やっぱり日本の社会保障費は限界

日本の税収は先進国最低

 

 選挙戦では富の再分配が叫ばれていますが、介護福祉業界の予算である社会保障費はどうなるのでしょう?
 対GDP(国民総生産)比で日本の社会保障費は世界第10位です(2018)。以下は財務省の資料ですが、社会保障支出ではヨーロッパの国々が並びます。

 一方、租税収入は世界第28位で先進国の中で米国に次いで租税収入が少ないのです。
(注※ 日本と米国では一人当たりGDPが約1.5倍違います(2019)。日本43,279ドル 米国65,143ドル。従って租税収入も米国よりも少なくなり。対一人当たりGDPにすると先進国でダントツ最下位です)
 
 財務省はこんなに少ない税収で社会保障費が大きいので、大変だと嘆いています。

 

高齢化率は断トツ1位

 

 次に、世界の⾼齢化率(⾼齢者⼈⼝⽐率)(2020) 国別ランキングを見てみましょう。

出典・参照︓ 世銀(World Bank) 

 こちらは断トツ日本がトップです。
 高齢者に対するサービス内容を厳密に切り分ける必要がありますが、社会保障サービス供給量は、ヨーロッパの国々より劣りそうです。
 もちろん、日本の高齢者は皆元気で医療費や介護費を使わなくとも大丈夫という見方もできますが、一人当たりのGDPが各国より低いことを鑑みても、あまりにもお金がありません。

 お金が足りない影響は医療や障害者サービスにも出ていることでしょう。
 制度は整っているが、先進国並みの社会保障サービスを日本人は受けられていないということです。

 現場感覚では、給与が安いためサービスの担い手がいなかったり、重度訪問介護の給付を減らされたりなど、シビアな状況として発現しているように思います。
 ちなみに、日本の障害福祉サービスの予算も先進国で最低レベルです。これに関してはこちらの記事を参照ください。
 「これからの障害者福祉サービスの動向」http://carebizsup.com/?p=1501

 

貧乏になってしまった日本

 

 結局、日本は税収が少なすぎるのです。そのため対人口比での国家予算が少ないのです。
 現状では、税収不足分を国債などの借金で賄っています。

 また、高齢者が多いため生産性が低いことも原因です。しかし生産性が低いのは高齢化だけが原因ではないようです(生産性は一人当たりGDP=国民所得と考えてよいです)。
 
 それでは日本の生産性についてみてみましょう。


 日本は社会保障費の額で負けているフランスやドイツなどの国よりも下にあります。
 実は日本は先進国の中でもかなり貧乏な国なのです。バブルのころ(1990年ごろ)に流行った「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は今は無き夢の話でOECD加盟国平均よりも貧乏であることが常態となってしまいました。

 確かにこれでは社会保障を充実させることなんてできません。
 高度成長時代に一生懸命働いて国を豊かにしてきた高齢者はそれに見合うサービスを受けられないまま、人生を終えなければなりません。

 人口が多いため国民総生産自体(GDP)は中国に抜かれ第3位ですが、実際はバブル以降の30年で日本はかなり貧乏な国へと変わり果てています。

 

生産性を上げなければ社会保障費も増えない

 

 では、充実した社会保障を得るために、税収を増やす方法はあるのでしょうか?
 消費税や所得税などの税率を上げればよいのですが、実は日本の各税項目の税率自体はすでに先進国並みに高く、税率だけを上げるのはかなりの困難が伴いそうです。

 ちなみにIMF(世界銀行)は消費税を15%にするべきという提言をしていますが、選挙などもあるのでなかなか簡単ではありません。

 それに単に税金を上げても、それが生産性につながらなければ社会保障費も増やせません。消費税は主に社会保障費にあてる名目で導入してきましたが、社会保障費を増やすためだけの増税にも限界がありそうです(増税により貧困層を増加させてしまうという分析もあります)。

 最も健全な方法は、生産性を向上させ、税収を増やして社会保障費を増やすことです。
 米国の経済学者の調査では、国家予算のうち生産性向上支出が、先進国平均では24%程度と言われています。
 日本は10%程度です。悲しいかな税収が少なく、成長戦略に回せるお金が少ないのです。
 これではいつまでたっても成長軌道に乗ることはできません。

 政府の生産性向上支出とは「教育投資」や「イノベーションのためのインフラ投資」です。教育については先進国で大学や高等職業訓練の費用が無償になりつつあります。日本は高校すら有償です。このままでは差が開くばかりでしょう。

 税制に関しては、グローバル企業から法人税を厳しく取り立てたり、富裕層から税金を取る方法を検討したり、世界各国で改革が始まっています。
また、国債発行による国の借金の在り方もMMT(現代貨幣理論)などにより、単なる借金という見方から新しい考え方が出てきています。

 日本はひとまず、5年間程度、何らかの方法で政府の生産性向上支出を25%以上に増やし、生産性向上の正のスパイラルを生み出さなければならないでしょう。

 それまでは社会保障費を持たせるために、国債の発行に並びに、例えば高所得者や金融資産をたくさん持っている富裕層の医療費や介護費の自己負担率を大幅に増やす必要もあるかもしれません。

