介護福祉事業開業ガイド(他事業からの参入編)その2

 

 

 他業種から介護福祉事業に参入しようとした場合、どのような事業を手掛けていけば良いのか悩むところだと思います。

 今回は沢山ある介護福祉事業のうち、どのような事業が参入しやすいのか。さらにメリットやデメリット、留意点について代表的なものをご紹介します。

 

 

訪問介護

 

 訪問介護事業は最もイニシャルコストが安く、かつニーズも高い事業です。そのために介護事業を始める際には、最初にお勧めしたい事業です。10坪ほどの事務所があって有資格者が確保できれば開業できます。

 

 資格は既存の従業員でも研修を受ければ取得できます。また、経験者を雇用すれば仕事も問題なくこなせると考えます。

 

 また、指定訪問介護事業はそのまま、指定障害者居宅サービス事業を兼業できます。障碍者向けの訪問介護事業ですが、こちらも将来的に非常にニーズが高い事業ですから、お客様が絶えない状況です。

 

 現在、訪問介護事業所では人手不足でお客様の要望に応えられない事業所も多くなっており、開業後すぐに経営が軌道に乗る事業所が多いといえます。

 

 

訪問看護

 

 こちらもイニシャルコストの低い事業ですが、看護師を確保しなければなりません。

 看護師が確保できれば訪問介護と一緒に開業することでシナジー効果があります。

 訪問介護は介護以外に医療保険の業務も可能です。

 

 やはり将来的に非常にニーズの高いサービスであり、ご利用者が途絶えることは無いでしょう。

 医療費の財政負担を減らしていきたい我が国にとって、在宅診療は、今後大きく伸びるサービスです。

 

 また、地域に住んでいる主婦の看護師さんが子育てをしながら働く場所として最適な事業です。そうしたパート看護師をうまく確保できれば、事業は順調に伸びるでしょう。

 

 ただし、訪問看護は病院勤務と異なり、一人で患者さんのご自宅を訪問してサービスを提供しますので、病院でチームでしか働いたことの無い看護師さんにとっては少々ハードルの高い部分がありなす。労務管理の中でそうした不安を払しょくできる工夫が必要になります。

 

 訪問系の事業はスタッフの仕事に対する不安や悩みを解消できるかどうかが人員を定着する上での大きなポイントです。

 

 

通所介護(デイサービス)

 

 介護業界を知らない一般の方にとって通所介護は開業しやすい事業というイメージがあったようです。事実、少し前まで、未経験の事業者が沢山参入してきた経緯があります。

 

 その代表がお泊りデイサービスで、空き家を改造して認知症の方の宿泊を受け入れられる通所介護でした。

 行き場のないお年寄りの受け入れ場所として一時脚光を浴びました。

 事業としても毎日宿泊利用するご利用者がいると、宿泊費をとらなくても、介護給付だけで一人当たり30万円以上の売り上げがあるので、誰でも簡単に開業でき、すぐに経営が軌道に乗るとして、フランチャイズ化もされもてはやされました。

 

 しかし、介護の質や夜間の管理体制などに問題が多く、行政から連泊に制限が出されたり、スプリンクラーなどの設備投資の追加や、地域によっては開業が禁止されたりしたために、いまではほとんど新規開業は見られません。

 

 通所介護は訪問介護などに比べればイニシャルコストが高く、最低でも1500万円程度の設備投資が必要な事業です。

 

 最近の低金利で融資が受けやすいために、リハビリデイサービスなどで、他産業からの参入も多いのですが、地域によっては供給過剰気味であり、小規模多機能などの他のサービスとの競合や介護給付費の減額もあり、最初に手掛ける事業としてはハードルが高い事業と言えます。

 

 自社所有で100平米程度の床面積を低コストで確保できる場合など、条件が合えば検討しても良いでしょう。しかし、その場合でも、訪問介護事業所を併設する等して、通所介護だけを単独で開業しない方が良いと考えます。

 

 ただ、比較的スタッフのが確保しやすい事業ですので、資金や地域ニーズなどとの関係を考慮して検討しても良いでしょう。

 

 

有料老人ホーム

 

 資金が潤沢であり、会社に体力がある場合は新規事業として検討する事業者もあるかもしれません。建設業や不動産業から有料老人ホーム事業に参入した会社も多く、最近ではソニーなど大企業も参入しいます。

 

