スピリチュアルケアというサービス

 

 

死にゆく人に心の安らぎをもたらすサービス

 

 ターミナルケアサービスを提供する場合、死にゆく人の心のどのように安らぎをもたらしていくのか、訪問看護や介護の職員は悩むところです。

 

 欧米ではキリスト教を背景にしたスピリチュアルケアが、普通に医療介護サービスの中に組み込まれており、ターミナルケアのチームの中にはキリスト教関係のスピリチュアルケアの専門家が加わっていることが多いようです。

 

 日本人は無宗教の人も多いため、宗教哲学を背景にしたスピリチュアルケアがどの程度通用するのかわかりませんが、そろそろ現状のターミナルケアの中にスピリチュアルケアが適切に組み込まれるべきではないかと筆者は考えます。

 

 

日本のスピリチュアルケア

 

 日本のスピリチュアルケアは宗教哲学を背景にいくつかの団体で既に取り組みが行われており、日本スピリチュアル学会には仏教やキリスト教の団体が加盟し、実践的活動を行っています。

http://www.spiritualcare.jp/

 

 この日本スピリチュアル学会では、スピリチュアルケア師という現場で実際にスピリチュアルケアを提供する専門家を認定しています。

 

 1年程度のカリキュラムを履修し試験などに合格すると認定されるようですが、今のところこ各実践団体が独自のカリキュラムをつくり研修を実施してる状況のようです。

 

 ただ、この資格を持っていて、専門的なサービスを提供しても、現在のターミナルケアサービスの中には報酬はありませんので、多くの団体はボランティア的もしくは自費によるサービス提供になっているようです。

 

 

 

現状のターミナルケアでは未整備のサービス

 

 実際に死にゆく人のケアをした人であれば、どのように心安らかに死を迎えさせてあげればいいのか、何もわからずに取り組んでいることも多いでしょう。

 

 介護の研修でもスピリチュアルなケアの在り方は抽象的なものも多く、具体的な事例演習なども行われません。実際に現場でターミナルケアサービスを提供している介護職員は行き当たりばったりでサービスに取り組んでいるのが現状だと思います。

 

 

厚労省はどう考えているのか

 

 厚生労働省は看取りケア自体の重要性は認識していても、安らかに死を迎えていただくというサービスをどの程度重要と考えているのかよくわかりません。

 

 緩和ケアの検討会などでその必要性が委員から発言されていますので、必要性は認識しているかもしれません。

 

 社会コストの面では、施設や在宅でのターミナルケアは医療費低減の効果がありますから、積極的に推進したいのでしょう。しかし、スピリチュアルケア自体には社会コスト軽減効果が無いと感じているのでしょうか。

 

 しかし筆者は、スピリチュアルケアが介護サービスに適切に組み込まれることは、病院死を減らす効果があると考えています。

 

 

死に対する不安を和らげるのは医療の役割ではない

 

 死に対する不安が強くなると、精神状態や病状の悪化をもたらします。また、そうした不安定な患者を見て家族が不安に感じ、在宅での看取りをあきらめてしまったりします。

 結局、設備の整った病院での対応が必要になり、最後は病院で亡くなることになります。

 

 もちろんこのあたりの効果は今後、実証的な調査が必要になるでしょう。

 しかし、訪問診療における在宅ターミナルが医学的に多くの患者さんに可能になっているにもかかわらず、本人や家族の不安を和らげるケアが無いために、施設や在宅でのターミナルケアができなくなっている現状は確実にあると思います。

 

 

安らかな死をもたらすサービスは既に求められている

 

 筆者自身、両親を病院で看取っている経験上、病院で死を迎えることは、あまり安らかな死の迎え方ではないなと感じています。自分自身、あまりそのような死に方はしたくないと感じます。

 

 安らかな死をもたらすための精神的なケアの技術は既に訪問看護や訪問介護のスタッフに必要になっていると考えます。

 