 

介護保険制度改正 訪問介護を中心に(その1)

 

 

 来年4月、改正介護保険法と介護報酬改定の施行が予定されています。

 コロナによる影響を勘案した報酬の改正も順次届いていますが、全体としてはどのような改正になるのでしょう。

 今回は訪問介護事業を中心に注目すべきポイントについて解説します。

 

「重度化防止」と「効率化」が明確に

 

 さて、これまで社会福祉審議会介護保険部会でどのような議論されてきたのでしょうか。

 同会は令和元年12月27日に「介護保険制度の見直しに関する意見 (案) 」を発表しています。

 

 先に大きな方向性を述べてしまうと、

  • 介護予防と総合事業を推進させ、重度化を防ぎたい(社会保障費の抑制)。
  • その際、主役は保険者である区市町村であり、医療連携も含めて、保険者強化を進めていきたい。
  • 人材不足にはできれば効率化で対抗したい(単純な人員増加は難しい予測)。

 

 このような意向が強く出ているように思われます。

 

 しかし、そうした方向性のコンセンサスはあるにしても、現状の実施体制では未熟な部分が多く、ケアプランの有料化や要介護1・2の総合事業への移行などは見送られています。

 また、各保険者に対しては、国や都道府県が支援をしながら理想の方向に向かっていきたいという意向でしょう。

 そのため、今改正は、基本的にはこれまでの流れを踏襲しつつ、経過的な改定内容となっています。おそらくは、コロナ禍において大きな改定は、現場や自治体の負担が大きいことも配慮されているかもしれません。

 

 ただし、今回の議論の内容が今後の介護保険制度の方向性を示していますから、介護事業者にとって内容をチェックしておくことは大変重要です。特に訪問介護事業者にとって要支援のサービスがどうなるのかは注目しなければなりません。

 収益性の低さから、現状で総合事業から撤退している事業者もあります。現状の自治体やボランティア任せの介護予防ではとても持ちません。

 ビジネスとして介護予防をどう成り立たせるかが、今後の大きな課題であることが、浮かび上がっていると言って良いでしょう。

 

 

今回は保険者の機能強化がメインか

 

 そうした状況を踏まえて議論の内容を見ていきましょう。

 

 まず、初めに「地域共生社会の実現」というテーマが議論されています。

 「地域共生社会」とは、高齢者介護、障害福祉、児童福祉 、生活困窮者支援などの制度・分野の枠や、「支える側」、「支えられる側」という従来の関係を超えて、人と人、人と社会がつながり、助け合いながら暮らしていくことのできる社会です。介護保険制度の前提となる日本の福祉社会の方向性になります。

 

 社会保障審議会 介護保険部会(第90回)令和2年2月21日「<参考:介護保険制度改正の全体像> (検討結果をまとめた全体のイメージ)

 

 続いて、「介護保険制度の見直しに関する意見 (案)」の目次から見いだされる大きな項目は以下の通りになります。

 

Ⅰ 介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)

Ⅱ 保険者機能の強化

Ⅲ 地域包括ケアシステムの推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)

Ⅳ 認知症施策の総合的な推進

Ⅴ 持続可能な制度の構築・介護現場の革新

Ⅵ その他の課題

 

 それぞれについてポイントをピックアップしてみます。

 

Ⅰ 介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)

 

「通いの場」についいて集中的に議論されています。

◎住民主体の通いの場の一層推進

◎通いの場に医療等専門職の関与(生活習慣病の重症化予防)

◎参加しない高齢者の把握と支援

 

 デイサービスとは異なり、地域の高齢者が日々積極的に集う場を地域の中に作り、運動や生きがいづくり、健康管理を行う取り組みですが、各保険者の創意工夫が求められます。

 

 その他、以下のような論点が示されています。

◎ボランティアのポイント付与、有償ボランティアの推進、企業との連携

◎家族や現役世代が予防的な意識を持てるような周知広報の強化

◎総合事業の対象者が介護保険の給付が受けられることを前提としつつ、弾力化を行う

◎国がサービス価格の上限を定める仕組みについて、市町村が創意工夫を発揮できるようにするため、弾力化を行う。

◎高齢者が何らかの支援が必要な状態になったとしても就労的活動に参加

◎ケアプランにインフォーマルサービス推進

◎ケアマネジャーの処遇の改善と質の確保

◎ケアマネジャーの事務負担軽減

◎地域包括支援センターの積極的な体制強化等を行う市町村について、保険者機能強化推進交付金等によりその取組を後押し。

 

 これらの施策は基本的には保険者の努力や工夫が必要な分野です。その意味で、保険者の機能強化が重要ということになります。

 

 

Ⅱ 保険者機能の強化

 

 先に述べました通り、介護予防を保険者の責任として実施していく意味で、その強化が大きな課題です。

 また、保険者同士を競争させ、成績の良い自治体には予算を増額し、ベストプラクティス(良い取り組み)を全国に広めていくことを目論んでいます。

 

