実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その3

 

 

 

6 モニタリング(評価)

 

 基準上、モニタリングは介護予防(総合事業)では必須です。

 要介護者の訪問介護の場合は、基準ではモニタリングが必須とはなっていませんが、訪問介護計画書に、短期目標と長期目標を記載している以上、これについて達成度を評価する必要があります。

 ここでは予防と介護で分けて説明いたします。

 

 要介護の目標達成度評価

 

 要介護の場合、モニタリングというよりも、「目標の達成度評価」と言った方が良いでしょう。

 目標の達成度評価表などの様式は特に決まりはないのですが、区市町村によっては訪問介護計画書に評価欄が設けられていて、そこで評価するようになっている場合もあります。

 自治体から様式を提示されていない場合は任意様式で評価をしておくと良いでしょう。

 その場合は以下の情報を記載するようにしてください。

 

目標の達成度評価表に記載する基本的な内容

 ① ご利用者の基本情報

 ② 評価年月日

 ③ 評価者名(基本的にはサ責)

 ④ 短期目標(訪問介護計画書に記載してあるもの)

 ⑤ 短期目標の達成度評価

 ⑥ 長期目標

 ⑦ 長期目標の達成度評価

 ⑧ 計画の見直しの必要性

 ⑨ ご本人の満足度や意向

 ⑩ ご家族の満足度や意向

 ⑪ 事業者情報

 

 もちろんこれらの内容を訪問介護計画書に記載できるようにしておいてもOKです。

 ⑨⑩の満足度はチェック方式で良いでしょう。実はこの満足度の評価は予防では必須項目になっています。

 

 なお、この目標達成度評価は担当ケアマネージャーに報告する必要がありますので、その辺を踏まえて作成したほうが良いかと思います。

 ケアマネージャーによっては「サービス状況報告」を依頼してくる場合があります。短期目標の評価をしたら、この「サービス状況報告」と一緒に送れば良いと思います。

 「サービス状況報告」を依頼してこない担当ケアマネージャーに対しても評価をしたら本評価表を提出するべきです。

 

 要介護のモニタリングは規定がしっかりないために、業務上混乱しやすい部分です。次に説明する予防のモニタリングと混同しやすく、ケアマネへの報告業務のやり方にも関係してきます。

 評価は毎月する必要はありません。あくまで短期目標の評価期間で適切に評価すれば良いでしょう。予防のモニタリングと混同して毎月評価をしている場合は業務量が増えるだけですから整理しましょう。

 

 

 予防のモニタリング

 

 介護予防・日常生活支援総合事業に変わってから、業務のやり方が変わっている部分もありますが、従来の介護予防訪問介護(要支援者に対する訪問介護)の基準は変わりがありませんので、それを踏まえてご説明します。

 

 予防のモニタリングのチェックポイントは以下の通りです。

 

 ①サービス提供責任者は、介護予防訪問介護計画に記載したサービスの提供を行う期間が終了するまでに、少なくとも1回は、当該介護予防訪問介護計画の実施状況の把握(「モニタリング」)を行う。

 ②サービス提供責任者は、モニタリングの結果を記録し、介護予防支援事業者に報告しなければならない。

 ③モニタリングの結果を踏まえ、必要に応じて介護予防訪問介護計画の変更を行う。

 ④介護予防支援事業者にサービス提供状況等を月に1度報告しなくてはならない。

 

 ①と④は基本的には違うものです。

 ①は「提供期間」中1回行って作成すればよいものですが、④は毎月作成しなければなりません。

 ①の様式については自治体の様式がある場合が多いですが、④については様式が特にありません。ファックス送信表に状況を記載して送るだけでもOKです。

 予防については基本的に地域包括の指示に従えばよいのですが、予防のやり方を踏襲して、要介護の方も同じようにやると、無駄な仕事が増えてしまいますので注意しましょう。

 特に毎月の状況報告は要介護の訪問介護では必須ではありません

 

 要支援では要介護化の予防が最重要課題ですから、きめ細かいモニタリングと状況把握が必要になります。しかし、要介護の場合はご利用者により状態は様々ですので、状況把握の頻度も一定ではありません。

