実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その6

 

 

 

ご利用者ファイルの工夫

 

 ご利用者ファイルにどのように書類関係を整理すればよいのか、一つの例を示します。

 行政が見に来た時だけでなく、担当外のヘルパーなどが見てもわかりやすいようにファイリングしておくことが大事です。

 各種資料のファイリングの順番と内容及びポイントは以下の通りです。

 

 
要介護  
インデッスク 内容及びチェックポイント
1 連絡調整記録 メモなどもクリアポケットなどに逐一入れる
2 状況報告 ケアマネージャー等への状況報告
3 利用申込 FAXでもOK
4 保険証 原本確認の月日と確認者印を含む
5 アセスメント 基本情報を含む
6 ケアプラン 1表から4表 サ担録・照会文書を含む
7 契約書 緊急時の連絡先未記入に注意
8 重要事項説明書 料金改定時の別紙同意書含む
9 訪問介護計画書 要本人印
10 手順書 ヘルパーへの指示書などを含む
11 その他資料 行政への報告書や苦情関係などその他の資料
12 自費関係 自費契約書など自費関係書類
     
要支援  
インデッスク 内容
1 連絡調整記録 メモなどもクリアポケットなどに逐一入れる
2 状況報告 予防は毎月報告が必要
3 利用申込 FAXでもOK
4 保険証 原本確認の月日と確認者印を含む
5 アセスメント 基本情報を含む
6 ケアプラン 1表から4表 サ担録・照会文書を含む
7 契約書 緊急時連絡先は別に作成
8 重要事項説明書 料金改定時の同意書含む
9 訪問介護計画書 要本人印
10 手順書 ヘルパーへの指示書などを含む
11 モニタリング 定期評価を含む
12 その他資料 行政への報告書や苦情関係などその他の資料
13 自費 自費契約書など自費関係書類
  ※ 各書類は最新のものがトップに来るように
  ※ 緊急連絡表を別に作っている場合は、ファイルの最初に

 

 

 誰でも書類を適切な場所にファイリングできるように、この表を書庫などに張っておいたり、各ファイルのトップに綴じておいても良いでしょう。

書類を綴じる場所がバラバラになると、必要な書類があるのかどうか確認することが困難になってしまいます。結果、書類の整備自体が疎かになり、実地指導で指摘を受けるようになるでしょう。

 

ファイリングは日常業務の中で担当を決めてルーチン化する等、いつでも整理できる体制にしておきたいものです。

 

 

インデックスの作成

 

 ファイリングの際には、インデックスを貼っておくことが大切です。

 インデックスのおすすめは以下のようにパソコンで大量に作成印刷できるものです。

 

  コクヨ「合わせ名人」http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/awase/

 専用ソフトでラベルやインデックスを作成できる。使い方が少しわかりにくいが、慣れてくると非常に便利です。

 余裕がある時に大量に作っておくと良いでしょう。

 

 

 なお、終了したご利用者の書類はインデックスは不要であると考えます。ファイルとインデックスの張られた仕切り用紙は使いまわして、板目紙などに綴じひもで綴じておけば良いでしょう。

 

 ファイルにご利用者名をテプラなどでせっせと作っている事業所も多いかもしれませんが、テプラは結構手間がかかります。

 背表紙のご利用者名は、エクセルなどで作ったご利用者名簿の名前の部分だけを拡大印刷してカットし、「替背紙式」という背表紙に紙を差し込めるタイプのファイルの背表紙部に差し込んだ方が簡単です。

「替背紙式リングファイル」

http://www.kokuyo-st.co.jp/search/1_detail.php?sid=100117035

 

 どうしてもテプラで作りたい方は、パソコンにつながるタイプのテプラを使えば、効率的ですが、少し値段が高いです。

キングジム パソコン接続用テプラ

http://www.kingjim.co.jp/products/tepra

 

 

保存年限について

 

 介護関係書類の保存年限は規定により、

・利用者関係の資料はサービス終了後2年。

・給付関係書類は作成から5年となっています。

 

 給付関係書類が5年になっているのは、国保連などが間違えて事業者に支払ってしまった報酬の債権としての返還請求権が5年となっているためです。

 

 ご利用者の訪問計画書やアセスメントなど記録は、そのご利用者のサービスが終了してから2年間です。

 しかし、自治体によっては独自に規定を作っていて、終了後5年という自治体もありますので確認が必要です。

 最初から一律5年で保存しておいても良いかもしれません。

 

 ご利用者関係の保存ファイルは終了年ごとにまとめておきます。

 前述したように専用のファイルから外して、板目紙などに年を書いて綴りひもでまとめておけばインデックスなどは必要ないと思います。

 

 サービス提供の記録はご利用者情報の記録になります。

 従ってサービス終了後2年以上の保存が必要になるのですが、多くの事業所では月ごとや年ごとにまとめてファイリングしていることが多いと思います。

 そのため、終了したご利用者だけを抜き出して別にまとめるのは手間になりますので、しない方が良いです。

 サービス提供の記録は年月日で管理できるようにしておいた方が、請求関係の書類との突合が楽ですから、できるだけ残しておいた方が良いでしょう。

 5年ほどファイルのまま保存し、その後は年ごとにまとめておけば良いと思います。少なくとも10年程度は残しておいた方が良いかもしれません。

 

 

家族等からの開示請求

 

 亡くなったご利用者がどのような介護を受けていたかを、家族等が情報提供請求してくる場合があります。

 例えば、遺産相続などで係争している親族などが、同居家族がどのような介護をしていたか調査をしてきたりします。

 その場合、終了後2年分は必要に応じて開示する必要が出てきますので、注意が必要です。

 

 情報開示請求の手続き等については以下をご参照ください。

「福祉分野における個人情報保護に関する ガイドライン」第8 保有個人データの開示等に関する義務 P34参照

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/250329fukusi.pdf

 

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その5

 

9 サービス提供の記録(必須)

 

 事業所により任意の様式を使っていると思います。

 名称も「サービス実施記録」など様々なようですが、規定上は「サービス提供の記録」となります。

 2枚複写のものが多いと思いますが、毎回、控えを利用者に交付することは定められてはいません。規程では申し出があった場合に写しを交付すればよいとなっています。

 しかし、サービス提供の内容をご家族などに知っていただくことができるため、控えがあった方が良いとは思います。

 

 

記録の記入ミスは介護報酬返還になる場合も

 

 サービス提供の記録は、介護保険の対象となる適正なサービスを提供したことを証明し、報酬請求の根拠となる書類です。

 そのため、記録に何らかの記載漏れ等の不備がある時は、適正なサービスを提供したことが確認できなくなるため、介護報酬返還の対象となります。

 

 具体的には、ケアプランでは身体介護1生活援助1のプランであるにも関わらず、サービス提供記録には生活援助のみが記載されていたような場合、身体介護の提供記録が確認できませんので、報酬返還の可能性があります。

 

 実地指導ではこの指摘が非常に多く、パートのヘルパー等が不注意で記録ミスを繰り返しており、大きな金額を返還しなければならなくなるケースなどもあります。

 

 そのため、すべてのヘルパーには、記録の重要性について周知徹底を図るとともに、サービス提供責任者等は、訪問介護員が適正にサービス提供記録を作成していることを確認しなければならないでしょう。

 

 通常の業務の流れでは、国保連への請求業務の際(データ入力の際)にチェックするのが良いと思います。この作業時に記録内容をチェックしないと請求ミスになりますので作業するスタッフにはミスが無いようにチェックを徹底する必要があります。

 

 また、訪問するヘルパーは、ご利用者ごとに適切な提供記録の見本を確認することも必要でしょう。ご利用者宅に、正しいサービス提供記録の見本を置いておき、それを見本に記録を付けるように指導する必要があります。

 

 提供する介護サービスの内容が状況により変わる場合は、「身体介護」と「生活援助」の中ではいくら内容が変わっても良いのですが、ご利用者の状態などにより「身体介護」や「生活援助」そのものが無くなってしまったり、プランには無いサービスを緊急に提供しなければならない場合は、必ずサービス提供責任者などに連絡し、指示を仰ぐようにヘルパーに徹底しておく必要があります。

 現場のヘルパーが自己判断でサービス内容を勝手に変えることが無いようにしなければなりません。

 

 

「利用者の心身の状況」の記録について

 

 記録すべき事項は以下の通りです。

 