 ポイントは以下の通りです。

◎保険者機能強化推進交付金において取組評価

◎保険者機能強化推進交付金予算増額

◎評価指標、判断基準を明確化。

◎取組が遅れている市町村にペナルティーを与えるのではなく、都道府県による適切な支援。

◎要介護認定率などのアウトカム評価の方法確立

◎保険者の取組の達成状況の「見える化」推進

◎関連のデータ収集と事業者等負担軽減

 

次回に続く

 

介護保険制度改正 訪問介護を中心に(その2)

 

続きです。

 

Ⅲ 地域包括ケアシステムの推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)

 こちらでは、「現状・基本的な視点」として以下のような状況を踏まえています。

  • 都市部の介護ニーズ増大、地方部は高齢化のピークを越え、高齢者人口が減少に転じる地域もある。
  • 高齢者向け住まい(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)が都市部を中心に多様な介護ニーズの受け皿となっている。

 

 地域包括ケアシステムについては以下の点に留意して推進することが検討されています。

◎居住系サービス、訪問介護等の在宅サービス連携を強化

◎「介護離職ゼロ」の実現に向けて、介護施設の整備を進めるとともに、在宅サービスの限界点を高めていく

◎住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の質を確保、事業者に係る情報公表の取組を充実「外部の目」を入れる取組

◎看取り期にある者に対応する在宅の限界点を高めていく

◎介護老人保健施設について、在宅復帰・在宅療養支援の機能を更に推進

◎在宅医療・介護連携推進事業について、医師会等関係機関や医師等専門職と緊密に連携、ICT やデータ利活用

 

 これまで通り、施設介護ではなく在宅介護を中心に、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を積極的に活用するイメージでしょう。

 

 

Ⅳ 認知症施策の総合的な推進

 

 65 歳以上高齢者の約5人に1人が認知症になると見込まれていることを前提に、これまで通り、重点的な施策として推進する予定です。

 基本的なポイントはこれまでの施策の拡充となります。

 

◎認知症施策推進大綱に沿って、認知症バリアフリー・予防・早期発見対応・介護者(家族)支援

◎認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症とともに生きるまた、認知症があってもなくても同じ社会でともに生きる「共生」の実現

◎認知症になった方が働き続けられる環境整備

◎住み慣れた地域で普通に暮らし続ける

◎「通いの場」をはじめ、高齢者の身近な場における認知症予防、「通いの場」でスクリーニング

◎かかりつけ医、地域包括支援センター、認知症初期集中支援チーム、認知症疾患医療センター等の体制の質の向上、 連携強化

◎介護者(家族)への支援、認知症カフェ、家族教室や家族同士のピア活動、職場における相談機能の充実

◎認知症高齢者グループホームのユニット数や運営規模の弾力化

 

 

Ⅴ 持続可能な制度の構築・介護現場の革新

 

 2025年度末までに、年間6万人程度の介護人材確保が必要なことを前提に、人材確保と業務効率化による持続可能な事業としての体制整備が中心ですが、人員確保は改善が難しい状況が見えるようです。

 

 一方、今改正の目玉の一つとして、「非営利連携法人制度」の創設があります。

 これは、社会福祉法人を中核として、地域の介護事業者が連携し、ロボット・ICT 等の共同購入、人材確保・育成、事務処理の共同化・プラットフォーム化を進めるものです。

 国としては介護の経営を大規模化させ、人材や資源を有効に活用し、効率化と介護職の処遇改善を進めたい意向があるのでしょう。

 しかし、この動きは、民間事業者など多様な参加者という介護保険制度の理念とは逆行します。確かに、介護福祉も電力や交通などと同じように大規模な公共事業体として組織化ができれば、職員の身分は安定し、いろいろな問題が解決するかもしれません。しかし、一方で大組織病のような非効率な部分が沢山出てきてしまうでしょう。少し虫がよい話かもしれません。

 

 その他の施策は次のようになります。

 

◎人手不足の中でも介護サービスの質の維持・向上を実現するマネジメントモデルの構築、業界のイメージ改善

◎業務の洗い出し・切り分けを行った上で、ロボット・センサー・ICTの活用と元気高齢者の活躍を促し

◎中学生、高校生等が進路を考えるにあたって、介護職の魅力を認識し、仕事として選択をしてもらえるよう、学校や進路指導の教員などへの働きかけ

◎「富士山型」の賃金構造を目指し、制度の整備を進める

◎潜在介護福祉士現場に戻ってもらうための取組

◎離職防止・定着促進の相談支援、小規模事業者への取組支援

◎介護現場を地域全体で応援する仕掛けづくり

◎外国人 介護人材の受入れを着実に推進

(アジア各国の急速な高齢化のため、外国からの介護人材の受け入れ拡大が安定的な人材確保策とならないとの意見あり)

◎介護分野の文書の削減・標準化等を進め、現場の事務作業量を削減

(個々の申請様式・添付 書類や手続きに関する簡素化、自治体のローカルルール解消、ICT 活用)

