独立訪問介護士の可能性 その2

 

 優秀な訪問介護士が地域の中で医療と連携して訪問介護サービス提供できるようにしていくのが、独立訪問介護士導入の目標です。

 そのためには、地域にこうした訪問系の医療介護の統合システム・プラットフォームがインフラとして整備されなければなりません。

 

具体的な独立訪問介護士の仕事の様子をシミュレーション

 

 独立訪問介護士は訪問介護のサービス提供責任者としての実績が長く、区市町村の審査などに合格した優秀な登録介護士です。基本的な個人情報は区市町村のシステムに登録され、責任の所在が明確になっていなければなりません。イメージは個人タクシーの運転手に近いかもしれません。

 彼(彼女)は個人事業主であり、株式会社などの法人ではありません。従って事業所を持っておらず、自宅から地域の利用者宅へ出向き、サービスを提供します。

 実施した業務の情報は各種ICT技術によって彼(彼女)の持つタブレットにより把握され記録されます。

 例えばGPSによりどのご利用者宅に何時から何時まで訪問していたかが記録されます。これにより訪問の事実は確認できます。

 また、このシステムは指紋認証などによる本人確認ができないと起動しませんので、第3者が変わって訪問しても業務ができない仕組みになっています。

 

 サービス提供の実績はタブレットから入力され、利用者本人や家族の確認を受けて記録されます。これはケアマネージャーや行政側でも確認することができます。

 訪問の度にその都度確認するのは煩雑でしょうから、特別な場合だけになるかもしれません。もちろん毎月の介護給付の請求時はケアマネージャーが内容を確認する必要があります。

 また、何らかの基準を設けシステム上で業務違反や異常をスクリーニングできるようになればもっと良いでしょう。

 

 これらの業務記録は保険者も見ることができますが、それにより必要に応じて検査を実施し指導することが可能です。また、統計的な分析により地域の介護状況の把握にも役立つでしょう。

 

 毎月の請求作業は、システムの記録から自動生成され、ケアマネが確認した後、国保連に送られ、独立訪問介護士の個人口座に振り込まれます。

 この制度を実際に立ち上げることになった場合は、あらかじめ、税金や社会保険料が調整されて振り込まれるようにした方がベターでしょう。移動手段の自動車など各種必要経費については、一定基準で控除するようにすればよいと思います。

 まあ、年末調整などの個別の調整で確定申告は必要ないはなると思いますが。

 

 仕事は今と同じようにケアマネージャーより入ります。サ担などは今と同じでしょう。ITが進歩してもフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションは大切です。

 

 

地域の医療介護サービスネットワークの充実

 

 現在、介護保険法では利用者は自分の好きな事業者を選択し、契約によりサービスを提供してもらうことを制度の根幹としています。

 独立訪問介護士も法人ではありませんが利用者との契約によりサービス提供を開始します。重要事項の説明と同意などは基本的に今の流れと同じです。

 

 しかし、一点だけ特別事項として、契約を結んだ訪問介護士が病気や事故などで、急遽訪問サービスの提供ができなくなった場合、ケアマネージャーの判断により、他の事業所や独立訪問介護士から緊急でサービス提供をできるようにする規定を、新たに盛り込む必要があるでしょう。

 

 複数の訪問ヘルパーがいる事業所であれば、担当のヘルパーが急遽行けなくなったとしても代役を立てることが比較的簡単ですが、独立訪問介護士の場合はそうはいきません。

 地域の介護人材ネットワークの中でそうした事態に対応できるような体制を整える必要があります。そのための法的整備が必要でしょう。

 

 このようにICT活用による地域の医療介護ネットワークが整備され、個人による独立のケアサービスが出現すると、これまでの個別の契約によるサービス提供という形もすこし変わってくるかもしれません。

 ITネットワークにより、地域のケア人材ネットワークも強化され、地域全体で利用者のケアを提供するような体制になっていくでしょうし、その方が利用者にとっても社会資源の効率的な活用(社会コストの低減)の面にとってもメリットがあることだと思います。

 

 また、訪問介護だけでなく訪問診療や訪問看護についても同様の仕組みを、同じネットワークの中で構築することになります。その際、訪問診療医はあらかじめカルテ共有などをして、地域の訪問診療医であれば当番制で、誰でも、夜間の緊急対応などができるようにすべきでしょう。