①訪問介護の提供日及び提供時間

②利用者名及び訪問介護員名

③身体介護・生活援助・通院等乗降介助の別

④提供した具体的な身体介護サービス及び生活援助サービスの内容

⑤利用者の心身の状況

 

 市販の「サービス実施記録」等には「⑤利用者の心身の状況」を記入する欄が無いものがあります。

 バイタルの記録はあるのですが、「心」の記録を書く部分がありません。

 これを記入できる部分としては、様式によって様々ですが「特記事項」「観察内容」「ご利用者の言葉」などといった欄であると思います。

 

 通常はこの欄に「利用者の心身の状況」を記入すべきなのですが、ヘルパーがしっかり理解していないため、「特に変化なし」などと書いてしまい、実地指導などで指摘されるケースが多いです。

 

 「⑤利用者の心身の状況」は必ず毎回記録しなければならない事項です。

 「身」の部分はバイタル記録で良いとして「心」の部分は必ず何か書かなければなりません。

 ここの記録の仕方は行政なども良く指導しているようですが、決して「変化なし」などとは書かず、ご利用者の様子を書くようにしましょう。

 

 状態が安定されているご利用者の場合、記録の仕方はある程度パターン化されてもいかし方が無いと思います。たとえば以下のようなパターンを使いまわすしかない場合もありますが、記録としては成立します。

 

「穏やかに過ごされています」

「痛みや苦痛の訴えはありませんでした」

「時々不安を訴えていらっしゃいます」

「元気で過ごされています」

「不調の訴えはありませんでした」

「口数は少ないですが安定していらっしゃいます」

 

 などなどです。

 

 毎回同じになってしまいますが、変化がない場合でも、上記のようなパターンを繰り返し記入しておくしかないと思います。

 行政は「変化なし」は記録していないのと同等とみなします。

 

 

利用者の確認印

 

  運営基準上、必ず、利用者からの確認の押印を受けなければならないという定めはありません。しかし、多くの様式には確認印の欄がありますので、印欄がある場合は押印したほうが無難でしょう。

 

 様式を選ぶ場合は、上述した記録事項をすべて満たし、無駄に印鑑欄が無い様式を選ぶ方が、業務は効率的だと思います。

 

 

 

 次回はファイリングの工夫や保存年限について述べます。

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その4

 

 

 

 今回はケアプラン関係についてご説明します

 

7 ケアプラン(必須)

 

 ケアプランが無い場合は原則サービス提供できません。最新のものを必ず備えておくようにしましょう。

 ただ、ケアマネージャーによりケアプラン更新の際に作成が遅れたりする場合がありますから、注意が必要です。

 しっかりしたケアマネージャーであれば心配ないのですが、少しルーズなケアマネさんがいる場合は、マークしておいて認定期限が切れたら催促したほうが無難であると思います。

 

 

サービス担当者会議の要点(4表)について

 

 いわゆるサ担録はケアマネージャーが作成するものですが、サービス事業所に配布してくれない場合も多いようです。

 ケアプラン自体もそうですが4表をサービス事業所に配布する義務がケアマネに無いため、そのようになってしまいます。

 そうすると、事業所としてはサービス担当者会議に出席した証明が必要になります。

 欠席時は「サービス担当者会議の照会」を控えておけば良いのですが、出席した場合は、会議の日時、場所、出席者、話し合った内容やポイントをメモでも良いから保管しておくようにしましょう。

 

 問題は、認定更新があったのにも関わらず、サービス内容に変更がないためサ担が開かれない場合です。

 ケアマネの怠慢ですが、サービス事業所にとっては困った問題です。開くように要請するのも憚れたりします。

 そういう場合は電話でも良いですから「サービス内容に変更が無い」かだけはケアマネに確認します。そしてその日時と内容をメモしておき保管します。そのように防衛してください。

 

 

サービス内容に変更があった場合

 

 この場合も、変更したケアプランを配布してくれない場合があります。

 軽微な変更の場合はそうなります。しかし、場合によってはケアプランに無いサービスを提供しなければならなくなるケースがあり、特に生活援助が新たに加わったりすると、問題が大きくなります。

 ケアプランに無い生活援助は不正性請求になってしまう可能性が高く、実地指導などで返還命令が出たりしますので注意が必要です。算定額が変わる場合は何とかお願いしてケアプランを修正してもらいましょう。

 しかし、サ担を開くのが面倒で変更してくれないようなケースもあるようです。その場合は、またメモの登場です。

 ケアマネに変更を指示されたこと、変更したケアプランを配布されなかったこと。日時、対応者などをメモして控えておいてください。

 

 

8 連絡調整記録(必須)について

 

 介護保険法ではサービス事業者は「居宅介護支援事業者・介護 予防支援事業者に対する情報の提供及び保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携」が義務付けられています。

 これを実現しているかどうかを確認するための証拠書類については、ケアマネへの毎月のルーチンの報告書や「連絡調整記録」のようなものが必要になります。

 

 通常の訪問介護事業所は、ケアマネとは電話等で必要に応じて連絡調整をしているでしょう。また、必要に応じて訪問看護や地域の他のサービス主体とも連絡調整しているかもしれません。

 そうしたものを記録しておくのが「連絡調整記録」になります。もちろん上述してきた「メモ」もこの記録に該当します。

 

 タイトルは「連絡調整記録」でも「連絡調整メモ」でも単なる「メモ」でかまいませんが、形式としてはケアマネの「支援経過」に似た様式が良いでしょう。

 日々の電話や直接対面による連絡調整の内容について、メモできるようになっていればOKです。特にパソコンなどで記入する必要は無く、手書きでも大丈夫です。業務負担軽減のためにサッと記録できるように手書きの方がお勧めです。必要な記入事項は以下の通りです。

 

「連絡調整記録」必要事項

 

1 日時

2 相手(連絡調整の相手、ケアマネや家族など)

3 手段(電話や面談など)

4 連絡調整内容

5 対応者(誰が対応したか)

 

 これらをご利用者別にエクセルの表などで作成し、一つにファイリングしておきます。事業所の誰でも記入できるように、わかりやすい場所に置いておくと良いでしょう。

 その後利用者の1枚の表が一杯になったら、それを該当するご利用者ファイルの方に移して置き、新しい表と差し替えます。

 実地指導などで連絡調整の記録を求められたらこれを見せればOKです。上述したメモもこれに書いておけば大丈夫でしょう。

 そのご利用者にかかわる電話等の連絡調整内容はできるだけこれに記入するようにしましょう。そうすることで、サービスの質の実態が浮かび上がってきますので、役所が見に来ても「よくやっているな」と評価してもらえると思います。

 

次回は「サービス提供の記録」や利用者別のファイリングのやり方についてご説明します。

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その3

 

 

 

6 モニタリング(評価)

 

 基準上、モニタリングは介護予防(総合事業)では必須です。

 要介護者の訪問介護の場合は、基準ではモニタリングが必須とはなっていませんが、訪問介護計画書に、短期目標と長期目標を記載している以上、これについて達成度を評価する必要があります。

 ここでは予防と介護で分けて説明いたします。

 

 要介護の目標達成度評価

 

 要介護の場合、モニタリングというよりも、「目標の達成度評価」と言った方が良いでしょう。

 目標の達成度評価表などの様式は特に決まりはないのですが、区市町村によっては訪問介護計画書に評価欄が設けられていて、そこで評価するようになっている場合もあります。

 自治体から様式を提示されていない場合は任意様式で評価をしておくと良いでしょう。

 その場合は以下の情報を記載するようにしてください。

 

目標の達成度評価表に記載する基本的な内容

 ① ご利用者の基本情報

 ② 評価年月日

 ③ 評価者名(基本的にはサ責)

 ④ 短期目標(訪問介護計画書に記載してあるもの)

 ⑤ 短期目標の達成度評価

 ⑥ 長期目標

 ⑦ 長期目標の達成度評価

 ⑧ 計画の見直しの必要性

 ⑨ ご本人の満足度や意向

 ⑩ ご家族の満足度や意向

 ⑪ 事業者情報

 

 もちろんこれらの内容を訪問介護計画書に記載できるようにしておいてもOKです。

 ⑨⑩の満足度はチェック方式で良いでしょう。実はこの満足度の評価は予防では必須項目になっています。

 

