介護福祉業の人材確保対策 その2

 

 今回は、前回の就労環境を整えても、どのように求人でアピールすればよいのかを考えたいと思います。

 その前に、前回の説明の補足として以下のテキストもご参照ください。

「訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術」

 上述のような努力を事業所が実践するということが前提の求人の在り方です。

 

4 子育てママにアピールする求人広告の在り方

 求人広告としては前述の求人対策の内容をアピールします。

 若い主婦向けにはやはりネットの求人サイトを利用する方が良いでしょう。

 主婦専用の求人サイトでなくとも、若者が集まりやすい求人サイトに子育てママが働きやすい環境であることを具体的にアピールします。

 また、パート求人広告は地域密着ですから、それぞれの地域の子育て事情を考慮した広告の出し方が必要だと考えます。

 具体的なコピーとしては以下のようなものです。

 ⦿ 保活ママサポート。4月入園に向けた働き方を相談します。

(12月ぐらいに出すと良いでしょう)

 ⦿ 家族の都合で急な休みでも大丈夫

 (管理者やサービス提供責任者が柔軟に対応します)

 ⦿ 未経験無資格の方歓迎。面倒見の良い担当者が一から不安なく働けるように指導します。

 無資格の方に資格を無料で取得してもらえるようにするのは必須です。

 自治体によって補助金や資格取得支援事業がありますので必ず活用しましょう。

 

5 自事業所ホームページの充実

 子育てママ向けの求人だけでなく、すべての求人活動で必要なのが、自事業所のホームページの充実です。

 介護福祉事業所のホームページは中々充実させる暇やお金が無いという方も多いかもしれません。

 自事業所のホームページはご利用者やそのご家族、ケアマネージャーさん向けに作っているかもしれませんが、そうではなく、仕事を探している人向けに作ることが重要です。

 ケアマネや利用者向けに作っても費用対効果から言ってあまり意味はありません。それよりも求人者向けに充実させる方が、人材確保の大きな助けになります。

 ホームページのコンテンツは、サービス内容や事業所の一次情報(住所や電話など)を乗せただけの、一般的で凡庸なホームページでは求人者にはアピールしません。

 求人情報があっても、給与や処遇など一般的な情報しか掲載していなければ、ほとんど引っ掛かってこないでしょう。

 ポイントは「ここで働きたい!」と思わせるホームページ作りです。

 

 筆者は魚釣りが好きです。

 多少語弊があることを覚悟して言いますが、中小企業の人材募集は魚釣りに似ていると思います。

 特に疑似餌を使うルアーフィッシングは、いかに魚(応募者)に餌(職場)をアピールするかが重要であり、凡庸なルアーには見向きもしませんし、同じルアーを使い続けると、見切られてしまい、ほとんど食いつかなくなります。

 つまり、魚にいかにルアーを魅力的に見せるかが釣果に繋がるのです。

 求人も同じで、処遇や職場の雰囲気など応募者にいかにアピールするかが成果に繋がります。

 そもそもあまり事業所ごとに職場の差別化が測りにくいのが、介護福祉事業の宿命です。

 職種にしても給与にしても、あまり変わり映えの無い餌が大量に世の中に漂っており、求人者としてはどれに食いつけばよいのか判断ができない状態なのです。

 ちなみに、人材紹介会社などは、大きな巻き網漁船のようなもので、巨大な網を使って大量に人材を確保しようとします。そのために、広告費に膨大な経費を使い、少しでも多くに人の目に留まるようにします。

 アルバイトなどの求人情報会社が頻繁にテレビCMを流しているのはそのためです。顧客である人材募集企業に少しでも多くの求人応募者を集めるためには、相当の広告が必要になります。

 しかし、中小企業ではそんなに広告費を使うことはできません。

 しかも、募集の対象者は事業所の周辺地域に住む人達だけです。大きな網は必要ありません。少ないターゲットに的確に届く求人が必要ですが、狭い地域といえどもターゲットはどこにいるか分かりませんので、ネット上手に活用して、アクセスしてくれるのを待つしかないのです。

 

6 どのように自社サイトに誘導するのか

 介護業界で長く働いている人であれば、給与や休日など処遇関係の情報を見て、実体験から職場の良し悪しをある程度判断できるかもしれません。特に正社員で働きたい人は、ハローワークなどの詳細な求人情報を見て検討するでしょう。

 しかし、介護業務の経験の無い、ましてや無資格の人にとってどのような事業所が自分に合っているかなど分かる由もありません。

 特にパートの若いママさんなどの場合、フィーリングやライフスタイルに合っているかが重要になりますので、文字による情報よりもビジュアルや動画などの情報が重要になります。

 最近、膨大なCM展開をしているindeedという求人検索サイトがあります。

 こちらは今までの求人サイトと違い、例えば「足立区 介護 パート」などと検索すると、足立区周辺の介護のパート求人を検索して出してくれます。

 Googleに検索ワードを入力すれば、該当する求人情報をIndeedが表示してくれるわけです。仕事を探している人はその検索画面から、各求人サイトに行き、求人内容をチェックします。

 ネット上のパート求人情報を地域限定で探している人は、多くの人がこの方法で、情報を探しているかもしれません。わざわざマイナビバイトなどのサイトから地域を限定して探している人は、どんどん少なくなっているでしょう。

 仕事を探している人はそこから、気になった求人情報のサイトにアクセスするわけですが、問題はここからです。

 応募者は求人情報サイトの情報だけで応募することはありません。

 多くの人たちがそのサイトにリンクが貼ってある(もしくは会社名などを検索して)事業所のホームページアクセスするはずです。どんな事業所か知りたいからです。

 この時、開いた事業所のサイトが凡庸なもので、どのような事業所か伝わってこなければ、もう応募することは無いでしょう。

 ここで「この職場で働いてみたい」と思わせることが大変重要なのです。

 お金を沢山出せば、有料求人情報サイトに写真や動画を沢山掲載し、雰囲気を伝えることができますが、いかんせんお金がかかります。

 できるだけ、自社サイトに誘導して雰囲気を伝えるようにすることが重要になります。

 そこで「この職場で働いてみたい」と思われれば応募に繋がります。

 

7 どのようなホームページが採用につながるのか

 では「ここで働きたい」と思わせるホームページとはどのようなものでしょうか?

