ケアマネ業務 改正により必要になった記録や書類

 

 今回の改正によりケアマネ業務にいくつかの変更点がありますが、具体的にどのような記録や書類が必要になるか整理してみました。実地指導などでチェックされる可能性がありますので早めに取り組んだ方が良いでしょう。

 特に追加業務が無いものは除外してあります。

 

平時からの医療機関との連携促進

 

【改正①】

 利用者が医療系サービスを希望している場合などは、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求める。また意見を求めた主治医等に対してケアプランを交付しなければならない。

 

【必要な作業】

 ①重要事項説明書の修正

 ②支援経過などに医師に意見を求めた記録、およびケアプランを交付した旨の記録

 

【改正②】

 訪問介護事業所等から利用者の口腔に関する問題や服薬状況、その他の状態について伝達を受け、主治医等に必要な情報伝達を行うこと。

 

【必要な作業】

 ①情報を得た旨の支援経過記録

 ②サービス担当者会議録などに、訪問介護事業所等にどのような情報が必要かを指示したという記録。

 

 

質の高いケアマネジメントの推進

 

【改正③】

 利用者や家族に対し、居宅サービス事業所について、複数の事業所の紹介を求めることが可能であることなどを説明すること。

 

【必要な作業】

 ①重要事項説明書の修正

 (注意!)この義務を怠ると、減算になります。必ず重説は修正しましょう

 

【改正④】

 利用者の意思に反して、集合住宅と同一敷地内等の居宅サービス事業所のみをケアプランに位置付けることは適切ではない。

 

【必要な作業】

 ①同一敷地内等の事業所のサービスを使う場合は、同意を得た旨の支援経過記録

 

 

障害福祉制度の相談支援専門員との密接な連携

 

【改正⑤】

 障害福祉サービスを利用する障害者が介護保険サービスを利用する場合、障害福祉制度の相談支援専門員と密接な連携に努める。

 

【必要な作業】

 ①相談支援専門員の情報把握(名前や所属・連絡先)

  ※相談支援専門員が関わっている場合は必須!

 ②情報共有など、連携して業務を行っていることがわかる支援経過記録

 

 

入院時情報連携加算の見直し

 

【改正⑥】

 入院中の利用者にサービスを開始する場合、利用者等に対して、担当ケアマネジャーの氏名等を入院先医療機関に提供するよう依頼すること。

 

【必要な作業】

 ①入院先医療機関に名刺などを渡して利用者に渡してもらう

 ②上記事実の支援経過記録

 

退院・退所後の在宅生活への移行に向けた医療機関等との連携促進

 

【改正⑦】

 

 ①退院・退所時におけるケアプランの初回作成の手間を明確に評価

 ②医療機関等との連携回数に応じた評価

 ③医療機関等におけるカンファレンスに参加した場合を上乗せで評価

 ④退院時の多職種からの情報収集を高く評価していく。

 

【必要な作業】

 ①上記の具体的な連携事実を支援経過に詳しく記録

  

 

 その他加算関係はそれぞれの要件の記録が必要になります。

 また、以下の事項や業務が追加されますが、それぞれ区市町村からの通知や指示を確認しましょう。

 ①生活援助中心型の訪問介護を多くケアプランに位置づける場合は、区市町村への届け出。施行は10月から。

 ②区市町村は必要に応じ、ケアマネジャーに利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、サービス内容の是正を促す。

 

【参考】新しい「重要事項説明書」の例(東大阪市)

https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000009039.html

 

 

 

虐待・身体拘束の実態について その3(虐待防止になる記録のとり方)

 

 

 今回は現場で身体拘束や虐待が起こらないようにするためにどのような取り組みが必要なのかを考えてみたいと思います。

 

記録は防衛手段

 

 前回、介護が事故や訴訟のリスクを抱えた仕事であることを述べました。

 まず、経営者や管理者がそのことを踏まえたうえで行動していくことが大事だと筆者は考えます。

 

 認知症の利用者が動き回るからと言って、身体拘束して事態を収拾しようとするよりも、動き回る状態でいかに介護するかを考えなければいけません。それにより転倒事故が起こったとしてもその事態を受け入れて、対応する方が事業へのダメージは少ないのです。

 

 しかし、それには条件があります。

 それは記録を適切に残しておくことです。

 適切な記録がなく事故が起こった場合、その事故の原因を行政や国保連などの第三者機関が客観的に把握することができません。結果としては事業者の責任が重くなってしまう場合もあります。

 

 裁判になった場合、記録による証拠が不確かであると、事業者にとっては不利になります。

 日頃から客観的な事実を記録に残し、第三者が見てすぐ理解できるようにしておけば、その事業所の記録は証拠としての信頼性が増します。結果、事業者にとって有利に働くことになります。

 

困難ケース記録が虐待を防止する

 

 介護記録は日々の仕事としてルーチン化しており、バイタルや食事・活動記録などは日ごろから記入することが習慣化していることと思います。

 これがまず前提となります。

 そうした日頃の記録の積み重ねが、事業所の記録の信頼性を高めますから、これらのルーチンワークを怠ってはいけません。

 その上で、事故の可能性がある利用者(例えば転倒の危険性があるのに勝手に動き回る利用者など)困難ケースの記録を取って行くことが大切で、これが虐待を防止する結果にもなります。

 

困難ケース記録のとり方

 

 安全の確保が難しい、又はなんらかの事故が予想される利用者に対してサービス提供をせざるを得なくなった場合、管理者などの判断により、日頃の記録とは別に、困難ケース記録を記入するようにします。

 

 様式は特にありません。白い紙や専用のノート(「困難ケース記録ノート」等)に記入しても良いでしょう。

 記録に必要な事項は以下のようになります。

 

 ①利用者氏名

 ②困難ケース記録を開始した経緯  

  ※なぜこの記録を取るようにしたのか。安全の確保できない、またはなんらかの事故が予想されることを具体的に書く。

 ③問題が発生した日時

 ④問題が発生した場所

 ⑤どのような問題が発生したのか

 ⑥対応方法

 ⑦対応者

 ⑧記録者

 ⑨事後の対応・経過(必要に応じて)

 ⑩写真などの証拠物件の存在(必要に応じて)

 