 こうした柔軟で効率的な地域ケアネットワークが今後求められると考えます。

 

 一つ懸念があるとすれば、複数の区市町村に渡って仕事をする場合、システムが変わってしまう可能性があることです。複数の保険者に登録していると、複数のタブレットを持ち歩かなければならなくなるかもしれません。

 セキュリティー面で端末による個人管理をした方が安全だからですが、技術が進歩すればタブレット一つでアプリケーションを切り替えれば済むようになるかもしれません。

 

この項終わり。

 

 

 

将来、ニーズが高まるばかりの医療的ケア

 

 

 訪問看護事業者はもちろんですが、訪問介護事業者も今後、積極的医療的ケアに取り組んでいくべきだと考えます。

 収益性面でのメリットだけでなく、在宅で生活する医療的ケアの必要な人たちが特にお子さんを中心にニーズは高まるばかりだからです。

 

 もちろん、人材不足のおり、医療的ケアまで手が回らないという、訪問介護・障害者居宅サービス事業所も多いでしょう。

 しかし、医療的ケアに特化した訪問介護事業所では高い収益性をあげている事業所もあり、将来そうしたサービスに取り組む視野を持っておいた方が良いと考えています。

 

 

子供のケアニーズの高まり

 

 在宅での医療的ケアニーズは、特に未就学のお子さんのニーズが高まっています。

 こうした未就学の医療的ケア児の人数や生活実態を、厚生労働省は「不明」としています。

 地域では病児と扱われて障害児施設にも入れず、医療的ケアに対応できないため保育園にも入れない状況が多いといわれます。

 結果、ほとんどの場合、母親などの家族が在宅で世話をしている状況であり、仕事や将来設計に大きな影響を与えている状況です。

 

 世田谷区の調査では医療的ケアの必要なお子さんを持つ、主たる介護・看護者(ご家族等)の1日の平均睡眠時間はおよそ9割が6時間未満、かつ睡眠が断続的であるという結果が出ています。

 在宅でご家族がケアをしている未就学の医療的ケアの必要な子供の潜在ニーズはどのぐらいなのか、国自体も把握していない状況です。

 全国医療的ケア児者支援協議会(http://iryou-care.jp/)によれば、文部科学省の全国調査で医療的ケアが必要な児童数(特別支援学校などの就学児)が平成23年で19,303名でしたが、2年後の平成25年5月では、25,175名とおよそ6,000名も増えています。

 これは、近年の新生児医療の発達により、もたらされたものだそうです。

 また、同協議会の推計では、東京都には未就学の重症心身障害児が約1600人存在しているとのことです。

 

 こうした子供たちの在宅生活を支える社会的資源として介護職の医療的ケアが存在している部分も大きいと言えます。

 ちなみに、保育士も同様に医療的ケアが可能になりましたが、医療的ケアの必要な子供を受け入れてくれる保育園等はほとんど増えていないようです。

国が介護福祉士と保育士の融合を検討しているのもこうした背景があるかもしれません。

 

 

障害者福祉サービスは不十分

 

 わが国では、お子さんだけでなく、障害者に対するサービスの供給はまだまだ不十分であり、社会保障給付の額でもヨーロッパなどの福祉先進国からはかなり後れを取っている状況です。

また、社会全体としても必ずしも関心が高いとは言えないでしょう。

 日本では、長い間、障害者支援の主体は家族や行政が中心であり、民間などの外部サービスを利用した広い支援体制がなかなか整わない状況が続いていました。

 欧米ではノーマライゼーションの考え方が浸透しており、障害により障害者が不利益を被ることは、社会システムに問題があり、障害者は外部サービスを積極的に活用して、自立した生活をする権利があるとされています。

 日本は2014年に「障害者の権利に関する条約」を批准し、制度面でやっと国際標準に到達したといえる状況です。

 今後、障害福祉サービスのさらなる充実を図ることが国策となっていると考えます。

 

 

障害者サービス利用はどんどん伸びている

 

 国民保健団体連合会のデータから、ここ4年のサービスの伸びを見てみましょう。

 平成24年から平成28年にかけて、障害福祉サービスの利用者数が24%伸びていますが、障害児だけに限定すると、その伸びは136%です。

 

 こうした伸びは障害者総合支援法が施行され、今まで障害者ではなかった新たな障害者が増加したり、病院や施設から在宅生活へのシフト、また、今まで外部サービスを利用してこなかった障害者が積極的にサービスを利用し始めたことが要因だと考えます。