 いくつかサンプルのリンクを貼っておきます。

 「楽しそう」「若い人が多い」「子育て中でもやっていけそう」などと思ってもらえる工夫が必要です。

 そのために、まず職場の雰囲気が伝わる写真や動画をふんだんに盛り込みましょう。

サンプル

①私が昔働いていた会社です。ペッパー君などを使い職場の楽しい雰囲気が伝わるよう工夫しています。これにより、若い人の応募が増えました。

http://www.best-kaigo.com/

②上と同じ会社ですが訪問看護でママさんナースを募集しています。子育て支援をアピールし小さなお子さんを持つナースが増えました。

http://www.best-kaigo.com/job/nurse-info.html

③こちらは筆者がコンサルをさせて頂いている、訪問介護事業所です。若い人中心のイメージと、子育て支援、障害者ヘルパーの具体的な仕事内容を掲載しています。

先日、未経験の子育てママさんパート二人応募があり大きな戦力になっているようです。

http://sunshine-cs.com/recruit/

 最後に、求人情報サイトはできるだけ切れ目なく利用することをお勧めします。

 できるだけ低価格で長い期間掲載できるサイトが良いでしょう。また、自社ホームページにリンクが貼れるサイトが良いのですが、リンクを貼らせてくれないサイトもありますので注意しましょう。

 Indeedはハローワークのインターネット情報も検索しますので、ハローワークについても3カ月おきに情報を更新し、絶えず求人情報が生きている状態にすることが大切です(3か月以上古い情報は後の方に行ってしまい検索がかかりにくい)。

この章終わり。

 

介護福祉業の人材確保対策 その1

 

1 介護福祉業界の人材不足は深刻

 

 いよいよ介護職員不足が深刻化しています。

 特に訪問介護(障害の居宅介護サービス等を含む)での人員が不足しており、地域によってはサービスが供給できない事態も発生しているかもしれません。

 

 現在、各業界企業の採用意欲は非常に高く、若者を中心に社会全体で人手不足が発生しています。

 そうした中、外国人や高齢者・専業主婦の活用などが各方面で進められていますが、介護・福祉事業の希望者は減る一方であり、新たな人材発掘は難しい状況のように見えます。

 外国人技能実習生制度が始まりましたが、語学力のハードルが高く、現場に迎え入れられるのはかなり先のことになりそうです。

 さらに、中国や韓国など高齢化の問題が顕在化してきている国々に行ってしまっているという声も聴きます。これらの国は語学力のハードルが低いようです。

 

 他の産業が人材確保のために給与水準を上げているのに対して、介護職員の給与水準は処遇改善加算が改定されたとしても、見劣りするのはいかし方がありません。

 特に都市圏では大企業の求人に比べ、かなり不利な状況になり、特に正社員の人材は待遇の良い産業に流れてしまっています。

 

 パート分野でも時給の上昇が進んでいますので、比較的有利であった介護事業のパートも魅力的でなくなっています。

 特に訪問介護のパートは時給が高いものの、業務の難易度が高いためか人材が集まりません。訪問介護を中心とした介護事業の人材発掘をしなければ、地域の介護福祉事業が立ち行かなくなるでしょう。

 

 

2 小さな子供を育てているママさんの活用

 

 そんな中、注目されているのが小さなお子さんを育てているママさんの活用です。

 小さなお子さんがいるお母さんは以下の理由により、就業が難しい事実があります。

 

 ① 核家族化が進み、お母さんが働きに出ると子供の面倒を見る人がいない。特に都市圏ではその傾向が強い。

 ② 保育園不足により地域によってはパートタイム勤務だと保育園に入れない(かといってフルタイム勤務は難しい)。

 ③ 子供の急な病気に対応するために、突然仕事を休まなければならない時があり、職場に迷惑をかけてしまう。

 ④ 母子家庭の場合、行政からの手当などの関係で収入制限があり働き方に調整が必要

 

 などでしょうか?

 

 こうした問題をクリアして、子育てママさんの隙間時間をいかに労働に充ててもらえるか、事業者が工夫することがママさんの活用には大切になります。

 

 子育てをしているとはいえ、子供が保育園に行っている人や、親に面倒を見てもらっている人、専業主婦など事情は様々です。そういた事情に柔軟に対応して働いてもらえるようにしなければならないでしょう。

 

 たとえば訪問介護の場合、サービスに入れる時間に働いてもらえばいいので、シフトでそれぞれのママさんに働きやすい時間で働いてもらえるので有利と言えるでしょう。

 他の事業でも工夫次第でそのような対応が取れると考えます。

 

 

3 子育てママさんを支援する求人対策

 

(1) 保活サポート

 保育園に入園する活動が「保活」です。前述の通り保育園に入園するには就労状況など地域により様々な条件があります。そうした条件に対応した働き方ができるように事業所もサポート体制を取らなければなりません。

 保活サポートの対策としては以下のようなポイントがあります。

 ① 事業所周辺地域の保育園環境・保活環境を調べる(就労条件や保育園の空き状況など)

 ② 一般的に4月入園が有利なので、その数か月前から求人を出し、事業所が保活サポートすることを訴える。

 ③ 地域の行政(区市町村)の子育て支援手当などの政策を調べ、それに対応した就労環境を用意する。

 ④ 育児ママさん対応の求人サイトの利用する。

   例:しゅふJOB https://part.shufu-job.jp/tokyo

 

(2)休日手当を充実させる

 旦那さんがいる家庭では、逆に休日・夜間の方が働きやすいという人もいるかもしれません。そうした主婦にアピールするよう休日・夜間手当を充実させる方法があります。

 訪問介護の場合、休日・夜間は社員対応であったり、パートさんが入れないことが多いと思います。休日・夜間手当を充実することで、パートさんが入りやすい環境を作ります。

 

(3)ライフスタイルに合わせた就業形態

 売り手市場の労働スタイルとしては、会社側が就労者のライフスタイルに合わせていくことが必要になります。

 特にパートワーカーは髪を染めたり、服装が自由であったり、ピアスやマニュキアがOKであったりと、ライフスタイルを受け入れてくれる仕事を選ぶ傾向があります。それは主婦でも変わらないと思います。

 障害福祉の事業の場合、利用者自身が若い人もいますので、相手によっては服装などを気にしない人も多いと思います。利用者に応じてサービス提供先のマッチングを考えれば、働く人のスタイルに合わせた仕事があるかもしれません。

 さらに、家族優先のライフスタイルを積極的に受け入れる就労環境を整えることは必然です。いわゆる「ワークライフバランス」の考え方ですが、これは正社員でも同様の処遇でなければならないでしょう。

 

次回に続く。

働きやすい地域職場としての介護・福祉事業所の在り方

 

地域の潜在的介護人材は子育て主婦や退職後の高齢者

 

 厚労省の受託事業として日本総合研究所は「介護人材の働き方の実態及び働き方の意向等に関する調査研究事業 報告書」公表しました。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/20180410_1_fukuda.pdf

