訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方 その2

 

会議の進め方についてです。

 

会議は時間を決めて進行

 

 さて、会議は運営要項に従い開催しますが、概ね1時間程度を目標に簡潔に行う必要があるでしょう。

 利用者数が少なければ、あまり問題がありませんが、扱う利用者数が多い場合はあらかじめ情報を整理して、簡潔に情報伝達し、要点を絞って話し合いを行わないと時間がオーバーしてします。これは、参加スタッフへの負担になり、会議に対する不満となって溜まります。

 司会者は1時間で終了するよう、時間配分に注意して議事進行する必要があります。もしも、時間をかけて議論しなければならないようなケースがある場合は、直接の担当者同士で話し合ってもらい、後ほど報告してもらうような形にする方が良いと思います。

 サービス提供責任者は日ごろより訪問スタッフから担当利用者の情報を受けています。基本的にはそうした情報のうち、他のスタッフが共有したほうが良い情報をピックアップし、会議で伝達すれば良いと思います。

 

 

作成するべき書類について

 

 会議の開催に当たって作成するべき書類について説明します。

 会議を開催していてもそれを証明する書類が整っていなければ実地指導などで指摘されますので、面倒ですが毎月の分を整えておくことが必要です。

 

【実地指導でチェックされる書類】

(1)「会議日程表」

  当然ですが、毎年度作る必要があります。

(2)「会議次第」又は「会議議事録」

  「会議次第」は開催日時・場所とともに、会議で扱う事項を順番に列挙したものです。

 必ずしも作成する必要は無いのですが、会議進行を効率的に行う上で、事前に作って会議ではそれに従って時間配分し、進めたほうが時間の節約になります。

 「会議議事録」は実際の情報伝達内容や話し合われた事項を筆記した記録です。

 発言を一字一句記録せず、要約でOKです。誰かが読んでどんなことが話し合われたのか概ね分かれば良いと思います。

(3)「利用者に関する情報を伝達した文書(会議資料等)」

  ケアプランや訪問介護計画書、アセスメントシートなど会議に使った資料がありましたら、他の書類と一緒に保管しておきます。

(4)「会議出席者名簿」等

 これは議事録と一体化していてもOKです。

 また、全員出席が基本ですので、欠席者だけを記録しておいても良いです。欠席者がいる場合は、その欠席者にどのように情報を伝達したかを記録に残します。具体的には、

「欠席者には、会議次第、議事録、資料を配布の上、ポイントを説明」などと記録しておけば良いでしょう

 

 

欠席者の対応について

 

 会議に欠席した人には上述のように会議次第、議事録、資料を配布の上、ポイントを説明しておけば良いと思います。

 しかし、研修の方は補講を行う必要があります。別日に欠席者だけを集めて補習を実施します。その際、補講を実施したことを以下のように記録で残します。

【補講の記録】の内容

 (1)研修内容

 (2)補講実施日時、場所

 (3)補講受講者

 (4)補講実施者

 

 

 社内研修会の内容は介護福祉士の試験科目で良い

 

 ついでに、個別研修についても説明します。

  時々、どんな研修をやればよいかというご相談を受けますが、基本的には介護福祉士の試験科目から、スタッフの目標に合わせてピックアップすればよいと考えます。

 「認知症」や「移動・移乗」「排せつ」「入浴介助」などは毎年行うような研修になると思います。

 研修科目が毎年同じになっても構いません。介護技術や知識は毎年、新しい考え方や制度改正などがありますので、同じ科目でも学ぶ内容は微妙に変わってきます。

 さらに、興味があればユマニチュードなど新しい介護技術も取り入れれば良いと考えます。

 

 

社内研修会=処遇改善加算の「資質向上のための研修」

 

 この毎月の研修会は、処遇改善加算の「資質向上のための研修」と同一のものとして実施できます。

 つまり、処遇改善加算が算定できる事業所は、介護福祉士や実務者研修修了者の人数だけ確保できれば、特定事業所加算Ⅱが取得できるということです。

 処遇改善加算が算定している事業所であれば、結局、特定事業所加算を取得するハードルは「会議」の開催だけになってきます。この記事に倣っで研修会と会議を一体的に開催すれば、このハードルをクリアできますので、まだ特定事業所加算を取得していない場合は、ご検討ください。

 

 

