栄養を与えましょう。

 

以上この項終わり。

 

ケアマネ試験勉強法 その1

 

 

 今回は趣を変えてケアマネ試験の勉強法について書きたいと思います。

 

 このような仕事をしていることもあり、また、今後自ら介護事業をやっていきたいという目論見もあるため、今年度のケアマネ試験を初めて受験しました。

 

 結果は、60問中53問正解(正答率88%)で無事一発合格できました。

 

 90%を目指していたのですが、試験時間が足りず、最後の方は焦ってしまい、思ったより手こずった感がありましたが、結果としてはまずまずという感想です。

 

 今回はケアマネ試験に挑む方に向けて、自己流ですが勉強法をご紹介しようかと思います。この勉強法はケアマネだけでなく他の資格試験でも通用すると思います。

 

 

使ったテキストは3

 

 テキストは中法規出版の以下の3冊のみです。

 

ケアマネジャー試験 ワークブック2017 3,024円(税込)

ケアマネジャー試験 過去問解説集2017 3,024円(税込)

ケアマネジャー試験 模擬問題集2017 3,024円(税込)

https://www.chuohoki.co.jp/skillup/manager/index.html?limit=20

 

 中央法規出版からお金をもらっているわけではありませんが、介護福祉士の過去問題集も使いやすく、本屋で立ち読みして他のテキストと比べてみると、やはりケアマネ試験でもこのテキストが使いやすいと判断しました。

 講座などは受講していません。テキストのみの学習です。

 

過去問だけでは合格ラインは難しい

 

 介護福祉士の場合は過去問だけでも合格できますが、ケアマネの場合は過去問だけでは合格は難しいと感じました。

 ケアマネ試験の出題範囲を網羅している「介護支援専門員基本テキスト」は1608ページもあり、かなり膨大な量です。

http://www.nenrin.or.jp/publishing/caremanager_1.html

 この量をカバーするためには過去問だけでは不足だと思います。

 

 中央法規のワークブックは出題範囲をほぼ90%カバーしており、こちらで勉強することで合格ラインまでの知識が身に着くと思います。

 

 

勉強は作業と考える(重要)

 

 ある程度ケアマネ試験の内容を知っている人であれば、過去問は後回しで良いでしょう。

 どんな問題が出るのかわからない人は直近の過去問をさっとやって雰囲気をつかんでも良いかもしれません。

 

 まずは、ワークブックにマーカーを引く作業です。

 この時点では暗記する必要はありません。暗記は最後の最後の勉強方法です。

 あまり早い時期に暗記しようとしても、試験の頃には忘れてしまう場合もあります。

 また、法制度など体系的に覚えた方が良いものは全体を理解してから暗記したほうが覚えやすいと思います。

 

 ワークブックに目を通しながら以下の事項にマーカーしていきます。

 

①自分の知らない知識

②これは出そうだと思う部分(特に間違いやすそうな部分)

 

 ワークブックには頻出分野にABとランクが付けられていますが、マーカー付けの際はランクは無視し淡々と作業に没頭します。

 

 暗記は結構ストレスですが、テキストを読みながらマーカーを引く作業は、比較的楽にできるはずです。ほとんど読書と同じです。

 夕食後テレビを見ながらでもできます。私は、時々お酒を飲みながらこの作業をしていました。

 

 おそらくこの作業をしなければ、新総合事業や地域支援事業などのややこしい体系は理解できなかったでしょう。

 これらの事項は過去問だけではなかなか理解できません。

 

 

ノート作成作業

 

 マーカーを引き終えたら今度はそれをノートにまとめる作業です。

 私の使ったノートはA5版のコンパクトで持ちやすい物です。

 最後の暗記はこれで行いますので、持ちやすい物が良いです。

 

 まとめ方は自分で理解できればどんな形でも結構ですが、コンパクトにまとめる方が後々楽かと思います。

 テキストを丸写しするような方法は時間の無駄です。要点だけをコンパクトにまとめましょう。

 

 重要なのはノートの片側(左側)にまとめていくことです。右側は左側がまとまったあと暗記ポイントを抜き書きする用にとっておきます。

字が汚いですが自分で分かればそれでいいです

 