 特に在宅ターミナルであれば、毎日のようにケアを提供し、ご本人や家族と会話をする訪問介護員には、現状の介護福祉士のカリキュラムレベル以上の専門的な技術が必要です。

 

 

専門的な技術教育の体系化が必要

 

 看取りにおけるやすらかで精神的に安定した状態をもたらすサービスをどのように提供したらよいのか、その専門的な技術教育をどのようにやるのか体系化が無ければなりません。

 

 すでに医学系の大学などで研究は行われていると思いますが、国としての方向性が出なければ現状は変わらないでしょう。

 

 宗教的な背景を持たなくてもそうしたサービスは可能なのか、名称にしてもスピリチュアルケアで良いのかもわかりませんが、早急に日本人にマッチした方法論が確立することが期待されます。

 

 

混合介護の可能性も

 

 筆者はそろそろ国としてこの分野の報酬の在り方を考えなければいけないのではないかと考えています。

 在宅ターミナルが増えれば増えるほどその必要性を訴える声は大きくなるでしょう。

 

 訪問看護や訪問介護事業所を経営する上でも、ターミナルケアにおけるスピリチュアルなサービスの提供をそろそろまじめに考えても良いと思います。

 特に自費のサービスとしての提供は今でも可能ですし、今後、混合介護の中での扱いも検討されるでしょう。

 

 

 

(次期改正)通所介護の焦点は?

 

 通所介護事業における次期改正の焦点は、機能訓練と栄養管理に関わる見直しになるのではないかと言われています。

 

機能訓練が適切に行われていない

 

 機能訓練については、特に、小規模デイサービス(=地域密着型サービス)におけるの取り組みが手薄であり、デイサービスの基本性能である「生活機能の維持向上」が図られていないのではないかという議論がされています。

 

 実際、通常規模や大規模デイサービスにくらべ、小規模デイサービスでは機能訓練加算の取得率が低く、適切な機能訓練が行われていないのではないかという疑義があるようです。

 

 制度の規定では、加算を取得していなければ、機能訓練指導員を配置すればよく、実地指導などでも、加算を所得していない事業所の機能訓練の内容をチェックすることは無いようです。

 

 もともと、小規模デイサービスの利用者は認知症の利用者が多く、機能訓練も脳トレやリクリエーション活動が主で、筋トレなどの運動系の活動は多く無いという事情もあるでしょう。

 

 しかし、機能訓練の目的はリハビリテーションではなく「生活機能の維持向上」が目的ですから、その観点に立った機能訓練は行われなければならないという考えが厚生労働省にはあると思います。

 

 

認知症の利用者にも運動系の機能訓練は必要

 

 介護保険制度が施行されてから、通所介護事業所で提供される機能訓練の方法論も大きく進化してきていると考えます。

 今となっては認知症だから運動系の機能訓練はやらなくても良いという考え方はナンセンスでしょう。

 たとえレスパイトがサービスの中心であったとしても、ただテレビを見せているだけのデイサービスなど今や皆無だとは思います。

 

 認知症予防の機能訓練として、例えばしりとりをしながら踏み台昇降をする二重課題トレーニングなどが、認知症予防に効果があることが実証されてきています。

 小規模で認知症の利用者が大いという理由だけで、機能訓練はあまり熱心ではないということは通じなくなっているのも事実です。

 

 機能訓練というと=リハビリと考えている方も多いようですが、デイサービスでの機能訓練は医療リハビリとは異なります。その方法論はバラエティーに富んだものとなっていると考えます。

 

 

個別機能訓練計画が義務化される可能性も

 

 国が通所介護サービスの機能訓練を強化したいと考えた場合、個別の機能訓練計画を必須にする可能性もあるでしょう。

 

 現在の通所介護計画書の内容に機能訓練計画を盛り込むような形かもしれないですが、いずれにしても、デイサービスの利用者には必ず計画的な機能訓練サービスの提供が義務付けられる可能性は十分あると考えます。

 

 筆者は、認知症の利用者であろうが、ほとんどの高齢者には筋力の維持向上のための運動系のトレーニングが必要であると考えていますので、機能訓練計画の義務化には賛成です。

 

 

機能訓練計画が義務となった場合の対応は?