 状態が安定しているご利用者に関しては、毎月状況報告を行う必要が無い方もいらっしゃるでしょう。

 

 

7 手順書(研修資料等として必須)

 

 手順書はサ責が訪問業務を行っているような、小さな事業所では作っていない場合もあるかもしれません。

 指定基準上必ず作成しなければならないものではありませんが、研修資料もしくは業務マニュアルとしての位置づけもありますので、作成すべきであると考えます。

 

 各事業所の運営規定には、職員研修の項目があると思います。基本的に事業者は、どんな形であれ職員研修を実施しなければなりません。

 手順書はスタッフへの研修実績を証明する資料になります

 また、事業所の業務の質を評価する上で、マニュアルの整備状況が評価されますが、手順書がしっかり整備されている場合は、それを業務マニュアルの一部として評価することができるできます。

 

 手順書は先に述べた「老計第 10 号 」訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等についてを参考に作成すると良いと思います。

 

 

 次回はケアプラン関係について説明します。

 

 

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その2

 

 

 前回の続きです。

 

4 被保険者証と負担割合証は原本確認(必須)

 

 介護保険のサービスを受けるには被保険者証と負担割合証をサービス事業者に提示する必要があります。これは原本を見せる必要があり、サービス事業者も原本で保険証と負担割合証を確認する必要があります。

 

 この原本を確認した証拠として、コピーなどの写しを保存しておきますが、その際、その写しに「○月〇日 原本確認 確認者氏名」と記載すると良いでしょう。

 日付はサービス提供日前が好ましいですが、多少ずれていてもしようがないでしょう。

 

 コピーなどをいつとるかですが、大事なものなので勝手に預かってコンビニなどでコピーしてくるのも少し憚れます。一番良いのは、スマホなどで写真を撮り、事業所に戻ってプリントアウトする方法でしょう。

 写真を撮った日付などが入るようにしておけばより良いかもしれません。サービス担当者会議や初回サービス時にしっかりと確認するのがベターであると思います。

 

 また生活保護の方の介護券ですが、これをご利用者ファイルにファイリングすると量が多くなり一杯になってしまいます。介護券は年度ごとに専用ファイルにファイルしておく方が扱いは楽だと思います。

 介護保険の実地指導の場合、生活保護の介護券を詳しくチェックすることはあまりありませんから、別ファイルでも大丈夫です。ただし、保存年限は同様にサービス終了後2年ですので、ご留意ください。

 

 

5 訪問介護計画書(必須)

 

 最近では介護ソフトなどで訪問介護計画書を作成することができます。しかし、フォーマットが気に入らなかったり、自治体から推奨するフォーマットが出ていたりするとなかなか使いにくいものです。

 

 訪問介護計画書に決まった様式はありませんが、必ず記載していなければならない項目があります。それらが揃っていればどんなフォーマットのものを使っても原則構いません。

 必須項目は以下の通りです。

 

① 計画書の作成者の氏名、作成年月日

 作成年月日は必ずもとになるケアプランの作成日より後か同日でなければなりません。

② 利用者情報等(氏名、性別、生年月日、要介護認定日、要介護度等)

③ 生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

 ケアプランの2表にあるニーズです。訪問介護を利用する理由に該当するところのニーズを転記します。ただし、ケアマネージャーの力量によってあまり適切でない表現もありますので、その場合は実態に合わせて少し改変しても構わないかもしれません。

④ 援助目標(長期目標、短期目標)

 こちらもケアプランの該当部分を転記しましょう。

⑤ 長期目標、短期目標の期間

⑥ ご本人及びご家族の意向・希望

⑦ 具体的援助内容

 以下の記載内容がコンパクトにまとめてあるフォーマットだと使いやすいかもしれません。

 1) 「サービス1」「サービス2」

 援助内容の違い、曜日・時間等の違いによって、「サービス1」「サービス2」などと区

分して記載します。

 2) サービス区分

 これについては厚生労働省から「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」という通知が出ており、この項目に合わせて記載することが求められています。