 だいたい3冊程度のノートが必要だと思います。できるだけ良い紙を使っているノートと、書きやすいペンを使ってください。作業が楽になりますし、結構楽しめます。

 マーカーなどで強調したりカラフルにすることは勝手ですが、時間がかかりますので、私の場合は黒1色です。

 

 

ノートの左側作成が済んだら過去問を解く

 

 ノートにまとめたことである程度の知識が身についているはずです。

 次に過去問に取り組みましょう。これで現在の力量が確認できます。7割正答できれば合格は近いです。

 既に過去問をやってしまっている場合は、模擬問題を解きます。

 

 過去問を解く際も覚えるのではなくクイズに答えるように解いていけば良いです。

 初めて試験に挑戦する人は、過去問に取り組むことで、試験の出題の癖がわかります。

 結構細かい知識が必要なこと、引っかけがたまにあることなどを理解します。

 

 過去問や模擬問題をやりながら自分の知らない知識が出てきたらマーカーをします。そしてマーカーした部分をノートに追記します。

 

 次回に続く。

 

 

 

パブコメから次期介護保険改正の全容(居宅基準)が明らかに その1

 

 

 

 来年4月より施行される改正介護保険法の各種基準に関するパブリックコメント募集が始まりました。

「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令(仮称)案等に係るパブリックコメントの開始について」2017/12/4

 

 この内容が介護保険事業(居宅サービス)の各種基準の改正点と言ってよいでしょう。

 報酬関係についてはまだ全貌はわかりませんが、基準面の変更点はこのパブリックコメントが全容になると考えます。

 

 今回はこの改正内容のトピックをご取り上げたいと思います。

 

 

居宅介護支援事業所の管理者は2021年から主任CMへ

 

 経過措置を設けて2021年に居宅の管理者は主任ケアマネージャーでなくてはできなくなります。

 

 経過措置の内容はわかりませんが、現在、居宅支援事業所の管理者で、主任CMではない人は、この経過期間中に研修を受け、主任CMにならなくてはいけないという措置になるのではないかと予想されます。

 

 

主任CMの争奪戦も

 

 すべてのCM管理者が研修を受けられるよう、区市町村が配慮してくれることは考えますが、現任CMが研修を受けられない場合、主任CMを新たに雇用しなければなりません。

 そのため、2021年に向けて主任CMの争奪戦が起こるかもしれません。

 

 居宅介護支援事業者は、2021年に向けて、主任CMの確保に努力する必要があります。そのためには、現任管理者の継続的な雇用のための処遇面や任用面での優遇を図る必要があるかもしれません。

 

 CMとしての能力が劣る場合や、CM業務をあまり行っていな管理者は、主任CMの研修が受けられない場合も考えられます。

 今のうちから2021年以降の業務継続に向けて、業務能力のあるCM管理者の確保を進めていくべきでしょう。

 

 

訪問介護に新たな義務規定

 

 以下の基準が加わるようです。

「訪問介護の現場での利用者の口腔に関する問題や服薬状況等に係る気付きをサービス提供責任者から居宅介護支援事業者等のサービス関係者に情報共有することについて、サービス提供責任者の責務として明確化する。」

 

 上記の運営基準が加わると何が変わるでしょうか?

 

 まず、運営規定にこのサービスの提供を明示しなければならないでしょう。また、アセスメントにおいて口腔や服薬に関する項目を必ず入れる必要があります。

 さらに実地指導などで、この情報提供の事実があるかどうかの確認がされると考えなければなりません。

 ケアマネへの情報提供や連絡時に少し意識してこの情報を伝えるようにする必要があります。

 

 

訪問介護員への研修が必要

 

 口腔に関する問題や服薬をしている利用者は大勢いますので、多くに利用者にこの観点での観察が必要になります。

 訪問介護員が服薬状況に関して日々注意しながらサービス提供をしていく姿勢が必要になりますので、研修などで意識付けをしていくことが重要でしょう。

 

 口腔に関してはアセスメント時に特に問題が無くても、気が付けば硬いものが食べられなくなっていたり、嚥下状態が悪化していたりすることは十分に考えられます。

 サービス提供の中での継続的な観察が必要になると思います。

 