 

 個別機能訓練を計画的に実施していない、小規模なデイサービスの運営者は、途方に暮れてしまうかもしれません。

 

 しかし、個別機能訓練はそれほど難しいものではないと考えます。

 

 かつて筆者が開発に関与した「転倒防止」デイサービスhttp://www.best-kaigo.com/business/library/

は、介護予防リハビリデイサービスというイメージではなく、重度の要介護の方にも運動系の機能訓練サービスを提供するというコンセプトで開発しました。

 

 そのため、お風呂を設置し、時間も一般的なリハビリデイサービスの2部制でなく5-7時間の1日サービスの提供としています。

 

 実は、要介護の高齢者にとっては、週2日、デイサービスに来て、5時間程度椅子に座っているだけで相当な体幹のトレーニングとなり、脊柱起立筋等の強化に繋がります。

 

 体幹の強化はそのまま自宅での生活の維持向上に結び付きます。

 つまり、要介護の高齢者にとってはデイサービスに来て座っているだけで、機能訓練になるのです。

 

 また、運動もリハビリデイサービスのようなマシーントレーニングをしなくてはならないと思ってしまいますが、実際は椅子からの立ち上がり運動だけでも十分なのです。

 逆に言えば自宅でもできる簡単な運動をデイサービスで覚えてもらい、自宅でも行うよう働きかけるのです。

 

 機能訓練計画はそのようなことを計画的に提供していることを説明できればそれでOKであると考えます。

 

 そう考えれば、機能訓練が義務化されたとしてももそれほど怖くはないとおもいます。

 ほとんどの高齢者にとって下肢筋力の維持向上のための運動は有効です。そこをベースにして、個別の利用者にマッチしたプログラムを作ればよいと思います。

 

 

総合的な栄養管理は誰もやっていない

 

 現在の日本の医療福祉制度では、高齢者の食生活を管理する仕組みは適切に整備されていません。

 

 老人ホームなどであれば食事の管理は行き届いていますが、在宅での食事の管理は手付かずの状態でしょう。

 

 特に介護予防の段階での食事管理は誰も介入できている状況ではなく、包括による基本チェックはあっても、何をどのくらい食べているかまでは誰もきちんと見ていません。

 

 最近になり、血中アルブミン濃度など、高齢者のタンパク質摂取不足が注目され始めていますが、介護保険制度の発足時は高齢者の栄養管理がどうあるべきかの方向性が明確でなかったと考えます。

 

 そのため通所介護の栄養改善加算も管理栄養士による専門性の高い加算となり、取得している事業所があまりありません。

 

 

通所介護での総合的な栄養管理は困難

 

 現状では、在宅高齢者が何をどれぐらい食べており、どのような栄養素が不足しているかを調べるのは、ケアマネージャーの仕事でしょう。

 

 ケアマネジメントにおける総合的な栄養管理の在り方が確立していない現状では、通所介護での栄養管理をどのようにしていくかは考えられない状況ではないか思います。

 

 従って、次期改正で栄養改善加算が改正されるとしても、多くの通所介護事業所には影響がないような気がしています。

 

 しかし、機能訓練面から考えると、タンパク質の摂取量は重要です。

 筋力の維持向上に熱心な通所介護事業所の中には、運動後に、必須アミノ酸(タンパク質)飲料を提供している事業所もあります。

https://www.ajinomoto.co.jp/nutricare/public/products/amino_care40/

 

 前述の「転倒予防デイサービス」でも、体力の維持向上のためにタンパク質の摂取を利用者に勧めています。

 

 筋力を維持向上させる面での栄養管理の取り組みは今のうちから行っていくべきではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

混合介護で生活援助はどう変わるのだろう(訪問介護)

 

軽度者の生活援助が保険外へ

 

 介護予防・日常生活支援総合事業が始まり、要支援者の生活援助が、介護給付以外のサービスに変わりつつあります。

 

