今回から起業の手引きを書いていきたいと思います。
初めて起業する人でも理解できるように分かりやすく書ければと思います。
1 介護・福祉の起業は成功率が高い
起業1年目で会社が倒産してしまう率は約30%。また5年生存率は50%だとか10年後は10%だとか、厳しい話が聞こえてきます。
しかし、介護・福祉事業の生存率はかなり高く、1年目で潰れてしまうような事業者は10%もいかないのではないかと思います(ほとんどスタッフが辞めてしまって事業が続かなくなるパターンです)。
事実、医療・福祉系の新規開業率と廃業率を比較すると、全業種でトップの生存率になっています。
ニュースでは毎年「介護事業者の倒産数が前年を上回る」という報道がなされますが、これはトリックがあって、介護事業者の企業数が毎年増えているため、倒産数も増えているだけであり、実際の倒産率は1%にも満たないと考えます。
2 フランチャイズ加盟は意味がない
各業種で独立開業を考える場合、成功したビジネスモデルを買ってフランチャイズで事業を起こすことがありますが、介護・福祉事業は国や自治体が運営モデルを提示しているロイヤリティーのいらないフランチャイズです。
通所介護や訪問介護・看護などでフランチャイズ・チェーンを展開している企業があります。しかし、独自のビジネスモデルを構築して介護事業を営むことは、上述の国や自治体の運営モデルから外れてしまう場合があり、設置基準違反となることもありえます。グレーゾーンを突いて独自のサービスを提供することも考えられますが、お泊りデイサービスのように問題になるケースもあります。
わざわざ高いロイヤリティーを払ってフランチャイジーになるのはお金の無駄です。国が明確な運営モデルを提示していますので、それを順守して経営をしていくことが肝要ですし、それで十分継続経営は可能です。
もし、新奇なサービスを提供するのであれば、介護保険サービス外で行っていく方が良いでしょう。介護保険サービスはあくまで基準の中で提供すべき内容が決められています。それを逸脱することは経営そのものを危うくしますので、スタンダードなサービスを心がけることが成功の肝です。
3 介護事業は儲からない?
「介護事業は儲からないからねえ」という声を聴きます。
しかし、平成24年の総務省の調査、業種別「利益率」を見ると、最も大きいのが「学術研究.専門・技術サービス業」15.2%で、次いで「不動産業」12.5%、「飲食サービス業」11.5%となっています。
そんな中「社会福祉・介護事業」は8.1%と全体で8番目に付けており、「小売業(6.4%)」や「教育・学習支援業(5.7%)」、「農林漁業(5.3%)」よりも高い数字です。
必ずしも儲からないわけではありません。
「いやいや、人件費が安いからその数字が出ているのじゃないの?」
確かにその指摘は一部当たっています。しかし、国も処遇改善手当を用意する等、介護職の処遇改善を継続しています。今後は少ずつ改善していくと考えます。また、介護事業よりも給与の安い業界は他にもいくらでもあります。
介護福祉事業は、ヒット商品や新しいビジネスモデルを生み出して儲けたり、生産性を上げたりコストカットを努力したりして儲けることがしにくい事業です。
つまり、成功を夢見る起業家には魅力的に見えないでしょう。また、既存事業からの参入するにしても、既に営んでいる事業の従業員よりも介護事業の従業員の給与を安くしなければならないなどの問題があります。
しかし、逆に言えば競争性があまり高くなく、実直な仕事を継続していれば、非常に安定した事業であり、いわゆる「食いっぱぐれの無い」潰れない事業なのです。
4 訪問介護は低コストで起業が可能
開業資金は、1年間収入が無くても耐えられる程度は用意したいものです。
介護報酬の支払いは2か月後ですし、パートさんの給与の未払いなどが発生した場合、噂は地域にすぐに広まり、スタッフが寄り付かなくなってしまいます。
【必要資金例】
◎訪問介護 自己資金500万円 + 開業後融資500万円 = 1,000万円
自治体の指定が取れれば、政策金融公庫の融資は容易に受けられます(過去に事業融資で焦げ付き等を出していないこと)。
政策金融公庫「ソーシャルビジネス支援資金」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/socialbusiness.html
また順調にご利用者が獲得できれば、開業後の融資がなくても軌道に乗ってしまう場合もあります。
訪問介護は初期の設備投資や、人件費が少ないため、起業時のコストとしては非常に安く済みます。ちなみに、訪問看護も同様に低コストです。看護師の免許を持っていれば、訪問看護も同様に起業には向いています。
なお、通所介護は設備投資を含め2,000万円ほど資金必要になります。それにもかかわらず収益率は訪問介護より悪い状況です。
同じ介護事業でも起業時に扱う事業としては避けた方が良いでしょう。
次回は具体的な起業の仕方を説明します。