もし併設の居宅支援事業所が特定事業所加算を取得している場合は会議は合同開催にすると良い

 

 居宅支援事業所を併設していて、その事業所が居宅の特定事業所加算を算定しているのであれば、月1回の会議を合同で開催することをお勧めします。

 居宅支援事業所の会議は毎週開催しなければなりませんが、月1回は訪問介護事業所と合同で開催します。これにより、よりきめ細かく質の高いサービス提供が可能になります。

 具体的にはケアマネと訪問介護スタッフが一堂に会し、ケアプランが更新・変更になる利用者の情報を交換します。ケアマネの方から毎月の更新者の変更情報などを伝えてもらえれば、事前の情報伝達の時間が省けますし、サービス担当者会議も効率的に行えます。

 居宅と訪問が同じ事務所内で仕事をしている場合、ケアマネとサ責は日ごろから利用者情報の交換をしていると思います。そうした内容をまとめて、他のスタッフに伝達すれば良いだけです。特に難しいことを話し合う必要はありません。

 

以上この回終わり。

 

 

 

訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方 その1

 

 訪問介護の特定事業所加算は、質の高いサービスを提供する事業所に対してインセンティブとして支給される加算と考えて良いでしょう。

 特定事業所加算Ⅱでも10%加算(Ⅰは20%)できますので、単純に事業所の収益を10%増収できます。クオリティーの高いサービスを提供し他と差別化ていくためにも、加算取得を目指した方が良いと筆者は考えています。

 

 しかし、いざ加算を取得しようと思っても、各種要件をどのように整備していけばわからない方も多いでしょう。特に「訪問介護員等の技術指導を目的とした会議」とはどんな会議?研修と何が違うの?という疑問が湧くのではないでしょうか。

 

 

特定事業所加算のスタッフ会議で何をやれば良いのか

 

 国の指針でこの会議では

 

 「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達又は当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等の技術指導を目的とした会議(サービス提供責任者が主宰し、登録ヘルパーも含めて、当該事業所においてサービス提供に当たる訪問介護員等のすべてが参加)を概ね 1 月に 1 回以上開催し、その概要を記録しなければならない。(グループ別開催も可)」

 

となっています。

 

 そして、実地指導などでは、このかいご会議の開催を証明する。

 

「会議日程表」「会議次第」「会議議事録」「利用者に関する情報を伝達した文書(会議資料等)」「会議出席者名簿」等会議の実態が分かる書類

 

 が必要とななります。

 

 

 整理してみますと、この会議では、

 

(1)利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達

もしくは

(2)指定訪問介護事業所の訪問介護員等の技術指導

 

を、行えばよいわけです。

 

(1)か(2)のどちらかで良く、両方やる必要はないようです。

 

 

スタッフ研修と同時に開催すると効率的

 

 (2)の要件は、どちらかというと「社内研修会」です。この研修は特定事業所加算のスタッフ個別に目標を設定した研修と違いがあるのでしょうか?

 この点について国は特に指針を示していませんので、「個別の目標を設定した研修」をこれによって行うことは可能です。

 

 筆者は、お世話させていただいている訪問介護事業所に、月に1回「会議」+「社内研修」を行う日を設定してくださいと提案しています。

 

 非常勤スタッフも含め全員の研修目標を年度当初に作成し、年間の社内研修の中でそうした目標をクリアできるように計画を作成し実施すれば、個別研修計画の要件はクリアします。特別にお金を出して外部研修を受けても良いのですが、社内研修だけでもこの要件は十分クリアするのです。

 

 つまり、「技術指導会議」は「社内研修会」読み替えて良いということです。

 

 

 

「運営要項」を作る

 

 この会議+研修会の運営を効率的に行うには、「運営要項」作成するのが良い方法であると思います。

 

 以下に例を示します。

 

 

〇〇訪問介護ステーション スタッフ会議及び社内研修会運営要項

 

1 目的

 本「スタッフ会議及び社内研修会」は、以下の目的で開催する。

 (1)利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達

 (2)訪問介護員等の介護技術・知識の研鑽

 

2 開催者(会議司会者)

 サービス提供責任者の主宰で開催する

 ※小規模な事業所でしたら事業所で一体的に開催すればよいでしょう。規模の大きな事業所でしたら、サービス提供責任者ごとに開催することも考えられますが、スタッフが重複する場合は非効率です。利用者100名程度までであれば、一体的開催でまかなえると考えます。