 この文書は訪問介護サービスの種類や段取りを整理したもので、排泄や入浴介助などの手順を詳しく列挙していますので、訪問介護サービスのマニュアルとしても機能します。

 後ほど説明する手順書の素になるものですので、訪問介護事業者は必携の文書です。

 

訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について

 

 3) サービス内容

 サービス区分に応じたサービス内容を具体的に記載します。例えば、区分が「排泄介助」である時は、内容として、「トイレ利用」、「ポータブルトイレ利用」、「おむつ交換」などの具体的な内容を記載します。

 また、サービスの提供方法もあわせて記載できれば、利用者にとってわかりやすいものになるでしょう。

 4) 所要時間

 サービス内容に記載したサービスを提供する時間です。

 5)留意事項

 各サービス提供に当たり留意することを記載します。

 6)サービス提供曜日

 7)サービス提供時間

 8)算定単位

 「身体1」「生活2」「身体2生活1」など

⑨週間予定表

 「⑦ 具体的援助内容」で週間の予定がわかればこれは必要ありません。

⑩ 説明者・説明日

 計画書の内容を説明した担当者の署名と年月日を手書きで記載します。様式としては空欄にしておけばOKです。

⑫ 利用者又は家族の同意欄

 利用者又は家族が計画内容を確認し同意をした旨の署名欄です。本人の署名捺印が有れば家族のものは必要ありません。

⑬ 事業所情報(事業所名、管理者名、住所、電話など) 

 

 堺市が作成した「訪問介護計画書作成の手引き」がありますので参考にしてください。

訪問介護計画書の作成の手引き

 

 

介護保険で提供できないサービスについて

 

 これは必須ではありませんし、重要事項説明書に記載するものですが、念のために訪問介護計画書の裏などに記載し、利用者や家族に確認してもらうのも良いかもしれません。

 

以下の援助は介護保険の生活援助では提供できませんのでご了承ください

(平成12年11月16日 老振第76号 厚生労働省通知)

 

1.「直接本人の援助」に該当しない行為

  主として家族の利便に供する行為又は家族が行うことが適当であると判断される行為

   ・利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し

   ・主として利用者が使用する居室等以外の掃除

   ・来客の応接(お茶、食事の手配等)

   ・自家用車の洗車・清掃 等

 2.「日常生活の援助」に該当しない行為

  [1]訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為

   ・草むしり ・花木の水やり ・犬の散歩等ペットの世話 等

  [2]日常的に行われる家事の範囲を超える行為

   ・家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え

   ・大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ

   ・室内外家屋の修理、ペンキ塗り

   ・植木の剪定等の園芸 ・正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理 等

 

次回はモニタリングや手順書などについて説明します。

 

 

実地指導が来る前に 訪問介護業務の流れを整理する その1

 

 

 お客様からのお問い合わせが多いのでコンプライアンスを踏まえたうえで、実地指導などで指摘を受けないような、訪問介護事業所の業務の流れを整理したいと思います。

 

 

無駄な業務を減らす

 

 運営基準上、必ずやらなければならないことと、必ずしもやらなくてよいことがあります。またどの程度やるのか、頻度や詳しさなども業務によっては様々であり、わかりにくい部分でもあります。

 

 そんなに一生懸命にやらなくても良い業務に時間を割いてしまって、本来やらなければならない業務が疎かになっているケースも見受けられます。

 

 この仕事はどの程度しっかりやらなければならないのか、その辺のポイントがわかりにくいという声もありますので、そのあたりを整理してできるだけ無駄な業務を減らせるようにしたいと思います。

 

 なお、各種書類のひな型はネットに沢山ありますので、これから述べるポイントを踏まえて使いやすい物を探してください。

 

 

新規ご利用者の受け入れ

 

 新規受け入れの際に必ず行うべきことと、必要な書類を整理して説明します。

 

1 サービス申込書(必須)

 サービスの申し込みは原則、本人が事業所に申し込まなければなりません。利用者にはサービス業者の選択権があります。これは介護保険法の理念の一つであり、非常に重要な要素です。

 申込書は利用者が自らの意思でサービス事業者を選択した証の一つですので、ファックスでも良いですからしっかり貰っておきましょう。

 もし、事業所で使っている申込書の「申込者欄」がケアマネージャー名になっているようでしたら「ご利用者名」に修正してください。申込者はあくまで利用者であり、ケアマネージャーが勝手に申し込んではいけないものです。