 日常生活支援総合事業の生活援助は単価も安く、既存の訪問介護事業で対応するには見合わないという声もあり、自治体によってはシルバー人材センターなどの対応に切り替わっているところもあります。

 

 流れとして単なる生活援助のみの介護は無くなる方向なのでしょうか?重度の方は別としても軽度の利用者の生活援助をどうしていくのか、訪問介護事業所経営の観点から考えてみたいと思います。

 

 

人手不足で生活援助だけの仕事に対応ができない

 

 現在、訪問介護は人手不足で、身体介護でさえも対応できない場合があるのに、単価の安い生活援助はもう対応できないという声をよく聞きます。

 

 身体介護に付随した生活援助は仕方ないとして、軽度者の生活援助はもう昔のようには提供できなくなっている実態があると考えます。

 

 この流れは国の介護保険から生活援助を切り離す方向とも合致しており、自立支援に繋がらない生活介護は減っていく方向なのでしょう。

 

 

訪問介護は重度者向けのサービスが中心に

 

 もともと訪問介護員は、家政婦からの転職も多く、介護保険制度発足時は生活援助が盛んに提供されてきた経緯もあります。要支援者の部屋の掃除も昔は普通にケアプランに載せられますが、今はなかなか難しい状況でしょう。

 

 訪問介護事業所の経営者の中には生活援助のみの利用者は断って、身体介護中心にサービス提供をしたい意向も強くなっています。

 また、医療的ケアなどレベルの高い訪問介護をサービスの中心に据えることで、生活援助をほとんど行わない事業所もあります。

 

 実は、医療的ケアに積極的に対応すると、障害者サービスを含め、その依頼だけで手が一杯で、通常の訪問介護には対応できない状況になる場合もあるようです。

 それだけ重度者向けサービスは不足しているのかもしれません。

 

 実際その方が収益性も高く、筆者はこれからの訪問介護はレベルの高いサービスを提供することで生活援助は行わない方向で経営したほうが良いと考えています。

 

 

混合介護における生活援助の位置づけは?

 

 国は次期改正に向けて、保険外のサービスと介護保険サービスを組み合わせて提供する混合介護について検討しています。

 訪問介護事業では保険外の生活援助をどのように組み合わせるかが大きなテーマとなっているでしょう。

 

 先に述べた通り、今後の訪問介護事業所はできるだけ重度者向けのサービスを充実させ、身体介護中心の提供体制になる方向であると考えます。

 

 しかし、訪問介護が生活援助を行わない場合、だれがどのようにそのサービスを提供し、介護保険制度や障害者福祉制度の中での位置づけがどうなるのか疑問が多いでしょう。

 また、そのサービスが混合介護として訪問介護事業に組み込まれるのでしょうか?

 しかし、それであれば、現在でも行っている生活援助を自費化したサービスと何が違うのでしょうか?

 さらに、現状では経営的に生活援助のサービスは合わないわけですから、そのような混合介護に意味があると思えません。

 

 

保険外・低コストの家事代行事業との連携

 

 保険外の生活援助サービスを外部の独立したサービス事業者が実施するとすればどうでしょう?(これを混合介護というのか疑問ですが)

 

 確かに、買い物代行や掃除といったサービスは訪問介護員である必要はありません。それは軽度の利用者だけでなく、重度の利用者でも同様でしょう。

 

 そうした簡易なサービスがケアマネジメントの中で社会資源として位置づけられ、適切に提供されれば、提供主体は学生のアルバイトでも構ないわけです。

 

 しかし、自宅に訪問して提供する以上は、訪問介護と同様に手順書的なものが必要にはなるでしょう。その場合、訪問介護事業所とのどのような協働体制を築けば良いのでしょうか?

 

 例えば、低コストで保険外サービスを提供できる家事代行事業者が、訪問介護事業所と連携し、無資格のアルバイトによる生活援助も、訪問介護計画書の中でその自立支援の役割が適切に位置づけられることができ、さらに、訪問介護員の管理の元でサービス提供ができれば、保険外の低コストの生活援助も可能かもしれません。

 

 しかし、それを実現するためには、

 保険外事業者と介護事業の調整を誰がどうやるのか?