 

3 開催日時

 別紙「スタッフ会議及び社内研修会年間開催日程」のとおり

 ※「毎月第〇、△曜日」などと決めておくと良いでしょう。会議と研修で2時間程度が目安であると考えます。

 

4 開催場所

 ○○訪問介護ステーション会議室

 ※適当な会議室が無い場合、区市町村の生涯学習センターや公民館でしたら、安価で会議室を確保できます。

 

5 会議の内容

 「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達」については以下の内容を伝達・話し合う

  ① 前回会議からの持ち越し事項の確認 

  ② 当月、ケアプランの更新・変更を行う予定の利用者について(アセスメント・モニタリング情報)

  ③ 前月、ケアプランの更新・変更を行った利用者について(アセスメント・モニタリング情報)

  ④ 上記以外、サービス変更がある利用者について

  ⑤ 困難ケース等の対応について

  ⑥ 利用者からの苦情及び改善方策・ひやりはっと報告

  ⑦ 制度改正、行政からの連絡事項、感染症情報など 

  ⑧ その他必要な事項(新規営業先の情報・新スタッフ紹介など)

 

6 社内研修会の内容

 訪問介護員等の介護技術・知識の研鑽

 研修会の内容は別途「〇〇訪問介護ステーション スタッフ研修計画表」により実施する。

 ※別途年間計画表を作成します。この研修計画は、加算の要件である「個別研修計画」と一体的です。

個別研修計画の例

 

7 欠席者の扱い

 本「スタッフ会議及び社内研修会」に欠席したものについては、別途担当のサービス提供責任者より、会議内容の伝達及び研修補講を受けなければならない。

 

8 その他

 必要な場合は残業手当を支給

 

次回は実際の運営方法や記録の残し方についてご説明します。

 

 

 

訪問介護事業所の障害者福祉サービスへの参入 メリットとノウハウ その2

前回の続きです。

 

高齢者サービスと障害者福祉サービスの違い

 

 さて、介護職として、高齢者介護以外経験がない場合、障害者介護は不安に感じるかもしれません。しかし、介護認定を受けている高齢者も障害者には変わりありません。障害の原因が加齢によるものであるだけです。

 もちろん障害の種類によって状況は様々です。そうした障害の理解は学ばなくてはならないでしょう。しかし、介護福祉士であればそうした障害の種別は一通り学んでいるはずです。介護の研修カリキュラムは高齢者以外の障害種別も基本的に網羅していますで、担当した障害者の状況についてきちんとアセスメントし勉強すれば、知識としては十分に対応できると考えます。

 高齢者との大きな違いは、比較的活動性や自立意識が高いため、介護者との関係が対等な場合があります。また、介護サービスを活用しようという意識が高いこと。身体障害者の場合、多くは障害受容のトレーニングを受けていおり、障害とともに生きていくことの覚悟がしっかりできているため。非常にスムーズなサービス提供が可能な一方、精神障害の方などコミュニケーションに課題を抱えている場合も多いので(頻繁に電話がかかってくるなど)、高齢者よりも受容的な態度が必要になるケースも多いようです。

 いずれにしても一人ひとりの心身の状況をしっかりアセスメントして課題解決のアプローチをすることは高齢者となんら変わりはありません。

 

 

利用者獲得方法 

 

 高齢者介護サービスの場合、地域包括やケアマネ事務所へ個別の営業を積んでいかなければ仕事の依頼は来ませんが、障害者サービスの場合は地元自治体の障害福祉担当に挨拶に行くだけで仕事の依頼が来る場合があります。また、高齢者の居宅支援事業所と同じような相談支援事業所があります。高齢者と違い一人の相談支援員が受け持てる利用者数が多く、一人の相談支援員から次から次と依頼がある場合もあります。地域の事業所数も少ないため営業先も少なくて済みます。中には訪問系障害者サービスの事業指定の公示を見て早々に電話をしてくる担当者もいらっしゃいます。地域によっては高齢者以上に需給バランスがひっ迫している状況もあるようです。

 ちなみに、平成26年度全国の訪問介護事業所の数は33,991に対し、障害者の居宅介護事業所数は19,872です。しかし、指定は取っていても実際には障害者サービスの依頼を受けていない(人手不足で受けられない)事業所も多いようです。

