訪問介護事業 起業の手引き 4

 

11 現場経験はあった方が良いか

 

 たとえ、会社経営の経験があったとしても介護福祉現場を知らない方がこの事業に参入する場合、特にスタッフの扱い方で苦労することが多いようです。

 介護福祉で働く職員はがむしゃらに働くようなモーレツ型の人は少なく、職住接近で比較的安定志向の労働者が多いようです。

 簡単に言えば、社会福祉の従事する労働者は準公務員的なイメージが強く、出世よりも安定性やワークライフバランスを重視する傾向にあると思います。

 

 そうした特性を持つ職員に対してイケイケの体育会系の管理をするとすぐに辞めてしまうことになります。その分高額な給与が支払えればまだ良いですが、開業時からそれを行うことは避けた方が良いでしょう。

 

 この業界で開業を目指すならば介護福祉現場で最低でも半年程度働いて、介護福祉業界の人や仕事の雰囲気を把握しておく方がベターだとは思います。

 しかし、それが不可能であるならば、サービス提供責任者に現場経験の長い社員を雇用し、スタッフの指導育成はその人に任せた方が最初のうちはうまく行くとおもいます。

 

 また、経営者に現場経験が無くても、介護職員初任者研修を取得することをお勧めします。

 自治体から補助金が出ている場合、無料で取得できることもあります。

 東京都介護職員初任者研修資格取得支援事業

 https://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/kaigojinzaikakuho.html 

 

 現場未経験でもこれによりある程度介護の知識は身につきます。また、訪問介護員の資格が取れますから人員基準を見たしやすくなります。

 

 

12 融資について

 

 先にも述べましたが、500万円の自己資金があれば、途中でお金が足りなくなっても、融資を受けて経営を続けることが可能です。

 

 融資元としては主に2種類ありどちらも無担保・低利率で借りられます。

 

①政策金融公庫「ソーシャルビジネス支援資金」

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/socialbusiness.html

 

 先に述べた通り、介護事業の指定が下りれば間違いなく融資が可能です。

 

②地元自治体の起業支援などの融資

www.adachiseiwa.co.jp/houjin/yushi/sougyou/(足立区の例)

 

 区市町村には小規模事業者向けの無担保・低利子融資の制度が必ずあります。信用保証協会を利用した融資ですが、産業振興セクションにチラシなどがあると思います。

 また、地元の信用組合や信用金庫で扱っていますので、お店に行けば情報がもらえるでしょう。

 

 この二つの融資はどっちが得かと言えば、区市町村の制度により変わります。上記足立区のように最長5年利子が無料になる場合は、こちらがお得でしょう。

 

 このあたりの情報も地元の金融機関が相談に乗ってくれるかもしれません。

 

 ただし、自己資金500万円で、これまで述べてきたような節約企業を行い、しっかりとご利用者を確保できれば、無借金経営も十分可能です。

融資は事業拡大のための投資用に残しておいても良いでしょう。

 

 

13 金融機関について

 

 金融機関ですが、ネットバンキングを使う場合は郵便局やメガバンクが使いやすいいと思います。しかし、融資などの相談は地元の信用金庫や組合に限ります。

 

 また、給与の支払いなどは、ネット専門の銀行の方が、手数料が安く済む傾向があります。

 資本金や運営資金を入れ、国保連からの収入と各種支払いをするメイン口座を、通帳のある大手の銀行にしておき、給与の支払いはネット専門銀行。融資の受け入れは地元の信用金庫等にするパターンが考えられます。

 しかし、社員が少ない場合は、ネット専用銀行は後で検討すればよいと思います。

 「ネットバンキング振込手数料の比較」

 www.netbank-navi.com/perfect-comparison.html

 

 

14 税理士・社労士について

 

 介護事業会社を設立した場合、税理士と社労士と契約をしなければなりません。

 先に、社労士を探します。

 なぜなら、処遇改善加算を算定するためにはパートを含め社員を雇わなければならず、社員を雇った場合は、10日以内に「労働保険の保険関係成立届」という書類を、所轄の労働基準監督署へ提出しなければなりません。

www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/dl/040330-2b.pdf

 この手続きや保険料の計算などは社労士さんに依頼します。

 

 また、税務関係の届け出も必要です。自分で行うこともできますが、税理士に頼んだ方が無難でしょう。どちらにしても毎年の決算作業は税理士に依頼しなければなりませんので、税理士さんとも契約が必要です。

 

 税理士や社労士の探し方ですが、地元に税理士会や社労士会があればそこで紹介してくれるかもしれません。

 事業所の近くで開業している士業の中から、ホームページなどを参考にしながら、直接面談して、信頼できる方かを確かめる必要があります。

 

 会社が小さいうちは、税理士や社労士の能力が問われることはあまりないのですが、会社が大きくなるにつれて、税金対策や労務対策でこれらの士業の能力が問われる場面が出てきます。

 その際、物足りなさを感じたら、変更することも可能です。

 

 起業当初は、毎月の訪問による相談などはあまり必要ではありません。

 書類のやり取りをネットで行うなど、顧問料を安く対応してくれる事務所の方がベターであると考えます。

 多くのスタッフを抱えた大規模な事務所の場合は、格安なサービス設定があったりしますが、担当者によってフットワークにむらがあるようです。

 

続く

 

 

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