 なお、この目標達成度評価は担当ケアマネージャーに報告する必要がありますので、その辺を踏まえて作成したほうが良いかと思います。

 ケアマネージャーによっては「サービス状況報告」を依頼してくる場合があります。短期目標の評価をしたら、この「サービス状況報告」と一緒に送れば良いと思います。

 「サービス状況報告」を依頼してこない担当ケアマネージャーに対しても評価をしたら本評価表を提出するべきです。

 

 要介護のモニタリングは規定がしっかりないために、業務上混乱しやすい部分です。次に説明する予防のモニタリングと混同しやすく、ケアマネへの報告業務のやり方にも関係してきます。

 評価は毎月する必要はありません。あくまで短期目標の評価期間で適切に評価すれば良いでしょう。予防のモニタリングと混同して毎月評価をしている場合は業務量が増えるだけですから整理しましょう。

 

 

 予防のモニタリング

 

 介護予防・日常生活支援総合事業に変わってから、業務のやり方が変わっている部分もありますが、従来の介護予防訪問介護(要支援者に対する訪問介護)の基準は変わりがありませんので、それを踏まえてご説明します。

 

 予防のモニタリングのチェックポイントは以下の通りです。

 

 ①サービス提供責任者は、介護予防訪問介護計画に記載したサービスの提供を行う期間が終了するまでに、少なくとも1回は、当該介護予防訪問介護計画の実施状況の把握(「モニタリング」)を行う。

 ②サービス提供責任者は、モニタリングの結果を記録し、介護予防支援事業者に報告しなければならない。

 ③モニタリングの結果を踏まえ、必要に応じて介護予防訪問介護計画の変更を行う。

 ④介護予防支援事業者にサービス提供状況等を月に1度報告しなくてはならない。

 

 ①と④は基本的には違うものです。

 ①は「提供期間」中1回行って作成すればよいものですが、④は毎月作成しなければなりません。

 ①の様式については自治体の様式がある場合が多いですが、④については様式が特にありません。ファックス送信表に状況を記載して送るだけでもOKです。

 予防については基本的に地域包括の指示に従えばよいのですが、予防のやり方を踏襲して、要介護の方も同じようにやると、無駄な仕事が増えてしまいますので注意しましょう。

 特に毎月の状況報告は要介護の訪問介護では必須ではありません

 

 要支援では要介護化の予防が最重要課題ですから、きめ細かいモニタリングと状況把握が必要になります。しかし、要介護の場合はご利用者により状態は様々ですので、状況把握の頻度も一定ではありません。

 状態が安定しているご利用者に関しては、毎月状況報告を行う必要が無い方もいらっしゃるでしょう。

 

 

7 手順書(研修資料等として必須)

 

 手順書はサ責が訪問業務を行っているような、小さな事業所では作っていない場合もあるかもしれません。

 指定基準上必ず作成しなければならないものではありませんが、研修資料もしくは業務マニュアルとしての位置づけもありますので、作成すべきであると考えます。

 

 各事業所の運営規定には、職員研修の項目があると思います。基本的に事業者は、どんな形であれ職員研修を実施しなければなりません。

 手順書はスタッフへの研修実績を証明する資料になります

 また、事業所の業務の質を評価する上で、マニュアルの整備状況が評価されますが、手順書がしっかり整備されている場合は、それを業務マニュアルの一部として評価することができるできます。

 

 手順書は先に述べた「老計第 10 号 」訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等についてを参考に作成すると良いと思います。

 

 

 次回はケアプラン関係について説明します。

 

 

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その2

 

 

 前回の続きです。

 

4 被保険者証と負担割合証は原本確認(必須)

 

 介護保険のサービスを受けるには被保険者証と負担割合証をサービス事業者に提示する必要があります。これは原本を見せる必要があり、サービス事業者も原本で保険証と負担割合証を確認する必要があります。

 

 この原本を確認した証拠として、コピーなどの写しを保存しておきますが、その際、その写しに「○月〇日 原本確認 確認者氏名」と記載すると良いでしょう。

 日付はサービス提供日前が好ましいですが、多少ずれていてもしようがないでしょう。

 

 コピーなどをいつとるかですが、大事なものなので勝手に預かってコンビニなどでコピーしてくるのも少し憚れます。一番良いのは、スマホなどで写真を撮り、事業所に戻ってプリントアウトする方法でしょう。

 写真を撮った日付などが入るようにしておけばより良いかもしれません。サービス担当者会議や初回サービス時にしっかりと確認するのがベターであると思います。

 

 また生活保護の方の介護券ですが、これをご利用者ファイルにファイリングすると量が多くなり一杯になってしまいます。介護券は年度ごとに専用ファイルにファイルしておく方が扱いは楽だと思います。

 介護保険の実地指導の場合、生活保護の介護券を詳しくチェックすることはあまりありませんから、別ファイルでも大丈夫です。ただし、保存年限は同様にサービス終了後2年ですので、ご留意ください。

 

 

5 訪問介護計画書(必須)

 

 最近では介護ソフトなどで訪問介護計画書を作成することができます。しかし、フォーマットが気に入らなかったり、自治体から推奨するフォーマットが出ていたりするとなかなか使いにくいものです。

 

 訪問介護計画書に決まった様式はありませんが、必ず記載していなければならない項目があります。それらが揃っていればどんなフォーマットのものを使っても原則構いません。

 必須項目は以下の通りです。

 

① 計画書の作成者の氏名、作成年月日

 作成年月日は必ずもとになるケアプランの作成日より後か同日でなければなりません。

② 利用者情報等(氏名、性別、生年月日、要介護認定日、要介護度等)

③ 生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

 ケアプランの2表にあるニーズです。訪問介護を利用する理由に該当するところのニーズを転記します。ただし、ケアマネージャーの力量によってあまり適切でない表現もありますので、その場合は実態に合わせて少し改変しても構わないかもしれません。

④ 援助目標(長期目標、短期目標)

 こちらもケアプランの該当部分を転記しましょう。

⑤ 長期目標、短期目標の期間

⑥ ご本人及びご家族の意向・希望

⑦ 具体的援助内容

 以下の記載内容がコンパクトにまとめてあるフォーマットだと使いやすいかもしれません。

 1) 「サービス1」「サービス2」

 援助内容の違い、曜日・時間等の違いによって、「サービス1」「サービス2」などと区

分して記載します。

 2) サービス区分

 これについては厚生労働省から「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」という通知が出ており、この項目に合わせて記載することが求められています。

 この文書は訪問介護サービスの種類や段取りを整理したもので、排泄や入浴介助などの手順を詳しく列挙していますので、訪問介護サービスのマニュアルとしても機能します。

 後ほど説明する手順書の素になるものですので、訪問介護事業者は必携の文書です。

 

訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について

 

 3) サービス内容

 サービス区分に応じたサービス内容を具体的に記載します。例えば、区分が「排泄介助」である時は、内容として、「トイレ利用」、「ポータブルトイレ利用」、「おむつ交換」などの具体的な内容を記載します。

 また、サービスの提供方法もあわせて記載できれば、利用者にとってわかりやすいものになるでしょう。

 4) 所要時間

 サービス内容に記載したサービスを提供する時間です。

 5)留意事項

 各サービス提供に当たり留意することを記載します。

 6)サービス提供曜日

 7)サービス提供時間

 8)算定単位

 「身体1」「生活2」「身体2生活1」など

⑨週間予定表

 「⑦ 具体的援助内容」で週間の予定がわかればこれは必要ありません。

⑩ 説明者・説明日

 計画書の内容を説明した担当者の署名と年月日を手書きで記載します。様式としては空欄にしておけばOKです。

⑫ 利用者又は家族の同意欄

 利用者又は家族が計画内容を確認し同意をした旨の署名欄です。本人の署名捺印が有れば家族のものは必要ありません。

⑬ 事業所情報(事業所名、管理者名、住所、電話など) 

 

 堺市が作成した「訪問介護計画書作成の手引き」がありますので参考にしてください。

訪問介護計画書の作成の手引き

 

 

介護保険で提供できないサービスについて

 

 これは必須ではありませんし、重要事項説明書に記載するものですが、念のために訪問介護計画書の裏などに記載し、利用者や家族に確認してもらうのも良いかもしれません。

 

以下の援助は介護保険の生活援助では提供できませんのでご了承ください

(平成12年11月16日 老振第76号 厚生労働省通知)

 

1.「直接本人の援助」に該当しない行為

  主として家族の利便に供する行為又は家族が行うことが適当であると判断される行為

   ・利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し

   ・主として利用者が使用する居室等以外の掃除

   ・来客の応接(お茶、食事の手配等)

