介護保険次期改正において、リハビリ関係の強化が検討されています。
訪問介護事業においても生活機能向上連携加算があり、リハビリ職との共同による介護予防・悪化予防が期待されていますが、ほとんど利用されていないという状況です。
その原因はなんでしょうか?
また、次期改正でこの加算の報酬がアップする可能性があり、業務として取り組む意義が出てきそうです。
訪問介護の生活機能向上連携加算の算定率は1万人に3人程度
厚労省の「リハビリテーション専門職と介護職との連携に関する調査研究事業報告書」(平成25年度調査)によれば、この加算を算定している利用者は0.032%で、ほとんど利用されていないのも同様の状況です。
そもそも、リハ職と訪問介護員が共同してどのような仕事ができるのか、実はあまり理解されていないのかもしれません。
そのため、次期改正で、この加算の算定率を上げるような方策が検討されています。
生活機能向上連携加算はどのような事例で活用できるのか
本報告では、具体的な事例をいくつか紹介しています。
① 庭まで歩けるようになりたいという利用者の要望に対し、リハ職の助言を元に、 訪問介護の中でも運動メニューを取り入れた事例。
② 介護老人保健施設からの退所に際し、自宅での一人暮らしに向けて、リハ職と介護職が連携した事例。
③ 言語聴覚士、歯科医師を含めた連携で、胃ろうから経口で食事ができるようになった事例。
④ 寝たきり状態にあった利用者の入浴希望をかなえるため、リハ職と介護職の連携により支援を実施した事例。
実際には、このような具体的な事例だけでなくても加算は算定できます。
よくあるケース(=脳梗塞半身麻痺の人の在宅生活やパーキンソン病の方の生活を支援)でも、訪問介護とリハ職が相談して支援を提供するようなケースであれば、大概の場合はこの加算は算定できるようです(計画作成や同行訪問など作業的な要件は満たす必要があります)。
簡単に言えば、「生活支援のためにリハ職の専門的な意見を取り入れた介護」を実践すればそれが算定要件になると考えて良いと思います。
そう考えた場合、ほとんどの障害のある在宅高齢者には活用される可能性があるように思えます。
加算が算定されない理由
なぜこの加算が算定されないのか?
同報告書では、ケアマネージャーに算定しない理由について調査をしています。
ケアマネージャーが答えた主な理由は以下の通りです。
① 「同行訪問の日程調整が困難」47.2%
② 「リハビリテーション専門職による助言が必要と思われる訪問介護利用者が少ない」 29.5%
③ 「リハビリテーションと訪問介護を併用する利用者が少ない」 27.3%
④ 「近隣にリハビリテーション事業所が少ない」 13.6%
※調査時点では訪問リハと訪問介護を利用している場合が算定要件であるが、現在は通所リハも可。
ケアマネージャーには算定のモチベーションが無い
この加算は訪問介護とリハ事業所側にしか報酬的メリットがありません。
そのため、調整をするケアマネージャー側に連携を促すモチベーション(動機)が無いと言われています。
「同行訪問の日程調整が困難」というのは実は変で、サービス担当者会議で訪問介護のサ責とリハ職がアセスメントをして相談すれば、それで十分に要件を満たします。
このような意見が多く出るということは、ケアマネージャー側にそのような連携を促す意思が無いように思えます。
次期改正でどのような改善がなされるかわかりませんが、そもそもサービス連携の要であり、連携調整そのものが本来業務であるケアマネージャーに、特定の加算のためにインセンティブを与えることは考えにくいことです。
チームにリハ職と訪問介護職がいるなら算定するべき
筆者は、ケアチームの中にリハ専門職と訪問介護職がいるならば、原則この加算を算定してチームサービスを提供するのが、本来のケアマネジメントの在り方のような気がします。
どうやら、ケアマネージャー側にリハビリテーションに対する知識不足や専門職に対する遠慮があるのかもしれません。
これは医療職に対して言えることです、介護職以外の専門職に対して、ケアマネージャーが仕事を丸投げしてしまっている傾向を感じます。
他の専門分野に口出ししにくいという遠慮もあるのでしょうが、これではケアプランの中で仕事が縦割り化してしまいます。
どうやらケアマネージャーの連携調整能力不足という側面が見えてきます。
算定には、サ責がリハ職に声をかかればよい
次期改正で報酬がアップするかもしれません。
ケアマネージャーに期待できない場合、サービス担当者会議にリハ職が出席していたら、ひとまず「連携加算を算定しますか?」と声をかけてみるべきだと思います。ちなみに、リハ側の加算は「リハビリテーションマネジメント加算」という名称です。
リハ職は訪問介護がどのような支援ができるのか、あまり知識が深くない場合があります。
訪問介護がリハビリにどのように協力できるか話し合うことは非常に有意義なことです。
リハビリテーションの目的の一つは社会参加や活動の拡大です。
リハ職はその方法論を提示しますが、実際に参加や活動をするのはご利用者本人です。そして、それには努力が必要になります。
そこに支援介入するのが訪問介護であると考えれば良いのではないでしょうか。