 昨今、要介護度を上げるフレイル(虚弱)やサルコペニア(筋肉減少)の原因の一つとして、高齢者の栄養問題が大きく取り上げられています。

 口腔の問題だけでなく、利用者の食生活全体に意識を向けるようにしていくことが、今後さらに重要になると考えます。

 

 

 共生型サービスの新設

 

 今改正の目玉の一つでしょう。

「共生型通所介護については、障害福祉制度における生活介護、自立訓練、児童発達支援又は放課後等デイサービスの指定を受けた事業所であれば、基本的に共生型通所介護の指定を受けられるものとして、基準を設定する。(居宅基準及び地域密着型基準(新設))」

 

 これは介護保険法の改正ですから、障害サービスからの参入基準の緩和が示されていますが、同様の改正が障害者総合支援法の方でもなされた場合、介護事業から障害サービスへの参入基準緩和となります。

 

 逆読みすれば、通所介護と生活介護、自立訓練、児童発達支援又は放課後等デイサービスの共生型通所介護が可能になるということです。

 具体的な指定基準がわかれば指定を受けるか検討してみる価値はあると思います。

 

 共生型通所介護の内、老人デイサービスと放課後等デイサービスは施設設備の有効利用という観点から、事業として有望であると考えます。

 平日日中のサービス提供が中心の老人デイサービスに、夕方から夜、休日が中心の放課後等デイサービスを合体させることができます。

 賃料や車両費など固定費の無駄を省けますので、経営上非常に有望でしょう。

 共生型通所介護の具体的な説明は以下の記事をお読みください。

 https://carebizsup.com/?p=951

 

 なお、この共生型サービスは短期入所生活介護でも実施される予定です。

 

 次回は続きをご説明します。

 

 

 

ケアプランAIでケアマネは不要になるか?

 

 ケアプランAI(人工知能)の開発がスタートしました。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF14H0Q_U7A410C1EA4000/

 

 このシステムが稼働すればケアマネージャーは要らなくなるのではないかという声もあります。

 実際のところはどうでしょう?少し検証したいと思います。

 

 

ケアプランAIの仕組みを考える

 

 ではケアプランAIは具体的にどのようにケアプランを作成するのでしょう。

 居宅介護において、簡単にイメージ想定すると、以下のような流れになるのではないかと考えます。

 

①利用者の心身の状況の他あらゆる情報を収集し入力する(スクリーニング)

②利用者情報はクラウド上のデータベースに照会され、その人の状態が評価される(AIによるアセスメント)

③アセスメントによりAIはその人に必要なサービスを選択する

④選択されたサービスによりAIケアプランが作成される

⑤AIケアプランを本人や家族の意向に合わせて修正する

⑥修正されたAIケアプランに合わせてサービス提供事業者を選択し入力

⑦ケアプラン原案(暫定ケアプラン)の完成

⑧サービス担当者会議開催(議事録等の入力)

⑨ケアプラン完成→サービス提供票・週間サービス計画表に反映

⑩AIがモニタリングすべき項目を作成→人による確認修正

⑪モニタリング情報の入力

⑫長期・短期目標についてのAI評価→人による確認

⑬AIが再アセスメントに必要な、収集すべき情報を提示

⑭情報の再収集・追加入力

 

 最初からここまでの作業が整備できるとは思えませんが、実際に使えるAIケアプラン・システムになるにはこの程度の業務能力が必要ではないかと考えます。

 

 

医療分野ではAI診断がすでに始まっている

 

 近い将来、身近なクリニックなどでもAI診断が実現すると考えられています。

https://cs.sonylife.co.jp/lpv/pcms/sca/ct/special/topic/index1704.html?lpk=

 

 とは言っても治療判断を行う医者が必要なくなるわけでは無いでしょう。

 しかし、1次診断などのスクリーニングでは活用されるのではないでしょうか。

 カルテ情報共有と連携して地域医療改革の推進に役立つことが期待されます

 

 医学の歴史は人体と病気の情報化の歴史でもあります。血液やDNAなど人体のあらゆる状況を情報化し、病気を治すことに利用してきた歴史です。

 