 報告書では、介護人材確保の方策が様々に調査研究されていますが、興味深い調査として、潜在的介護人材(資格は持っているが介護現場で働いていない人)の属性調査があります。
 以下はその調査のポイントです。

【分析結果の概要】
◎ 潜在人材の現在の職業
「専業主婦(主夫)」が58.7%。次いでパート、アルバイトが多い。60 代以上は無職が多い。
◎潜在人材のうち、全体の 4 割前後は現在就業していない。女性や年齢が高い方が多い。また、今後の就業意向
全体の 4 割超は介護業界で働きたいという意向。
◎再就職の条件として希望していることとしては、
①「賃金水準を相場や業務負荷などからみて納得感のあるものとする」
②「子育ての場合でも安心して働ける環境(保育費補助や事業所内保 育所の設置等)を整備している」が上位。
◎特に30代女性では、
「子育ての場合でも 安心して働ける環境(保育費補助や事業所内保育所の設置等)を整備している」(52.5%)
「時短勤務な ど、職員の勤務時間帯や時間数等の求職者の希望を反映できる制度を導入する」(43.2%)が大きくなっている。
 一方で、法人内での配置転換等についてはあまり効果があるとは考えていない傾向がみられる。

 この調査の結果を見れば、地域に多くの潜在的な介護人材が存在することがわかります。
 その多くが専業主婦や高齢者であり、おそらくは正社員での就業を望んでいる人ではなく、自分の家庭や生活を優先し、余った時間で働ければ良いなと考えている人たちであるということが言えるでしょう。
 こうした潜在的な人材を掘り起こしていくことが、人材確保の上でも非常に重要な戦略になると考えます。

 

潜在的介護人材をパートスタッフに

 介護事業所を経営するには、パートスタッフの活用が非常に重要になります。
 やはり、正社員だけで人員を確保するにはコストがかかりますし、社員のキャリアパスなどを考慮した場合、沢山の正社員を抱えることはあまりメリットがありません。
 特に訪問介護の場合は、パートスタッフを増やせば増やすほど、収益が向上する仕組みになっており、管理者やサ責以外はパートスタッフで運用するのが最も効率的な経営となります。

 上述の調査では、専業主婦の多くが子育てのための離職を余儀なくされている状況が見えます。子育てと仕事を両立できればそれを望んでいることもうかがえます。
 しかし、日本の保育システムでは子供に病気などの異常が出た場合は、家庭がフォローすることが求められ、急に仕事を休まなくてはならない状況に追い込まれやすくなっています。そのため子育てのある主婦の場合、恒常的な仕事に就きにくく、地域の労働力として活用できなくなっているのです。

 

潜在的な介護人材が働きやすい職場づくり

 こうした子育て主婦が働きやすい職場とは、急な休みにも嫌な顔せず対応していくれる職場であると考えます。
 介護事業所はある程度余裕のあるスタッフ体制を敷けば、このような対応が可能です。
 訪問介護でもサ責なりが通常事業所に待機している状態であれば、急に穴が開いても対応は可能です。こうした受け皿をしっかり整備するかしないかで、働きやすさが全然違ってきます。
 パートスタッフを充実させるためにも経営者はそうした体制作りを心掛けるべきでしょう。また、パート求人を出す場合はそうしたフォロー体制の整備と子育て主婦にとって働きやすい職場環境であることを積極的にアピールすることが重要です。

 高齢者の場合は、介護の仕事に対するなじみのなさや、大変なのではないかという先入観が就業の壁になっているかもしれません。
 自分の親の介護経験がある方などは意外とすんなりと介護現場で働いているように感じます。東京都でも職場体験と資格取得をセットにした無料の人材確保事業を行っていますが、そうした職場体験の仕組みがもうすこし身近にあると良いと感じます。
 高齢者のパートスタッフ求人する場合は「高齢者歓迎」や「気軽に職場体験できます」などのメッセージを強調しましょう。

 専業主婦や退職後の高齢者は、自分の生活を優先できる働きやすい職場を地域に求ています。特に子育て主婦は子供の手が離れれば正社員として長く働きたいという希望を持っている方も多いでしょう。介護事業所はそうした地域の人たちの職場として機能する意識で事業所経営をしなければなりません。

関連記事:「訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術」

 

 

自治体の介護職員確保事業に積極参加でスタッフ確保

 

スタッフ確保が事業の発展を支える

 

 筆者がお世話になっている荒川区にある有限会社ケア・プランニングは、居宅介護支援事業所を始め、訪問介護・福祉用具・通所介護・小規模多機能居宅介護・介護職員初任者研修・実務者研修・障害者就労移行支援事業所など、地域に密着した介護福祉サービスを拠点的に展開しています。

http://www.best-kaigo.com/

 平成15年に開業して以来、着実に事業を拡大し、現在従業員は60名を超える規模に成長しました。荒川区内では利用者数・従業員数併せて、営利企業では最大規模の企業に成長しています。

 こうした成長を支えたのは、確実にスタッフを確保していけたからだと考えます。

 事業を拡大するためには人材の確保が大切であり、介護需要が伸び続ける現況では人員を確実に確保し、地域ニーズに応じた事業を適切に展開できれば、着実に事業は発展します。

 ケア・プランニングでは人材確保の方策として、自治体の事業に積極的に参加していく戦略をとりました。

 具体的には東京都の介護職員確保の事業に参加して、職員確保を行っていきました。

 

 

東京都の介護職員確保事業

 

 東京都では平成20年ごろより介護職員確保のための事業を展開してきました。

 介護保険制度が始まって以降、ITバブルによる好景気で介護人材の確保が難しくなり、リーマンショックまでは介護人材不足が困難を極めました。

 そして、昨今の人材不足により再び介護人材の確保は難しくなっています。

 東京都は他の自治体に比べ財政に余裕があるため、介護人材確保に対する手厚い助成が可能になっています。

 しかし一方で、地方の自治体に比べ、介護職の職業としての人気が低く、人材確保が難しい状況があります。東京には大企業が沢山あり、収入や処遇面で優位な就職口が多いために、介護職は人気が無く、人材の確保は地方に比べ難しくなっています。

 

 東京都では現在、東京都福祉協議会を通じて以下の介護人材確保事業を実施しています。

 https://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/kaigojinzaikakuho.html#shikaku

 特に「介護就業促進事業」は、求職者に最大6か月間、介護職としてトライアル的に働いてもらう事業です。

 その間の給与や求人経費、研修費、指導育成費を事業者に補助する事業です。

 都による大規模な宣伝効果。行政事業としての安心感などもあり、参加する求職者も多くなっています。

 もちろん受託事業者自身も求人広告などの努力が必要ですが経費は助成されますし、紹介料は経費になりませんが人材紹介も利用が可能です。

 