 筆者としては、有料老人ホーム事業は介護福祉事業というよりも、老後の生活を支えるサービス業としての視点が必要だと考えています。

 

 高級な老人ホームは自費負担も大きいので、お客様が限定的になります。また、逆に住宅型などの場合、低所得者(生活保護者を含む)をターゲットにした事業形態もあります。

 資金力だけでなく、ある程度、高齢者のニーズをマーケッティングする力が必要になります。

 

 また、都心部では介護保険予算の負担が大きいため、包括型の老人ホームの開業を区市町村が制限している場合があります。都心部で在宅生活ができなくなった高齢者が郊外の有料老人ホームに転居するパターンも多く、そうしたニーズを把握しなければなりません。

 

 さらに、サービスの質の管理が重要です。虐待などの問題が発覚すると、退所者やスタッフ離れが起こり事業が立ち行かなくなる場合があります。人手不足の中、スタッフの業務管理・労務管理を疎かにすると経営が困難になりやすいのもデメリットでしょう。

 

 

 次回も様々なサービスについてご紹介します。

 

 

介護福祉事業開業ガイド(他事業からの参入編)その1

 

 今回から他の業種から介護福祉事業へ参入する方法についてガイドしたいと思います。

 特に、中小企業事業者が参入しやすい事業ですので、その点を留意してご説明できればと思います。

 

介護福祉事業の参入メリットについて

 

①国の社会保障システムに組み込まれた安定事業である

 高齢者や障害者の生活を保障する仕組みは、先進国では当然のシステムであり、国が責任をもって保障しなければならない事業です。

 そして、我が国はこの分野の整備が他の先進国よりも遅れており、今後さらなる充実が要請されています。

 今のところ筆者が開業をお手伝いした会社のほとんどが継続的に事業を経営しています。

 

②地域に貢献できる事業である

 たとえば、親の代より地域に根差して経営をされているような中小企業であれば、地域における存在感がより増す事業であり、将来にわたり地域での存続を可能にします。

 

③女性が活躍できる職場である

 女性が生き生きと仕事ができる職場を地域に創造することができます。これはワークライフバランスという観点で地域にとって、とても意義があることです。

 

④コスト競争、シェア争いの悩みが少ない

 支援の必要な高齢者や障害者は今後おそらく50年程度増え続けます。誠実なサービス提供を続けていれば、コスト削減に頭を悩ませたり、他社とのシェア争いに巻き込まれることはありません。

 国は社会保障費を抑える目的もあり、病院や施設でケアを受けている高齢者や障害者の在宅ケアを強く推進しています。

 そのため、今以上に在宅ケアニーズが高まっていくことが想定されています。

 

⑤開業コストが極めて安い

 もし、事務所などがすでにあるならば、訪問介護や看護であれば、コストはほぼ人件費だけです。

 保育事業などは施設整備に費用が必要ですが、介護は極めて安価に事業が開始できます。訪問介護などで実績を積んだ上で、規模の大きな事業へと着実に展開していくことで、安定した成長が期待できます。

 

⑥自治体の補助金が使える

 地域密着型のグループホームや小規模多機能などであれば、建築費のほとんどが補助金で賄えます。

 土地をお持ちであれば、他の不動産投資などよりも断然有効な活用ができます。

 

 

では、デメリットは?

 

①あまり儲からない

 会社経営で大成功を狙っているのであれば確かに急成長できる業種ではありません。しかし、長く安定的な事業経営を望むのであれば最適です。

 

②人材確保が難しい

 2016年11月現在、介護職の有効求人倍率は3.4倍です。しかし、まったく求職者が来ないわけではありません。介護事業の場合地域での口コミの評判が物を言う場合があります。働きやすい職場づくりができれば、少しずつ人は集まり定着すると考えます。

 人材の確保と定着のノウハウについてはこちらをご覧ください。

「訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術」https://carebizsup.com/?p=827

 この業界ではスタッフの定着に失敗すると経営ができません。経営がうまくいかない事業者の多くが人材が定着しない会社です。

 

③全くの他業種から参入する場合、何も経験が無くて良いのかという不安

 経営者に経験が無くても、スタッフは有資格者の経験者が集まりますので仕事自体は問題ありません。また、経営者も開業前に介護初任者研修などを受講し、3年から5年経営すれば、概ね業界の姿は見えてくるでしょう。