 

 以上、これまでにも散々取り組んできた内容ですが、一向に効果が見えない感じがあります。日本全体がコロナ以前の人材不足状況に戻るとすれば、いよいよ担い手不足は深刻になるでしょう。

 

 

今回議論されたが見送られた施策

 

 ケアマネジメントに関する給付の見直し=有料化・利用者負担

 社会保険料の負担増により中小企業や現役世代の負担は限界に達しており、制度の持続可能性を確保するため、能力のある人には負担していただくことを検討していましたが、以下のような意見もあり、今回は見送られています。

◎有料だとサービス利用をやめてしまう人が出てしまう

◎ケアマネジャーは保険者の代理人、市町村の代わりを担う立場であり利用者負担を求めることになじまない

◎有料化によりセルフケアプランが増加すると自立につながらないケアプランが増える

◎障害者総合支援法における計画相談支援との整合性

 

 軽度者に対する給付の見直し(要介護1・2サービスの地域支援事業への移行)

 要支援1~要介護2の利用者への生活支援の在り方を考えた場合、強度の違いはあれ、予防の視点は欠かせないため、一体的なサービス提供を図りたい旨の意向が保険者などから上がっており、移行が検討されてきました。


 社会保障審議会 介護保険部会(第90回)令和2年2月21日<介護保険制度の見直しに関する参考資料>より

 

 上記調査から、総合事業では制度改正前の介護予防サービスと同じ基準で提供されるサービスの割合が大きく、市町村の実施状況を見ても、住民主体のサービスなどの多様なサービスが実施されている市町村数は6~7割にとどまっています。

 総合事業から撤退する訪問介護事業所も多い中、そもそも、住民主体のサービスなどを介護事業に組み込むことは無理があるのかもしれません。サービスの母体となる介護事業所が回避しているためサービスが伸びないと考えます。

 

 国の意向としては、要介護2までの生活援助は身体介護から切り離し、安価で柔軟な住民主体のサービス(ボランティアや民間の家事援助サービスなど)にしたいという意向が見えます。

 最近は多様で比較的安価な民間家事サービスも増えています。例えば、区市町村がこうしたサービスを利用できるクーポン券などを発行し、家事援助を提供することも考えられます。

 しかし、ここで重要なのは「生活援助=家事援助」と定義していないことです。

 介護は広い意味で生活援助であり、その中には身体介護も家事援助も含まれています。生活援助から家事援助を切り離す方法が確立していない以上、要介護2までの総合事業への移行は難しいかもしれません。

 もし強引に導入しても、上述のような家事援助サービスを適切に提供できる体制ができていない場合は、現場がかなり混乱すると思います。

 

 この点について、審議会では以下のような意見が出されています。

◎見直しは、将来的には検討が必要であるが、総合事業の住民主体のサービスが十分ではなく、地域ごとにばらつきもある。まずは現行の総合事業における多様なサービスの提供体制の構築等を最優先に検討すべき

◎総合事業の課題である実施主体の担い手不足が解消される見込みもない中では市町村も対応できず、現段階での判断は現実的でない

◎要介護1・2の方は認知症の方も多く、それに対する体制が不十分

◎訪問介護における生活援助サービスは身体介護と一体的。切り離した場合の状態悪化が懸念

◎利用者の負担増となることを懸念。要介護1・2の方は重度化防止のために専門職の介護が必要

 

 

財務省は小規模な介護サービス事業者を失くしたいのか?

 

 4月11日、財務省の財政制度等審議会分科会は「介護事業所・施設の経営の効率化について」として、以下の提言を行いました。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia300411.html

 

【改⾰の⽅向性】(案)

○ 介護サービス事業者の経営の効率化・安定化と、今後も担い⼿が減少していく中、⼈材の確保・有効活⽤やキャリアパスの形成によるサービスの質の向上などの観点から、介護サービスの経営主体の統合・再編等を促すための施策を講じていくべき。

 

 分科会はこの提言の根拠として、介護サービス事業者の現況について以下のような見解を示しています

 

【論点】

〇 介護サービス事業者の事業所別の規模と経営状況との関係を⾒ると、規模が⼤きいほど経費の効率化余地などが⾼いことから経営状況も良好なことが伺える。

 ⼀部の営利企業においては経営主体の合併等により規模拡⼤は図られている。営利企業とその他の経営主体では同列ではない部分もあるが、介護サービス事業全体で⾒た場合、介護サービスの経営主体は⼩規模な法⼈が多いことが伺える。

 

 さらに、分科会ではこうした論拠の裏付けとして以下のようなデータを示しています。

 

①わが国の介護サービス事業所の7割が100人未満の法人による経営である。

②通所介護と訪問介護では利用者数を多く抱える事業所の方が収益率が良い。

③民間16社(説明はないがおそらく大規模法人と思われる)利益率は5.9%であり、介護事業者全体は3.3%となっている。

 

 

自治体に事業者の経営改善をさせる

 