   ・自家用車の洗車・清掃 等

 2.「日常生活の援助」に該当しない行為

  [1]訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為

   ・草むしり ・花木の水やり ・犬の散歩等ペットの世話 等

  [2]日常的に行われる家事の範囲を超える行為

   ・家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え

   ・大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ

   ・室内外家屋の修理、ペンキ塗り

   ・植木の剪定等の園芸 ・正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理 等

 

次回はモニタリングや手順書などについて説明します。

 

 

訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方 その1

 

 訪問介護の特定事業所加算は、質の高いサービスを提供する事業所に対してインセンティブとして支給される加算と考えて良いでしょう。

 特定事業所加算Ⅱでも10%加算(Ⅰは20%)できますので、単純に事業所の収益を10%増収できます。クオリティーの高いサービスを提供し他と差別化ていくためにも、加算取得を目指した方が良いと筆者は考えています。

 

 しかし、いざ加算を取得しようと思っても、各種要件をどのように整備していけばわからない方も多いでしょう。特に「訪問介護員等の技術指導を目的とした会議」とはどんな会議?研修と何が違うの?という疑問が湧くのではないでしょうか。

 

 

特定事業所加算のスタッフ会議で何をやれば良いのか

 

 国の指針でこの会議では

 

 「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達又は当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等の技術指導を目的とした会議(サービス提供責任者が主宰し、登録ヘルパーも含めて、当該事業所においてサービス提供に当たる訪問介護員等のすべてが参加)を概ね 1 月に 1 回以上開催し、その概要を記録しなければならない。(グループ別開催も可)」

 

となっています。

 

 そして、実地指導などでは、このかいご会議の開催を証明する。

 

「会議日程表」「会議次第」「会議議事録」「利用者に関する情報を伝達した文書(会議資料等)」「会議出席者名簿」等会議の実態が分かる書類

 

 が必要とななります。

 

 

 整理してみますと、この会議では、

 

(1)利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達

もしくは

(2)指定訪問介護事業所の訪問介護員等の技術指導

 

を、行えばよいわけです。

 

(1)か(2)のどちらかで良く、両方やる必要はないようです。

 

 

スタッフ研修と同時に開催すると効率的

 

 (2)の要件は、どちらかというと「社内研修会」です。この研修は特定事業所加算のスタッフ個別に目標を設定した研修と違いがあるのでしょうか?

 この点について国は特に指針を示していませんので、「個別の目標を設定した研修」をこれによって行うことは可能です。

 

 筆者は、お世話させていただいている訪問介護事業所に、月に1回「会議」+「社内研修」を行う日を設定してくださいと提案しています。

 

 非常勤スタッフも含め全員の研修目標を年度当初に作成し、年間の社内研修の中でそうした目標をクリアできるように計画を作成し実施すれば、個別研修計画の要件はクリアします。特別にお金を出して外部研修を受けても良いのですが、社内研修だけでもこの要件は十分クリアするのです。

 

 つまり、「技術指導会議」は「社内研修会」読み替えて良いということです。

 

 

 

「運営要項」を作る

 

 この会議+研修会の運営を効率的に行うには、「運営要項」作成するのが良い方法であると思います。

 

 以下に例を示します。

 

 

〇〇訪問介護ステーション スタッフ会議及び社内研修会運営要項

 

1 目的

 本「スタッフ会議及び社内研修会」は、以下の目的で開催する。

 (1)利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達

 (2)訪問介護員等の介護技術・知識の研鑽

 

2 開催者(会議司会者)

 サービス提供責任者の主宰で開催する

 ※小規模な事業所でしたら事業所で一体的に開催すればよいでしょう。規模の大きな事業所でしたら、サービス提供責任者ごとに開催することも考えられますが、スタッフが重複する場合は非効率です。利用者100名程度までであれば、一体的開催でまかなえると考えます。

 

3 開催日時

 別紙「スタッフ会議及び社内研修会年間開催日程」のとおり

 ※「毎月第〇、△曜日」などと決めておくと良いでしょう。会議と研修で2時間程度が目安であると考えます。

 

4 開催場所

 ○○訪問介護ステーション会議室

 ※適当な会議室が無い場合、区市町村の生涯学習センターや公民館でしたら、安価で会議室を確保できます。

 

5 会議の内容

 「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達」については以下の内容を伝達・話し合う

  ① 前回会議からの持ち越し事項の確認 

  ② 当月、ケアプランの更新・変更を行う予定の利用者について(アセスメント・モニタリング情報)

  ③ 前月、ケアプランの更新・変更を行った利用者について(アセスメント・モニタリング情報)

  ④ 上記以外、サービス変更がある利用者について

  ⑤ 困難ケース等の対応について

  ⑥ 利用者からの苦情及び改善方策・ひやりはっと報告

  ⑦ 制度改正、行政からの連絡事項、感染症情報など 

  ⑧ その他必要な事項(新規営業先の情報・新スタッフ紹介など)

 

6 社内研修会の内容

 訪問介護員等の介護技術・知識の研鑽

 研修会の内容は別途「〇〇訪問介護ステーション スタッフ研修計画表」により実施する。

 ※別途年間計画表を作成します。この研修計画は、加算の要件である「個別研修計画」と一体的です。

個別研修計画の例

 

7 欠席者の扱い

 本「スタッフ会議及び社内研修会」に欠席したものについては、別途担当のサービス提供責任者より、会議内容の伝達及び研修補講を受けなければならない。

 

8 その他

 必要な場合は残業手当を支給

 

次回は実際の運営方法や記録の残し方についてご説明します。

 

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド 最終回

◆加算取得時必ず整備しなければならない書類

 

(1)中重度者ケア体制加算

 

①従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

 人員基準は規定の人員プラス2人以上の看護師または介護職員が常勤で勤務していなければなりません。

 また、サービス提供時間中に看護師が1名以上勤務している必要があります。

 

②要介護3から5の利用者の人数がわかるチェックシート

 都道府県に加算の届け出を提出した際に作成した、チェックシートもしくは確認書を加算を算定している期間分作成しておく必要があります。

 前年度の実績による場合は、前年度1年分の実績、過去3か月分の実績による場合は、毎月分を作成し要件を満たしている必要があります。

 

③その他要介護度の分布がわかる資料

 該当する利用者の被保険者証や名簿、サービス提供票の控えなど利用実績が確認できる書類が必要になります。

 

 

(2)個別機能訓練加算

 

 機能訓練は通所介護サービスにおいて最も期待されているサービスの一つです。この加算は個別の機能訓練に関して計画的にサービス提供している場合に加算できます。

 この加算を算定しなくても、通所介護における機能訓練は必須のサービス内容となっています。

 せっかく機能訓練サービスを提供するのであれば、この加算を積極的に取得していく方が良いと考えます。

 どのようにサービス提供すれば加算が取得できるかは、別の機会に詳しくご説明したいと思います。

 

 なお、サービス内容によって(Ⅰ)と(Ⅱ)がありますが特に記載のない場合は共通の書類と考えてください。

 

①従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表・出勤簿・資格証(写)

 機能訓練指導員の勤務状況がチェックされます。(Ⅰ)は常勤もしくはサービス提供時間中勤務している必要があります。(Ⅱ)は加算が算定している日に勤務していればOKですが、勤務時間は概ね3時間以上(実態として個別機能訓練が提供できる時間)と言われていますが、提供する利用者数により変動してくると考えます。

 

 また(Ⅱ)の場合、地域により週3日以上勤務など規定を設けている場合がありますので、加算を算定する場合は、都道府県に確認しましょう。当然ですが(Ⅱ)の場合、機能訓練指導員が休暇や研修で不在の場合は算定はできません。

 

②重要事項説明書・パンフレットなど加算の算定を周知する書類

 加算を算定する曜日、およびそれが(Ⅰ)なのか(Ⅱ)なのかそうした情報を事業所のパンフレットなどに明記し、利用者やケアマネージャーに周知している必要があります。

 

③機能訓練計画書

 個別機能訓練計画書は、機能訓練指導員が作成しなければなりません。但し、機能訓練指導員が直接訓練しなければならないと明示されているのは(Ⅱ)だけですので、(Ⅰ)は機能訓練が計画的に行えれば良く、直接訓練の要件はありません。 

 