 

 

医療的ケアの取り組みにより、特定事業所加算Ⅰの取得 

 

 喀痰吸引や胃瘻などの医療的ケアはハードルの高いサービスと考えている訪問事業者も多いかと思います。しかし、実際にはご家族が日常的に行っているケアであり、介護福祉祉士が適切な研修を受けて行えば、決して難しいケアではありません。

 ケアの研修(3号研修)も基本的な研修は2日で終わりますし、直接ご利用者に対する実地研修もそれほど負担ではありません。

 医療的ケアができるということは、すなわち利用者が重度になるということです。すると、重度者を多くケアしている事業所に加算できる特定事業所加算Ⅰ(20%)が取得できる可能性が出てきます。これは収益上、大きなメリットになると考えます。

 実際、国の方針もあり、病院や施設から在宅生活を目指している障害者の方が沢山いらっしゃいます。そうした方への医療的ケアニーズは非常に高く、事業者が足りない状況と言えるでしょう。

 また、重度利用者は毎日ケアが必要であり、業務のボリュームも大きく、スタッフさえ確保すれば、安定した収益を上げられる仕事であると考えます。

 

 

連携する訪問看護ステーションがあるとメリット大 

 

 これまで施設や病院で暮らさざるを得なかった重度障害者の在宅ケアを実現していくには、家族負担の大きかった医療的ケアを訪問介護員により行っていくことがとても重要です。

 医療的ケアの実地研修にはそのご利用者のケアを行っている訪問看護ステーションの協力が無ければ実施できません。訪問看護師に医療的ケア教員講習(1日)を受けてもらう必要もあります。このため、連携する訪問看護ステーションがあるとサービス提供がスムーズに行えるでしょう。

 既に医療的ケア教員受講者の多くいる訪問看護ステーションと連携できればメリットは大きくなります。さらに、訪問看護師との業務の連携が綿密にできれば、利用者にとって利便性の高いサービスが提供できるでしょう。

 そのため、医療的ケアを多く実施している訪問介護事業所では事業を拡大して訪問看護ステーションに参入しようとしている事業をも多いようです。

 

 

障害者福祉サービスの新たなフィールドへの展開

 

 訪問系の障害福祉サービス事業を手掛けることで、障害福祉サービスのフィールドをさらに広げていくことも期待できます。

 相談支援や就労支援事業はまだまだ不十分であり、特に、精神障害者の社会参加のサポートはかなり遅れているのではないかと考えます。

「障害福祉サービスの体系」厚生労働省

 

 訪問系のサービスから将来、新たなサービス事業へ拡大していくことは経営戦略の面で有望であると考えます。

 最近では児童デイサービスのチェーン展開をする会社も現れていますが、障害福祉サービスは地域自治体との関係が重要です。地域にどのようなサービスが不足しているのか自治体に取材してから事業展開を考えることが必要であると思います。

 最後に、障害者介護を専門に働いている介護人材がいます。そうした人材はこの分野への興味も強く、そうしたスタッフとの出会いが新たな事業フィールドへの展開を可能にしてくれる場合もあるでしょう。

 この回終わり。

 

訪問介護事業所の障害者福祉サービスへの参入 メリットとノウハウ その1

在宅障害者福祉サービスにビジネスチャンス

 

 近年、障害者福祉に関する法整備が進み、それまで家族や医療・公的機関だのみだった障害者介護で、民間サービスが広く利用できるようになりました。

 これまでは一生病院や施設暮らしであった重度の障害者の方でも、在宅サービスを受けながら、家族と生活できるようになるなど、積極的な利用が広がりつつあります。

 そうしたなか、これをビジネスチャンスとして、事業を拡大している民間企業も多く表れてきており、先にご紹介した製造業から参入して3年足らずで月商300万円を超える売り上げを上げている、サンシャインヘルパーセンターも業務の半分が障害者サービスとなっています。障害者サービスが事業成長をけん引してきたと言っても過言ではないでしょう。

 ここでは、従来の高齢者向け訪問介護事業所が訪問系障害福祉サービスに参入するメリットやノウハウについご紹介したいと思います。

 

 

訪問介護と訪問系障害福祉サービスの兼業

 