 特に障害児を持つ家庭では、家族が直接支援していた状況から、一気に外部サービスを使い始めたということでしょう。それだけ障害児に対するサービスニーズは高く、その傾向は今後も変わらないといえるでしょう。

 

 なお、福祉先進国ではそもそもの障害認定の方法が異なり、日本では障害児とみなされない病児も多くが障害者としてサービスを受けられる環境があります。

 わが国が福祉先進国を目指すのであれば、日本でも新たなサービスの利用はさらに増えると考えます。

 

 

まず医療サービスの充実が必要

 

 実は医療的エアの必要な子供たちのケアを外部から提供するには、まず、訪問診療などの医療サービスの充実が課題となっています。

 この点で我が国では訪問診療医が不足しており、その原因として医師への負担が大きすぎるということが挙げられています。

 

 こうした児童に対応する訪問診療医は24時間365日、電話での対応ができることが必要であり、とても一人の医師だけでは対応できず、組織的な対応ができるようにしなければなりません。

 電子カルテの共有などにより、複数の医師による訪問診療の地域的な運用が必要ですが、まだまだ道途上となっています。

 

 しかし、こうした医療環境の整備は、今後充実してくると筆者は考えますし期待します。そうなれば今以上に介護職の提供する医療的ケアニーズも高まって行くでしょう。

 

 現在、訪問介護事業所が喀痰吸引や経管栄養を行うためには、介護職員が研修を受けて、都道府県に事業者登録する必要があります。

 介護職がレベルの高いサービスを提供できるようになることは、そのまま処遇の改善に直結します。

 将来を見据えて少しずつでも取り組まれることをお勧めします。

 

 

スピリチュアルケアというサービス

 

 

死にゆく人に心の安らぎをもたらすサービス

 

 ターミナルケアサービスを提供する場合、死にゆく人の心のどのように安らぎをもたらしていくのか、訪問看護や介護の職員は悩むところです。

 

 欧米ではキリスト教を背景にしたスピリチュアルケアが、普通に医療介護サービスの中に組み込まれており、ターミナルケアのチームの中にはキリスト教関係のスピリチュアルケアの専門家が加わっていることが多いようです。

 

 日本人は無宗教の人も多いため、宗教哲学を背景にしたスピリチュアルケアがどの程度通用するのかわかりませんが、そろそろ現状のターミナルケアの中にスピリチュアルケアが適切に組み込まれるべきではないかと筆者は考えます。

 

 

日本のスピリチュアルケア

 

 日本のスピリチュアルケアは宗教哲学を背景にいくつかの団体で既に取り組みが行われており、日本スピリチュアル学会には仏教やキリスト教の団体が加盟し、実践的活動を行っています。

http://www.spiritualcare.jp/

 

 この日本スピリチュアル学会では、スピリチュアルケア師という現場で実際にスピリチュアルケアを提供する専門家を認定しています。

 

 1年程度のカリキュラムを履修し試験などに合格すると認定されるようですが、今のところこ各実践団体が独自のカリキュラムをつくり研修を実施してる状況のようです。

 

 ただ、この資格を持っていて、専門的なサービスを提供しても、現在のターミナルケアサービスの中には報酬はありませんので、多くの団体はボランティア的もしくは自費によるサービス提供になっているようです。

 

 

 

現状のターミナルケアでは未整備のサービス

 

 実際に死にゆく人のケアをした人であれば、どのように心安らかに死を迎えさせてあげればいいのか、何もわからずに取り組んでいることも多いでしょう。

 

 介護の研修でもスピリチュアルなケアの在り方は抽象的なものも多く、具体的な事例演習なども行われません。実際に現場でターミナルケアサービスを提供している介護職員は行き当たりばったりでサービスに取り組んでいるのが現状だと思います。

 

 

厚労省はどう考えているのか

 

 厚生労働省は看取りケア自体の重要性は認識していても、安らかに死を迎えていただくというサービスをどの程度重要と考えているのかよくわかりません。

 

 緩和ケアの検討会などでその必要性が委員から発言されていますので、必要性は認識しているかもしれません。

 

 社会コストの面では、施設や在宅でのターミナルケアは医療費低減の効果がありますから、積極的に推進したいのでしょう。しかし、スピリチュアルケア自体には社会コスト軽減効果が無いと感じているのでしょうか。