 事業委託費は本年度で一人当たり最大(6か月)1,980,000円(税別)です。その中から給与や必要経費を支出します。この中には指導経費として指導する既存の職員の給与も一部助成されるため、事業収益にも貢献します。

 公募は1事業所あたり3名までです。本事業以外の採用活動で応募してきた求職者でも事業期間中であれば、この事業に参加できます。

 また、今年から短時間勤務のパート職員も対象になりました。

 しかしながら、本事業は正社員の採用に効果を発揮します。ハローワークなどでも介護職を目指す求職者にこの事業を積極的に紹介しているため、正社員希望者が積極的に応募しくる傾向があります。

 

 ケア・プランニングでは毎年この事業に参加しており、昨年は9名の事業参加者を採用し、事業終了後も4名の常勤雇用に繋げています。

 ともかく、人材確保の経費がほとんどかからず、最初の6か月間は人件費がいらないわけですから、経営的に見ても非常に助かる事業であると考えます。

 

他府県でも同様の事業を実施しています

 

 他府県でも経費は少ないながら同様の事業を実施しています。

 先述のとおり行政事業としての安心から求職者が応募しやすくなっています。

 

 こうした事業は概ね年に1回の公募ですから、その時期を逃さないようにしなければなりません。

 前年度の公募スケジュールを参考にしながら対応するようにします。

 公募資格は概ね1年以上事業を継続していれば赤字の事業所でも参加できます。小さな事業所でも応募できますので検討してみる価値はあります。

 

 事業に参加するためには公募書類を作成しなければなりません。

 CareBizSupportではこうした公募書類の作成支援も提供していますので、お気軽にご相談ください。

 

 また、区市町村でも研修経費の助成や人材確保の事業を行っている場合があります。

 ご相談いただければ地元の自治体がどのような事業を実施しているか調べることは可能です。

 

 

訪問介護事業 起業の手引き 3

 

 

8 収支シミュレーション

 

 高齢者介護ではサービス提供責任者一人で利用者40人程度まで扱えます。

 東京でしたらご利用者一人当たりの介護報酬が月4万円程度見込めるでしょう。

 すると、1か月の売り上げは200万円程度になります。

 開業したら、まずここが目標になります。

 少しでも早く利用者数40名を目指しましょう。

 

 障害居宅を一緒に行う場合は、障害の人数を足し合わせて40名でOKです。

 障害サービスは利用者の状態によって一人当たりの利用料金が大きく変わりますが、概ね4万円程度でシミュレーションして良いと思います。

 なお、サ責の扱える40名は高齢者だけです。障害は合計されてカウントされませんので、現実には40名以上の利用者を扱えますが、対応できなくなる可能性もありますから、40名を超えたらサ責を増やした方が良いでしょう。 

 

 40名の利用者に訪問を行う場合、パートさんをそれなりの人数、雇わなければならないでしょう。

 パートさんの給料は介護報酬の概ね半額として計算します。

 すると、すべての訪問をパートさんで賄えば、売り上げ200万円であれば、100万円の粗利益になります。

 そこから、事務所の家賃や必要経費を引いて、7080万円が経営者夫婦の収入になります。

 

 夫婦二人で70万円であれば、年収は840万円となり、大企業並みの給料と言えます。

 もちろん、訪問をご夫婦でやればその分のパートさんの人件費は浮きますが、サービス提供責任者や管理者はできるだけ事務所に居た方が良いので、訪問はできるだけパートさんに行ってもらう方が良いのです。

 この点は後ほど人材確保のところで説明します。

 

9 創業時の固定費(事業所家賃等)は最小限に 

 

 都心部で訪問介護の手が足りないという声を時々聞きます。

 これは都心部では他業種の給与に比べ介護職の給与が低いということもありますが、そもそも事業所家賃が高いということがあります。

 

 都心部の不動産価格の高騰は目に余るものがあります。にもかかわらず、給付額は周辺区と同じであり逆格差ともいうべき差が発生してしまっています。

 

 これは事業所家賃が介護事業経営の経費として非常に大きなウェートを占めていることを意味しています。特に創業時はその負担は大きくなります。

 たとえば訪問介護を開業する場合、家賃はできれば10万円程度に収めたいものです。さらに同じ事務所で居宅介護支援事業所も兼業するなど、できるだけ事業コストを抑える工夫も必要です。

 

 ただし、あまりみすぼらしい事業所ですとパートさんが集まりにくいという傾向があるようです。

 なにも駅前などである必要はありませんが、働く人が通いやすく、居心地が良い事業所の方が人材確保の面で有利だと思います。

 

10 人材確保の重要性 

 

 安定的な人材の確保はこの事業を経営していく上で最重要・最優先の課題です。

 現場を知っている方ならすぐに人が辞めてしまう状況は見知っていると思いますが、介護福祉の分野だけでなく中小企業の職場はどこも離職率は高いのです。

 

 しかし、医療福祉分野の特徴として、資格があれば日本全国どこでも仕事ができることや、給与水準がどこでもあまり変わらないなど、ちょっとした理由で職場を変えやすいという傾向がこの業界にはあります。

 

 まずはパートさんの確保と定着から取り組みましょう。

 正社員は固定費が高く、介護報酬に対して人件費が8割前後になります。それに対してパートさんは5割です。正社員は事業を拡大する場合に吟味して雇うようにしましょう。

 

 最初はパートさんの確保が優先です。

 パートさんは家の近所に働きやすい職場を求めています。

 働きやすい職場とはズバリ現場の責任者の「面倒見がいいこと」です。

 介護や福祉の仕事は専門知識がある程度必要ですし、介護技術もマスターしていなければなりません。現場に不安があれば責任者に色々と相談したいのは当たり前です。

 

 そうした相談がすぐできる職場の体制や雰囲気がとても重要です。

 特に訪問系の仕事は一人で現場に入りますから、相談や情報共有体制をしっかり整備することは必須でしょう。

 

 具体的にはサ責や管理者が忙しくてパートさんが相談したくても捕まらないという状況は無いようにしましょう。仕事の不安をすぐに払しょくすることが大切です。

 そのことがパートさんの定着に繋がります。

 

 例えば、子育て中の主婦パートの場合、子供の急な病気などで、仕事を休まなければならない場合があります。

 その時、快くサ責や管理者が穴を埋められるような体制を作っておかなければなりません。

 

 地域に住む主婦のパートさんは居心地が良いと長く勤めてくれます。

 また、子育てが終われば、常勤として働いてくれ、事業の拡大に貢献してくれる場合もあります。

 

 続く

 

 

介護スタッフの有給休暇の取らせ方

 