 この記録は当然ながら、外部に見せることを前提に書かなければなりません。行政やご家族が見ても信用してもらえるように、具体的に客観的に書く必要があります。

 介護者の主観や苦情じみた書き方は客観的な記録では無いので、第三者に対しては信頼性を損なう結果になります。

 

記録は正直に書かなければならない

 

 さらに、利用者の問題行動に対して職員が不適切な対応をしてしまった場合は、それも隠さず記録する必要があります。

 職員のミスは職員のミスとして別に対処すればよく、別に業務日報などにその事実を記載し、改めてその職員の指導を行うようにします。

 

 困難なケースですからすべての職員が適切に対応することは難しいことです。ミスが起こる可能性も高くなります。それを前提にサービス提供する腹積もりが必要なのです。

 

 最終的に、事業所がこの困難ケースに対して何とか対処しようとしている様子がこれらの記録から読み取れれば、記録は成功と言えます。

 

組織的な対応の重要性

 

 基本として虐待や身体拘束の誘惑にかられるようなケースが発生した場合は、まず事業所全体で対応するようにします。

 管理者や責任者はスタッフからのそのような情報発信に敏感でなければなりません。

 

「誰それ(利用者さん)がなかなか言うこと聞かなくて・・・」などというちょっとしたボヤキ発信を敏感にキャッチできるようにならなければならないのです。

 たとえば利用者の自室で一対一でサービス提供するような施設や訪問介護などの場合、そのスタッフが密室で何をしているのか分かりませんから、スタッフがケアに困難性を感じていたり、苦労している場合は早急に救援の手を差し伸べてあげる必要があります。

 それを放置しておくことで、虐待や身体拘束は発生します。

 

 困難ケースの記録を取ることで、介護職員の資質の向上に役立つことは言うまでもありませんし、事業所で話し合いながら対応することで、事業所のサービス能力も上がります。

 

 難しいご利用者はみんなで対応して、記録を取る。

 

 それにより安易な身体拘束や虐待は減らしていけると考えます。

 

 

 

 

虐待・身体拘束の実態について その2

 

 

スタッフが虐待や拘束だと思っていない問題

 

 身体拘束は、介護保険の指定基準上、

「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するための緊急やむを得ない場合」

 のみ認められています。

 いわゆる「切迫性」「非代替性」「一時性」の三つの要件を満たし、かつ、それらの要件の確認等の手続きが極めて慎重に実施されているケースに限られています。

 

<三つの要件を今一度確認>

◆切 迫 性

利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと

◆非代替性

身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと

◆一 時 性

身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること

 

 さらに「身体拘束廃止委員会」等のチームで検討、確認し記録しておくことが必要になります。

 多くの介護従事者は、こうした原則を研修などで教えられています。それにもかかわらず、グレーゾーンの拘束や不適切なケアが行われてしまうのは、それらの行為を拘束や虐待だとと認識できないからでしょう。

 

 

自分がされたら嫌なことをしないという感覚

 

 グレーゾーンや不適切なケアは、例えば、人であれば「自分がされれば嫌なこと」であるという、素朴な感覚が欠如しているところから生まれていると思います。

 この「嫌なことはしない」という感覚は、「介護する上で仕方がない」という感覚により覆い隠されてしまいます。また「安全のために」であるとか「人手が足りない」という感覚が優先してしまいます。

 介護や医療の現場では「身体拘束は、安全確保のためにやむを得ない行為である」という根強い考え方があります。

 

 利用者が勝手に動いて行方不明や転倒事故を起こすと困るので、車いすに座らせておく、あるいは自分で立ち上がれない低い椅子に座らせておく。利用者が立ち上がろうとしても、無言で肩を押さえ込むなどは、その施設の介護のあり方そのものが問われるべき行為でしょう。

 

 

家族が虐待を要請する

 

 一方で、家族が虐待的な行為を要求をする場合もあります。

 そうした家族との対応に疲弊した職員は、本来は利用者のために行うべき介護を、家族からの苦情がない介護に切り替えてしまいます。

 その結果、本人の安全確保という名目による身体拘束が横行することになります。

 

 デイサービスで、認知症の利用者の家族に「危ないので立たせないようにしてください」とお願いされたとします。

 認知症介護の知識が浅い介護者の場合、その要請を守ってサービス中に立たせないように努力してしまいます。

 

 また、身体拘束を許容する理由に、「本人もしくは家族の同意を得ている」ことをあげる施設が多くあります。しかし、家族の同意があることが拘束をしていい理由にはなりません。

 転倒や骨折、点滴やカテーテルを抜いてしまうことを心配し、また、職員に気兼ねをして家族自ら身体拘束を申し出るケースもあります。

 その場合も、施設は家族の希望を理由に身体拘束はできません。

 

 先ほどのデイサービスの例でいえば。「本人の意に反して椅子に座らせたまま、立たせないようにすることは、身体拘束にあたり虐待になります」と家族にきちんと説明する必要があります。

 その上で、身体拘束の三原則を説明し、介護職の責務であると理解してもらわなければなりません。

 

 

 

安全確保には限界がある

 

 それでも家族に

 「立って歩いて転倒して骨折したらどうするんですか?」と食い下がられた場合、

 「転倒しないようにケアします」「私たちは介護のプロなので転倒はさせません」ときっぱり言いましょう。

 また、そう言えるほどのプロ意識を持たなければなりません。

 それでも、転倒して骨折した場合は、素直にお詫びをして保険などで誠意のある対処をする覚悟が必要でしょう。

 

 椅子に座った利用者が立ち上がり、転倒して骨折した場合、どの程度、施設に管理責任を問われると考えますでしょうか?

