1 現場中心の働き方─事業所への出勤は原則無し
① 事業所に出勤するのは、月数日程度
◎自宅から訪問先に直行直帰の就業形態が基本です。月に数回、事業所の研修やカンファレンス、事例検討会などのために、事業所に出勤します(特定事業所加算の要件になります)。
研修はリモートでも可能ですが、できれば月に1回ぐらいはスタッフが顔を合わせて直接フリーな意見交換の場を設けた方が、仕事のガス抜きにもなり健全であると考えます。
◎できれば資格は介護福祉士以上、訪問介護実務経験3年以上
② 業務管理・情報共有はIT機器を活用
◎アセスメント・訪問介護計画書・サービス提供記録等は電子化(保存管理も)。
◎自宅に業務用PC(ファックス受信ソフトインストール)とプリンタ(スキャナ機能のあるもの)を支給設置(自宅に事業所機能の一部を整備)
◎訪問にはタブレット(通信SIM付)を携行。利用者のサインはタブレット入力でもOK。
◎訪問介護の提供記録ソフトにはGPS機能により、訪問実績が記録できるものを利用。
◎紙の使用は利用者交付するもの以外、最低限に抑える。
③ 営業・利用者獲得は自ら行う
◎ケアマネージャーからの業務依頼を直接受けられるようにする。事業所には事後報告(システム入力による)。
◎訪問日調整も自己完結で行う。
◎研修を徹底する。(就職後6か月間は同行スタートアップ研修。その後毎月1回)
◎事業所はサービス品質の評価を行う。利用者への満足度調査をネット経由で行えるように工夫する。認知症など判断が難しい利用者に対しては、3か月に1度、事業所の別の担当者がモニタリング訪問を行う。
◎担当サ責が急病や休暇などにより、訪問ができない場合は、事業所がフォローアップする(他の在宅型サ責に仕事を回したり、事業所管理者や他のヘルパーが対応できるようにする)。
④ その他移動手段など
◎訪問先への移動手段は、車・自転車・徒歩など選択自由。ただし、事業所の加入する損害保険でカバーできるようにする。駐車料金などは各事業所規定で決める。
◎折り畳み電動キックボードの活用
都会や半径5キロ以内程度の比較的近距離の移動に向いている。
訪問先で折り畳んで玄関などに置かせてもらえれば、駐車・駐輪禁止の場所でも利用が可能。駐輪場がいらない。電車に持ち込み可能。機動力は電動自転車並み
2 在宅型サ責の給与概算
≪東京都の場合≫
給付:身体介護1時間:5,000円
稼働時間:1日5時間程度訪問
稼働日数:月20日稼働
5,000円×5h×20日=500,000円
- 事業所の取り分:20%=100,000円
- 在宅サ責の収入:400,000円(年収:4,400,000円)
※年収440万円は日本人の平均年収。特定処遇改善加算の対象者。
これはあくまで、週休2日で残業が無い労働状況です。
サ責本人が働きたければ、土日や夜間の訪問を増やすことで、さらなる収入アップが図れます。つまり、稼ぎたい人は自ら仕事を増やすことが可能になります。逆に子育てなどで仕事を少なくしたい人はライフワークバランスを図れます。
3 事業所の役割
事業所はマネージャー(管理者)として在宅サ責の仕事のマネジメントが仕事になります。
たとえば、見境なく利用者を獲得して無理な長時間労働をしているサ責がいればブレーキをかけなければなりません。
また、就職当初は、担当利用者はいないですから、収入を保証する必要があります。
例えば、就職後、半年程度は固定給にし、事業所付きのサ責として、フォローアップ要員として動いてもらうのも良いでしょう。
その際に同行スタートアップ研修を徹底し、サービス品質を保証する必要があります。
残業無し、週休2日で年収440万円を保証できれば、一般企業の賃金に十分対抗できます。また、男性で稼ぎたい人にも対応できますので、人材確保がしやすいでしょう。
★この就労システムの肝は事業所のマネジメント力です。
いかにIT技術を駆使して業務管理、サービス保証ができるかがポイントになります。
なお、この事業モデルはケアマネ事業所にも応用できます。
但し、ケアマネの場合、担当利用者に上限があるのと、障害福祉は担当できないので給付を伸ばせません。訪問介護ほどダイナミックに給与を上げることは難しいかもしれないですが、給与は増やせなくても余裕のある就労環境を提供できますから、人材確保には大変メリットがあると思います。
4 2023年以降もさらなる人材不足が
欧米諸国の金利上昇、それに伴う円安、輸入価格の上昇により、日本の物価は今後も高くなる予想です。これに対し、各企業は労働者の賃金を加速させています。
この労働市場環境は介護・福祉業界にとって非常にキツイ状況です。
ただでさえ、一般企業との賃金格差が大きく、人手不足が恒常化している状況に、他企業のさらなる賃上げによって、労働者は介護職に集まらなくなっています。
特に賃金の高い都市部において深刻です。介護が受けられない介護難民がさらに増加することが懸念されます。
現状では大幅な給付の上昇は見込めません。介護・福祉事業者はIT技術の活用と就労環境の改善でこれに対抗するしか術はないでしょう。