虐待・身体拘束の実態について その1

 

 相変わらず介護現場における虐待や殺人などのニュースが相次ぎます。

 

 施設などの虐待・身体拘束の実態について、平成29年 3 月、特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク介護相談・地域づくり連絡会より「身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた介護相談員の活用に関する調査研究事業報告書」が発表されました。

http://kaigosodan.com/web/wp-content/uploads/2017/04/3178381c5e8a416f86389cb92a65da74.pdf

 

 こちらは平成27年に全国の現在活動中の介護相談員 4,680 名を対象とした調査の結果です。施設介護現場における身体拘束や虐待の状況が赤裸々に報告されています。

 

 こちらで報告されている虐待や身体拘束の実態は、施設等の運営面で非常に参考になると思いますので、ピックアップしてご紹介します。

 職員研修などで活用いただければと思います。

 

 

虐待・身体拘束のグレーゾーン

 

 この報告書には、相談員たちが見聞きした身体拘束や虐待の中で、いわゆるグレーゾーンと考えられる、完全には虐待・身体拘束とは言えないが、場合によってはそれになりうるという状況の報告が多くあります。

 

 こうしたグレーゾーンの多くは、あまり意図的では無く、通常の介護業務として施設の中で日常化している部分があります。

 職員はそれが好ましくない行為だとわかっていない場合が多いようです。現場でこのような行為が見られる場合は是正するべきだと考えます。

 

 例を挙げると以下のような行為です。

 

  • 車椅子のタイヤの空気抜き。一杯入っていると走りすぎて危険であるので。
  • 体調不良の利用者の掛け布団の端を洗濯ばさみではさみ、鈴を付けている。
  • 動きが分かるように利用者(くつ・腕・椅子・掛け布団の足元)に鈴を付けている
  • すぐ立ち上がろうとする入所者の椅子にブーブークッションと椅子の背の足元に鈴とタンバリンがつけてあった。
  • 車イスの背もたれに、センサーが付けてある。立ち上がろうとするとセンサーが鳴り、職員が走って来て、座るようにうながしていた。
  • 転倒防止のセンサーが車イスについている。コール音もひんぱんに鳴り、人によりちがうメロディーの音量も高い
  • 利用者の居室外側のドアの取手がとりはずされている。
  • 出入口(玄関近く)に鍵をかけている。
  • 利用者のフロアーのドアに施錠がされており、開閉には暗証番号が必要であり、職員しか操作できない。
  • 認知棟の居室に他の利用者が入れないように、ベルトでドアをしばっていた。
  • ベッドから落ちたがナースコールの設備が無く、巡回も無かったため、朝まで床に転がっていた。
  • 夜間排せつの回数が多いと怒られ今は紙おむつを使用している。
  • いつもは個浴なのに文句を云う、うるさいからとの理由で2ヶ所ベルトの機械浴で入浴。

 

 

不適切な介護

 

 続いて、同じように虐待・身体拘束につながる可能性のある「不適切なケア」の実態について以下のように報告しています。

 

  • 動き出しそうな人には、低いソファに座わられる事によって自力では動けない体勢にしておく。
  • 毛布にカウベルのような、大きな鈴が毛布に付けてあった。夜中、用事があるときに音をならす。
  • 階段の入口に 2 重にソファを置いて使用しにくくしていた
  • 個室のドアに「のぞき窓」がついている。
  • 事務室から利用者の動きがわかるようにフロアーに監視カメラが設置されていた。
  • 目の前でどんぶりにハサミを入れうどんを切る
  • 認知症の方が、口を開けないからと、鼻をつまみ食事介助した。
  • 食事の介助をする際に言葉かけをせずに複数の利用者の口に順番に自動的にスプーンで食物を入れている。
  • 注射器のような物で、無理やり食事を口に入れる。
  • 食事の際、ごはんに薬を混ぜている。
  • 入浴後バスタオル1枚かけたまま廊下を移動。肌が、露出したまま。
  • 浴室前の脱衣室のドアを開けたままで着替えさせている。
  • 入浴時、裸の状態で順番を待っている。
  • 尿意はあるが、紙おむつをつけている利用者が「おしっこ出た」と訴えても「時間じゃないから…」と交換してくれない。
  • 「おしっこ」と職員にうったえるも「おむつをしているのだからそこにして下さい」と返答した。
  • 他の利用者が居るホールのベッドでのおむつ交換
  • トイレの願望がある入居者の方に「次は何時です」と言ってすぐにトイレに連れて行かない
  • トイレ介助の時、ドアを開けたままで、長時間、利用者を放置している。
  • 「夜は紙オムツを3枚もはかされて動けない。飲食は夕方6時から朝まで取れないからお腹は空くし喉は乾くし大変だ」との訴えがあった。
  • 利用者さんが職員に声をかけているが聞こえてないのか無視して何度も素通りしていた。
  • 足の爪が伸びて隣の指にくい込んでいた。利用者が痛いと訴えるまで放置。
  • 「ちょっとまっててね」といったまま対応しない。
  • 車イスを押すスピードが速い。
  • 車椅子歩行の人が多く、車椅子から椅子への移乗はほとんどしない。
  • 食後の口腔清拭入れ歯を出し乱暴にいきなりゴム手にガーゼをまき、清拭した。
  • 男女が同室。
  • 廊下の手すりにエプロンを干してあり、利用者さんが手すりを安心して使えない。
  • トイレの介助時新人指導の為と4人程で介助。
  • 早朝トイレ誘導の為4時前に起こされる。
  • 車椅子(2台)を一緒に両手で移動して、部屋から食堂に移している。
  • ショートステイの人で、家では自立歩行でトイレに行けるが、施設では車椅子が基本で、これでは歩けなくなる、と訴えがあった。

 

 職員は、利用者の安全を考えてであったり、家族から同意を受けてこのような行為を行っている場合が多いようです。しかし、いくら家族から同意を受けているとはいえ、このような行為は利用者の尊厳を傷つけていると考えなければなりません。

 

 次回はもう少し詳しくこの問題について考えます。

 

 

 

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