 

 しかし筆者は、スピリチュアルケアが介護サービスに適切に組み込まれることは、病院死を減らす効果があると考えています。

 

 

死に対する不安を和らげるのは医療の役割ではない

 

 死に対する不安が強くなると、精神状態や病状の悪化をもたらします。また、そうした不安定な患者を見て家族が不安に感じ、在宅での看取りをあきらめてしまったりします。

 結局、設備の整った病院での対応が必要になり、最後は病院で亡くなることになります。

 

 もちろんこのあたりの効果は今後、実証的な調査が必要になるでしょう。

 しかし、訪問診療における在宅ターミナルが医学的に多くの患者さんに可能になっているにもかかわらず、本人や家族の不安を和らげるケアが無いために、施設や在宅でのターミナルケアができなくなっている現状は確実にあると思います。

 

 

安らかな死をもたらすサービスは既に求められている

 

 筆者自身、両親を病院で看取っている経験上、病院で死を迎えることは、あまり安らかな死の迎え方ではないなと感じています。自分自身、あまりそのような死に方はしたくないと感じます。

 

 安らかな死をもたらすための精神的なケアの技術は既に訪問看護や訪問介護のスタッフに必要になっていると考えます。

 

 特に在宅ターミナルであれば、毎日のようにケアを提供し、ご本人や家族と会話をする訪問介護員には、現状の介護福祉士のカリキュラムレベル以上の専門的な技術が必要です。

 

 

専門的な技術教育の体系化が必要

 

 看取りにおけるやすらかで精神的に安定した状態をもたらすサービスをどのように提供したらよいのか、その専門的な技術教育をどのようにやるのか体系化が無ければなりません。

 

 すでに医学系の大学などで研究は行われていると思いますが、国としての方向性が出なければ現状は変わらないでしょう。

 

 宗教的な背景を持たなくてもそうしたサービスは可能なのか、名称にしてもスピリチュアルケアで良いのかもわかりませんが、早急に日本人にマッチした方法論が確立することが期待されます。

 

 

混合介護の可能性も

 

 筆者はそろそろ国としてこの分野の報酬の在り方を考えなければいけないのではないかと考えています。

 在宅ターミナルが増えれば増えるほどその必要性を訴える声は大きくなるでしょう。

 

 訪問看護や訪問介護事業所を経営する上でも、ターミナルケアにおけるスピリチュアルなサービスの提供をそろそろまじめに考えても良いと思います。

 特に自費のサービスとしての提供は今でも可能ですし、今後、混合介護の中での扱いも検討されるでしょう。

 

 

 

初の認定介護福祉士が誕生

 

 4月21日、認定介護福祉士認証・認定機構は、初の認定看護師が11名誕生したことを発表しました。

http://www.nintei-kaishi.or.jp/home/

「認定介護福祉士認証・認定機構 HP」

 

 

現場実践力を評価される認定介護福祉士

 

 筆者は介護福祉士の給与は、夜勤などをせずとも、現行のケアマネージャーレベルになるべきだと考えています。そうでなければ、将来にわたって日本の介護福祉は維持できないと思います。

 

 これまでの介護業界のキャリアアップの仕組みは、介護福祉士を経験した後、ケアマネージャーになることが、一つの道でした。

 しかし、直接現場で接する介護職のレベルが上がらなければ、利用者ニーズに的確に応えられないという現状があり、現場実践力のある介護福祉士の必要性が従来から訴えられていたところです。

 

 認定会福祉士ができたことで、現場実践力が評価され、キャリアアップの道筋が一つ増えたと考えたいのですが、今後この資格がどのように機能し、処遇などの面でどのように評価されていくか、注目されるところです。

 

 

認定介護福祉士とは

 

 認定介護福祉士は、能力の高い介護福祉士を認定し、その現場実践力を通して、介護課題の解決やスタッフの指導・連携、地域の介護力アップの仕事に当たれるようにしようとするものです。具体的には以下のような能力が必要とされています。

 

 

Ⅰ 十分な介護実践力

 

①リハビリテーション等の知識を応用した介護を計画・提供でき、利用者の生活機能を維持・向上させることができる。

 

②認知症のBPSDを軽減させることができる。

 

③障害特性に応じた介護が提供できる。

 

④心理的ケア、終末期ケアを実践できる。

 

 