 基本的には閉鎖性のない業界です。未経験でもやる気さえあれば誰でも参入できます。

 

④仕事が大変そう、3K職場である

 確かに(特別養護)老人ホームでの介護では体力が必要な部分もあります。しかし、在宅援助の場合、多くがそれほど体力を必要とする業務ではありません。訪問介護では70代の女性ヘルパーも活躍しています。

 介護現場の3Kイメージの多くは重度の方々のお世話をする施設介護のイメージと言ってよいでしょう。

 むしろ必要なのは対人援助のスキルや医療や障害の知識であり、そうした能力に優れた事業者であれば、キタナイやキケンは仕事として適切に対処できるものです。

 また将来的には、体力の問題も、福祉機器などの進歩で解消されてくると考えます。

 

 

産業構造が大変化しても生き残るために

 

 これからの50年で日本の産業構造は、それまでの50年に比べ劇的に変化すると考えられます。

 例えば、親の代に会社を興し経営を続けてきたが、このまま同じ事業で会社を継続していけるか、不安に感じている中小企業経営者の方には、特にお勧めしたい事業です。

 起業した地域で少なくとも50年は継続的に事業を営むことができます。

 工場や事務所などの経営資源も再利用できますし、従業員も雇用し続けることが可能です。

 

 次回は、具体的などのような事業参入が可能なのかをご説明します。

 

 

 

 

ケアプランAIでケアマネは不要になるか?

 

 ケアプランAI(人工知能)の開発がスタートしました。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF14H0Q_U7A410C1EA4000/

 

 このシステムが稼働すればケアマネージャーは要らなくなるのではないかという声もあります。

 実際のところはどうでしょう?少し検証したいと思います。

 

 

ケアプランAIの仕組みを考える

 

 ではケアプランAIは具体的にどのようにケアプランを作成するのでしょう。

 居宅介護において、簡単にイメージ想定すると、以下のような流れになるのではないかと考えます。

 

①利用者の心身の状況の他あらゆる情報を収集し入力する(スクリーニング)

②利用者情報はクラウド上のデータベースに照会され、その人の状態が評価される(AIによるアセスメント)

③アセスメントによりAIはその人に必要なサービスを選択する

④選択されたサービスによりAIケアプランが作成される

⑤AIケアプランを本人や家族の意向に合わせて修正する

⑥修正されたAIケアプランに合わせてサービス提供事業者を選択し入力

⑦ケアプラン原案(暫定ケアプラン)の完成

⑧サービス担当者会議開催(議事録等の入力)

⑨ケアプラン完成→サービス提供票・週間サービス計画表に反映

⑩AIがモニタリングすべき項目を作成→人による確認修正

⑪モニタリング情報の入力

⑫長期・短期目標についてのAI評価→人による確認

⑬AIが再アセスメントに必要な、収集すべき情報を提示

⑭情報の再収集・追加入力

 

 最初からここまでの作業が整備できるとは思えませんが、実際に使えるAIケアプラン・システムになるにはこの程度の業務能力が必要ではないかと考えます。

 

 

医療分野ではAI診断がすでに始まっている

 

 近い将来、身近なクリニックなどでもAI診断が実現すると考えられています。

https://cs.sonylife.co.jp/lpv/pcms/sca/ct/special/topic/index1704.html?lpk=

 

 とは言っても治療判断を行う医者が必要なくなるわけでは無いでしょう。

 しかし、1次診断などのスクリーニングでは活用されるのではないでしょうか。

 カルテ情報共有と連携して地域医療改革の推進に役立つことが期待されます

 

 医学の歴史は人体と病気の情報化の歴史でもあります。血液やDNAなど人体のあらゆる状況を情報化し、病気を治すことに利用してきた歴史です。

 

 病気に関わる人体の情報が膨大化している現代ではAIを活用することは避けられないことだと思います。

 

 

AIシステムには膨大な情報データベースが必要

 

 AIの能力としての真骨頂は、膨大な情報を処理しディープラーニング(深層学習)と言われる仕組みを通して、AIそのものが成長するところにあります。

 https://www.nttcom.co.jp/research/keyword/dl/(ディープラーニング説明)

 

 人工知能というものは自ら学習し成長し、能力を向上させていくことが売りであり、そのためには膨大な情報が蓄積されなければなりません。医学ではその情報がすでに膨大に蓄積されています。

 