 

 介護の仕事をしている人の多くが休暇を取りにくいという悩みを抱えています。

 そもそも、4週8休制などの週休二日の場合、他の会社員などであれば休める祭日の休みもありません。

 

 日本人は休みを取るのが下手な民族でもあります。建築業の友人は日曜日しか休みが無く、土曜日は残業扱いだとぼやいていましたが、下請け職人の給与は日当なので、みんな働きたがるため、合わせるしかないということも言っていました。

 

 

人材定着のためには休暇が取りやすいことが重要

 

 介護事業の場合、頑張って加算などを取得しても、賃金を上げることには限界があります。ただでさえ低賃金な職業なのですから、職員を定着されせるためには休暇が取れるということが非常に大切だと感じます。

 

 低賃金でも安定して一生働いていける仕事ですから、それに甘んじて休まないという部分もあるでしょうが、人材不足の折、同じ給与であれば、休みが取りやすい職場を選ぶのは当然です。

 

 筆者は介護福祉業界を目指す学生に、賃金はどこもあまり変わらないので年間の休日が何日あるか、休暇が取得しやすいかを、就職先選びの時チェックするようにアドバイスしています。

 ワークライフバランスの観点からも、働きやすい職場の定義として「休暇の取りやすさ」は最上位にくるのではないかと考えます。

 

 

介護業界は休めないという悪い風潮

 

 しかし人手不足の折、休まれると困るという事情があるのも確かです。

 管理者にしてみれば病気などやむを得ない理由でなければ、できるだけ休んでほしくないというのも本音でしょう。

 

 知り合いの若い事業所管理者は部下の有給休暇申請に、「旅行に行くのに有給使っていいんですか?」と疑問を漏らしていました。

 最初から介護職として働いている人たちは、有休は何か特別な事情が無いと取得できないものであると考えている人も多いようです。

 

 そのような風潮は悪循環となり、いよいよ介護業界から人材を引き離していきます。

 

 

休暇取得促進は国策

 

 労働基準法では有給休暇取得には理由は必要ありません。

 普通に働いている正社員の場合、少なくとも年間10日の有給休暇取得が可能です。パートスタッフも勤務年数に応じて有給休暇を取得する権利を持っています。

 詳しくは社労士さんにお問い合わせください。

 

 筆者が勤めていた東京都(地方公務員)は土日祭日、夏休み年末年始で年間130日程度の休みがありました。さらに加えて有給休暇も積極的に取得するよう上司に言われます。

 有給休暇の取得が進まない部署の管理職は、人事から指導されますから、有休取得目標を設定されたりもしていました。

 「公務員は休むのも仕事」とさえ言う人もいました。

 

 これには国として、国民の休暇日数を増やしたいという国策が背景にあります。我が国は先進国の中では休暇日数が非常に少なく、欧米人から見ると、笑い者になっている部分もあるのです。

 

 「公務員は休みが多くていいな」という人もいますが、公務員が労働者の見本となって積極的に休暇を取得しなくてはいけないのです。

 ただし、忙しい部署では休暇を取得するとその分残業が増えます。その中にはサービス残業(残業手当の予算が足りないため)も多く、有休取得の目標が達成できていない人などは、平日に有休を取得して休日に来てサービス残業する等、バカバカしい事態になっていたりしました。

 

 

有給休暇の計画的な取得

 

 さて、有給休暇を取りやすくするためには、職員一人一人に年間の取得計画を作らせるのが最も簡単な方法です。

 

 正社員であれば年間10日程度の休暇計画を毎年提出させます。日数は勤務年数で増減させても良いでしょう。

 管理者等はその予定を組み込んで、シフトを作成すれば良いのです。

 

 家族持ちの人などは、年末年始や夏休み、ゴールデンウィークなどに休暇を欲しがります。逆に独身の人は、旅行に行くにしても、そうした混雑した時期を避けて休みたいかもしれません。

 

 また、連続した休暇ではなく、月に1日2日コンスタントに休暇を取りたいという人もいるでしょう。そうした職員のニーズをうまく組み合わせて年間の労働シフトが作成できれば、誰もが気兼ねなく休暇が取れるようになります。

 

 もちろん、年末年始など休暇希望が集中してしまう時期もあるでしょう。

 そうした場合は、年末年始手当などを上乗せするとともに、年ごとに交代で休みを取るようにする方法も考えられます。この場合、勤務年数の古い人から休めるようにしてあげると良いと思います。

 

 

休暇取得を処遇改善と考える

 

 簡単な計算をしてみましょう。

 正社員10人の職場であれば、10日の有給休暇により年間100日分、シフトに穴が開きます。それを新規雇い入れ職員で埋めた場合、概ね0.5人分の人件費が必要になります。

 概算で人件費を5%上積みするだけで、10人のスタッフに年間10日の有給休暇が与えられるということです。

 

 この5%の人件費を、処遇改善のための経費としてはどうでしょうか?

 月給30万円の5%アップは31万5千円です。

 休みが取れな分、月給を1万5千円アップさせるよりも、確実に年間10日休める職場の方が、長く働いていける職場だと思います。

 

 

 

ご利用者に対する虐待防止の取り組み

 

 

介護・障害者施設などでのご利用者にたいする虐待が後を絶ちません。

 

 

虐待の要因

 

 虐待の発生要因について、27年度の厚生労働省の調査では、

1位 教育・知識・介護技術等に関する問題(65.6%)

2位 職員のストレスや感情コントロールの問題 (26.9%)

3位 職員の性格や資質の問題(10.1%)

という結果でした。

 

 また、全国に6万7千人の会員を抱える介護職の労働組合「日本介護クラフトユニオン(NCCU)」http://www.nccu.gr.jp/official/index.html

の「高齢者虐待防止に関するアンケート」調査では

1位 業務の負担が多い(54.3%)

2位 仕事上でのストレス(48.9%)

3位 人員不足(42.8%)

 

という結果になっています。

 

 

小規模事業者でも対策は必須

 

 ご利用者に対する虐待行為は、発生した場合、その介護事業者自身の事業そのものに大きな影響をもたらします。

 

 小規模事業者であれば、地域の中で存在していくこと自体ができなくなります。

 

 上記のような調査の結果を見れば、虐待が発生する組織には、職場環境や処遇の問題があることがはっきりしています。

 

 そのような職場では働きにくさゆえに職員が定着せず、恒常的に人員不足の状況が見られます。そのせいで現場でのストレスが常に高い状態にあり、コンプライアンス研修もままならず、虐待が起こりやすい状況と言えるでしょう。

 まさに悪循環です。

 