 私の知る限り、人員基準や設備基準をきちんと満たし、不適切なケアを行っていないのであれば、民事や刑事で業務上の責任が問われたという話は聞いたことがありません。

 

 

リスクを内包した仕事であると腹をくくる

 

 介護や保育・医療では事故はつきものです。

 そのために保険に加入して仕事をしています。

 医師の10%が診断や治療ミスなどに関する訴訟を起こされた経験があるという調査があります。

http://economic.jp/?p=31020

 医師とはそうした訴訟リスクを内包した仕事なのです。

 医療ほどで無いにしても、介護もそのリスクを踏まえて仕事をする必要があります。

 

 原則は、利用者の尊厳は、身体拘束に優先するということです。

 「されたら嫌なこと」は利用者の尊厳を傷つけていますので、グレーゾーンの身体拘束も行ってはいけません。

 

 さらに、経営上のダメージを考えた場合、

 介護事故よりも虐待の発覚の方がはるかにダメージは大きいと言えます。事業を継続できなくなる場合も多いでしょう。

 

 そして、グレーゾーンの身体介護や不適切なケアを日常的に行っている事業所は、虐待に対する感受性が鈍くなっていますので、いずれ重大な事件を起こす可能性を孕んでいると考えるべきです。

 

 次回は身体拘束をしないための記録の在り方について考えます。

 

 

 

 

虐待・身体拘束の実態について その1

 

 相変わらず介護現場における虐待や殺人などのニュースが相次ぎます。

 

 施設などの虐待・身体拘束の実態について、平成29年 3 月、特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク介護相談・地域づくり連絡会より「身体拘束及び高齢者虐待の未然防止に向けた介護相談員の活用に関する調査研究事業報告書」が発表されました。

http://kaigosodan.com/web/wp-content/uploads/2017/04/3178381c5e8a416f86389cb92a65da74.pdf

 

 こちらは平成27年に全国の現在活動中の介護相談員 4,680 名を対象とした調査の結果です。施設介護現場における身体拘束や虐待の状況が赤裸々に報告されています。

 

 こちらで報告されている虐待や身体拘束の実態は、施設等の運営面で非常に参考になると思いますので、ピックアップしてご紹介します。

 職員研修などで活用いただければと思います。

 

 

虐待・身体拘束のグレーゾーン

 

 この報告書には、相談員たちが見聞きした身体拘束や虐待の中で、いわゆるグレーゾーンと考えられる、完全には虐待・身体拘束とは言えないが、場合によってはそれになりうるという状況の報告が多くあります。

 

 こうしたグレーゾーンの多くは、あまり意図的では無く、通常の介護業務として施設の中で日常化している部分があります。

 職員はそれが好ましくない行為だとわかっていない場合が多いようです。現場でこのような行為が見られる場合は是正するべきだと考えます。

 

 例を挙げると以下のような行為です。

 

  • 車椅子のタイヤの空気抜き。一杯入っていると走りすぎて危険であるので。
  • 体調不良の利用者の掛け布団の端を洗濯ばさみではさみ、鈴を付けている。
  • 動きが分かるように利用者(くつ・腕・椅子・掛け布団の足元)に鈴を付けている
  • すぐ立ち上がろうとする入所者の椅子にブーブークッションと椅子の背の足元に鈴とタンバリンがつけてあった。
  • 車イスの背もたれに、センサーが付けてある。立ち上がろうとするとセンサーが鳴り、職員が走って来て、座るようにうながしていた。
  • 転倒防止のセンサーが車イスについている。コール音もひんぱんに鳴り、人によりちがうメロディーの音量も高い
  • 利用者の居室外側のドアの取手がとりはずされている。
  • 出入口(玄関近く)に鍵をかけている。
  • 利用者のフロアーのドアに施錠がされており、開閉には暗証番号が必要であり、職員しか操作できない。
  • 認知棟の居室に他の利用者が入れないように、ベルトでドアをしばっていた。
  • ベッドから落ちたがナースコールの設備が無く、巡回も無かったため、朝まで床に転がっていた。
  • 夜間排せつの回数が多いと怒られ今は紙おむつを使用している。
  • いつもは個浴なのに文句を云う、うるさいからとの理由で2ヶ所ベルトの機械浴で入浴。

 

 

不適切な介護

 

 続いて、同じように虐待・身体拘束につながる可能性のある「不適切なケア」の実態について以下のように報告しています。

 

  • 動き出しそうな人には、低いソファに座わられる事によって自力では動けない体勢にしておく。
  • 毛布にカウベルのような、大きな鈴が毛布に付けてあった。夜中、用事があるときに音をならす。
  • 階段の入口に 2 重にソファを置いて使用しにくくしていた
  • 個室のドアに「のぞき窓」がついている。
  • 事務室から利用者の動きがわかるようにフロアーに監視カメラが設置されていた。
  • 目の前でどんぶりにハサミを入れうどんを切る
  • 認知症の方が、口を開けないからと、鼻をつまみ食事介助した。
  • 食事の介助をする際に言葉かけをせずに複数の利用者の口に順番に自動的にスプーンで食物を入れている。
  • 注射器のような物で、無理やり食事を口に入れる。
  • 食事の際、ごはんに薬を混ぜている。
  • 入浴後バスタオル1枚かけたまま廊下を移動。肌が、露出したまま。
  • 浴室前の脱衣室のドアを開けたままで着替えさせている。
  • 入浴時、裸の状態で順番を待っている。
  • 尿意はあるが、紙おむつをつけている利用者が「おしっこ出た」と訴えても「時間じゃないから…」と交換してくれない。
  • 「おしっこ」と職員にうったえるも「おむつをしているのだからそこにして下さい」と返答した。
  • 他の利用者が居るホールのベッドでのおむつ交換
  • トイレの願望がある入居者の方に「次は何時です」と言ってすぐにトイレに連れて行かない
  • トイレ介助の時、ドアを開けたままで、長時間、利用者を放置している。
  • 「夜は紙オムツを3枚もはかされて動けない。飲食は夕方6時から朝まで取れないからお腹は空くし喉は乾くし大変だ」との訴えがあった。
  • 利用者さんが職員に声をかけているが聞こえてないのか無視して何度も素通りしていた。
  • 足の爪が伸びて隣の指にくい込んでいた。利用者が痛いと訴えるまで放置。
  • 「ちょっとまっててね」といったまま対応しない。
  • 車イスを押すスピードが速い。
  • 車椅子歩行の人が多く、車椅子から椅子への移乗はほとんどしない。
  • 食後の口腔清拭入れ歯を出し乱暴にいきなりゴム手にガーゼをまき、清拭した。
  • 男女が同室。
  • 廊下の手すりにエプロンを干してあり、利用者さんが手すりを安心して使えない。
  • トイレの介助時新人指導の為と4人程で介助。
  • 早朝トイレ誘導の為4時前に起こされる。
  • 車椅子(2台)を一緒に両手で移動して、部屋から食堂に移している。
  • ショートステイの人で、家では自立歩行でトイレに行けるが、施設では車椅子が基本で、これでは歩けなくなる、と訴えがあった。

