(次期改正)通所介護の焦点は?

 

 通所介護事業における次期改正の焦点は、機能訓練と栄養管理に関わる見直しになるのではないかと言われています。

 

機能訓練が適切に行われていない

 

 機能訓練については、特に、小規模デイサービス(=地域密着型サービス)におけるの取り組みが手薄であり、デイサービスの基本性能である「生活機能の維持向上」が図られていないのではないかという議論がされています。

 

 実際、通常規模や大規模デイサービスにくらべ、小規模デイサービスでは機能訓練加算の取得率が低く、適切な機能訓練が行われていないのではないかという疑義があるようです。

 

 制度の規定では、加算を取得していなければ、機能訓練指導員を配置すればよく、実地指導などでも、加算を所得していない事業所の機能訓練の内容をチェックすることは無いようです。

 

 もともと、小規模デイサービスの利用者は認知症の利用者が多く、機能訓練も脳トレやリクリエーション活動が主で、筋トレなどの運動系の活動は多く無いという事情もあるでしょう。

 

 しかし、機能訓練の目的はリハビリテーションではなく「生活機能の維持向上」が目的ですから、その観点に立った機能訓練は行われなければならないという考えが厚生労働省にはあると思います。

 

 

認知症の利用者にも運動系の機能訓練は必要

 

 介護保険制度が施行されてから、通所介護事業所で提供される機能訓練の方法論も大きく進化してきていると考えます。

 今となっては認知症だから運動系の機能訓練はやらなくても良いという考え方はナンセンスでしょう。

 たとえレスパイトがサービスの中心であったとしても、ただテレビを見せているだけのデイサービスなど今や皆無だとは思います。

 

 認知症予防の機能訓練として、例えばしりとりをしながら踏み台昇降をする二重課題トレーニングなどが、認知症予防に効果があることが実証されてきています。

 小規模で認知症の利用者が大いという理由だけで、機能訓練はあまり熱心ではないということは通じなくなっているのも事実です。

 

 機能訓練というと=リハビリと考えている方も多いようですが、デイサービスでの機能訓練は医療リハビリとは異なります。その方法論はバラエティーに富んだものとなっていると考えます。

 

 

個別機能訓練計画が義務化される可能性も

 

 国が通所介護サービスの機能訓練を強化したいと考えた場合、個別の機能訓練計画を必須にする可能性もあるでしょう。

 

 現在の通所介護計画書の内容に機能訓練計画を盛り込むような形かもしれないですが、いずれにしても、デイサービスの利用者には必ず計画的な機能訓練サービスの提供が義務付けられる可能性は十分あると考えます。

 

 筆者は、認知症の利用者であろうが、ほとんどの高齢者には筋力の維持向上のための運動系のトレーニングが必要であると考えていますので、機能訓練計画の義務化には賛成です。

 

 

機能訓練計画が義務となった場合の対応は?

 

 個別機能訓練を計画的に実施していない、小規模なデイサービスの運営者は、途方に暮れてしまうかもしれません。

 

 しかし、個別機能訓練はそれほど難しいものではないと考えます。

 

 かつて筆者が開発に関与した「転倒防止」デイサービスhttp://www.best-kaigo.com/business/library/

は、介護予防リハビリデイサービスというイメージではなく、重度の要介護の方にも運動系の機能訓練サービスを提供するというコンセプトで開発しました。

 

 そのため、お風呂を設置し、時間も一般的なリハビリデイサービスの2部制でなく5-7時間の1日サービスの提供としています。

 

 実は、要介護の高齢者にとっては、週2日、デイサービスに来て、5時間程度椅子に座っているだけで相当な体幹のトレーニングとなり、脊柱起立筋等の強化に繋がります。

 

 体幹の強化はそのまま自宅での生活の維持向上に結び付きます。

 つまり、要介護の高齢者にとってはデイサービスに来て座っているだけで、機能訓練になるのです。

 

 また、運動もリハビリデイサービスのようなマシーントレーニングをしなくてはならないと思ってしまいますが、実際は椅子からの立ち上がり運動だけでも十分なのです。

 逆に言えば自宅でもできる簡単な運動をデイサービスで覚えてもらい、自宅でも行うよう働きかけるのです。

 

 機能訓練計画はそのようなことを計画的に提供していることを説明できればそれでOKであると考えます。

 

 そう考えれば、機能訓練が義務化されたとしてももそれほど怖くはないとおもいます。

 ほとんどの高齢者にとって下肢筋力の維持向上のための運動は有効です。そこをベースにして、個別の利用者にマッチしたプログラムを作ればよいと思います。

 

 

総合的な栄養管理は誰もやっていない

 

 現在の日本の医療福祉制度では、高齢者の食生活を管理する仕組みは適切に整備されていません。

 

 老人ホームなどであれば食事の管理は行き届いていますが、在宅での食事の管理は手付かずの状態でしょう。

 

 特に介護予防の段階での食事管理は誰も介入できている状況ではなく、包括による基本チェックはあっても、何をどのくらい食べているかまでは誰もきちんと見ていません。

 

 最近になり、血中アルブミン濃度など、高齢者のタンパク質摂取不足が注目され始めていますが、介護保険制度の発足時は高齢者の栄養管理がどうあるべきかの方向性が明確でなかったと考えます。

 

 そのため通所介護の栄養改善加算も管理栄養士による専門性の高い加算となり、取得している事業所があまりありません。

 

 

通所介護での総合的な栄養管理は困難

 

 現状では、在宅高齢者が何をどれぐらい食べており、どのような栄養素が不足しているかを調べるのは、ケアマネージャーの仕事でしょう。

 

 ケアマネジメントにおける総合的な栄養管理の在り方が確立していない現状では、通所介護での栄養管理をどのようにしていくかは考えられない状況ではないか思います。

 

 従って、次期改正で栄養改善加算が改正されるとしても、多くの通所介護事業所には影響がないような気がしています。

 

 しかし、機能訓練面から考えると、タンパク質の摂取量は重要です。

 筋力の維持向上に熱心な通所介護事業所の中には、運動後に、必須アミノ酸(タンパク質)飲料を提供している事業所もあります。

https://www.ajinomoto.co.jp/nutricare/public/products/amino_care40/

 

 前述の「転倒予防デイサービス」でも、体力の維持向上のためにタンパク質の摂取を利用者に勧めています。

 

 筋力を維持向上させる面での栄養管理の取り組みは今のうちから行っていくべきではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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