 介護業界を希望する人材が一向に増えない現在の状況では、今後も介護現場での虐待問題が発生し続けるでしょう。

 

 自らの事業所でそのような問題を発生させないためには、時に、ご利用者の数を制限して、スタッフに負担のかからないような自衛策が求められる場合もあるでしょう。

 

 

NCCUの取り組み

 

 そんな中、前述の日本介護クラフトユニオン(NCCU)は労使関係のある40法人との間で「介護業界の労働環境向上を進める労使の会」を発足させ、「ご利用者虐待防止に関する集団協定」を締結しました。

http://www.nccu.gr.jp/topics/detail.php?SELECT_ID=201708080001

 

 大企業などに勤めた経験が無いと労働組合というものがどういうものか、今一つピンとこない方もいらっしゃるでしょう。

 一般的には会社内の労働者が連帯して、使用者(経営側)に対して労働者の雇用の維持や処遇改善などを交渉していくものです。

 労働組合法により権利保護されています。労働者は誰でも関連する労働組合に加入することが可能です。

 

 小規模な事業者が多い介護業界では、会社単位で労働組合を作ることが難しく、日本介護クラフトユニオンのような職業別の労働組合が必要なわけです。

 

 

虐待防止の具体策を提示

 

 今回締結された「ご利用者虐待防止に関する集団協定」は、労働者側及び使用者である会社側両者の危機感から締結されたものでしょう。

 

 先にも述べたように、虐待の発生は会社の経営自体を危うくします。また、労働者側から見れば、職場環境の改善そのものが虐待の防止ですし、業界全体としても介護人材を増やしていくためには、このような悪いイメージを払しょくしなければなりません。

 

 この協定では労使における虐待防止のための具体的取り組みを提示してくれています。

 この内容はNCCUに関係していない事業者にもとても有効なものだと思いますのでご紹介します。

 

 協定の概要(一部)は以下の通りです。労使はこれらを協同して取り組むとしています。

 

1 ご利用者虐待防止のための教育システムの構築

(1)社会的責任とコンプライアンスを高める研修を行う。

(2)認知症に対する知識と理解のための研修を行う。

(3)介護現場のキーパーソンである管理者のための研修を行う。

 

2 ストレスマネジメントの実践

 ストレスの予防、軽減、解消のためのストレスマネジメントに取り組む

 

3 方針の明確と周知

 法人としてご利用者虐待防止に関する方針を明確化し、従業員に周知する。

 

4 法人内に相談窓口(担当)の設置と周知

 

5 相談担当の教育・研修の実施

 

 虐待防止のために、同様の取り組みを事業所内で行っていくことをお勧めします。

 

 

取り組む場合の留意点

 

 特に重要なのは、3 方針の明確と周知だと筆者は考えます。

 明確な方針を従業員に周知することで法人としての覚悟と責任を明確にします。

 どんなに良いプログラムを構築しても、スタッフが知らなければ役に立ちません。法人が虐待防止に本気で取り組むという姿勢をはっきりと見せる必要があります。

 

 法人本部がそのような表明をすると、現場でそれに逆行するような事態が発生した場合、(例えば人員不足にもかかわらず、管理者が営業成績を伸ばそうとして無理に新規利用者を受け入れ、スタッフの残業や休日出勤が増えているなど)従業員が遠慮なく内部告発できるようになります。

 

 虐待につながるような状態の芽を従業員皆で摘んでいくような雰囲気を作る必要があるでしょう。

 

 また、スタッフに認知症に対する知識が不足している場合、簡単に虐待につながることが多いと思います。

 施設系の事業所などで無資格者のスタッフが働いている場合は、特に注意が必要だと思います。

 暴力など問題行動のある人を理解して、適切なケアができるようになるには、相当の知識とプロ意識が必要だと思います。

 

 はっきり言えば、知識のない人には認知症の介護はできないと考えた方が良いと思います。

 

 

 

地域密着型サービス(GH・小多機能)への参入

 

 

第7期介護保険事業(支援)計画に向けて

 

 全国の自治体で地域の第7期介護保険事業(支援)計画の検討が佳境に入っています。

 平成30年春には全国で、向こう3年間の地域の介護事業計画が発表されます。

 各事業者様においては地域自治体が年内にも公表するパブリックコメントなどを通してその内容を確認していただけますようお勧めいたします。

 

 

向こう3年間の地域密着型サービスの計画が発表されます

 

 第7期介護保険事業(支援)計画で注目したいのは地域密着型サービスの整備計画です。

 特に事業を拡大したい事業者様においては特に注目していただきたいポイントです。

 もしも平成30年度の公募に参加したいということであれば、今から準備をされる必要があると思います。

 

 

地域密着サービスの整備が進んでいない

 

 在宅ケアの拠点となる地域密着型サービスのグループホームや小規模多機能居宅介護事業所などは思ったように建設が進でいない地域があるようです。

 このままでは2025年の必要数を満たさないばかりか、在宅ケアそのもに重大な影響をもたらす可能性があります。

 こうした地域密着型の施設が増えない結果として見えるのは「無届ハウス」など不適切な介護施設の増加です。

 特に低所得者層の高齢者は劣悪な環境で介護を受けなければならない状況が懸念されます。

http://www.koujuuzai.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/05/h28_jigyo3.pdf

 

 

東京都のマッチング事業

 

 要介護度が高くても在宅でケアを実現していくためには、ケアマネージャーなど関係者の能力も重要ですが、必要に応じて柔軟に利用できる施設等社会資源が地域に整備されていなければなりません。

 

 この状況を打開するために、東京都はグループホーム用地のオーナーと事業運営者のマッチング事業を開始しました。

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/06/13/07.html

 小規模多機能にも欲しいマッチング事業ですが、とりあえずグループホームだけのようです。

 グループホームも小規模多機能も介護事業として補助金等のスキームは同じなので、これがうまくいけば、小規模多機能や他の施設系地域密着型サービスにも波及するかもしれません。

 

 

不動産投資としての地域密着型サービスのメリット

 

 都の事業の仕組みは、土地所有者とグループホームを運営する事業者を引き合わせる仕組みになります。

 

 人口減少や都内でも空き家の増加などが進み、未利用地が増えていく傾向にあります。

 しかし、マンションなど収益性の高い不動産投資にはそれなりの広さの土地が必要になりますから、中途半端な広さの土地の場合はなかなか利用方向が定まらないことが多いようです。

 結果、駐車場やアパートなどの不動産投資に向けられる場合も多く、アパート経営投資のCMが盛んに宣伝されています。

 

 100坪程度の土地がある場合、アパート経営がまず最初に思いつくかもしれません。

 しかし、グループホームや小規模もその程度の土地で十分に建設が可能であり、しかも建設費の多くを公的補助金で賄うことが可能です。

 不動産投資としては断然、こちらの方がお得であることは間違え無いでしょう。

 