 

 職員は、利用者の安全を考えてであったり、家族から同意を受けてこのような行為を行っている場合が多いようです。しかし、いくら家族から同意を受けているとはいえ、このような行為は利用者の尊厳を傷つけていると考えなければなりません。

 

 次回はもう少し詳しくこの問題について考えます。

 

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その6

 

 

 

ご利用者ファイルの工夫

 

 ご利用者ファイルにどのように書類関係を整理すればよいのか、一つの例を示します。

 行政が見に来た時だけでなく、担当外のヘルパーなどが見てもわかりやすいようにファイリングしておくことが大事です。

 各種資料のファイリングの順番と内容及びポイントは以下の通りです。

 

 
要介護  
インデッスク 内容及びチェックポイント
1 連絡調整記録 メモなどもクリアポケットなどに逐一入れる
2 状況報告 ケアマネージャー等への状況報告
3 利用申込 FAXでもOK
4 保険証 原本確認の月日と確認者印を含む
5 アセスメント 基本情報を含む
6 ケアプラン 1表から4表 サ担録・照会文書を含む
7 契約書 緊急時の連絡先未記入に注意
8 重要事項説明書 料金改定時の別紙同意書含む
9 訪問介護計画書 要本人印
10 手順書 ヘルパーへの指示書などを含む
11 その他資料 行政への報告書や苦情関係などその他の資料
12 自費関係 自費契約書など自費関係書類
     
要支援  
インデッスク 内容
1 連絡調整記録 メモなどもクリアポケットなどに逐一入れる
2 状況報告 予防は毎月報告が必要
3 利用申込 FAXでもOK
4 保険証 原本確認の月日と確認者印を含む
5 アセスメント 基本情報を含む
6 ケアプラン 1表から4表 サ担録・照会文書を含む
7 契約書 緊急時連絡先は別に作成
8 重要事項説明書 料金改定時の同意書含む
9 訪問介護計画書 要本人印
10 手順書 ヘルパーへの指示書などを含む
11 モニタリング 定期評価を含む
12 その他資料 行政への報告書や苦情関係などその他の資料
13 自費 自費契約書など自費関係書類
  ※ 各書類は最新のものがトップに来るように
  ※ 緊急連絡表を別に作っている場合は、ファイルの最初に

 

 

 誰でも書類を適切な場所にファイリングできるように、この表を書庫などに張っておいたり、各ファイルのトップに綴じておいても良いでしょう。

書類を綴じる場所がバラバラになると、必要な書類があるのかどうか確認することが困難になってしまいます。結果、書類の整備自体が疎かになり、実地指導で指摘を受けるようになるでしょう。

 

ファイリングは日常業務の中で担当を決めてルーチン化する等、いつでも整理できる体制にしておきたいものです。

 

 

インデックスの作成

 

 ファイリングの際には、インデックスを貼っておくことが大切です。

 インデックスのおすすめは以下のようにパソコンで大量に作成印刷できるものです。

 

  コクヨ「合わせ名人」http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/awase/

 専用ソフトでラベルやインデックスを作成できる。使い方が少しわかりにくいが、慣れてくると非常に便利です。

 余裕がある時に大量に作っておくと良いでしょう。

 

 

 なお、終了したご利用者の書類はインデックスは不要であると考えます。ファイルとインデックスの張られた仕切り用紙は使いまわして、板目紙などに綴じひもで綴じておけば良いでしょう。

 

 ファイルにご利用者名をテプラなどでせっせと作っている事業所も多いかもしれませんが、テプラは結構手間がかかります。

 背表紙のご利用者名は、エクセルなどで作ったご利用者名簿の名前の部分だけを拡大印刷してカットし、「替背紙式」という背表紙に紙を差し込めるタイプのファイルの背表紙部に差し込んだ方が簡単です。

「替背紙式リングファイル」

http://www.kokuyo-st.co.jp/search/1_detail.php?sid=100117035

 

 どうしてもテプラで作りたい方は、パソコンにつながるタイプのテプラを使えば、効率的ですが、少し値段が高いです。

キングジム パソコン接続用テプラ

http://www.kingjim.co.jp/products/tepra

 

 

保存年限について

 

 介護関係書類の保存年限は規定により、

・利用者関係の資料はサービス終了後2年。

・給付関係書類は作成から5年となっています。

 

 給付関係書類が5年になっているのは、国保連などが間違えて事業者に支払ってしまった報酬の債権としての返還請求権が5年となっているためです。

 

 ご利用者の訪問計画書やアセスメントなど記録は、そのご利用者のサービスが終了してから2年間です。

 しかし、自治体によっては独自に規定を作っていて、終了後5年という自治体もありますので確認が必要です。

 最初から一律5年で保存しておいても良いかもしれません。

 

 ご利用者関係の保存ファイルは終了年ごとにまとめておきます。

 前述したように専用のファイルから外して、板目紙などに年を書いて綴りひもでまとめておけばインデックスなどは必要ないと思います。

 

 サービス提供の記録はご利用者情報の記録になります。

 従ってサービス終了後2年以上の保存が必要になるのですが、多くの事業所では月ごとや年ごとにまとめてファイリングしていることが多いと思います。

 そのため、終了したご利用者だけを抜き出して別にまとめるのは手間になりますので、しない方が良いです。

 サービス提供の記録は年月日で管理できるようにしておいた方が、請求関係の書類との突合が楽ですから、できるだけ残しておいた方が良いでしょう。

 5年ほどファイルのまま保存し、その後は年ごとにまとめておけば良いと思います。少なくとも10年程度は残しておいた方が良いかもしれません。

 

 

家族等からの開示請求

 

 亡くなったご利用者がどのような介護を受けていたかを、家族等が情報提供請求してくる場合があります。

 例えば、遺産相続などで係争している親族などが、同居家族がどのような介護をしていたか調査をしてきたりします。

 その場合、終了後2年分は必要に応じて開示する必要が出てきますので、注意が必要です。

 

 情報開示請求の手続き等については以下をご参照ください。

「福祉分野における個人情報保護に関する ガイドライン」第8 保有個人データの開示等に関する義務 P34参照

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/250329fukusi.pdf

 

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その5

 