 分科会は大規模化の参考例やメリットとして以下のような例を挙げています。

 

○介護サービス等の事業を⾏う複数の法⼈が、⼈材育成・採⽤などの本部機能を統合・法⼈化することで、ケアの品質の底上げや研修・ 採⽤活動のコスト減を図るなどの取組も存在。

○介護サービスの経営主体の⼤規模化については、

①こうした介護サービス事業の⼈事や経営管理の統合・連携事業を⾃治体が⽬標を定 めるなどして進めることのほか、

②⼀定の経営規模を有する経営主体の経営状況を介護報酬などの施策の決定にあたって勘案することで経営主体⾃体の合併・再編を促す、といった施策が考えられる。また、

③経営主体について⼀定の経営規模を有することや、⼩規模法⼈については⼈事や経営管理等の統合・連携事業への参加を指定・更新の要件とする、といったことも考えられる。

 

 確かに、介護事業を公営事業と考えれば、昔の国鉄や電電公社、郵便事業が民営化したようように大規模民営も考えられます。

 例えば東日本介護サービスのように地域ごとに大規模法人化し、統括的な経営管理の下に事業を行えば、経営のコントロールもやりやすいし、働く人たちの処遇も改善されることが想定できます。

 JRNTTが一流企業であるように、介護事業で働く人たちは一流企業の社員として安定的な収入を得ることも可能かもしれません。

 

 しかし、現状の介護保険制度では保険者が区市町村である以上、このような統合は不可能であり(できても区市町村内の統合)、行政改革の流れからもバカげたことであるとみなされ、現実的ではありません。

 

 分科会でも都道府県、区市町村内の事業所の統合や業務の連携を想定しており、全国規模の統合という視点はありません。

 ただし、統合や業務連携などによる経営効率化に対するインセンティブ(動機付け)は考えており、地域内法人の経営改善目標を設定するなどして自治体に対するインセンティブを想定しています。

 

 

小規模法人すべてが経営状況が悪いわけでは無い

 

 そもそも、分科会で上げている、「小規模法人は収益率が悪い」という論拠は正当なのでしょうか?

 上にあげたデータだけでは論拠としては弱いような気がします。少なくともすべての小規模事業所に当てはまるわけでは無く、「小規模法人の中には経営状況が悪い法人もある」と言えるだけでしょう。

 

 結局、財務省が目指しているのは、介護事業所の経営状況を良くして、収益率が上がった分の介護報酬を減らしたいだけです。しかし、筆者としては収益率が上がった分は、従業員に対する処遇改善に回すべきであり、財政負担の改善に利用するべきでないと考えます。

 

 筆者としては、今回の提言の本質的なゴールは経営状況の良くない小規模法人の経営改善であると考えます。

 つまり中小企業対策であり、厚労省の課題というよりも、通産省の課題でしょう。

 日本の企業の9割が中小企業であると言われます。特別な技術や商品を持っている企業は買収されますが、収益率の悪い企業でも統合されることはなく、廃業するか細々と経営を続けているだけです。

 

 介護事業だけ国策として事業を統合しようとするのは少し横暴な気がします。そして、統合や業務連携という発想だけでは経営改善にはならないでしょう。

 

 しかし、都道府県などに地域内の小規模介護事業法人の経営改善対策をさせることは必要でしょう。

 製造業などとは別のスキームで介護医療法人向けの特別なプログラムを考えていくことは良いことだと考えます。

 例えば指定更新時、決算書を提出させ、経営状況の悪い法人は中小企業診断士などの経営指導を受けなければ、指定更新ができないなどのプログラムは考えられます。

 

 小規模事業者の中には経営に疎く、ボランティア的に事業を営んでいる方も多いため、財務省としてもこのような提言が必要なのでしょう。

 もちろんCareBizSupもそのような事業者を支援するために、サービスを提供しているわけですが。

 

 

 

 

 

混合介護はなぜ導入されるのか

 

 

 東京都豊島区は、介護保険と保険外サービスを組み合わせる「混合介護」のモデル事業を来年度から始めると発表しました。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDE08H02_Y7A200C1PP8000/

 これは、国家戦略特区の制度を活用し実施するもので、介護保険サービスと保険外サービスを一体的に提供する取り組みです。

 

 現在でも訪問介護や訪問看護では自費サービスと保険サービスを組み合わせて提供することができます。混合介護はこれと何がどのように変わるのでしょうか?