 なお、申込書に基本情報をしっかり記入してもらえば、アセスメント情報の収集に役立ちます。

 

 

2 契約書・重要事項説明書(必須)

 

 介護保険制度の重要な二つの理念を具体化している書類ですので、とても重要です。

 

 ① 利用者は契約によりサービスを利用する

 ② サービス事業者は利用者にサービス内容を説明し、同意を得てサービスを提供する

 

 それぞれの内容についてはここでは詳しく説明しませんが、自治体によってローカルルールがある場合があります。また、都道府県が基本フォーマットを提供している場合も多いので、事業地の様式を使うようにしましょう。

 場合によっては、区市町村の担当者に内容を確認してもらっても良いかもしれません。

 

 注意点として、古い様式を使っている場合、法令の改正などによって内容が不適切になっている契約書や重要説明書があります。そのため時々内容を更新しておく必要があります。

 

 基本的には介護保険法が改正する際に内容を更新するようにしましょう。報酬改定や新しいサービスの追加があったりしますので、原則3年ごとに見直す必要があります。

 3年以上同じフォーマットを使っている場合は一度内容をチェックした方が良いでしょう。

 

 なお、個人情報の利用に関する同意は本人と家族の両方から取らなければなりません。時々、本人からしかとっていない場合があります。

 

 

3 アセスメント(必須)

 

 運営基準上サービス事業者は、利用者の「心身の状況」を把握してサービス提供をしなければならないことになっています。

 つまり、ADLなどの状況をアセスメントしろということです。

 

 しかしながら、サービス提供開始時にアセスメントをするのが難しい場合があります。

 介護保険制度では各介護サービスがアセスメントしなければなりませんから、利用者が介護保険サービスを利用しようとした時、各事業者からアセスメント攻めに会ってしまうことがあります。

 

 かといってケアマネージャーが行ったアセスメントを貰う訳にもいきません。なかには参考に自分の行ったアセスメント情報を提供してくれるケアマネージャーもいますが、それでも事業者が独自にアセスメントをすることは必須になります。

 

 

アセスメントはいつやるのか

 

 アセスメントのタイミングとしては、サービス提供担当者会議の際ではなく、サービス調整や初回訪問の時が良いでしょう。

 

 サービス調整の際には、ケアプランに書かれたサービス内容を居宅において具体的に確認していきます。その際にADLやIADLの確認は必ず行いますので、メモなどでそれを把握しておきます。

 サービス開始時は契約や重要事項の説明などやらなくてはならないことが沢山あります。

 また、外部の人たちがたくさん利用者の家に来ますので、本人や家族もストレスを感じて疲れている場合が多いです。ここでアセスメントによる質問攻めは憚られるものでしょう。

 

 従って、利用者の前でアセスメントシートにチェックするようなことは避け、事務所に戻ってアセスメントシートに記載していくやり方が良いと思います。

 

 

アセスメントシートはすべて埋める必要は無い

 

 アセスメントシートにはアセスメントを行った日を記載しますが、必ずしもその日にすべての情報を把握くしなければならない訳ではありません。

 また、アセスメントシートをすべて埋める必要もありません。利用者によっては必要無い情報もあります。例えば、家族構成図や居宅内の図面なども必要に応じて作成すれば良く、必ず作らなければならに項目ではありません。

 

 最低限アセスメントで必要な情報は以下の情報です。

 

 ①アセスメント実施年月日(最初に状況把握を始めた日)

 ②アセスメント実施者(サ責)

 ③基本情報(氏名・年齢・要介護度など)

 ④ADL

 ⑤IADL

 ⑥疾病関係情報

 ⑦本人や家族の意向

 

 

 アセスメントシートは上記の内容が記載できればどんなものでもOKです。

 以下は日本介護福祉士会のものです。集めなければならない情報が沢山ありますが、これらすべてを揃えなければいけない訳ではありませんのでご留意ください。

 http://www.jaccw.or.jp/katsudo_reports/yoshiki.php

 