9 サービス提供の記録(必須)

 

 事業所により任意の様式を使っていると思います。

 名称も「サービス実施記録」など様々なようですが、規定上は「サービス提供の記録」となります。

 2枚複写のものが多いと思いますが、毎回、控えを利用者に交付することは定められてはいません。規程では申し出があった場合に写しを交付すればよいとなっています。

 しかし、サービス提供の内容をご家族などに知っていただくことができるため、控えがあった方が良いとは思います。

 

 

記録の記入ミスは介護報酬返還になる場合も

 

 サービス提供の記録は、介護保険の対象となる適正なサービスを提供したことを証明し、報酬請求の根拠となる書類です。

 そのため、記録に何らかの記載漏れ等の不備がある時は、適正なサービスを提供したことが確認できなくなるため、介護報酬返還の対象となります。

 

 具体的には、ケアプランでは身体介護1生活援助1のプランであるにも関わらず、サービス提供記録には生活援助のみが記載されていたような場合、身体介護の提供記録が確認できませんので、報酬返還の可能性があります。

 

 実地指導ではこの指摘が非常に多く、パートのヘルパー等が不注意で記録ミスを繰り返しており、大きな金額を返還しなければならなくなるケースなどもあります。

 

 そのため、すべてのヘルパーには、記録の重要性について周知徹底を図るとともに、サービス提供責任者等は、訪問介護員が適正にサービス提供記録を作成していることを確認しなければならないでしょう。

 

 通常の業務の流れでは、国保連への請求業務の際(データ入力の際)にチェックするのが良いと思います。この作業時に記録内容をチェックしないと請求ミスになりますので作業するスタッフにはミスが無いようにチェックを徹底する必要があります。

 

 また、訪問するヘルパーは、ご利用者ごとに適切な提供記録の見本を確認することも必要でしょう。ご利用者宅に、正しいサービス提供記録の見本を置いておき、それを見本に記録を付けるように指導する必要があります。

 

 提供する介護サービスの内容が状況により変わる場合は、「身体介護」と「生活援助」の中ではいくら内容が変わっても良いのですが、ご利用者の状態などにより「身体介護」や「生活援助」そのものが無くなってしまったり、プランには無いサービスを緊急に提供しなければならない場合は、必ずサービス提供責任者などに連絡し、指示を仰ぐようにヘルパーに徹底しておく必要があります。

 現場のヘルパーが自己判断でサービス内容を勝手に変えることが無いようにしなければなりません。

 

 

「利用者の心身の状況」の記録について

 

 記録すべき事項は以下の通りです。

 

①訪問介護の提供日及び提供時間

②利用者名及び訪問介護員名

③身体介護・生活援助・通院等乗降介助の別

④提供した具体的な身体介護サービス及び生活援助サービスの内容

⑤利用者の心身の状況

 

 市販の「サービス実施記録」等には「⑤利用者の心身の状況」を記入する欄が無いものがあります。

 バイタルの記録はあるのですが、「心」の記録を書く部分がありません。

 これを記入できる部分としては、様式によって様々ですが「特記事項」「観察内容」「ご利用者の言葉」などといった欄であると思います。

 

 通常はこの欄に「利用者の心身の状況」を記入すべきなのですが、ヘルパーがしっかり理解していないため、「特に変化なし」などと書いてしまい、実地指導などで指摘されるケースが多いです。

 

 「⑤利用者の心身の状況」は必ず毎回記録しなければならない事項です。

 「身」の部分はバイタル記録で良いとして「心」の部分は必ず何か書かなければなりません。

 ここの記録の仕方は行政なども良く指導しているようですが、決して「変化なし」などとは書かず、ご利用者の様子を書くようにしましょう。

 

 状態が安定されているご利用者の場合、記録の仕方はある程度パターン化されてもいかし方が無いと思います。たとえば以下のようなパターンを使いまわすしかない場合もありますが、記録としては成立します。

 

「穏やかに過ごされています」

「痛みや苦痛の訴えはありませんでした」

「時々不安を訴えていらっしゃいます」

「元気で過ごされています」

「不調の訴えはありませんでした」

「口数は少ないですが安定していらっしゃいます」

 

 などなどです。

 

 毎回同じになってしまいますが、変化がない場合でも、上記のようなパターンを繰り返し記入しておくしかないと思います。

 行政は「変化なし」は記録していないのと同等とみなします。

 

 

利用者の確認印

 

  運営基準上、必ず、利用者からの確認の押印を受けなければならないという定めはありません。しかし、多くの様式には確認印の欄がありますので、印欄がある場合は押印したほうが無難でしょう。

 

 様式を選ぶ場合は、上述した記録事項をすべて満たし、無駄に印鑑欄が無い様式を選ぶ方が、業務は効率的だと思います。

 

 

 

 次回はファイリングの工夫や保存年限について述べます。

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その4

 

 

 

 今回はケアプラン関係についてご説明します

 

7 ケアプラン(必須)

 

 ケアプランが無い場合は原則サービス提供できません。最新のものを必ず備えておくようにしましょう。

 ただ、ケアマネージャーによりケアプラン更新の際に作成が遅れたりする場合がありますから、注意が必要です。

 しっかりしたケアマネージャーであれば心配ないのですが、少しルーズなケアマネさんがいる場合は、マークしておいて認定期限が切れたら催促したほうが無難であると思います。

 

 

サービス担当者会議の要点(4表)について

 

 いわゆるサ担録はケアマネージャーが作成するものですが、サービス事業所に配布してくれない場合も多いようです。

 ケアプラン自体もそうですが4表をサービス事業所に配布する義務がケアマネに無いため、そのようになってしまいます。

 そうすると、事業所としてはサービス担当者会議に出席した証明が必要になります。

 欠席時は「サービス担当者会議の照会」を控えておけば良いのですが、出席した場合は、会議の日時、場所、出席者、話し合った内容やポイントをメモでも良いから保管しておくようにしましょう。

 

 問題は、認定更新があったのにも関わらず、サービス内容に変更がないためサ担が開かれない場合です。

 ケアマネの怠慢ですが、サービス事業所にとっては困った問題です。開くように要請するのも憚れたりします。

 そういう場合は電話でも良いですから「サービス内容に変更が無い」かだけはケアマネに確認します。そしてその日時と内容をメモしておき保管します。そのように防衛してください。