 

 今でも、身体介護を30分利用した後に、本来はできない庭の掃除を15分だけしてもらうとか、家族の食事も準備してもらうなどの自費サービスの組み合わせは可能です。

 筆者の経験したケースでは、介入時、ごみ屋敷状態で、その片づけを自費でしたりする場合もありました。

 

 ただ、多くが一時的なサービス提供で、継続的なものは少ないといえるでしょう。

 確かにお金持ちのご利用者の場合は、継続して自費サービスを利用するケースはあります。しかし多くの方が、保険外サービスは最低限の利用というイメージがあります。

 

 行政等の指導では、自費サービスの契約を別途結んで、料金等を明確に説明し同意を受けてサービスを提供するよう指示されています。確かに別に契約を結ぶなどの手間がありますので、このあたりの事務が一体化されてくれると効率化はされるでしょう。

 

 

なぜ豊島区が取り組むのか

 

 混合介護はもともと公正取引委員会が、介護サービス事業にもっと競争性を持たせるべきだという提言から検討が始まりました。

 医療分野ではすでに混合医療が進んでいます。

 その背景には利用者の利便性の向上や、事業者の収入機会の増加、介護職員の処遇改善につながるという見方があるからです。

 

 また、前述の豊島区のような都心の自治体では介護職不足が、地方に比べ深刻です。そうした人材確保の目論見もあるのではないでしょうか。

 なにしろ都心はアルバイトでも他の地区と比べ賃金が高いため、介護職の賃金レベルではあまり魅力がなく、担い手が集まらないという問題があります。

 

 これは、そもそも介護報酬の算定そのものが都心に不利に働いているからです。同じ23区なのにもかかわらず、例えば足立区や葛飾区といった周辺区と単価が変わりません。

 さらに都心は不動産物件の賃料も高く、収益性を考えた場合、介護事業経営には不利です。

 

 

背景には介護サービスの不足危機があるかもしれない

 

 都心では介護サービス不足が進んでいくと考えられます。

 豊島区でも秩父市と提携して特別養護老人ホームの設置を進めています。用地確保が難しい都心区では区外特養の整備は普通になってくるかもしれません。

 また、地代が高いため有料老人ホームやデイサービスも足りなくなる可能性があります。

 

 人材は集まらない、施設などのサービスも足りなくなるという危機感はあるでしょう。

 都心区の自治体は2025年以降を見据えて、介護人材と介護サービスの確保に早急に取り組まなければいけない現状があると思います。

 その対策の一環として、収益性の高い混合介護モデルを導入しようとしているのでしょうか。

 

 

富裕層向けサービスとしての可能性

 

 都心区の区外特養は低所得者向けの対策ではないでしょうか。

 一方で住民税を沢山払ってくれる富裕層高齢者の都心区への転入を促す方策は十分考えられます。

 

 富裕層と言っても大企業年金を夫婦でもらい、資産収入もそこそこあり、老後資金に余裕があるような高齢者のイメージです。

 団塊の世代の多くが、23区外のいわゆるベットタウンに居住していることが多いかと思います。なにしろこの世代の人たちが多く家を購入した1980年代の場合、都心に住むことは難しかったと思いますから。

 その中で老後のお金に余裕がある人は都心のマンションなどへの移住を考えている人も多いと聞きます。

 

 子供が別居になって広い家に夫婦で二人暮らしのようなケースの場合、家は築40年近くになりますから、住み替え時期と考えても良いでしょう。

 だとすると、「都心の便利な場所に2LDKぐらいのコンパクトなマンションを購入し暮らす方が良いのではないか」と、考えている人は多いかもしれません。

 また、埼玉や千葉では医師不足・病院不足が深刻な地域も多く、老後のケア体制に不安もあるようです。

 先日、東京都荒川区で埼玉県越谷市の救急車がサイレンを鳴らしって走っているのを見て、少しゾッとしました。

 

 サービス付き高齢者住宅でなくても、ある程度バリアフリー化したマンションであれば、一軒家よりも老後の生活は楽でしょう。

 こうした富裕層高齢者に向けた生活支援サービスとしての混合介護は十分考えられるかもしれません。

 

 

月ぎめ包括料金の混合介護はできないか

 

 実際の豊島区モデルがどのようになるかわかりませんが、もし可能なら月ぎめの包括料金化できると経営サイドとしても非常に有効だと考えます。

 

 一つの例として、小規模多機能居宅介護があります。

 月額料金なので、はっきり言ってしまえば、庭の掃除をしても運営基準上はそれほどガミガミ言われない部分もあります。実際には認知症のご利用者と一緒に掃除するなどのケアにはなると思いますが、包括料金であればあまり細かいことを気にせずにサービスを提供できる実態があります。

 

 ケアプランで週何時間、月何時間という枠組みを決めて、その時間内であれば多様なサービス提供が可能であるような仕組みです。

 もちろん、現在の報酬よりも収益が高くなるような報酬設定をしてもらわなければ意味がありませんが、月額制にした場合、給付管理などは大幅に効率化できます。

 もしかしたら、月ぎめの契約では自己負担分を多めに徴収できる仕組みでも良いかもしれません。

 そうすればより、柔軟で緻密なサービス提供が可能になるでしょう。

 

 

 

 

スピリチュアルケアというサービス

 

 

死にゆく人に心の安らぎをもたらすサービス

 

 ターミナルケアサービスを提供する場合、死にゆく人の心のどのように安らぎをもたらしていくのか、訪問看護や介護の職員は悩むところです。

 

 欧米ではキリスト教を背景にしたスピリチュアルケアが、普通に医療介護サービスの中に組み込まれており、ターミナルケアのチームの中にはキリスト教関係のスピリチュアルケアの専門家が加わっていることが多いようです。

