8 収支シミュレーション
高齢者介護ではサービス提供責任者一人で利用者40人程度まで扱えます。
東京でしたらご利用者一人当たりの介護報酬が月4万円程度見込めるでしょう。
すると、1か月の売り上げは200万円程度になります。
開業したら、まずここが目標になります。
少しでも早く利用者数40名を目指しましょう。
障害居宅を一緒に行う場合は、障害の人数を足し合わせて40名でOKです。
障害サービスは利用者の状態によって一人当たりの利用料金が大きく変わりますが、概ね4万円程度でシミュレーションして良いと思います。
なお、サ責の扱える40名は高齢者だけです。障害は合計されてカウントされませんので、現実には40名以上の利用者を扱えますが、対応できなくなる可能性もありますから、40名を超えたらサ責を増やした方が良いでしょう。
40名の利用者に訪問を行う場合、パートさんをそれなりの人数、雇わなければならないでしょう。
パートさんの給料は介護報酬の概ね半額として計算します。
すると、すべての訪問をパートさんで賄えば、売り上げ200万円であれば、100万円の粗利益になります。
そこから、事務所の家賃や必要経費を引いて、70~80万円が経営者夫婦の収入になります。
夫婦二人で70万円であれば、年収は840万円となり、大企業並みの給料と言えます。
もちろん、訪問をご夫婦でやればその分のパートさんの人件費は浮きますが、サービス提供責任者や管理者はできるだけ事務所に居た方が良いので、訪問はできるだけパートさんに行ってもらう方が良いのです。
この点は後ほど人材確保のところで説明します。
9 創業時の固定費(事業所家賃等)は最小限に
都心部で訪問介護の手が足りないという声を時々聞きます。
これは都心部では他業種の給与に比べ介護職の給与が低いということもありますが、そもそも事業所家賃が高いということがあります。
都心部の不動産価格の高騰は目に余るものがあります。にもかかわらず、給付額は周辺区と同じであり逆格差ともいうべき差が発生してしまっています。
これは事業所家賃が介護事業経営の経費として非常に大きなウェートを占めていることを意味しています。特に創業時はその負担は大きくなります。
たとえば訪問介護を開業する場合、家賃はできれば10万円程度に収めたいものです。さらに同じ事務所で居宅介護支援事業所も兼業するなど、できるだけ事業コストを抑える工夫も必要です。
ただし、あまりみすぼらしい事業所ですとパートさんが集まりにくいという傾向があるようです。
なにも駅前などである必要はありませんが、働く人が通いやすく、居心地が良い事業所の方が人材確保の面で有利だと思います。
10 人材確保の重要性
安定的な人材の確保はこの事業を経営していく上で最重要・最優先の課題です。
現場を知っている方ならすぐに人が辞めてしまう状況は見知っていると思いますが、介護福祉の分野だけでなく中小企業の職場はどこも離職率は高いのです。
しかし、医療福祉分野の特徴として、資格があれば日本全国どこでも仕事ができることや、給与水準がどこでもあまり変わらないなど、ちょっとした理由で職場を変えやすいという傾向がこの業界にはあります。
まずはパートさんの確保と定着から取り組みましょう。
正社員は固定費が高く、介護報酬に対して人件費が8割前後になります。それに対してパートさんは5割です。正社員は事業を拡大する場合に吟味して雇うようにしましょう。
最初はパートさんの確保が優先です。
パートさんは家の近所に働きやすい職場を求めています。
働きやすい職場とはズバリ現場の責任者の「面倒見がいいこと」です。
介護や福祉の仕事は専門知識がある程度必要ですし、介護技術もマスターしていなければなりません。現場に不安があれば責任者に色々と相談したいのは当たり前です。
そうした相談がすぐできる職場の体制や雰囲気がとても重要です。
特に訪問系の仕事は一人で現場に入りますから、相談や情報共有体制をしっかり整備することは必須でしょう。
具体的にはサ責や管理者が忙しくてパートさんが相談したくても捕まらないという状況は無いようにしましょう。仕事の不安をすぐに払しょくすることが大切です。
そのことがパートさんの定着に繋がります。
例えば、子育て中の主婦パートの場合、子供の急な病気などで、仕事を休まなければならない場合があります。
その時、快くサ責や管理者が穴を埋められるような体制を作っておかなければなりません。
地域に住む主婦のパートさんは居心地が良いと長く勤めてくれます。
また、子育てが終われば、常勤として働いてくれ、事業の拡大に貢献してくれる場合もあります。
続く