 

 

サービス内容に変更があった場合

 

 この場合も、変更したケアプランを配布してくれない場合があります。

 軽微な変更の場合はそうなります。しかし、場合によってはケアプランに無いサービスを提供しなければならなくなるケースがあり、特に生活援助が新たに加わったりすると、問題が大きくなります。

 ケアプランに無い生活援助は不正性請求になってしまう可能性が高く、実地指導などで返還命令が出たりしますので注意が必要です。算定額が変わる場合は何とかお願いしてケアプランを修正してもらいましょう。

 しかし、サ担を開くのが面倒で変更してくれないようなケースもあるようです。その場合は、またメモの登場です。

 ケアマネに変更を指示されたこと、変更したケアプランを配布されなかったこと。日時、対応者などをメモして控えておいてください。

 

 

8 連絡調整記録(必須)について

 

 介護保険法ではサービス事業者は「居宅介護支援事業者・介護 予防支援事業者に対する情報の提供及び保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携」が義務付けられています。

 これを実現しているかどうかを確認するための証拠書類については、ケアマネへの毎月のルーチンの報告書や「連絡調整記録」のようなものが必要になります。

 

 通常の訪問介護事業所は、ケアマネとは電話等で必要に応じて連絡調整をしているでしょう。また、必要に応じて訪問看護や地域の他のサービス主体とも連絡調整しているかもしれません。

 そうしたものを記録しておくのが「連絡調整記録」になります。もちろん上述してきた「メモ」もこの記録に該当します。

 

 タイトルは「連絡調整記録」でも「連絡調整メモ」でも単なる「メモ」でかまいませんが、形式としてはケアマネの「支援経過」に似た様式が良いでしょう。

 日々の電話や直接対面による連絡調整の内容について、メモできるようになっていればOKです。特にパソコンなどで記入する必要は無く、手書きでも大丈夫です。業務負担軽減のためにサッと記録できるように手書きの方がお勧めです。必要な記入事項は以下の通りです。

 

「連絡調整記録」必要事項

 

1 日時

2 相手(連絡調整の相手、ケアマネや家族など)

3 手段(電話や面談など)

4 連絡調整内容

5 対応者(誰が対応したか)

 

 これらをご利用者別にエクセルの表などで作成し、一つにファイリングしておきます。事業所の誰でも記入できるように、わかりやすい場所に置いておくと良いでしょう。

 その後利用者の1枚の表が一杯になったら、それを該当するご利用者ファイルの方に移して置き、新しい表と差し替えます。

 実地指導などで連絡調整の記録を求められたらこれを見せればOKです。上述したメモもこれに書いておけば大丈夫でしょう。

 そのご利用者にかかわる電話等の連絡調整内容はできるだけこれに記入するようにしましょう。そうすることで、サービスの質の実態が浮かび上がってきますので、役所が見に来ても「よくやっているな」と評価してもらえると思います。

 

次回は「サービス提供の記録」や利用者別のファイリングのやり方についてご説明します。

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その3

 

 

 

6 モニタリング(評価)

 

 基準上、モニタリングは介護予防(総合事業)では必須です。

 要介護者の訪問介護の場合は、基準ではモニタリングが必須とはなっていませんが、訪問介護計画書に、短期目標と長期目標を記載している以上、これについて達成度を評価する必要があります。

 ここでは予防と介護で分けて説明いたします。

 

 要介護の目標達成度評価

 

 要介護の場合、モニタリングというよりも、「目標の達成度評価」と言った方が良いでしょう。

 目標の達成度評価表などの様式は特に決まりはないのですが、区市町村によっては訪問介護計画書に評価欄が設けられていて、そこで評価するようになっている場合もあります。

 自治体から様式を提示されていない場合は任意様式で評価をしておくと良いでしょう。

 その場合は以下の情報を記載するようにしてください。

 

目標の達成度評価表に記載する基本的な内容

 ① ご利用者の基本情報

 ② 評価年月日

 ③ 評価者名(基本的にはサ責)

 ④ 短期目標(訪問介護計画書に記載してあるもの)

 ⑤ 短期目標の達成度評価

 ⑥ 長期目標

 ⑦ 長期目標の達成度評価

 ⑧ 計画の見直しの必要性

 ⑨ ご本人の満足度や意向

 ⑩ ご家族の満足度や意向

 ⑪ 事業者情報

 

 もちろんこれらの内容を訪問介護計画書に記載できるようにしておいてもOKです。

 ⑨⑩の満足度はチェック方式で良いでしょう。実はこの満足度の評価は予防では必須項目になっています。

 

 なお、この目標達成度評価は担当ケアマネージャーに報告する必要がありますので、その辺を踏まえて作成したほうが良いかと思います。

 ケアマネージャーによっては「サービス状況報告」を依頼してくる場合があります。短期目標の評価をしたら、この「サービス状況報告」と一緒に送れば良いと思います。

 「サービス状況報告」を依頼してこない担当ケアマネージャーに対しても評価をしたら本評価表を提出するべきです。

 

 要介護のモニタリングは規定がしっかりないために、業務上混乱しやすい部分です。次に説明する予防のモニタリングと混同しやすく、ケアマネへの報告業務のやり方にも関係してきます。

 評価は毎月する必要はありません。あくまで短期目標の評価期間で適切に評価すれば良いでしょう。予防のモニタリングと混同して毎月評価をしている場合は業務量が増えるだけですから整理しましょう。

 

 

 予防のモニタリング

 

 介護予防・日常生活支援総合事業に変わってから、業務のやり方が変わっている部分もありますが、従来の介護予防訪問介護(要支援者に対する訪問介護)の基準は変わりがありませんので、それを踏まえてご説明します。

 

 予防のモニタリングのチェックポイントは以下の通りです。

 

 ①サービス提供責任者は、介護予防訪問介護計画に記載したサービスの提供を行う期間が終了するまでに、少なくとも1回は、当該介護予防訪問介護計画の実施状況の把握(「モニタリング」)を行う。

 ②サービス提供責任者は、モニタリングの結果を記録し、介護予防支援事業者に報告しなければならない。

 ③モニタリングの結果を踏まえ、必要に応じて介護予防訪問介護計画の変更を行う。

 ④介護予防支援事業者にサービス提供状況等を月に1度報告しなくてはならない。

 