 

次回は被保険者証や計画書などをご説明します。

 

 

混合介護はなぜ導入されるのか

 

 

 東京都豊島区は、介護保険と保険外サービスを組み合わせる「混合介護」のモデル事業を来年度から始めると発表しました。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDE08H02_Y7A200C1PP8000/

 これは、国家戦略特区の制度を活用し実施するもので、介護保険サービスと保険外サービスを一体的に提供する取り組みです。

 

 現在でも訪問介護や訪問看護では自費サービスと保険サービスを組み合わせて提供することができます。混合介護はこれと何がどのように変わるのでしょうか?

 

 今でも、身体介護を30分利用した後に、本来はできない庭の掃除を15分だけしてもらうとか、家族の食事も準備してもらうなどの自費サービスの組み合わせは可能です。

 筆者の経験したケースでは、介入時、ごみ屋敷状態で、その片づけを自費でしたりする場合もありました。

 

 ただ、多くが一時的なサービス提供で、継続的なものは少ないといえるでしょう。

 確かにお金持ちのご利用者の場合は、継続して自費サービスを利用するケースはあります。しかし多くの方が、保険外サービスは最低限の利用というイメージがあります。

 

 行政等の指導では、自費サービスの契約を別途結んで、料金等を明確に説明し同意を受けてサービスを提供するよう指示されています。確かに別に契約を結ぶなどの手間がありますので、このあたりの事務が一体化されてくれると効率化はされるでしょう。

 

 

なぜ豊島区が取り組むのか

 

 混合介護はもともと公正取引委員会が、介護サービス事業にもっと競争性を持たせるべきだという提言から検討が始まりました。

 医療分野ではすでに混合医療が進んでいます。

 その背景には利用者の利便性の向上や、事業者の収入機会の増加、介護職員の処遇改善につながるという見方があるからです。

 

 また、前述の豊島区のような都心の自治体では介護職不足が、地方に比べ深刻です。そうした人材確保の目論見もあるのではないでしょうか。

 なにしろ都心はアルバイトでも他の地区と比べ賃金が高いため、介護職の賃金レベルではあまり魅力がなく、担い手が集まらないという問題があります。

 

 これは、そもそも介護報酬の算定そのものが都心に不利に働いているからです。同じ23区なのにもかかわらず、例えば足立区や葛飾区といった周辺区と単価が変わりません。

 さらに都心は不動産物件の賃料も高く、収益性を考えた場合、介護事業経営には不利です。

 

 

背景には介護サービスの不足危機があるかもしれない

 

 都心では介護サービス不足が進んでいくと考えられます。

 豊島区でも秩父市と提携して特別養護老人ホームの設置を進めています。用地確保が難しい都心区では区外特養の整備は普通になってくるかもしれません。

 また、地代が高いため有料老人ホームやデイサービスも足りなくなる可能性があります。

 

 人材は集まらない、施設などのサービスも足りなくなるという危機感はあるでしょう。

 都心区の自治体は2025年以降を見据えて、介護人材と介護サービスの確保に早急に取り組まなければいけない現状があると思います。

 その対策の一環として、収益性の高い混合介護モデルを導入しようとしているのでしょうか。

 

 

富裕層向けサービスとしての可能性

 

 都心区の区外特養は低所得者向けの対策ではないでしょうか。

 一方で住民税を沢山払ってくれる富裕層高齢者の都心区への転入を促す方策は十分考えられます。

 

 富裕層と言っても大企業年金を夫婦でもらい、資産収入もそこそこあり、老後資金に余裕があるような高齢者のイメージです。

 団塊の世代の多くが、23区外のいわゆるベットタウンに居住していることが多いかと思います。なにしろこの世代の人たちが多く家を購入した1980年代の場合、都心に住むことは難しかったと思いますから。

 その中で老後のお金に余裕がある人は都心のマンションなどへの移住を考えている人も多いと聞きます。

 