Ⅱ 介護職の小チーム(5~10名)のリーダーへの教育・指導、介護サービスのマネジメントを行う力

 

①介護職の管理・運用を行い、介護サービスマネジメントや人材育成に責任をもち、上司等にも働きかける。

 

②介護計画に利用者や家族のニーズが反映されるようアドバイスをするとともに組織的に介護サービスが提供できるように取り組む。

 

③介護の根拠を説明し、指導するとともに内省を習慣づける。

 

④記録様式などサービス管理に必要なツールを改善・開発できる。

 

⑤介護職チームの意識改革、サービスの提供方法や提供体制の改善、研修プログラムの編成等を行い、新しい知識・技術・実践をチームに浸透させることができる。

 

 

Ⅲ 他職種やそのチームと連携・協働する力

 

①他職種からの情報や助言を適切に理解し、介護職チーム内で共有し、適切な介護に結び付ける。

 

②利用者の日ごろの生活状況と、それを踏まえた介護の実践内容を、論理立てて他職種に伝える。

 

③利用者の状態像の変化に気づき、その状況を適切に他職種に伝え、連携を図ることで、利用者の状態像の悪化を最小限に止めることに寄与する。

 

 

Ⅳ 地域とかかわる力

 

①家族に対して、生活環境の整備、相談援助等ができることで、家族の不安を軽減し、適切なかかわりを支援する。

 

②地域におけるボランティア、家族介護者、介護福祉士等への介護に関する助言・支援ができる。

 

③施設・事業所の介護力を地域の人々のために活用できる。

 

④介護に関する地域ニーズを把握・分析することができる。

 

 

ケアマネージャーとの役割分担は?

 

 こうした能力を見てみると、ケアマネージャーの役割と被る部分が多く見受けられます。役割分担はどうなるのだろうという疑問が湧いてきます。

 

 機構の説明にはありませんが、筆者としてはトロイカ体制を目指すべきではないかと考えます。

 

 トロイカ体制とは複数の指導者により組織を運営していくことで、ロシアの3頭立て橇に見立てた言葉です。

 

 簡単に言うと、今まで下に見られていた、介護現場職が、医療職やケアマネージャーと同等の地位に立ち、チームケアを実践していくことです。

 

 特別養護老人ホームで例えれば、各ユニットの介護リーダーに対する指導的役割を果たすということですから、その施設の介護部長のような役割を担うのだと考えます。

 

 そうすると、ホームの医療職やケアマネージャーと同等以上の役割を求められている感じがします。

 

 

認定介護福祉士になるには

  

 認定を受けるためには、介護福祉士としての実務経験5年プラス、600時間の研修を受ける必要があります。詳しくは以下をご覧ください。

http://www.nintei-kaishi.or.jp/certification/curriculum.php

「認定介護福祉士になるには」

 

 研修にはⅠ類とⅡ類があり、Ⅱ類はⅠ類の研修を受けたうえで、施設のユニットリーダーやサービス提供責任者等の現場実務を経験しながら、研修を受けることが求められます。

 

 つまり、実際の現場での経験を通じた実践力の獲得が求められています。

 

 ただ、医療的ケアの実践力などが評価されていないようですので、認定介護福祉士なのに喀痰吸引ができないのは如何なものかという疑問もあります。

 

 

今後、加算要件になるのかが重要

 

 例えばサービス提供責任者などの介護現場のマネージャーが、認定介護福祉士である事業所に対する加算などがどのように設定されていくかが注目されます。

 

 認定介護福祉士がいる事業所といない事業所とで給付に差が出なければ、認定介護福祉士の認定者は増えないと考えます。

 

 その加算を原資にして、介護職の処遇がさらに向上することを期待します。

 

 

 

 

 

 

 

地域の医療介護連携を加速するIT技術の導入について

 

IT導入補助金によりケア業務のIT化が加速する予感

 

 国はIT技術の導入による生産性の向上を目指した、IT導入補助金を始めました。

 https://www.it-hojo.jp/

 これにはもちろん医療介護事業も含まれており、この補助金を利用することにより情報共有化などの業務効率化を図る介護事業所も増えるのではないでしょうか。

 

 格安スマホやSIMの登場により月々1,000円程度の通信費でスタッフ全員がモバイルツールを持てるようになっています。

 いよいよ、ケア業務のIT化が加速しそうな気配がしてきました。

 