 一方、介護分野ではこれからです。

 介護サービスの多様な情報が日本全国から集まり、クラウド上に蓄積され、ディープラーニングが始まるまでには、相当の時間がかかるでしょう。

 それとも開発者側であらかじめ介護に関する情報データベースを作成するのでしょうか?それには相当のコストが必要になります。

  普通に考えれば、多くの現場でこのAIシステムが使われ、学習するべき情報が蓄積される方法をとるでしょう。

 つまりこのシステムが成功するには、多くの現場で利用されなければならないということになります。

 

 

システムが利用されなければケアプランAIは失敗する

 

 結局、上述のAIケアプランの作成の流れにおける下線部分は、ケアマネージャーが行わなければなりません。

 ケアマネージャーには情報収集と調整やコミュニケーションなどの仕事は残ります。

 

 このAIシステムが成功するためには、多くのケアマネージャーによって利用されなければなりませんが、利用されるには、何らかのインセンティブが必要です。

 たとえば、このシステムを活用することで、ケアマネ業務が軽減され、現在の受け持ち担当者数を超えて仕事をすることが可能になり、国も規制緩和し、収益増加につながるようなインセンティブです。

 

 でなければ多くのケアマネージャーはこのシステムを利用しないでしょう。

 全国のケアマネが活用し、それによりディープラーニングが加速しなければこのケアプランAIは成功しないと思います。

 

 

AIケアプランはケアマネの資質の向上に寄与するか

 

 ディープラーニングが加速し、ケアプランン自体の精度が向上することは、ケアマネジメントの資の向上につながるとは思います。

 しかし、ケアマネージャーの仕事はケアプランを作成することだけではありません。

 

 ケアマネの仕事はケアマネジメントを進めて、利用者の心身状況の維持向上と自立を推進していくことです。

 

 たとえば、

  • 下肢筋力の維持向上のための運動をさせたくてもしようとしない利用者
  • 訪問介護を受け入れない家族
  • 食事管理ができない糖尿病の利用者
  • ターミナルにおける家族ぐるみのコミュニケーションのケア
  • 認知症家族に対する認知症の理解を促すケア

 などなど、ケアプランの内容とは別に、ケアマネージャーが関与しなければ前に進まないことは沢山あります。

 

 そして、ケアマネの資質として必要とされているのは、上述のようなケースでもマネジメントを進めていける能力でしょう。

 

 実は、ケアプラン自体はアセスメントの時点である程度のパターンが見えていることも多いのではないでしょうか。

 

 多くのケアマネージャーが、ある程度パターン化されたケアプランをカスタマイズしてその利用者に適したものにしてゆく作業を行っていると思います。

 

 もしこのAIがそのようなパターン化されたケアプランを作成するだけなら、たぶん利用価値は無いでしょう。そのパターンはすでにケアマネの頭の中に入っていますから。

 

 

使えるAIシステムでなければ失敗する

 

 利用価値がないAIシステムでは情報も蓄積できないので。このケアプランAIは失敗すると思います。

 

 ケアプランAIのシステムが成功するには、まず、できるだけ多くのケアマネージャーが利用するシステムにしなければなりません。

 

 先にも述べたように、業務の軽減と収益向上に結び付くシステムでなければ利用はしないでしょう。

 

 ケアマネージャーの資質の向上はその先にあることであり、筋トレの必要な利用者に筋トレをさせられるAIは開発できません。

 

 もしかしたらロボットケアマネージャーが開発され、人間のケアマネージャーは要らなくなるかもしれませんが、おそらくそのレベルのロボットはもう人間と変わりません。

 

 

 

地域密着型サービス(GH・小多機能)への参入

 

 

第7期介護保険事業(支援)計画に向けて

 

 全国の自治体で地域の第7期介護保険事業(支援)計画の検討が佳境に入っています。

 平成30年春には全国で、向こう3年間の地域の介護事業計画が発表されます。

 各事業者様においては地域自治体が年内にも公表するパブリックコメントなどを通してその内容を確認していただけますようお勧めいたします。

 

 

向こう3年間の地域密着型サービスの計画が発表されます

 

 第7期介護保険事業(支援)計画で注目したいのは地域密着型サービスの整備計画です。

 特に事業を拡大したい事業者様においては特に注目していただきたいポイントです。

 もしも平成30年度の公募に参加したいということであれば、今から準備をされる必要があると思います。

 