 子供が別居になって広い家に夫婦で二人暮らしのようなケースの場合、家は築40年近くになりますから、住み替え時期と考えても良いでしょう。

 だとすると、「都心の便利な場所に2LDKぐらいのコンパクトなマンションを購入し暮らす方が良いのではないか」と、考えている人は多いかもしれません。

 また、埼玉や千葉では医師不足・病院不足が深刻な地域も多く、老後のケア体制に不安もあるようです。

 先日、東京都荒川区で埼玉県越谷市の救急車がサイレンを鳴らしって走っているのを見て、少しゾッとしました。

 

 サービス付き高齢者住宅でなくても、ある程度バリアフリー化したマンションであれば、一軒家よりも老後の生活は楽でしょう。

 こうした富裕層高齢者に向けた生活支援サービスとしての混合介護は十分考えられるかもしれません。

 

 

月ぎめ包括料金の混合介護はできないか

 

 実際の豊島区モデルがどのようになるかわかりませんが、もし可能なら月ぎめの包括料金化できると経営サイドとしても非常に有効だと考えます。

 

 一つの例として、小規模多機能居宅介護があります。

 月額料金なので、はっきり言ってしまえば、庭の掃除をしても運営基準上はそれほどガミガミ言われない部分もあります。実際には認知症のご利用者と一緒に掃除するなどのケアにはなると思いますが、包括料金であればあまり細かいことを気にせずにサービスを提供できる実態があります。

 

 ケアプランで週何時間、月何時間という枠組みを決めて、その時間内であれば多様なサービス提供が可能であるような仕組みです。

 もちろん、現在の報酬よりも収益が高くなるような報酬設定をしてもらわなければ意味がありませんが、月額制にした場合、給付管理などは大幅に効率化できます。

 もしかしたら、月ぎめの契約では自己負担分を多めに徴収できる仕組みでも良いかもしれません。

 そうすればより、柔軟で緻密なサービス提供が可能になるでしょう。

 

 

 

 

介護福祉事業開業ガイド(他事業からの参入編)その2

 

 

 他業種から介護福祉事業に参入しようとした場合、どのような事業を手掛けていけば良いのか悩むところだと思います。

 今回は沢山ある介護福祉事業のうち、どのような事業が参入しやすいのか。さらにメリットやデメリット、留意点について代表的なものをご紹介します。

 

 

訪問介護

 

 訪問介護事業は最もイニシャルコストが安く、かつニーズも高い事業です。そのために介護事業を始める際には、最初にお勧めしたい事業です。10坪ほどの事務所があって有資格者が確保できれば開業できます。

 

 資格は既存の従業員でも研修を受ければ取得できます。また、経験者を雇用すれば仕事も問題なくこなせると考えます。

 

 また、指定訪問介護事業はそのまま、指定障害者居宅サービス事業を兼業できます。障碍者向けの訪問介護事業ですが、こちらも将来的に非常にニーズが高い事業ですから、お客様が絶えない状況です。

 

 現在、訪問介護事業所では人手不足でお客様の要望に応えられない事業所も多くなっており、開業後すぐに経営が軌道に乗る事業所が多いといえます。

 

 

訪問看護

 

 こちらもイニシャルコストの低い事業ですが、看護師を確保しなければなりません。

 看護師が確保できれば訪問介護と一緒に開業することでシナジー効果があります。

 訪問介護は介護以外に医療保険の業務も可能です。

 

 やはり将来的に非常にニーズの高いサービスであり、ご利用者が途絶えることは無いでしょう。

 医療費の財政負担を減らしていきたい我が国にとって、在宅診療は、今後大きく伸びるサービスです。

 

 また、地域に住んでいる主婦の看護師さんが子育てをしながら働く場所として最適な事業です。そうしたパート看護師をうまく確保できれば、事業は順調に伸びるでしょう。

 

 ただし、訪問看護は病院勤務と異なり、一人で患者さんのご自宅を訪問してサービスを提供しますので、病院でチームでしか働いたことの無い看護師さんにとっては少々ハードルの高い部分がありなす。労務管理の中でそうした不安を払しょくできる工夫が必要になります。

 

 訪問系の事業はスタッフの仕事に対する不安や悩みを解消できるかどうかが人員を定着する上での大きなポイントです。

 

 

通所介護(デイサービス)

 