 なお、機能訓練計画は3か月に1度評価し見直していくことが必要です。その際、機能訓練指導員が自宅に訪問することが求められています。

 

個別機能訓練計画書に記入しなければならない内容は以下の通りです。

〇「利用者ごとにその目標」

〇「実施時間」

〇「実施方法」

〇「機能訓練指導員が自宅に訪問した年月日」

などが最低限盛り込まれている必要があります。

 

規定の様式はありませんが、書式については以下をご参照ください。

www.city.yokohama.lg.jp/kenko/kourei/jigyousya/kaigo/dei/kobetukinou.doc

 

③評価書

 個別機能訓練計画に基づいた評価は必ず必要です。評価書自体は計画書と一体的に作成しても構いません。

 以下の事項は必ず盛り込みます。

〇「個別機能訓練の効果(目標の達成状況)」

〇「実施時間についての評価」

〇「実施方法についての評価」

 

④個別機能訓練のメニューやプログラム内容等

 (Ⅰ)の場合、通所介護利用者をグループに分けて選択的にプログラムを提供することが求められていますので、メニューやプログラムの内容がわかる書類が必要になります。

 機能訓練の選択メニューは以下のようなものになります。

 

機能訓練メニュー(選択項目) 例

 

①運動機能向上系メニュー

●ひざ痛対策プログラム

●腰痛対策プログラム

●転倒防止プログラム

●各ADL/IADLに対応したプログラム  etc

 

②口腔機能向上・栄養改善系メニュー

●嚥下能力向上プログラム

●心肺機能向上プログラム

●食事のための作業療法プログラム

●コミュニケーション向上プログラム  etc

 

③閉じこもり・うつ予防系メニュー

●生きがい作りプログラム

●社会交流促進プログラム

●セラピー系(音楽療法など)プログラム

●①、②を組み合わせた複合系プログラム   etc

 

④認知機能低下予防系メニュー

●脳機能向上プログラム(知能系)

●脳機能向上プログラム(運動系)

●①、②、③を組み合わせた複合系プログラム   etc

 

 

 

(3)認知症加算

 

①従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

 人員基準は中重度者ケア体制加算と同じです。規定の人員プラス2人以上の看護師または介護職員が常勤で勤務していなければなりません。

 

②認知症介護実践者研修等の修了証

 サービス提供時間を通じて認知症介護実践者研修等を修了した者を1名以上配置していなければなりません。

 認知症介護実践者研修等とは「認知症介護の指導に係る専門的な研修」、「認知症介護に係る専門的な研修」、「認知症介護に係る実践的な研修」等です。

 

③日常生活ランクⅢ以上の利用者の人数がわかるチェックシートなど

 こちらも、中重度者ケア体制加算と同じです。都道府県に加算の届け出を提出した際に作成したチェックシートもしくは確認書を加算を算定している期間分作成しておく必要があります。

 前年度の実績による場合は、前年度1年分の実績、過去3か月分の実績による場合は、毎月分を作成し要件を満たしている必要があります。

 

④その他日常生活ランクの分布がわかる資料

 該当する利用者の被保険者証や名簿、サービス提供票の控えなど利用実績が確認できる書類が必要になります。

 

⑤認知症の進行緩和プログラムが計画的に提供されている状況がわかる書類

 アセスメントや通所介護計画書以外に、個別に「認知症の進行緩和計画書」(例)のようなものが作成されていることが望ましいでしょう。ただし、通所介護計画書に内容が盛り込まれていればそれでOKです。

 

 認知症加算を算定している場合は、通所介護計画書をカスタマイズして、「認知症の進行緩和プログラム」の内容が記入できるようにしておくと良いでしょう。

 

 

(4)栄養改善加算

 

 本加算を算定するためには管理栄養士を1名以上配置し、専門的な栄養管理を計画的に提供する必要があります。

 管理栄養士がいて利用者が単に要件に該当しているからといって算定できるわけではありません。

 具体的には厚生労働省から出ている「栄養改善マニュアル」などに沿った形でのプログラムを提供しなければなりません。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1_05.pdf

 

 人員基準や利用者の要件などに関する書類だけでなく、プログラム全体がチェックされます。必要な書類が完備しているだけでは算定できないので、説明は省きたいと思います。

 

 

(5)口腔機能向上加算

 本加算も看護師などの資格者が配置しているだけでは加算できません。

 こちらも厚生労働省から出ている「口腔機能向上マニュアル」に沿った形でのプログラムを提供しなければ加算は難しいでしょう。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1_06.pdf

 

 

(6)サービス体制強化加算

 

 こちらは(Ⅰ)と(Ⅱ)と(Ⅲ)があります。特に説明がない場合は共通の事項です。

 

①従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

 常勤換算で介護福祉士が(Ⅰ)は40%(Ⅱ)が30%以上です。また(Ⅲ)では勤続3年以上の職員が30%以上です。

 

②資格証の写しまたは勤続年数のわかる書類

 勤続年数は労働者台帳や労働条件通知書などにより確認します。この勤続年数は加算を算定する通所介護事業所に勤務した年数だけではなく、同一法人の別の事業所(例えば訪問介護など)に勤務していた期間も含めることができます。

 

③人員基準チェックシートなど

 こちらも、都道府県に加算の届け出を提出した際に作成したチェックシートもしくは確認書を、加算を算定している期間分作成しておく必要があります。

 前年度の実績による場合は、前年度1年分の実績、過去3か月分の実績による場合は、毎月分を作成し要件を満たしている必要があります。

 

 

(7)介護職員処遇改善加算

 

 (Ⅰ)から(Ⅳ)までありますが、キャリアパス要件(賃金規定など)など、行政に提出した計画書に添付した書類はすでに整備されているという前提で説明します。

 

①最新の計画書および報告書

 処遇改善加算は毎年、計画書と報告書を提出しているため、その内容で実施されているかがチェックされます。

 

②研修の実施がわかる書類

 「資質向上の目標と具体的な研修計画」を提出していますので、その内容で研修が実施されているかがチェックされます。

 「研修実施報告書」「研修資料」など実際に研修が行われていることが確認できる書類が必要になります。

 

③賃金台帳、給与明細など

 加算が該当する職員に適切に支払われてる実態がわかる書類です。また、管理者や事務職員など実際に介護業務(介護保険給付対象の業務)に携わっていない職員に支給されていないかもチェックされます。

 

④昇進昇格などが確認できる書類

 労働者台帳や辞令の控え、賃金台帳などで職員がキャリパスの計画書どおりに昇進昇格を果たしているかをチェックします。

 

⑤その他計画書に記入された事項が実施されていることがわかる書類

 資格取得のための支援や職場環境改善の状況がわかる書類です。出勤簿など書類だけでなく、購入物品などの確認をする場合もあります。

 

 

 以上、加算に関する説明でしたが、入浴や送迎に関する加算は前述の通所介護計画書などで分かるので省きました。

 

 

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その6

◆事業運営上必ず整備しなければならない書類Ⅳ

 

(2)保険給付関係書類

 

 介護保険給付に関する書類は、ケアマネージャーや国保連から送られてくる書類とパソコンの請求システムから出力される書類などを月ごとに管理します。また、生活保護関係の書類も月ごとに綴っておきます。

 

 介護保険の給付関係書類は、実際に保険を請求し受領した額に関わる証拠書類になります。実際にその事業所が国保連にどのような内容で保険請求をしたかがチェックされるのですが、実地指導においては、これらの請求内容と実際にサービス提供内容が合致しているかが問題になります。

 

 従って以下の書類は必ずチェックされますので適切に保管しましょう。

〇サービス提供票(控)、サービス提供票別表

〇請求書および領収書の控

〇サービス提供証明書控(介護給付明細書代用可)

 

 加算やサービス提供時間はケアマネージャーへしっかり確認し、毎月の請求業務を行う必要があります。

 

≪注意!≫

 請求事務の担当者が現場から離れている場合は注意が必要

 

 現場でサービスを提供しているスタッフと請求事務を行っているスタッフが異なる場合、注意が必要です。

 

 多いケースとしては、各種加算など実際は現場で提供していないのに、ケアマネージャーが提供していると思い請求に載せてしまい、事務担当者もそのまま請求してしまうケースです。

 

 現場の担当者が、毎月のサービス提供票をチェックしていない場合に発生するトラブルです。

 現場が請求事務に関与していない場合であっても、管理者は最低限毎月のサービス提供票をチェックしたいものです。

 