 

地域密着サービスの整備が進んでいない

 

 在宅ケアの拠点となる地域密着型サービスのグループホームや小規模多機能居宅介護事業所などは思ったように建設が進でいない地域があるようです。

 このままでは2025年の必要数を満たさないばかりか、在宅ケアそのもに重大な影響をもたらす可能性があります。

 こうした地域密着型の施設が増えない結果として見えるのは「無届ハウス」など不適切な介護施設の増加です。

 特に低所得者層の高齢者は劣悪な環境で介護を受けなければならない状況が懸念されます。

http://www.koujuuzai.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/05/h28_jigyo3.pdf

 

 

東京都のマッチング事業

 

 要介護度が高くても在宅でケアを実現していくためには、ケアマネージャーなど関係者の能力も重要ですが、必要に応じて柔軟に利用できる施設等社会資源が地域に整備されていなければなりません。

 

 この状況を打開するために、東京都はグループホーム用地のオーナーと事業運営者のマッチング事業を開始しました。

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/06/13/07.html

 小規模多機能にも欲しいマッチング事業ですが、とりあえずグループホームだけのようです。

 グループホームも小規模多機能も介護事業として補助金等のスキームは同じなので、これがうまくいけば、小規模多機能や他の施設系地域密着型サービスにも波及するかもしれません。

 

 

不動産投資としての地域密着型サービスのメリット

 

 都の事業の仕組みは、土地所有者とグループホームを運営する事業者を引き合わせる仕組みになります。

 

 人口減少や都内でも空き家の増加などが進み、未利用地が増えていく傾向にあります。

 しかし、マンションなど収益性の高い不動産投資にはそれなりの広さの土地が必要になりますから、中途半端な広さの土地の場合はなかなか利用方向が定まらないことが多いようです。

 結果、駐車場やアパートなどの不動産投資に向けられる場合も多く、アパート経営投資のCMが盛んに宣伝されています。

 

 100坪程度の土地がある場合、アパート経営がまず最初に思いつくかもしれません。

 しかし、グループホームや小規模もその程度の土地で十分に建設が可能であり、しかも建設費の多くを公的補助金で賄うことが可能です。

 不動産投資としては断然、こちらの方がお得であることは間違え無いでしょう。

 

 しかし、土地オーナーにとって、アパート経営であれば、不動産業者や建設業者に丸投げできますが、介護施設の建設には誰に頼めばよいのかわかりません。得だとわかっていてもなかなか手を出せないのが本音だとは思います。

 

 また、アパート経営関係の営業は積極的で、オーナー側への売り込みも激しく、そちらに流れてしまう傾向は否めません。

 

 

運営業者も人手不足で積極的になれない

 

 介護事業者にとっても運営を請け負うためにはスタッフを揃えなければなりませんから、現在の人材不足の状況下では、請け負っても人を揃えられない恐れがあるために、やりたくても安易に手を出せない状況があるでしょう。

 

 アパート経営の場合、入居者が入らずに収益が上がらなくても、基本的に建築業者等が不利益を請け負うことはありません。立ててしまえばそれで収益になるわけですから、営業も積極的になるわけです。

 

 その点、グループホームなどは入居者がいなければ不利益は運営事業者が負うことになります。まして必要な人員が揃えられなければ、開業すらできないのです。そうしたデメリットがあるために手を挙げない運営業者も多いのでしょう。

 

 

公募では地域密着の地元の事業者が優先される傾向も

 

 第7期の計画が発表されれば資金力のある大手介護事業者がこぞって公募に参加するでしょう。大手はスケールメリットにより人材不足でもなんとか人を揃えられる力があります。

 ただし、既に大手が開業している地域では、同じ事業者が参入することは無いようです。公募の選定でも地元の事業者が優先される傾向はあるようです。

 

 地域に根差して介護事業を営んできた中小事業者にとっては事業を拡大するチャンスです。100坪ほどの土地が借りられれば事業化できます。初期費用の融資は必要になりますが、公募に選定されれば地元の金融機関は融資してくれるでしょう。開業すれば補助金が出ますので返済はそれで可能です。

 

 実は、人員については、もし開業時に揃えられなければ、開業日が遅れるだけのことです。グループホームの場合、1ユニットだけ開業というケースもあります。

 

 もし興味があれば、今すぐにでも地域自治体の担当課に相談されることをお勧めします。