 ①と④は基本的には違うものです。

 ①は「提供期間」中1回行って作成すればよいものですが、④は毎月作成しなければなりません。

 ①の様式については自治体の様式がある場合が多いですが、④については様式が特にありません。ファックス送信表に状況を記載して送るだけでもOKです。

 予防については基本的に地域包括の指示に従えばよいのですが、予防のやり方を踏襲して、要介護の方も同じようにやると、無駄な仕事が増えてしまいますので注意しましょう。

 特に毎月の状況報告は要介護の訪問介護では必須ではありません

 

 要支援では要介護化の予防が最重要課題ですから、きめ細かいモニタリングと状況把握が必要になります。しかし、要介護の場合はご利用者により状態は様々ですので、状況把握の頻度も一定ではありません。

 状態が安定しているご利用者に関しては、毎月状況報告を行う必要が無い方もいらっしゃるでしょう。

 

 

7 手順書(研修資料等として必須)

 

 手順書はサ責が訪問業務を行っているような、小さな事業所では作っていない場合もあるかもしれません。

 指定基準上必ず作成しなければならないものではありませんが、研修資料もしくは業務マニュアルとしての位置づけもありますので、作成すべきであると考えます。

 

 各事業所の運営規定には、職員研修の項目があると思います。基本的に事業者は、どんな形であれ職員研修を実施しなければなりません。

 手順書はスタッフへの研修実績を証明する資料になります

 また、事業所の業務の質を評価する上で、マニュアルの整備状況が評価されますが、手順書がしっかり整備されている場合は、それを業務マニュアルの一部として評価することができるできます。

 

 手順書は先に述べた「老計第 10 号 」訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等についてを参考に作成すると良いと思います。

 

 

 次回はケアプラン関係について説明します。

 

 

 

 

実地指導が来る前に、訪問介護業務の流れを整理する その2

 

 

 前回の続きです。

 

4 被保険者証と負担割合証は原本確認(必須)

 

 介護保険のサービスを受けるには被保険者証と負担割合証をサービス事業者に提示する必要があります。これは原本を見せる必要があり、サービス事業者も原本で保険証と負担割合証を確認する必要があります。

 

 この原本を確認した証拠として、コピーなどの写しを保存しておきますが、その際、その写しに「○月〇日 原本確認 確認者氏名」と記載すると良いでしょう。

 日付はサービス提供日前が好ましいですが、多少ずれていてもしようがないでしょう。

 

 コピーなどをいつとるかですが、大事なものなので勝手に預かってコンビニなどでコピーしてくるのも少し憚れます。一番良いのは、スマホなどで写真を撮り、事業所に戻ってプリントアウトする方法でしょう。

 写真を撮った日付などが入るようにしておけばより良いかもしれません。サービス担当者会議や初回サービス時にしっかりと確認するのがベターであると思います。

 

 また生活保護の方の介護券ですが、これをご利用者ファイルにファイリングすると量が多くなり一杯になってしまいます。介護券は年度ごとに専用ファイルにファイルしておく方が扱いは楽だと思います。

 介護保険の実地指導の場合、生活保護の介護券を詳しくチェックすることはあまりありませんから、別ファイルでも大丈夫です。ただし、保存年限は同様にサービス終了後2年ですので、ご留意ください。

 

 

5 訪問介護計画書(必須)

 

 最近では介護ソフトなどで訪問介護計画書を作成することができます。しかし、フォーマットが気に入らなかったり、自治体から推奨するフォーマットが出ていたりするとなかなか使いにくいものです。

 

 訪問介護計画書に決まった様式はありませんが、必ず記載していなければならない項目があります。それらが揃っていればどんなフォーマットのものを使っても原則構いません。

 必須項目は以下の通りです。

 

① 計画書の作成者の氏名、作成年月日

 作成年月日は必ずもとになるケアプランの作成日より後か同日でなければなりません。

② 利用者情報等(氏名、性別、生年月日、要介護認定日、要介護度等)

③ 生活全般の解決すべき課題(ニーズ)

 ケアプランの2表にあるニーズです。訪問介護を利用する理由に該当するところのニーズを転記します。ただし、ケアマネージャーの力量によってあまり適切でない表現もありますので、その場合は実態に合わせて少し改変しても構わないかもしれません。

④ 援助目標(長期目標、短期目標)

 こちらもケアプランの該当部分を転記しましょう。

⑤ 長期目標、短期目標の期間

⑥ ご本人及びご家族の意向・希望

⑦ 具体的援助内容

 以下の記載内容がコンパクトにまとめてあるフォーマットだと使いやすいかもしれません。

 1) 「サービス1」「サービス2」

 援助内容の違い、曜日・時間等の違いによって、「サービス1」「サービス2」などと区

分して記載します。

 2) サービス区分

 これについては厚生労働省から「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」という通知が出ており、この項目に合わせて記載することが求められています。

 この文書は訪問介護サービスの種類や段取りを整理したもので、排泄や入浴介助などの手順を詳しく列挙していますので、訪問介護サービスのマニュアルとしても機能します。

 後ほど説明する手順書の素になるものですので、訪問介護事業者は必携の文書です。

 

訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について

 

 3) サービス内容

 サービス区分に応じたサービス内容を具体的に記載します。例えば、区分が「排泄介助」である時は、内容として、「トイレ利用」、「ポータブルトイレ利用」、「おむつ交換」などの具体的な内容を記載します。

 また、サービスの提供方法もあわせて記載できれば、利用者にとってわかりやすいものになるでしょう。

 4) 所要時間

 サービス内容に記載したサービスを提供する時間です。

 5)留意事項

 各サービス提供に当たり留意することを記載します。

 6)サービス提供曜日

 7)サービス提供時間

 8)算定単位

 「身体1」「生活2」「身体2生活1」など

⑨週間予定表

 「⑦ 具体的援助内容」で週間の予定がわかればこれは必要ありません。

⑩ 説明者・説明日

 計画書の内容を説明した担当者の署名と年月日を手書きで記載します。様式としては空欄にしておけばOKです。

⑫ 利用者又は家族の同意欄

 利用者又は家族が計画内容を確認し同意をした旨の署名欄です。本人の署名捺印が有れば家族のものは必要ありません。

⑬ 事業所情報(事業所名、管理者名、住所、電話など) 