 このミスが実地指導で発覚した場合は給付金の返還だけではなく、是正処理の際にケアマネージャーやご利用者に対して、事業所としての信頼を損ねる可能性がありますので注意してください。

 

 

(3)事業所として作成しておかなければならない書類

 

 これまでは、ご利用者一人一人に関して管理しなければならない書類を説明してきました。ここからは、事業所として作成・管理しなければならない書類についてご説明します。

 

 

 ①勤務表(シフト表)=従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表

 

「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」

https://www.city.niigata.lg.jp/iryo/kaigo/jigyousyatop/shisetsu_service/shinkishitei/tankinyushoseikatu.files/08-18-02kisairei_kinmukeitaiitiran.pdf

は毎月、月初めに作成し、人員基準を満たしているかをチェックするものです。作成を怠っている事業所も多いかもしれません。

 実地指導では当月を含めて3か月分は必ずチェックされます。少なくとも1年分程度は作成し保管しておきたいものです。

 

 また、これとは別に「勤務シフト表」を作成している場合はこちらもチェックされます。実際の勤務状況を見るためです。勤務シフト表が無い場合は、出勤簿や場合によっては給与明細などと突き合わせてチェックされます。

 

 「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」はあくまで勤務の予定表ですので、例えばシフトの変更や有給休暇の取得、病休、研修参加などにより実際の出勤状況と合わない場合があります。この点については後から修正したりする必要はありません。あくまで毎月の勤務予定です。

 ただし、常勤職員の勤務時間は週40時間を超えてはいけません。つまり、残業をあらかじめ予定勤務時間にしてはいけないということです。これは、パートさんの勤務時間を常勤換算した場合も同様です。

 

 また、生活相談員は、サービス提供時間中(運営規定上明示された時間)必ず事業所に勤務していなければならない決まりになっています。「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」では必ずその要件を満たすように作成しなければなりません。

 

 仮に土曜日営業していたり、サービス提供時間が週40時間を超える規定になっている場合は、必ず足りない部分に別の生活相談員が勤務する形態でなければなりません。

 

 また、生活相談員が有給休暇を取ったり、研修参加などで不在の場合は、他の生活相談員が提供時間中勤務することが求められます。

 

 そうした際、実地指導でもし、事業所に生活相談員が一人しかおらず、その人が不在であるケースがある場合、是正指導を受けます。悪質な場合(長期の病休等)は指定取り消しや業務停止になりますので注意しましょう。

 

 生活相談員は常勤である必要がないので、パートさんなどで生活相談員の資格を保有する人がいる場合は、できるだけ相談員に任命し、主たる生活相談員が不在の場合の補助の生活相談員として勤務してもらった方が良いと思います。

 生活相談員の資格要件についてはこちらをご覧ください。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/tuutitou/7_tuukai.files/28seikatsusoudan.pdf

 

 常勤の必要はありませんが、機能訓練指導員や看護師についても、長期不在の状態に無いよう、同様の配慮が必要です。

 

 

②業務日誌(利用者の数がわかる書類)

 

 こちらは前述の「通所介護記録」で代用することも可能ですが、事業所運営上はスタッフ間の情報共有や事業所運営上の記録として、毎日、記入しておく方が良いかもしれません。

 

 実地指導では主に1日の利用者数をチェックするために利用されます。利用定員を超えていないかを主に確認します。

 

 様式はノート形式でも良いですし、ネット上にあるフォームなどを印刷して利用しても良いでしょう。

 

 記録事項としては以下のような内容となります。

〇年月日

〇天候

〇利用者数

〇出勤スタッフ名

〇記録しておくべき今日の出来事(イベント・ひやりはっと・事故・緊急事態・見学者・訪問者・送迎の遅れなど)

〇連絡事項

〇記入者

〇その他(昼食献立・おやつ・金銭出納記録・営業記録など)

 

 こうした記録は何かトラブルがあった際の証拠書類になったり、研修の材料になったりしますので、後々とても役に立つちます。

 

③利用者名簿

 

 現在利用しているご利用者の名簿です。

 通常は業務で作成している、住所や電話番号、要介護度、担当ケアマネージャー、緊急連絡先などを一覧にしたもので良いでしょう。

 実地指導では定員の確認や、利用者記録のチェックの際に使われます。

 

④送迎に関する記録 (車両運行日誌等)

 

 送迎記録は事業所の様式でかまいませんが、送迎時間が給付上のサービス提供時間に重なっていないかをチェックします。

 問題になるのはお迎えや送りの時間を実績で記録するのか、予定で記録するのかです。

 

 各事業所で作成する送迎表は通常「予定」の時間で作成すると思います。しかし、交通事情や利用者の都合で予定が狂う場合(ほとんどが遅れる)が多く、実績で時間を記入した場合、サービス提供時間に食い込んでしまい、規定違反になってしまうというケースが発生します。

 

 サービス提供時間が9時スタートならば9時までに事業所に到着するように予定を組むのは当然ですが、これが9時以降になっている場合は問題です。少なくとも予定はサービス提供時間に食い込むことが無いよう作成する必要があります。

 

 筆者としては送迎実績の時間は、交通事情などで遅れることがあり、記録しておく必要はないと考えますが、実地指導の担当者によっては送迎時間の実績を記録せよと指導する場合があるかもしれません。その場合はそのように対応する必要があるでしょう。

 

 到着が遅れた場合の対応としては、その分サービス提供時間を延ばし、帰りの時間を遅らせ、その旨を業務日誌などに記録しておくことですが、ご利用者も予定がありますし、帰りが遅れることで家族への連絡など煩雑な作業が必要になりますのであまりお勧めできません。

 

 そもそものサービス提供時間を、30分程度幅を持たせておく(7-9ならば7時間30分程度)のが最も適切な対応だと考えます。

 

 

⑤苦情に関する記録

 

 苦情受付簿ファイルを作っておきます。苦情受付用の様式もネットに色々ありますのでカスタマイズして利用します。ただし、苦情の実績がなくても問題にはなりません。

 

 苦情受付簿で処理するような苦情以外に、ケアマネージャーや家族を通じて要望のような種類の苦情もあるかと思います。

 そうしたものは、業務日誌などにその後の対応も含めて記録しておけば良いでしょう。一応それも「苦情に関する記録」になりますので、実地指導の際はその部分を提示すればよいでしょう。

 

⑥指導等に関する記録

 

 こちらは、過去に実施された実地指導などで指摘事項があり、是正処理がされている場合、一連の流れがわかる記録です。

 通常、行政から指導があった場合、文書通知により対応方法などが指示されます。それに適切に対応し、控えをしっかり保管しておけば良いでしょう。

 

 是正指示が出ているのにもかかわらず、実態として是正がされていない場合が良くあります。これは罪が重く、指導内容によっては指定取り消しや、業務停止になる場合もあります。

 過去に指導事項がある事業所はその内容が正されているか、同じ過ちを犯していないか、(特に人員基準)確認しておく必要があります。

 

⑦事故に関する記録

 

 サービス提供中の利用者のケガなどは区市町村に報告しなければなりません。様式は区市町村にありますのでお問い合わせください。

 基本的にはこうした事故報告に関わる一連の記録がファイリングされていれば良いと思います。ただし、報告しなければならないレベルの事故が無かった場合でも問題はありません。

 

 業務日誌にヒヤリハットなどが記録されていればその部分を提示しても良いかもしれません。

 

⑧各種マニュアル

 事業所運営上必要な各種マニュアルがチェックされます。ひな型はネット上にもあります。そうしたものをベースに少しずつ自事業所用に修正するのが望ましいですが、何もあらかじめきっちりしたマニュアルを作るのではなく、事業所内で話し合い、決められた仕事のルールなどをこまめに記録してファイルしておけば、それがマニュアルになります。

 スタッフ間で共有する仕事のやり方はできるだけ文書化し皆が閲覧できる場所にファイリングしておくと良いと思います。

 実地指導で確認される可能性があるマニュアルは以下のようなものですが、必ずしも同じ名前でなくても、それに類するものがあれば良いと思います。

 

〇業務マニュアル(各種連絡体制・事故対策・緊急時対策などがわかるもの)

〇災害対策マニュアル(避難訓練・消防計画がわかるもの)

 ※避難訓練の記録は業務日誌でOK

〇感染症対策マニュアル(衛生管理・食中毒防止等に関するもの)