 訪問介護事業所にとってどんなメリットがあるのか?(なにがしかインセンティブがなければ誰も連携しません)

 保険外事業者に収益性は見込めるのか?(見込めなければ誰も参入しません)

 など、多様な問題があり、それらをクリアする枠組みを厚生労働省が提示できるのか、いささか疑問です。

 

 今のところ、ダスキンやベアーズといった家事代行ビジネスはプレミア感のある高付加価値なサービスモデルが主流になっています。

 高齢者や障害者に必要な家事代行は、そのようなプレミアムなものではないでしょう。国中が人材不足の中で、簡易で低コストの家事代行ビジネスモデルが成り立つか、IT活用するなど民間の力がなければ不可能な気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

「共生型サービス」とはどのようなものか

改正の目玉「共生型サービス」

 

 次期の介護保険制度改正で始まる「共生型サービス」とはどのようなものでしょう。

 

 この新しいサービス形態について、厚生労働省はガイドライン(案)を3月に発表しました。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000117428.pdf

 

 国の説明では、「高齢者と障害(児)者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、 介護保険と障害福祉、両方の制度に新たに共生型サービスを位置付ける。(注)具体的な指定基準等の在り方は、平成30年度介護報酬改定及び障害福祉サービス等報酬改定にあわせて検討。」と説明しています。

 

 ただし、上記のガイドライン(案)には障害者以外に保育も視野に入れており、児童福祉法も改正対象になると思われます。

 

 

介護サービスと障害サービスの兼業

 

 これは、訪問介護と同様に、介護保険サービスと障害者福祉サービスを同時に提供できる制度を、他の事業にも広げることであると考えます。

 また、保育事業も視野に入れていますので、地域の実情に応じて、たとえば、通所介護事業と保育事業を同じ施設で実施できるということでしょう。

 

 ただし、要介護高齢者と障害(児)者が同時にサービスを受ける風景をイメージするのはどうやら違うようです。

 全体として、まだはっきりとした基準は示されていませんが、ガイドラインには「同じ場所において、サービスを時間によって高齢者、障害者、児童等に分けて提供する場合は、各サービスの提供時間において、各制度の人員・設備基準等を満たしていれば、同じ施設を時間帯によって異なる福祉サービスとして使用することは可能である。」と明記していますので、営業時間を変えなければ兼業は不可ということでしょう。

 

 

通所介護事業所で他のサービスを提供する

 

 例えば高齢者の通所介護の場合、現実的にどのような兼業体制が可能なのか考えてみます。

 

 この場合、人員基準や設備基準はひとまず脇に置いておきます。各サービスの設置基準はガイドライン(案)に出ていますのでご参照ください。

 

 ここでは、実際に共生型サービスが経営的にどの程度有効なのかをシミュレーションしてみたいと思います。

 

 

通所介護と放課後等デイサービスの兼業

 

 ポイントとなるのは、営業時間でしょう。

 高齢者の場合、ニーズは平日の昼間です。

 放課後等デイサービスは、放課後等ですから、平日午後や、場合によっては休日が営業時間のメインになると考えます。

 

 放課後等デイサービスは、最近ではチェーン展開をする法人もあり、ここのところニュービジネスとして注目されています。地域によっては過当競争になっているという話もあります。

 

 高齢者デイサービスと放課後等デイサービスの兼業体制が可能であれば、この動きにさらに拍車がかかる可能性があります。

 

 高齢者デイサービスの収益性が低下している現状で、放課後等デイサービスが同じ施設で兼業できれば、生産性の向上が期待できるかもしれません。

 

 

既にある通所介護の兼業モデル

 

 実は、機能訓練型のデイサービスでは、平日昼間はデイサービス、夜や休日は簡易的なトレーニングジムとして一般の利用者に有料で開放しているビジネスモデルは既にあります。