 

重度の方の在宅ケア推進にはIT技術の導入が不可欠

 

 筆者は訪問介護や看護などの在宅ケアの収益性向上のためには、レベルの高い医療的ケアの実施も含め、医療介護連携が不可欠だと考えています。

 

 重度の障害者や医療ニーズの高い高齢者などの、在宅療養生活を実現するためには、医療介護連携が重要であることは、介護保険制度が始まった頃より継続して訴えられてきたことです。

 

 施設や病院で生活している方でも、連携体制が整えば、実は在宅生活が可能な方が多くおられます。その意味で潜在的な在宅療養ニーズは非常に高いのです。

 

 しかしこの連携体制の充実は様々な理由によりなかなか進まない状況でした。

 特に施設や病院が充実している都市圏では、連携を進める主体がはっきりせず、行政や医師会などの利害が交錯し、思うような連携体制が構築できていないように感じます。

 

 

在宅療養は医師の負担が大きい

 

 在宅療養を支えるには、まず訪問診療が重要な役割を担います。

 

 しかし、365日24時間のケア体制を整えるには訪問診療医への負担が非常に大きく、これまでは、医師の地域医療に対する使命感だけで支えられてきた部分が多いと言われます。

 

 このことは未だに解消されておらず、休みもなく24時間体制で働いている訪問診療医は多く、そのためになり手も少ないという課題を抱えています。

 

 

IT化による情報共有で在宅療養は進展する

 

 そこでIT技術を導入し、訪問診療医チームによるカルテの共有などにより、医師の当番制対応を可能にし、一人の医師に負担がかからないようにするモデルが少しずつですが進んでいます。

 

 この方法が全国に広がれば、在宅療養は大きく進展するのではと考えます。

 

 今のところ、これらは一部法人の独自の取り組みであり、公的支援(一部自治体を除く)がない状況で行われています。

 

 今回の補助金の導入により訪問診療のIT化が加速することを望みたいと思います。

 

 

IT化により医療介護連携体制が強化

 

 上流の訪問診療がIT化すれば、下流の訪問看護や介護などの居宅サービスもIT化が進んでいくと考えます。

 

 現状でも、スマホなどにより現場で報告書を入力し、業務効率化は可能ですが、こうした情報が医師から介護まで共有できるようになることは、連携体制の構築には不可欠なことです。

 

 つまり、業務のIT化が上流からやってくるイメージです。

 

 

 

IT化に対応できない事業所は在宅療養ケアには参加できないかも

 

 逆に言えば、IT化に対応できない介護事業所は医療介護の連携体制からは除外される可能性があります。

 

 在宅医療のITフォーマットに合わせた業務ができなければそのチームには加われないということです。

 

 医療から介護までの統一されたシステム環境が整備されるまには、まだ数年はかかるとは思いますが、今のうちから業務のIT化には取り組んでおくべきかと考えます。

 

 特に、スタッフが現場でスマホやタブレットを使いこなせるようにしておくことは、早ければ早いほど良いと思います。

 

 

 

課題は個人情報保護のためのセキュリティー体制の確保

 

 情報の共有化には個人情報の保護の問題が付きまといます。

 

 事業所ごとに個別に利用者情報を管理している場合は、管理責任は事業所にありますので、責任の所在ははっきりしているのですが、クラウドなどにより多数の事業所が情報を共有する場合は、その情報の管理責任が誰にあるのかが不明確です。

 

 民間のIT事業者のシステムを多数の事業所で利用し情報を共有する場合、システムの脆弱性による個人情報の漏えいなどは、システム側の問題になるかもしれません。

 

 しかし、多数の事業所が情報を入出力する場合、どのようなトラブルが発生し、それぞれの事業所の責任がどこまでなのかはっきりしない部分があります。

 

 クラウドシステムにおける個人情報の管理の方法について、明確なガイドラインが必要でしょう。

 

 

 

介護ソフト業者も本腰を入れて売り込みを開始

 

 IT導入補助金はIT業界を騒がせています。

 

 介護ソフト業者もあちこちで自社のシステムの売り込みを開始しており、大手のカイポケもIT導入補助金の利用を呼び掛け、18か月無料お試しのキャンペーンを実施しています。

 

 すでに使っている介護ソフトはあるとは思いますが、もしモバイルシステムを試してみる機会があれば、この際ぜひ試用してみることをお勧めします。