  ※感染症対策に関する研修記録が別途あると良い(処遇改善加算の要件である研修に入っている良い)

〇その他 送迎マニュアル、機能訓練マニュアルなど。これらは業務マニュアルに入っていれば可。

 

 以上が業務運営上必要な書類です。次回は加算関係の書類をご案内します。

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その5

◆事業運営上必ず整備しなければならない書類Ⅲ

 

(1)利用者に関する各種書類 つづき

 

⑩通所介護計画書

通所介護計画書の様式も特に指定されたものはありません。事業所によってはアセスメントやモニタリング、機能訓練の計画書を兼ねているものもあるでしょう。

しかし、基本的な事項として以下の規定がありますので、それらが守られている必要があります。

〇作成者=管理者(他のスタッフと協力して作成)でなければならない

〇アセスメントの結果を踏まえる(従ってアセスメントは必ずしなければならない)

〇利用者や家族の意向を踏まえる(ケアプランの内容で良い)

〇ケアプランに沿って作成されなければならない

〇援助の方向性や機能訓練等の目標(基本的にケアプランの内容で良い)

〇上記目標を達成するための具体的なサービスの内容及び手順等

〇各種加算算定の対象となるサービスを提供する場合はその内容(入浴など)

 

なお、計画書に示されるサービス提供時間は給付単位時間を超えていなければいけません。

7-9単位であれば、7時間ちょうどではダメで7時間15分など7時間を超えていなければなりません。

さらに、この時間の中に送迎時間を含めてはいけません。

 

通所介護計画書の様式として、東京都では下記の書式を提示していますのでご参照ください。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/tuutitou/7_tuukai.files/keikaku-tyuui.pdf

 

⑪通所介護記録

日々のサービス提供の記録です。

様式は特に決まっていません。提供したサービス内容が具体的に分かるようになっていれば、実地指導上は問題ありません。ただし、入浴や機能訓練など加算の対象になっている事項は必ず記録に残さなければなりません。

 

また、ご利用者一人一人個別に記録するか、その日の利用者全員分を1枚の用紙で記録するかも自由です。

筆者としては、日々の記録は、利用者全員分を1枚で記録したほうが効率的だと思います。日々の記録をご利用者のファイルに全部保管することは分量が膨大になるため、お勧めできません。

 

月の提供表などと突き合わせて、サービスを提供している実態が確認できれば良いので、利用者全員分のシートを月ごとにファイルしておく方が良いと考えます。

 

通所介護記録に記入するべき事項としては一般的に以下のような事項ですが、あらかじめ印刷しておいたり、チェックで済むような様式にするなどきるだけ簡便に記録できるようにします。

最近ではタブレットなどを利用して簡便に記録できるアプリなどもあります。

 

〇年月日

〇利用者名(あらかじめ印刷)

〇利用時間

〇バイタル数値

〇服薬

〇水分摂取量

〇レクなどの活動内容(チェック式)

〇個別機能訓練内容(チェック式)

〇食事(主菜・副菜・おやつ)

〇排泄(回数や状況)

〇入浴状況

〇特記事項

〇サービス提供タッフ職・氏名(あらかじめ印刷)

なお、通所介護記録は後に説明する業務日誌とは区別します。

〇通所介護記録=ご利用者の記録、業務日誌=事業所の記録です。

 

⑫連絡帳

ご利用者のご家族との連絡帳も介護記録の一部と考えて良いでしょう。

しかし、運営規定上必要とはされていませんので、サービスの一環で作成するものと考え、ご家族との信頼関係を醸成するツールと考えた方が良いと考えます。

記入する内容は通所介護記録と同じ内容プラスご家族への連絡事項となりますので、どのようなものにするかは業務の効率化とご家族へのサービス向上の観点から選択したいところです。

 

⑬モニタリング(評価)

要介護のご利用者の場合、モニタリングは介護記録や体力測定の記録そのものですので、特定の様式を作成する必要はないと思います。

ただし、短期目標及び長期目標に対する評価はそれぞれ設定された期間で実施する必要があるため、通常は通所介護計画書に一体化する方が便利かと考えます。

 

予防介護の場合はモニタリングが義務付けられていますので、別途「モニタリング評価表」などの様式で作成することが必要ですが、通常、予防介護関係の様式は、各包括で用意している場合が多いのでご相談ください。

 

⑭個別機能訓練関係の書類(体力測定・運動サービスの内容など)

加算を取得する場合の書類については最後にまとめてご説明しますが、加算を取得していなくても機能訓練については記録を残しておきたいものです。

 

運動サービスの提供は介護保険制度における通所介護サービスの役割の中でも特に重要なサービスです。下肢筋力が弱っていない高齢者などほとんどいないわけですから、週1・2回デイサービスに通い適切な運動をすることは、高齢者の体力維持強化のために非常に重要です。国の調査でも要介護度の悪化を防ぐことは明らかになっています。

 

従って、たとえ認知症専門のデイサービスであってもデイサービスであれば運動サービスは必ず提供したいものと思います。

 

加算を取得していない場合は、アセスメント、通所介護計画書、通所介護記録、体力測定記録などで、どのような運動サービスを提供しているかわかりますので、適切な記録が残っていれば専用の様式は必要ありません。

 

⑮当該利用申込者へのサービス提供を他の事業者へ依頼したことがわかる書類等

何らかの都合(満員・日程が合わないなど)で自事業所でサービス提供できない場合、他の事業者にサービス提供依頼をしなければなりません。

そのようなケースがあった場合は、業務日誌などにその旨を記録しておきます。

 

⑯居宅介護事業所への情報提供に関する記録・居宅介護支援事業者へ連絡をしたことがわかる書類等

ケアマネージャーとの連絡はファックスやメール・電話・直接訪問など様々な方法で行われます。

ファックスの場合はその物を該当するご利用者のファイルに綴じておけば良いでしょう。メールの場合は印刷して同様に綴じておきましょう。

電話・直接訪問の場合は、ご利用者ファイルの最初に綴じてある「連絡記録(支援経過)」に記入しておけばよいでしょう。

 

⑰相談・助言を記録した書類等

生活相談員などがご利用者から相談を受け助言をした場合などは、簡単なものであれば「連絡記録(支援経過)」に記入しておけば良いと思います。

その他、こうした相談・助言に関する資料があれば、利用者ファイルに綴じておきます。

 

⑱区市町村に送付した通知に係る記録 (事故報告書など)

サービス提供中に転倒事故などがあった場合は、必ず区市町村に事故報告を提出しなければなりません。

様式は区市町村の介護保険課などに問い合わせてください。

 

⑲利用者の届出書控等及び法定代理受領サービスの提供を受けるための援助

区市町村などへの届出などを援助した場合はその書類のコピーを保管しておきます。

 

⑳その他

事業所によってはご利用者の写真やご家族からの手紙、その他関係する資料をお持ちの場合もあるでしょう。

それらはみな基本的に個人情報ですので、利用者ファイルに綴じて、鍵付き書庫に保管します。

 

以上が個別ファイルに保管しておくものを中心にご利用者様の情報関係書類になります。

なお、「介護予防・日常生活支援総合事業」に関する各種書類は、各区市町村によって違う場合がありますので、各区市町村にご相談ください。

 

次回は保険給付関係の書類について説明します。

 

 

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その4

◆事業運営上必ず整備しなければならない書類Ⅱ

 

今回は業務上必要な書類のうち利用者ファイルの中身についてご説明します。

 

(1)利用者に関する各種書類(基本情報・アセスメントなど)

 

利用者に関する書類は利用者ごとに少し厚めのファイルに整理しておくことが大切です。きちんとしたファイリングできていると、実地指導の際も印象が良く、きちんとやっている事業所として評価してもらえます。

 

以下は、利用者ごとにファイリングしておきたい書類の一覧になります。

 

①連絡記録(支援経過)

個人ファイルの最初の部分に、ご利用者に関する情報や記録をなんでも書き込めるノート形式の用紙を付けておくと良いと思います。

 

ご本人やご家族からのお休みの連絡や、ちょっとした相談、ケアマネージャーへの連絡等をメモします。この記録は連絡の記録であるだけでなく、支援経過にもなりますので、ケアを検討する際、とても重要な情報になります

 

記載する項目は

〇 日付

〇 時間

〇 相手(ケアマネやご利用者)

〇 内容及び対応

〇 受付者氏名

です。

 