 病気に関わる人体の情報が膨大化している現代ではAIを活用することは避けられないことだと思います。

 

 

AIシステムには膨大な情報データベースが必要

 

 AIの能力としての真骨頂は、膨大な情報を処理しディープラーニング(深層学習)と言われる仕組みを通して、AIそのものが成長するところにあります。

 https://www.nttcom.co.jp/research/keyword/dl/(ディープラーニング説明)

 

 人工知能というものは自ら学習し成長し、能力を向上させていくことが売りであり、そのためには膨大な情報が蓄積されなければなりません。医学ではその情報がすでに膨大に蓄積されています。

 

 一方、介護分野ではこれからです。

 介護サービスの多様な情報が日本全国から集まり、クラウド上に蓄積され、ディープラーニングが始まるまでには、相当の時間がかかるでしょう。

 それとも開発者側であらかじめ介護に関する情報データベースを作成するのでしょうか?それには相当のコストが必要になります。

  普通に考えれば、多くの現場でこのAIシステムが使われ、学習するべき情報が蓄積される方法をとるでしょう。

 つまりこのシステムが成功するには、多くの現場で利用されなければならないということになります。

 

 

システムが利用されなければケアプランAIは失敗する

 

 結局、上述のAIケアプランの作成の流れにおける下線部分は、ケアマネージャーが行わなければなりません。

 ケアマネージャーには情報収集と調整やコミュニケーションなどの仕事は残ります。

 

 このAIシステムが成功するためには、多くのケアマネージャーによって利用されなければなりませんが、利用されるには、何らかのインセンティブが必要です。

 たとえば、このシステムを活用することで、ケアマネ業務が軽減され、現在の受け持ち担当者数を超えて仕事をすることが可能になり、国も規制緩和し、収益増加につながるようなインセンティブです。

 

 でなければ多くのケアマネージャーはこのシステムを利用しないでしょう。

 全国のケアマネが活用し、それによりディープラーニングが加速しなければこのケアプランAIは成功しないと思います。

 

 

AIケアプランはケアマネの資質の向上に寄与するか

 

 ディープラーニングが加速し、ケアプランン自体の精度が向上することは、ケアマネジメントの資の向上につながるとは思います。

 しかし、ケアマネージャーの仕事はケアプランを作成することだけではありません。

 

 ケアマネの仕事はケアマネジメントを進めて、利用者の心身状況の維持向上と自立を推進していくことです。

 

 たとえば、

  • 下肢筋力の維持向上のための運動をさせたくてもしようとしない利用者
  • 訪問介護を受け入れない家族
  • 食事管理ができない糖尿病の利用者
  • ターミナルにおける家族ぐるみのコミュニケーションのケア
  • 認知症家族に対する認知症の理解を促すケア

 などなど、ケアプランの内容とは別に、ケアマネージャーが関与しなければ前に進まないことは沢山あります。

 

 そして、ケアマネの資質として必要とされているのは、上述のようなケースでもマネジメントを進めていける能力でしょう。

 

 実は、ケアプラン自体はアセスメントの時点である程度のパターンが見えていることも多いのではないでしょうか。

 

 多くのケアマネージャーが、ある程度パターン化されたケアプランをカスタマイズしてその利用者に適したものにしてゆく作業を行っていると思います。

 

 もしこのAIがそのようなパターン化されたケアプランを作成するだけなら、たぶん利用価値は無いでしょう。そのパターンはすでにケアマネの頭の中に入っていますから。

 

 

使えるAIシステムでなければ失敗する

 

 利用価値がないAIシステムでは情報も蓄積できないので。このケアプランAIは失敗すると思います。

 

 ケアプランAIのシステムが成功するには、まず、できるだけ多くのケアマネージャーが利用するシステムにしなければなりません。

 

 先にも述べたように、業務の軽減と収益向上に結び付くシステムでなければ利用はしないでしょう。

 

 ケアマネージャーの資質の向上はその先にあることであり、筋トレの必要な利用者に筋トレをさせられるAIは開発できません。

 

 もしかしたらロボットケアマネージャーが開発され、人間のケアマネージャーは要らなくなるかもしれませんが、おそらくそのレベルのロボットはもう人間と変わりません。