 しかし、土地オーナーにとって、アパート経営であれば、不動産業者や建設業者に丸投げできますが、介護施設の建設には誰に頼めばよいのかわかりません。得だとわかっていてもなかなか手を出せないのが本音だとは思います。

 

 また、アパート経営関係の営業は積極的で、オーナー側への売り込みも激しく、そちらに流れてしまう傾向は否めません。

 

 

運営業者も人手不足で積極的になれない

 

 介護事業者にとっても運営を請け負うためにはスタッフを揃えなければなりませんから、現在の人材不足の状況下では、請け負っても人を揃えられない恐れがあるために、やりたくても安易に手を出せない状況があるでしょう。

 

 アパート経営の場合、入居者が入らずに収益が上がらなくても、基本的に建築業者等が不利益を請け負うことはありません。立ててしまえばそれで収益になるわけですから、営業も積極的になるわけです。

 

 その点、グループホームなどは入居者がいなければ不利益は運営事業者が負うことになります。まして必要な人員が揃えられなければ、開業すらできないのです。そうしたデメリットがあるために手を挙げない運営業者も多いのでしょう。

 

 

公募では地域密着の地元の事業者が優先される傾向も

 

 第7期の計画が発表されれば資金力のある大手介護事業者がこぞって公募に参加するでしょう。大手はスケールメリットにより人材不足でもなんとか人を揃えられる力があります。

 ただし、既に大手が開業している地域では、同じ事業者が参入することは無いようです。公募の選定でも地元の事業者が優先される傾向はあるようです。

 

 地域に根差して介護事業を営んできた中小事業者にとっては事業を拡大するチャンスです。100坪ほどの土地が借りられれば事業化できます。初期費用の融資は必要になりますが、公募に選定されれば地元の金融機関は融資してくれるでしょう。開業すれば補助金が出ますので返済はそれで可能です。

 

 実は、人員については、もし開業時に揃えられなければ、開業日が遅れるだけのことです。グループホームの場合、1ユニットだけ開業というケースもあります。

 

 もし興味があれば、今すぐにでも地域自治体の担当課に相談されることをお勧めします。

 

 

 

混合介護で生活援助はどう変わるのだろう(訪問介護)

 

軽度者の生活援助が保険外へ

 

 介護予防・日常生活支援総合事業が始まり、要支援者の生活援助が、介護給付以外のサービスに変わりつつあります。

 

 日常生活支援総合事業の生活援助は単価も安く、既存の訪問介護事業で対応するには見合わないという声もあり、自治体によってはシルバー人材センターなどの対応に切り替わっているところもあります。

 

 流れとして単なる生活援助のみの介護は無くなる方向なのでしょうか?重度の方は別としても軽度の利用者の生活援助をどうしていくのか、訪問介護事業所経営の観点から考えてみたいと思います。

 

 

人手不足で生活援助だけの仕事に対応ができない

 

 現在、訪問介護は人手不足で、身体介護でさえも対応できない場合があるのに、単価の安い生活援助はもう対応できないという声をよく聞きます。

 

 身体介護に付随した生活援助は仕方ないとして、軽度者の生活援助はもう昔のようには提供できなくなっている実態があると考えます。

 

 この流れは国の介護保険から生活援助を切り離す方向とも合致しており、自立支援に繋がらない生活介護は減っていく方向なのでしょう。

 

 

訪問介護は重度者向けのサービスが中心に

 

 もともと訪問介護員は、家政婦からの転職も多く、介護保険制度発足時は生活援助が盛んに提供されてきた経緯もあります。要支援者の部屋の掃除も昔は普通にケアプランに載せられますが、今はなかなか難しい状況でしょう。

 

 訪問介護事業所の経営者の中には生活援助のみの利用者は断って、身体介護中心にサービス提供をしたい意向も強くなっています。

 また、医療的ケアなどレベルの高い訪問介護をサービスの中心に据えることで、生活援助をほとんど行わない事業所もあります。

 

 実は、医療的ケアに積極的に対応すると、障害者サービスを含め、その依頼だけで手が一杯で、通常の訪問介護には対応できない状況になる場合もあるようです。

 それだけ重度者向けサービスは不足しているのかもしれません。

 

 実際その方が収益性も高く、筆者はこれからの訪問介護はレベルの高いサービスを提供することで生活援助は行わない方向で経営したほうが良いと考えています。

 

 

混合介護における生活援助の位置づけは?

 

 国は次期改正に向けて、保険外のサービスと介護保険サービスを組み合わせて提供する混合介護について検討しています。

 訪問介護事業では保険外の生活援助をどのように組み合わせるかが大きなテーマとなっているでしょう。

 

 先に述べた通り、今後の訪問介護事業所はできるだけ重度者向けのサービスを充実させ、身体介護中心の提供体制になる方向であると考えます。

 

 しかし、訪問介護が生活援助を行わない場合、だれがどのようにそのサービスを提供し、介護保険制度や障害者福祉制度の中での位置づけがどうなるのか疑問が多いでしょう。

 また、そのサービスが混合介護として訪問介護事業に組み込まれるのでしょうか?

 しかし、それであれば、現在でも行っている生活援助を自費化したサービスと何が違うのでしょうか?

 さらに、現状では経営的に生活援助のサービスは合わないわけですから、そのような混合介護に意味があると思えません。

 

 

保険外・低コストの家事代行事業との連携

 

 保険外の生活援助サービスを外部の独立したサービス事業者が実施するとすればどうでしょう?(これを混合介護というのか疑問ですが)

 

 確かに、買い物代行や掃除といったサービスは訪問介護員である必要はありません。それは軽度の利用者だけでなく、重度の利用者でも同様でしょう。

 

 そうした簡易なサービスがケアマネジメントの中で社会資源として位置づけられ、適切に提供されれば、提供主体は学生のアルバイトでも構ないわけです。

 

 しかし、自宅に訪問して提供する以上は、訪問介護と同様に手順書的なものが必要にはなるでしょう。その場合、訪問介護事業所とのどのような協働体制を築けば良いのでしょうか?

 

 例えば、低コストで保険外サービスを提供できる家事代行事業者が、訪問介護事業所と連携し、無資格のアルバイトによる生活援助も、訪問介護計画書の中でその自立支援の役割が適切に位置づけられることができ、さらに、訪問介護員の管理の元でサービス提供ができれば、保険外の低コストの生活援助も可能かもしれません。

 

 しかし、それを実現するためには、

 保険外事業者と介護事業の調整を誰がどうやるのか?