いわゆる連絡簿と同じですが、一冊のノートの連絡簿ですべてのご利用者を一まとめに記録するよりも、ご利用者一人一人で連絡簿を分けた方が、記録としては利用価値があります。

まとめたノートですと、支援経過にはなりにくく、実地指導などでは記録が分けられていた方が、この事業所は良いケアをしている印象を得るでしょう。

 

②利用申込書

ケアマネージャーから利用申込書を頂くのが通常の流れかと思います。

利用申込書の内容は特に決まりはありません。

利用を始めるに際して、事業所としてケアマネージャーに提供してほしい情報が簡潔に記入できる様式にすることが望ましいでしょう。

 

あまり、ケアマネージャーに負担をかけない方が営業的にも良いと思いますが、既往歴などの知っておかなければならないアセスメント情報は取得したいものです。

できるだけ簡便に書けるように、チェック式にするなど様式を工夫してください。

様式のひな型はネット上に沢山ありますので使いやすい物を修正して利用しましょう。

 

また、ケアマネージャーが許してくれればケアマネージャーの実施したアセスメントの情報を参考に頂くことも有効です。

しかし、アセスメントはあくまで通所介護事業者が実施しなければならないものですので、ケアマネからのアセスメントをそのまま、自分の実施したアセスメントにしてはいけません。

 

③被保険者証(再掲)

原本確認・絶えず最新のものを保管するよう注意してください。

 

④居宅サービス計画書(1)第1表

第1表には計画に対する利用者の同意の署名捺印欄がない場合があります。

また、サービス担当者会議で渡される計画書原本に署名捺印が未記入の場合があります。署名捺印欄に署名捺印が無い場合は、プラン決定後ファックスなどで署名捺印があるものを送ってもらった方が良いでしょう。

 

1表の様式そのものに署名捺印欄が無い場合は、「サービス担当者会議の要点の写し」に計画が同意された旨の記載があれば良いでしょう。

もしこの記載も無い場合、または原案を修正した場合などは、別途、同意を得たことを確認できる書類が必要ですので、ケアマネージャーから同意書などの写しを貰う必要があります。

 

また、利用期間のものがすべてそろっている必要があります。長くご利用されているご利用者の場合、抜けている場合があります。絶えず最新のものを保管するようにしましょう。

 

利用の長い方のファイルは煩雑になりがちです。古い書類は時々整理して、2年以上前の書類は、年度ごとに全員別ファイルにまとめておいても良いでしょう。5年たったら廃棄するスケジュールで良いと思います。

 

⑤居宅サービス計画書(2)第2表

2表では、通所介護計画書との整合性が問題になります。

通所介護サービスを利用する目的と長期目標・短期目標が、通所介護計画書の利用内容や長期・短期目標と合っている必要があります。

 

ただし、通所介護計画書の長期・短期目標の記載内容がケアプランに一字一句同じである必要はありません。より具体的な記載内容になっているなど、整合性が取れていればOKです。

 

当然、ケアプランに無いサービスが通所介護計画書にあってはなりません。

例えば入浴が必要なのに2表に記載がない場合は、修正してもらう必要があります。入浴サービスの記載がない場合は、入浴加算の返還になります。

 

⑥居宅サービス計画書(3)第3表(週間サービス計画表)

こちらも、通所介護計画書と合っている必要があります。違っている場合は必ず修正してもらいます。

また、保険給付単位のサービス提供時間と計画書の所要時間が合っていないと、給付単位を修正し返還しなければならない場合もありますので、注意しましょう。

 

⑦居宅サービス計画書第4表(サービス担当者会議の要点の写し)

サービス担当者会議に出席していない場合は、かならず「サービス担当者に対する照会(依頼)内容等 が記載されていることを確認します。

 

4表に自事業所の照会内容が記載されていない場合もありますから、できれば照会された際の文書を控えておくと良いでしょう。

 

⑧アセスメント1(基本的な情報)

通所介護のアセスメントの内容には特に決まりはありませんが、必ず、自事業所で実施しなければなりません。ケアマネジャーからアセスメントシートを貰えてもそれでアセスメントを実施したことにはなりません。

 

必ず何らかの様式を使い利用者の心身の状況を把握することが必要ですので注意しましょう。

 

以下はケアマネージャーが行うアセスメントの「課題分析標準項目」です。こうした項目が入っているアセスメントシートを入手し利用しましょう。

 

1.基本情報に関する項目

No. 標準項目名 項目の主な内容(例)
1 基本情報(受付、利用者等基本情報) 居宅サービス計画作成についての利用者受付情報(受付日時、受付対応者、受付方法等)、利用者の基本情報(氏名、性別、住所、電話番号等の連絡先)、利用者以外の家族等の基本情報について記載する項目
2 生活状況 利用者の現在の生活状況、生活歴等について記載する項目
3 利用者の被保険者情報 利用者の被保険者情報(介護保険、医療保険、生活保護、身体障害者手帳の有無等)について記載する項目
4 現在利用しているサービスの状況 介護保険給付の内外を問わず、利用者が現在受けているサービスの状況について記載する項目
5 障害老人の日常生活自立度 障害老人の日常生活自立度について記載する項目
6 痴呆性老人の日常生活自立度 痴呆性老人の日常生活自立度について記載する項目
7 主訴 利用者及びその家族の主訴や要望について記載する項目
8 認定情報 利用者の認定結果(要介護状態区分、審査会の意見、支給限度額等)について記載する項目
9 課題分析(アセスメント)理由 当該課題分析(アセスメント)の理由(初回、定期、退院退所時等)について記載する項目

2.課題分析(アセスメント)に関する項目

No. 標準項目名 項目の主な内容(例)
10 健康状態 利用者の健康状態(既往歴、主傷病、症状、痛み等)について記載する項目
11 ADL ADL(寝返り、起きあがり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄等)に関する項目
12 IADL IADL(調理、掃除、買物、金銭管理、服薬状況等)に関する項目
13 認知 日常の意思決定を行うための認知能力の程度に関する項目
14 コミュニケーション能力 意思の伝達、視力、聴力等のコミュニケーションに関する項目
15 社会との関わり 社会との関わり(社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感等)に関する項目
16 排尿・排便 失禁の状況、排尿排泄後の後始末、コントロール方法、頻度などに関する項目
17 褥瘡・皮膚の問題 褥瘡の程度、皮膚の清潔状況等に関する項目
18 口腔衛生 歯・口腔内の状態や口腔衛生に関する項目
19 食事摂取 食事摂取(栄養、食事回数、水分量等)に関する項目
20 問題行動 問題行動(暴言暴行、徘徊、介護の抵抗、収集癖、火の不始末、不潔行為、異食行動等)に関する項目
21 介護力 利用者の介護力(介護者の有無、介護者の介護意思、介護負担、主な介護者に関する情報等)に関する項目
22 居住環境 住宅改修の必要性、危険個所等の現在の居住環境について記載する項目
23 特別な状況 特別な状況(虐待、ターミナルケア等)に関する項目

 

ただし、通所介護の場合、上記以外に、「機能訓練」や「口腔機能」のアセスメントが必要になる場合があります。加算を取得している場合は必ず必要です。加算を取得している場合に必要な書類は最終回にご説明します。

 

⑨アセスメント2(サービスを利用してから調査する体力測定など)

サービスを開始してから実施する体力測定の内容もアセスメントになります。

機能訓練加算を加算していない場合でも、体力測定を実施している事業所は多いのではないでしょうか。

 

通所介護での運動は今後ますます重要になります。認知症のご利用者の多い事業所でも積極的に運動サービスを提供する必要がありますので、通所介護事業所であれば、できるだけ体力測定を実施したいものです。

 

体力測定は、毎月、継続的に実施することで重要なモニタリングになります。長期・短期目標の評価材料にもなります。

 

事業所によってはこうした記録を個別ファイルにせず、他の利用者と一緒にファイルしている場合がありますが、できれば個別にファイルしておいた方がケアの内容が良くわかり、実地指導などでは好印象につながるでしょう。

 

標準的な測定の項目は以下の通りです。

〇握力

〇開眼片足立ち時間

〇5m間(通常・最大)歩行

〇Timed up go

〇下肢筋力(可能であれば)

 

実際の測定方法については以下のマニュアルをご参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1d.pdf

「運動器の機能向上マニュアル」東京都老人総合研究所

 

 

次回は、通所介護計画書など業務上必要な書類の続きをご説明します。