 

 日本人は無宗教の人も多いため、宗教哲学を背景にしたスピリチュアルケアがどの程度通用するのかわかりませんが、そろそろ現状のターミナルケアの中にスピリチュアルケアが適切に組み込まれるべきではないかと筆者は考えます。

 

 

日本のスピリチュアルケア

 

 日本のスピリチュアルケアは宗教哲学を背景にいくつかの団体で既に取り組みが行われており、日本スピリチュアル学会には仏教やキリスト教の団体が加盟し、実践的活動を行っています。

http://www.spiritualcare.jp/

 

 この日本スピリチュアル学会では、スピリチュアルケア師という現場で実際にスピリチュアルケアを提供する専門家を認定しています。

 

 1年程度のカリキュラムを履修し試験などに合格すると認定されるようですが、今のところこ各実践団体が独自のカリキュラムをつくり研修を実施してる状況のようです。

 

 ただ、この資格を持っていて、専門的なサービスを提供しても、現在のターミナルケアサービスの中には報酬はありませんので、多くの団体はボランティア的もしくは自費によるサービス提供になっているようです。

 

 

 

現状のターミナルケアでは未整備のサービス

 

 実際に死にゆく人のケアをした人であれば、どのように心安らかに死を迎えさせてあげればいいのか、何もわからずに取り組んでいることも多いでしょう。

 

 介護の研修でもスピリチュアルなケアの在り方は抽象的なものも多く、具体的な事例演習なども行われません。実際に現場でターミナルケアサービスを提供している介護職員は行き当たりばったりでサービスに取り組んでいるのが現状だと思います。

 

 

厚労省はどう考えているのか

 

 厚生労働省は看取りケア自体の重要性は認識していても、安らかに死を迎えていただくというサービスをどの程度重要と考えているのかよくわかりません。

 

 緩和ケアの検討会などでその必要性が委員から発言されていますので、必要性は認識しているかもしれません。

 

 社会コストの面では、施設や在宅でのターミナルケアは医療費低減の効果がありますから、積極的に推進したいのでしょう。しかし、スピリチュアルケア自体には社会コスト軽減効果が無いと感じているのでしょうか。

 

 しかし筆者は、スピリチュアルケアが介護サービスに適切に組み込まれることは、病院死を減らす効果があると考えています。

 

 

死に対する不安を和らげるのは医療の役割ではない

 

 死に対する不安が強くなると、精神状態や病状の悪化をもたらします。また、そうした不安定な患者を見て家族が不安に感じ、在宅での看取りをあきらめてしまったりします。

 結局、設備の整った病院での対応が必要になり、最後は病院で亡くなることになります。

 

 もちろんこのあたりの効果は今後、実証的な調査が必要になるでしょう。

 しかし、訪問診療における在宅ターミナルが医学的に多くの患者さんに可能になっているにもかかわらず、本人や家族の不安を和らげるケアが無いために、施設や在宅でのターミナルケアができなくなっている現状は確実にあると思います。

 

 

安らかな死をもたらすサービスは既に求められている

 

 筆者自身、両親を病院で看取っている経験上、病院で死を迎えることは、あまり安らかな死の迎え方ではないなと感じています。自分自身、あまりそのような死に方はしたくないと感じます。

 

 安らかな死をもたらすための精神的なケアの技術は既に訪問看護や訪問介護のスタッフに必要になっていると考えます。

 

 特に在宅ターミナルであれば、毎日のようにケアを提供し、ご本人や家族と会話をする訪問介護員には、現状の介護福祉士のカリキュラムレベル以上の専門的な技術が必要です。

 

 

専門的な技術教育の体系化が必要

 

 看取りにおけるやすらかで精神的に安定した状態をもたらすサービスをどのように提供したらよいのか、その専門的な技術教育をどのようにやるのか体系化が無ければなりません。

 

 すでに医学系の大学などで研究は行われていると思いますが、国としての方向性が出なければ現状は変わらないでしょう。

 

 宗教的な背景を持たなくてもそうしたサービスは可能なのか、名称にしてもスピリチュアルケアで良いのかもわかりませんが、早急に日本人にマッチした方法論が確立することが期待されます。

 

 

混合介護の可能性も

 

 筆者はそろそろ国としてこの分野の報酬の在り方を考えなければいけないのではないかと考えています。

 在宅ターミナルが増えれば増えるほどその必要性を訴える声は大きくなるでしょう。

 

 訪問看護や訪問介護事業所を経営する上でも、ターミナルケアにおけるスピリチュアルなサービスの提供をそろそろまじめに考えても良いと思います。

 特に自費のサービスとしての提供は今でも可能ですし、今後、混合介護の中での扱いも検討されるでしょう。

 

 

 

サ付き高齢者住宅の囲い込み問題─関係居宅はケアプランチェックの準備を

 

サ付きの介護費が特養を超える

 

