優秀な訪問介護士が地域の中で医療と連携して訪問介護サービス提供できるようにしていくのが、独立訪問介護士導入の目標です。
そのためには、地域にこうした訪問系の医療介護の統合システム・プラットフォームがインフラとして整備されなければなりません。
具体的な独立訪問介護士の仕事の様子をシミュレーション
独立訪問介護士は訪問介護のサービス提供責任者としての実績が長く、区市町村の審査などに合格した優秀な登録介護士です。基本的な個人情報は区市町村のシステムに登録され、責任の所在が明確になっていなければなりません。イメージは個人タクシーの運転手に近いかもしれません。
彼(彼女)は個人事業主であり、株式会社などの法人ではありません。従って事業所を持っておらず、自宅から地域の利用者宅へ出向き、サービスを提供します。
実施した業務の情報は各種ICT技術によって彼(彼女)の持つタブレットにより把握され記録されます。
例えばGPSによりどのご利用者宅に何時から何時まで訪問していたかが記録されます。これにより訪問の事実は確認できます。
また、このシステムは指紋認証などによる本人確認ができないと起動しませんので、第3者が変わって訪問しても業務ができない仕組みになっています。
サービス提供の実績はタブレットから入力され、利用者本人や家族の確認を受けて記録されます。これはケアマネージャーや行政側でも確認することができます。
訪問の度にその都度確認するのは煩雑でしょうから、特別な場合だけになるかもしれません。もちろん毎月の介護給付の請求時はケアマネージャーが内容を確認する必要があります。
また、何らかの基準を設けシステム上で業務違反や異常をスクリーニングできるようになればもっと良いでしょう。
これらの業務記録は保険者も見ることができますが、それにより必要に応じて検査を実施し指導することが可能です。また、統計的な分析により地域の介護状況の把握にも役立つでしょう。
毎月の請求作業は、システムの記録から自動生成され、ケアマネが確認した後、国保連に送られ、独立訪問介護士の個人口座に振り込まれます。
この制度を実際に立ち上げることになった場合は、あらかじめ、税金や社会保険料が調整されて振り込まれるようにした方がベターでしょう。移動手段の自動車など各種必要経費については、一定基準で控除するようにすればよいと思います。
まあ、年末調整などの個別の調整で確定申告は必要ないはなると思いますが。
仕事は今と同じようにケアマネージャーより入ります。サ担などは今と同じでしょう。ITが進歩してもフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションは大切です。
地域の医療介護サービスネットワークの充実
現在、介護保険法では利用者は自分の好きな事業者を選択し、契約によりサービスを提供してもらうことを制度の根幹としています。
独立訪問介護士も法人ではありませんが利用者との契約によりサービス提供を開始します。重要事項の説明と同意などは基本的に今の流れと同じです。
しかし、一点だけ特別事項として、契約を結んだ訪問介護士が病気や事故などで、急遽訪問サービスの提供ができなくなった場合、ケアマネージャーの判断により、他の事業所や独立訪問介護士から緊急でサービス提供をできるようにする規定を、新たに盛り込む必要があるでしょう。
複数の訪問ヘルパーがいる事業所であれば、担当のヘルパーが急遽行けなくなったとしても代役を立てることが比較的簡単ですが、独立訪問介護士の場合はそうはいきません。
地域の介護人材ネットワークの中でそうした事態に対応できるような体制を整える必要があります。そのための法的整備が必要でしょう。
このようにICT活用による地域の医療介護ネットワークが整備され、個人による独立のケアサービスが出現すると、これまでの個別の契約によるサービス提供という形もすこし変わってくるかもしれません。
ITネットワークにより、地域のケア人材ネットワークも強化され、地域全体で利用者のケアを提供するような体制になっていくでしょうし、その方が利用者にとっても社会資源の効率的な活用(社会コストの低減)の面にとってもメリットがあることだと思います。
また、訪問介護だけでなく訪問診療や訪問看護についても同様の仕組みを、同じネットワークの中で構築することになります。その際、訪問診療医はあらかじめカルテ共有などをして、地域の訪問診療医であれば当番制で、誰でも、夜間の緊急対応などができるようにすべきでしょう。
こうした柔軟で効率的な地域ケアネットワークが今後求められると考えます。
一つ懸念があるとすれば、複数の区市町村に渡って仕事をする場合、システムが変わってしまう可能性があることです。複数の保険者に登録していると、複数のタブレットを持ち歩かなければならなくなるかもしれません。
セキュリティー面で端末による個人管理をした方が安全だからですが、技術が進歩すればタブレット一つでアプリケーションを切り替えれば済むようになるかもしれません。
この項終わり。