 介護業界を知らない一般の方にとって通所介護は開業しやすい事業というイメージがあったようです。事実、少し前まで、未経験の事業者が沢山参入してきた経緯があります。

 

 その代表がお泊りデイサービスで、空き家を改造して認知症の方の宿泊を受け入れられる通所介護でした。

 行き場のないお年寄りの受け入れ場所として一時脚光を浴びました。

 事業としても毎日宿泊利用するご利用者がいると、宿泊費をとらなくても、介護給付だけで一人当たり30万円以上の売り上げがあるので、誰でも簡単に開業でき、すぐに経営が軌道に乗るとして、フランチャイズ化もされもてはやされました。

 

 しかし、介護の質や夜間の管理体制などに問題が多く、行政から連泊に制限が出されたり、スプリンクラーなどの設備投資の追加や、地域によっては開業が禁止されたりしたために、いまではほとんど新規開業は見られません。

 

 通所介護は訪問介護などに比べればイニシャルコストが高く、最低でも1500万円程度の設備投資が必要な事業です。

 

 最近の低金利で融資が受けやすいために、リハビリデイサービスなどで、他産業からの参入も多いのですが、地域によっては供給過剰気味であり、小規模多機能などの他のサービスとの競合や介護給付費の減額もあり、最初に手掛ける事業としてはハードルが高い事業と言えます。

 

 自社所有で100平米程度の床面積を低コストで確保できる場合など、条件が合えば検討しても良いでしょう。しかし、その場合でも、訪問介護事業所を併設する等して、通所介護だけを単独で開業しない方が良いと考えます。

 

 ただ、比較的スタッフのが確保しやすい事業ですので、資金や地域ニーズなどとの関係を考慮して検討しても良いでしょう。

 

 

有料老人ホーム

 

 資金が潤沢であり、会社に体力がある場合は新規事業として検討する事業者もあるかもしれません。建設業や不動産業から有料老人ホーム事業に参入した会社も多く、最近ではソニーなど大企業も参入しいます。

 

 筆者としては、有料老人ホーム事業は介護福祉事業というよりも、老後の生活を支えるサービス業としての視点が必要だと考えています。

 

 高級な老人ホームは自費負担も大きいので、お客様が限定的になります。また、逆に住宅型などの場合、低所得者(生活保護者を含む)をターゲットにした事業形態もあります。

 資金力だけでなく、ある程度、高齢者のニーズをマーケッティングする力が必要になります。

 

 また、都心部では介護保険予算の負担が大きいため、包括型の老人ホームの開業を区市町村が制限している場合があります。都心部で在宅生活ができなくなった高齢者が郊外の有料老人ホームに転居するパターンも多く、そうしたニーズを把握しなければなりません。

 

 さらに、サービスの質の管理が重要です。虐待などの問題が発覚すると、退所者やスタッフ離れが起こり事業が立ち行かなくなる場合があります。人手不足の中、スタッフの業務管理・労務管理を疎かにすると経営が困難になりやすいのもデメリットでしょう。

 

 

 次回も様々なサービスについてご紹介します。

 

 

スピリチュアルケアというサービス

 

 

死にゆく人に心の安らぎをもたらすサービス

 

 ターミナルケアサービスを提供する場合、死にゆく人の心のどのように安らぎをもたらしていくのか、訪問看護や介護の職員は悩むところです。

 

 欧米ではキリスト教を背景にしたスピリチュアルケアが、普通に医療介護サービスの中に組み込まれており、ターミナルケアのチームの中にはキリスト教関係のスピリチュアルケアの専門家が加わっていることが多いようです。

 

 日本人は無宗教の人も多いため、宗教哲学を背景にしたスピリチュアルケアがどの程度通用するのかわかりませんが、そろそろ現状のターミナルケアの中にスピリチュアルケアが適切に組み込まれるべきではないかと筆者は考えます。

 

 

日本のスピリチュアルケア

 

 日本のスピリチュアルケアは宗教哲学を背景にいくつかの団体で既に取り組みが行われており、日本スピリチュアル学会には仏教やキリスト教の団体が加盟し、実践的活動を行っています。

http://www.spiritualcare.jp/

 