 訪問介護事業所にとってどんなメリットがあるのか?(なにがしかインセンティブがなければ誰も連携しません)

 保険外事業者に収益性は見込めるのか?(見込めなければ誰も参入しません)

 など、多様な問題があり、それらをクリアする枠組みを厚生労働省が提示できるのか、いささか疑問です。

 

 今のところ、ダスキンやベアーズといった家事代行ビジネスはプレミア感のある高付加価値なサービスモデルが主流になっています。

 高齢者や障害者に必要な家事代行は、そのようなプレミアムなものではないでしょう。国中が人材不足の中で、簡易で低コストの家事代行ビジネスモデルが成り立つか、IT活用するなど民間の力がなければ不可能な気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

介護職の外国人技能実習制度で人材不足は解消するか

 

 今回は、今年中に導入される予定の、外国人による介護職技能実習制度について考えてみたいと思います。

 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147660.html

「外国人技能実習制度への介護職種の追加について」

 

 

 外国人技能実習制度とは

 

 この制度は平成5年に創設されました。

 簡単に説明すると、国際協力事業であり、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としていす。

 これまで、農業・漁業・建設業・各種製造業などで受け入れが行われてきました。

 最長5年間の在留が可能ですが、その後は帰国して自国の産業に貢献することが求められています。

 昨今、一部悪質な受け入れ企業により、賃金の未払いなどの人権侵害行為があり、今年度から実習生保護強化などの面で制度の見直しが行われました。

 ここに介護事業が加わることになります。

 

 

 国内の人材不足対策ではない

 

 国は、この制度が、決して日本国内の労働力不足を外国人で補充して解消することを目的としたものでないことを明言しています。

 制度上、在留期間も最長5年であり、その後は帰国しなければなりません。実習終了後の継続在留許可は認められていないのです。

 

 しかし、今回、介護職に関わる議論を見てみると、将来、はっきりとした介護人材供給の制度にしたいという意思が見え隠れします。

 

 それがはっきりしたのが、別に発表された介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格の付与です。

 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150881.html

「介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格「介護」の創設について」

 

 これは、外国人が介護福祉士の試験に合格し、継続的に介護職として働いている間は在留許可が下りるという制度です。

 

 今のところは、介護福祉士の専門学校等に通う必要があり、外国人実習生には適用されないようですが、将来、実習生が介護福祉士試験に合格した場合も認められるのではないかと考えられます。

 

 つまり5年間実習生として働いている間に勉強し、介護福祉士試験に合格した外国人を、継続的に介護人材として確保するという狙いです。

 

 

実習生の受け入れをするにはどうすればいいのか

 

 外国人実習生を受け入れるには、監理団体を通して行います。監理団体は商工会や公益法人、協同組合などで、営利目的の団体ではありません。

 「介護 外国人実習生 監理団体」で検索するといくつかの団体がヒットしますので探してみてください。

 

 実習生の受け入れには先の人権侵害問題もあり、いろいろな取り決めがあります。また、入管などの手続きもありますので大変複雑な業務が必要になります。監理団体はそうした業務を受け入れ企業と実習生の間に入って取り扱います。また、受け入れ組織に対する指導チェックも行いますので、当然、料金がかかります。

 

 つまり、手続きには結構な時間がかかるようです。また、実習生は現地で日本語教育を1年ぐらい受ける必要があります。介護職についてはまだ制度は始まっていませんので、受け入れたくてもすぐに受け入れることはできません。関心のある方は各監理団体に問い合わせてください。

 

 

実習生のコミュニケーション能力はどれくらい?

 

 介護職にはある程度の日本語の能力が求められます。

 国は入国時、日本語能力試験のN4レベルを求めていますが、実際に業務をするにはN3レベルが必要と言われています。

 

 N4は「基本的な日本語を理解することができる」レベルです。

 【読む能力】

・基本的な語彙や漢字を使かって書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。

 【聞く能力】

・日常的な場面で、ややゆっくりと話なされる会話であれば、内容がほぼ理解できる。

   

 N3レベルとは「日常的な場面で使つかわれる日本語をある程度理解することができる」レベルです。

 【読む能力】

・日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。

・新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。

・日常的な場面で目にする範囲の難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。

 【聞く能力】

・日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話しの具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。

 

 

 実習生はN4レベルで入国できますが、1年程度でN3に受からなければなりません。

 基本的には、現地でN4レベルまでの日本語能力を身につけてから日本に来ますが、日本に来てからも日本語の勉強を継続しなければなりません。

 

 もし、介護福祉士試験を受験するにはその上のN2レベル以上(新聞など難しい文章を読んで理解できるレベル)の日本語が必要になるでしょう。

 

 

訪問系事業は今のところ受け入れ不可

 

 訪問介護事業所等の受け入れは今のところ認められていません。これはコミュニケーション能力の問題や、日本文化や生活の理解が進まないと、サービスがうまく提供できないであろうということと、一人で訪問するわけですから実習生に対する不利益が起きる可能性が懸念されるからです。

 

 国がイメージしている受け入れ先は、施設系のチームで働くような職場でしょう。実習生が戸惑ってもすぐに指導者がフォローできるような体制が必要だからだと考えます。

 

 

受け入れ法人の条件は?

 

 経営が一定程度安定している機関として、原則として設立後3年を経過している機関に限定しています。その他以下の条件があります。

・ 受入れ人数の上限として、小規模な受入機関(常勤職員数 30 人以下)の場合、常勤職員総数の 10%までとする。つまり、常勤職員が10人であれば受け入れ人数は1人までです。

・ 受入れ人数枠の算定基準として、「常勤職員」の範囲を「主たる業務が介護等の業務である者」に限定する。

・ 技能実習指導員の要件として、介護職として5年以上の経験を有する介護福祉士等を求める。

 

 なお、給与に対する補助金はありませんが、厚生労働省関係の助成金が利用できる可能性があります。監理団体に問い合わせると良いでしょう。

 

 

小規模事業者にはあまりメリットは無い?

 

 結局、介護職の常勤職員が10名程度の小さな企業の場合、1人の実習生しか受け入れができません。そのために、先に述べた煩雑な業務を行い、さらに監理団体に費用を払うことはあまりメリットは無いかもしれません。

 

 大規模な企業や社会福祉法人がある程度の規模で実習生を受け入れることはメリットがあるでしょう。

 

 小規模事業者にとってメリットが出てくるのは、こうした実習生達が介護福祉士に合格し、継続的に介護職として働けるようになってからだと思います。おそらくそうなれば訪問介護などでも働けるでしょう。

 

 つまり5年先にこの制度によって、外国人介護職がどれだけ増えているかがキーになると思います。