 指定訪問介護事業所は同時に訪問系の障害者福祉サービスの事業指定も申請できます。

 居宅介護(障害者訪問介護)・重度訪問介護は特に研修などは必要なく、訪問介護事業所の人的資源をそのまま利用して、事業を行うことが可能であり、高齢者とは別の収益源として期待できます。事業所によっては高齢者よりも障害者サービスのウェートが大きくなっている事業所もあります。

 居宅介護、重度訪問介護の他にも視覚障害者のガイドヘルパーである同行援護や知的障害者(児)の行動援護も開業可能ですが、同行援護は、今後、同行援護従業者養成研修を修了することが要件になります。また、行動援護は知的障害者(児)の実務経験が必要になりますので、高齢者の訪問介護事業指定基準をクリアしただけでは開業はできません。

 また、自治体によっては障害児向けの通学支援などの移動支援サービスを独自に導入している場合があり、このサービスを受託することは概ね可能であると考えます(自治体により要件が異なる場合あり)。

 

 

新規立ち上げの事業所にはメリット大

 

 すでに訪問介護事業を開業されている経営者の中には「人手不足で高齢者の訪問介護だけで手一杯。とても障害者の対応までするのはムリ!」という事業者もいらっしゃるかもしれません。しかし、新規に訪問介護事業所を開業する場合は、障害福祉サービスも同時に開業することは大きなメリットがあります。

 現状、訪問系の障害福祉サービスでは、開業当初の利用者が少ない時期に、比較的容易に仕事の依頼が来る可能性が大きく、場合によっては長時間などボリュームの大きなサービス依頼が来ることもあり、経営上非常に助かる部分があります。

 というのも、訪問系の障害福祉サービスは「毎日」や「1日6時間」など一人の利用者に対してのサービスボリュームが大きいケースがあり、特に重度訪問では複数のサービス事業所が共同でサービス提供しているケースもあり、場合によっては事業者足りない状況もあるからです。ただし、長時間サービスでは多少時間単価は低くなります。また、高齢者と同様、最初は困難ケースが回ってくることも多いでしょう。

 一方で、若年の障害者も多いですから、一度サービスに入ると、固定利用者として長い間サービスが継続することもあります。

 

 

障害福祉サービスは今後も拡大が予想されます

 

 実は、我が国の障害福祉サービスはまだまだ不十分であり、社会保障給付の額でもヨーロッパなどの福祉先進国からはかなり後れを取っている状況です。日本では、長い間、障害者支援の主体は家族や行政が中心であり、民間などの外部サービスを利用した広い支援体制がなかなか整わない状況が続いていました。欧米ではノーマライゼーションの考え方が浸透しており、障害により障害者が不利益を被ることは、社会システムに問題があり、障害者は外部サービスを積極的に活用して、自立した生活をする権利があるとされています。

 日本は2014年に「障害者の権利に関する条約」を批准し、制度面でやっと国際標準に到達したといえる状況です。今後、障害福祉サービスのさらなる充実を図ることが国策となっていると考えます。

 

障害福祉サービスの増加率

 

 国民保健団体連合会のデータから、ここ4年のサービスの伸びを見てみましょう。

 訪問系サービスを含めて少しずつ利用が増えています。特に障害児の利用の伸びは非常に大きくなっています。

 こうしたサービス利用の拡大は、国の法律が変わり、今まで障害者ではなかった新たな障害者が増加したり、病院や施設から在宅生活へのシフト、また、今まで外部サービスを利用してこなかった障害者が積極的にサービスを利用し始めたことが要因だと考えます。

 特に障害児を持つ家庭では、家族が直接支援していた状況から、一気に外部サービスを使い始めたという感があり、大変大きな伸びになっています。もちろん、訪問介護事業所の提供する障害福祉サービスでも障害児へのサービスは可能です。

 また、福祉先進国ではそもそもの障害認定の方法が異なり、日本では障害者とみなされない人も多くが障害者としてサービスを受けられる環境があります。(※1)日本でも前述の北欧並みにノーマライゼーションの考え方が浸透すれば、サービスの利用はさらに増えると考えます。

 

≪参考資料≫

http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/18879202.pdf

※1:国際比較からみた日本の障害者政策の位置づけ −−国際比較研究と費用統計比較からの考察−− 勝 又 幸 子(国立社会保障・人口問題研究所)

 

 

次回は具体的に訪問介護事業所が障害者福祉サービスに参入する際のノウハウについてご説明したいと思います。