 

 開設当初から、機能訓練型デイサービスとスポーツジムを兼業する形で設備を導入する方法は今後も有効なビジネスモデルであると思います。

 

 

放課後等デイサービスと営業時間を分ける

 

 では高齢者デイと放課後等デイサービスではどうでしょう。

 

 一般的に放課後等デイサービスの営業時間は、平日であれば午後3時前後から夕方まで、休日は午前中から夕方までというパターンが多いようです。

 具体的にはこちらをご参照ください。

https://h-navi.jp/column/article/35025515

 

 つまり、高齢者デイを3時まで営業し、それから夕方までと休日を放課後等デイサービスで営業することは可能です。

 

 

設備や送迎車両は兼用可能

 

 ただし、設備に関しては、障害児の受け入れのための設備の在り方と高齢者の受け入れの設備の在り方はは若干異なると考えます。

 

 たとえば、高齢者はイスとテーブルが必要ですが、障害児はクッション性の良い床材を敷き詰め、動き回って遊べるフロアが必要になります。兼業するには、毎日の模様替えなど、運営方法の工夫が必要になると考えます。

 

 

人員基準は緩和が必要か

 

 放課後等デイサービスの乱立により、サービスの質が問題化しており、国はこの事態を受けて、人員基準を厳しくしました。

 

 人員要件の一つに、「児童発達支援管理責任者」がありますが、この任用基準が厳しくなりました。

 かつてのように高齢者介護の実務経験だけでは任用できなくなり、そのため通所介護の生活相談員がそのまま兼務することが難しくなっています。

 30年の改正でどうなるかはわかりませんが、共生型サービスを推進するためにはこのあたりの基準緩和が必要そうです。

 

 また、別途研修受講が必要です。研修については以下をご覧ください。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/shienhoukanrenkensyu/sabikann.html

 

 

放課後等デイサービスのニーズは地域で大きく違う

 

 都の教育委員会で仕事をしていた時、東京の特別支援教育の予算は他府県に比べ、非常に手厚く、障害児を育てる親御さんが、都立の特別支援学校に入学するために、わざわざ引っ越してくるという類の話を良く聞きました。

 

 一方、その分、都内の区市町村の通常学級での障害児受け入れがあまり進んでないという状況もあります。

 

 また、障害児の放課後の受け入れを自治体がカバーしているケースもあります。障害児向けサービスの体制は、地域により大きく事情が異なります。

開業する場合は、地域の状況を良く調査したうえで、ニーズを把握することが重要です。

 

 

 

 

初の認定介護福祉士が誕生

 

 4月21日、認定介護福祉士認証・認定機構は、初の認定看護師が11名誕生したことを発表しました。

http://www.nintei-kaishi.or.jp/home/

「認定介護福祉士認証・認定機構 HP」

 

 

現場実践力を評価される認定介護福祉士

 

 筆者は介護福祉士の給与は、夜勤などをせずとも、現行のケアマネージャーレベルになるべきだと考えています。そうでなければ、将来にわたって日本の介護福祉は維持できないと思います。

 

 これまでの介護業界のキャリアアップの仕組みは、介護福祉士を経験した後、ケアマネージャーになることが、一つの道でした。

 しかし、直接現場で接する介護職のレベルが上がらなければ、利用者ニーズに的確に応えられないという現状があり、現場実践力のある介護福祉士の必要性が従来から訴えられていたところです。

 

 認定会福祉士ができたことで、現場実践力が評価され、キャリアアップの道筋が一つ増えたと考えたいのですが、今後この資格がどのように機能し、処遇などの面でどのように評価されていくか、注目されるところです。

 

 

認定介護福祉士とは

 

 認定介護福祉士は、能力の高い介護福祉士を認定し、その現場実践力を通して、介護課題の解決やスタッフの指導・連携、地域の介護力アップの仕事に当たれるようにしようとするものです。具体的には以下のような能力が必要とされています。

 

 

Ⅰ 十分な介護実践力

 