 サービス付き高齢者住宅(特定の指定なし)に入居している要介護3以上の利用者の介護費が、特別養護老人ホームの要介護3以上の入居者の介護費よりも高いという調査結果が大阪府で出されました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shakaihoshoukaikaku/wg_dai23/shiryo1-1.pdf

「大阪府における介護施策の現状と課題、対応の方向性について」P11参照

 

 これに対して国は「囲い込み」の問題があるとして、次回の報酬改定で対策を講じたいという意向を示していますが、どのような対策を講じるのかは不明です。

 

 この問題のポイントは、サービス付き高齢者住宅は居宅サービスであり、在宅と同様、訪問介護や看護を利用しながらケアを受けるのだから、在宅介護並みの介護費に収まらなければおかしいということです。

 

 それが大阪府では在宅介護費はおろか施設介護費よりも高くなっているということです。これでは本末転倒でしょう。

 

 

この結果、何か引っ掛かる

 

 しかしこの調査、簡単にそのまま受け取れないものがあります。

 

 たとえば、平成28年の要介護5の居宅サービス利用者の平均介護給付額は25万円程度で30万円には届きません。

 

 特養は30万円前後ですから単純に比べれば、居宅サービスを利用したほうが断然、安上がりだという理屈になります。

 

 しかし、例えば独居の要介護5の利用者が、サービス付き高齢者住宅に入居し、毎日午前と午後に1時間ずつ訪問介護(身体)を利用し、さらに、訪問看護や訪問入浴を利用すると介護費は30万円を超えて、限度額近くまで行ってしまいそうです。

 

 通常のケアプランでは特養並みにお金がかかるのは避けられないような気がします。

 

 何か変です。

 

 

カラクリは家族介護コスト

 

 サービス付き高齢者住宅の入居者の多くは独居の高齢者(もしくは老夫婦)であり、家族の援助がなかなか受けられないということを考えなければなりません。

 

 一人暮らしの重度要介護者の、居宅サービス費の平均利用額のデータが無いので、明確な比較はできませんが、先に挙げた約25万円という居宅サービスの平均額には家族の助けが含まれています。家族同居の要介護5の場合、毎日の訪問介護は必要ない場合もあるでしょう。その分、居宅サービスの平均額は低く抑えられているのでしょう。

 

 

一部、過剰なサービスはある

 

 確かに、夜間の訪問介護が必要の無い人に夜間の割り増しサービスがプランニングされていたり、家事援助が身体介護で算定されていたり、一部、不適切なサービス提供があるとは考えられます。

 24時間のサービス体制は入居者にとっては安心ですが、夜間の身体介護がどこまで必要かは議論があると思います。宿直スタッフが配置されている場合、あまり必要の無い夜間の訪問介護を提供している例は多いかもしれません。

 

 とはいえ、介護給付費の算定構造上、独居の高齢者、特に要介護3以上の重度利用者の給付費は、特養並みになるのは避けられないのではないでしょうか。

 

 つまり、独居の利用者の介護給付費は居宅も施設も変わらない。ということです。

 

 そのように算定構造を作っているのは国自身であり、それを改善するとなると、居宅介護費を減算するしかないような気がします。しかし、実際それは無理でしょう。

 

 

自治体によるケアプランチェックが先

 

 いきなり算定構造を云々するよりも、まず、サービス付き高齢者住宅に入居する利用者のケアプランチェックを、自治体がしっかりやることが重要でしょう。

 

 それを実施しないで給付費のマイナス改定は行えないと考えます。もし行ったら乱暴すぎますし、まじめにサービスを提供している事業所にとっては大打撃です。

 

 次期改定で何か対策をするにしても、まずケアプランチェックを実施してからであり、従って、筆者は近いうちに、都道府県や区市町村に対してその種の通達や指示が出されると考えます。

 

 

サ付きの居宅介護事業所は準備を

 

 サービス付き高齢者住宅の利用者のケアプランを作成している、居宅介護事業所はその点を考慮して、ケアプランの自己点検をしっかりしておく方が良いでしょう。不要なサービスを提供していないか自治体のチェックが入ります。

 

 合理的なケアプランにより、給付費が居宅サービス費の平均額を超えていてもそれは仕方がありません。

 

 おそらくその利用者は独居であり、家族介護の助けを得られず、外部サービスに頼らざるを得ないわけですから。

 

 

現状、特養のコストより少しでも低ければ可ではないか

 

 今後、全国調査でどのような結果が出るかわかりませんが、特養のコストよりも少しでも低ければそれで可としなければならないような気がします。

 

 独居の高齢者は、今後さらに増えることになります。家族の援助は低減し、居宅サービス費の平均額も上がってくるでしょう。特に都市ではその傾向が強く表れます。

 

 独居の重度要介護者の給付費は特養も居宅も同じ、という考え方で、居宅の介護報酬に手を付けないことを祈ります。

 

 そもそも、サービス付き高齢者住宅は建設設備費や用地確保の面で、特養よりも税負担のコストメリットが大きいはずです。その点を加味して全体的な政策を考えてほしいと考えます。