 この日本スピリチュアル学会では、スピリチュアルケア師という現場で実際にスピリチュアルケアを提供する専門家を認定しています。

 

 1年程度のカリキュラムを履修し試験などに合格すると認定されるようですが、今のところこ各実践団体が独自のカリキュラムをつくり研修を実施してる状況のようです。

 

 ただ、この資格を持っていて、専門的なサービスを提供しても、現在のターミナルケアサービスの中には報酬はありませんので、多くの団体はボランティア的もしくは自費によるサービス提供になっているようです。

 

 

 

現状のターミナルケアでは未整備のサービス

 

 実際に死にゆく人のケアをした人であれば、どのように心安らかに死を迎えさせてあげればいいのか、何もわからずに取り組んでいることも多いでしょう。

 

 介護の研修でもスピリチュアルなケアの在り方は抽象的なものも多く、具体的な事例演習なども行われません。実際に現場でターミナルケアサービスを提供している介護職員は行き当たりばったりでサービスに取り組んでいるのが現状だと思います。

 

 

厚労省はどう考えているのか

 

 厚生労働省は看取りケア自体の重要性は認識していても、安らかに死を迎えていただくというサービスをどの程度重要と考えているのかよくわかりません。

 

 緩和ケアの検討会などでその必要性が委員から発言されていますので、必要性は認識しているかもしれません。

 

 社会コストの面では、施設や在宅でのターミナルケアは医療費低減の効果がありますから、積極的に推進したいのでしょう。しかし、スピリチュアルケア自体には社会コスト軽減効果が無いと感じているのでしょうか。

 

 しかし筆者は、スピリチュアルケアが介護サービスに適切に組み込まれることは、病院死を減らす効果があると考えています。

 

 

死に対する不安を和らげるのは医療の役割ではない

 

 死に対する不安が強くなると、精神状態や病状の悪化をもたらします。また、そうした不安定な患者を見て家族が不安に感じ、在宅での看取りをあきらめてしまったりします。

 結局、設備の整った病院での対応が必要になり、最後は病院で亡くなることになります。

 

 もちろんこのあたりの効果は今後、実証的な調査が必要になるでしょう。

 しかし、訪問診療における在宅ターミナルが医学的に多くの患者さんに可能になっているにもかかわらず、本人や家族の不安を和らげるケアが無いために、施設や在宅でのターミナルケアができなくなっている現状は確実にあると思います。

 

 

安らかな死をもたらすサービスは既に求められている

 

 筆者自身、両親を病院で看取っている経験上、病院で死を迎えることは、あまり安らかな死の迎え方ではないなと感じています。自分自身、あまりそのような死に方はしたくないと感じます。

 

 安らかな死をもたらすための精神的なケアの技術は既に訪問看護や訪問介護のスタッフに必要になっていると考えます。

 

 特に在宅ターミナルであれば、毎日のようにケアを提供し、ご本人や家族と会話をする訪問介護員には、現状の介護福祉士のカリキュラムレベル以上の専門的な技術が必要です。

 

 

専門的な技術教育の体系化が必要

 

 看取りにおけるやすらかで精神的に安定した状態をもたらすサービスをどのように提供したらよいのか、その専門的な技術教育をどのようにやるのか体系化が無ければなりません。

 

 すでに医学系の大学などで研究は行われていると思いますが、国としての方向性が出なければ現状は変わらないでしょう。

 

 宗教的な背景を持たなくてもそうしたサービスは可能なのか、名称にしてもスピリチュアルケアで良いのかもわかりませんが、早急に日本人にマッチした方法論が確立することが期待されます。

 

 

混合介護の可能性も

 

 筆者はそろそろ国としてこの分野の報酬の在り方を考えなければいけないのではないかと考えています。

 在宅ターミナルが増えれば増えるほどその必要性を訴える声は大きくなるでしょう。

 

 訪問看護や訪問介護事業所を経営する上でも、ターミナルケアにおけるスピリチュアルなサービスの提供をそろそろまじめに考えても良いと思います。

 特に自費のサービスとしての提供は今でも可能ですし、今後、混合介護の中での扱いも検討されるでしょう。