①リハビリテーション等の知識を応用した介護を計画・提供でき、利用者の生活機能を維持・向上させることができる。

 

②認知症のBPSDを軽減させることができる。

 

③障害特性に応じた介護が提供できる。

 

④心理的ケア、終末期ケアを実践できる。

 

 

Ⅱ 介護職の小チーム(5~10名)のリーダーへの教育・指導、介護サービスのマネジメントを行う力

 

①介護職の管理・運用を行い、介護サービスマネジメントや人材育成に責任をもち、上司等にも働きかける。

 

②介護計画に利用者や家族のニーズが反映されるようアドバイスをするとともに組織的に介護サービスが提供できるように取り組む。

 

③介護の根拠を説明し、指導するとともに内省を習慣づける。

 

④記録様式などサービス管理に必要なツールを改善・開発できる。

 

⑤介護職チームの意識改革、サービスの提供方法や提供体制の改善、研修プログラムの編成等を行い、新しい知識・技術・実践をチームに浸透させることができる。

 

 

Ⅲ 他職種やそのチームと連携・協働する力

 

①他職種からの情報や助言を適切に理解し、介護職チーム内で共有し、適切な介護に結び付ける。

 

②利用者の日ごろの生活状況と、それを踏まえた介護の実践内容を、論理立てて他職種に伝える。

 

③利用者の状態像の変化に気づき、その状況を適切に他職種に伝え、連携を図ることで、利用者の状態像の悪化を最小限に止めることに寄与する。

 

 

Ⅳ 地域とかかわる力

 

①家族に対して、生活環境の整備、相談援助等ができることで、家族の不安を軽減し、適切なかかわりを支援する。

 

②地域におけるボランティア、家族介護者、介護福祉士等への介護に関する助言・支援ができる。

 

③施設・事業所の介護力を地域の人々のために活用できる。

 

④介護に関する地域ニーズを把握・分析することができる。

 

 

ケアマネージャーとの役割分担は?

 

 こうした能力を見てみると、ケアマネージャーの役割と被る部分が多く見受けられます。役割分担はどうなるのだろうという疑問が湧いてきます。

 

 機構の説明にはありませんが、筆者としてはトロイカ体制を目指すべきではないかと考えます。

 

 トロイカ体制とは複数の指導者により組織を運営していくことで、ロシアの3頭立て橇に見立てた言葉です。

 

 簡単に言うと、今まで下に見られていた、介護現場職が、医療職やケアマネージャーと同等の地位に立ち、チームケアを実践していくことです。

 

 特別養護老人ホームで例えれば、各ユニットの介護リーダーに対する指導的役割を果たすということですから、その施設の介護部長のような役割を担うのだと考えます。

 

 そうすると、ホームの医療職やケアマネージャーと同等以上の役割を求められている感じがします。

 

 

認定介護福祉士になるには

  

 認定を受けるためには、介護福祉士としての実務経験5年プラス、600時間の研修を受ける必要があります。詳しくは以下をご覧ください。

http://www.nintei-kaishi.or.jp/certification/curriculum.php

「認定介護福祉士になるには」

 

 研修にはⅠ類とⅡ類があり、Ⅱ類はⅠ類の研修を受けたうえで、施設のユニットリーダーやサービス提供責任者等の現場実務を経験しながら、研修を受けることが求められます。

 

 つまり、実際の現場での経験を通じた実践力の獲得が求められています。

 

 ただ、医療的ケアの実践力などが評価されていないようですので、認定介護福祉士なのに喀痰吸引ができないのは如何なものかという疑問もあります。

 

 

今後、加算要件になるのかが重要

 

 例えばサービス提供責任者などの介護現場のマネージャーが、認定介護福祉士である事業所に対する加算などがどのように設定されていくかが注目されます。

 

 認定介護福祉士がいる事業所といない事業所とで給付に差が出なければ、認定介護福祉士の認定者は増えないと考えます。

 

 その加算を原資にして、介護職の処遇がさらに向上することを期待します。