 

 堺市が作成した「訪問介護計画書作成の手引き」がありますので参考にしてください。

訪問介護計画書の作成の手引き

 

 

介護保険で提供できないサービスについて

 

 これは必須ではありませんし、重要事項説明書に記載するものですが、念のために訪問介護計画書の裏などに記載し、利用者や家族に確認してもらうのも良いかもしれません。

 

以下の援助は介護保険の生活援助では提供できませんのでご了承ください

(平成12年11月16日 老振第76号 厚生労働省通知)

 

1.「直接本人の援助」に該当しない行為

  主として家族の利便に供する行為又は家族が行うことが適当であると判断される行為

   ・利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し

   ・主として利用者が使用する居室等以外の掃除

   ・来客の応接(お茶、食事の手配等)

   ・自家用車の洗車・清掃 等

 2.「日常生活の援助」に該当しない行為

  [1]訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じないと判断される行為

   ・草むしり ・花木の水やり ・犬の散歩等ペットの世話 等

  [2]日常的に行われる家事の範囲を超える行為

   ・家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え

   ・大掃除、窓のガラス磨き、床のワックスがけ

   ・室内外家屋の修理、ペンキ塗り

   ・植木の剪定等の園芸 ・正月、節句等のために特別な手間をかけて行う調理 等

 

次回はモニタリングや手順書などについて説明します。

 

 

実地指導が来る前に 訪問介護業務の流れを整理する その1

 

 

 お客様からのお問い合わせが多いのでコンプライアンスを踏まえたうえで、実地指導などで指摘を受けないような、訪問介護事業所の業務の流れを整理したいと思います。

 

 

無駄な業務を減らす

 

 運営基準上、必ずやらなければならないことと、必ずしもやらなくてよいことがあります。またどの程度やるのか、頻度や詳しさなども業務によっては様々であり、わかりにくい部分でもあります。

 

 そんなに一生懸命にやらなくても良い業務に時間を割いてしまって、本来やらなければならない業務が疎かになっているケースも見受けられます。

 

 この仕事はどの程度しっかりやらなければならないのか、その辺のポイントがわかりにくいという声もありますので、そのあたりを整理してできるだけ無駄な業務を減らせるようにしたいと思います。

 

 なお、各種書類のひな型はネットに沢山ありますので、これから述べるポイントを踏まえて使いやすい物を探してください。

 

 

新規ご利用者の受け入れ

 

 新規受け入れの際に必ず行うべきことと、必要な書類を整理して説明します。

 

1 サービス申込書(必須)

 サービスの申し込みは原則、本人が事業所に申し込まなければなりません。利用者にはサービス業者の選択権があります。これは介護保険法の理念の一つであり、非常に重要な要素です。

 申込書は利用者が自らの意思でサービス事業者を選択した証の一つですので、ファックスでも良いですからしっかり貰っておきましょう。

 もし、事業所で使っている申込書の「申込者欄」がケアマネージャー名になっているようでしたら「ご利用者名」に修正してください。申込者はあくまで利用者であり、ケアマネージャーが勝手に申し込んではいけないものです。

 なお、申込書に基本情報をしっかり記入してもらえば、アセスメント情報の収集に役立ちます。

 

 

2 契約書・重要事項説明書(必須)

 

 介護保険制度の重要な二つの理念を具体化している書類ですので、とても重要です。

 

 ① 利用者は契約によりサービスを利用する

 ② サービス事業者は利用者にサービス内容を説明し、同意を得てサービスを提供する

 

 それぞれの内容についてはここでは詳しく説明しませんが、自治体によってローカルルールがある場合があります。また、都道府県が基本フォーマットを提供している場合も多いので、事業地の様式を使うようにしましょう。

 場合によっては、区市町村の担当者に内容を確認してもらっても良いかもしれません。

 

 注意点として、古い様式を使っている場合、法令の改正などによって内容が不適切になっている契約書や重要説明書があります。そのため時々内容を更新しておく必要があります。

 

 基本的には介護保険法が改正する際に内容を更新するようにしましょう。報酬改定や新しいサービスの追加があったりしますので、原則3年ごとに見直す必要があります。

 3年以上同じフォーマットを使っている場合は一度内容をチェックした方が良いでしょう。

 

 なお、個人情報の利用に関する同意は本人と家族の両方から取らなければなりません。時々、本人からしかとっていない場合があります。

 

 

3 アセスメント(必須)

 

 運営基準上サービス事業者は、利用者の「心身の状況」を把握してサービス提供をしなければならないことになっています。

 つまり、ADLなどの状況をアセスメントしろということです。

 

 しかしながら、サービス提供開始時にアセスメントをするのが難しい場合があります。

 介護保険制度では各介護サービスがアセスメントしなければなりませんから、利用者が介護保険サービスを利用しようとした時、各事業者からアセスメント攻めに会ってしまうことがあります。

 

 かといってケアマネージャーが行ったアセスメントを貰う訳にもいきません。なかには参考に自分の行ったアセスメント情報を提供してくれるケアマネージャーもいますが、それでも事業者が独自にアセスメントをすることは必須になります。

 

 

アセスメントはいつやるのか

 

 アセスメントのタイミングとしては、サービス提供担当者会議の際ではなく、サービス調整や初回訪問の時が良いでしょう。

 

 サービス調整の際には、ケアプランに書かれたサービス内容を居宅において具体的に確認していきます。その際にADLやIADLの確認は必ず行いますので、メモなどでそれを把握しておきます。

 サービス開始時は契約や重要事項の説明などやらなくてはならないことが沢山あります。

 また、外部の人たちがたくさん利用者の家に来ますので、本人や家族もストレスを感じて疲れている場合が多いです。ここでアセスメントによる質問攻めは憚られるものでしょう。

 

 従って、利用者の前でアセスメントシートにチェックするようなことは避け、事務所に戻ってアセスメントシートに記載していくやり方が良いと思います。

 

 

アセスメントシートはすべて埋める必要は無い

 

 アセスメントシートにはアセスメントを行った日を記載しますが、必ずしもその日にすべての情報を把握くしなければならない訳ではありません。

 また、アセスメントシートをすべて埋める必要もありません。利用者によっては必要無い情報もあります。例えば、家族構成図や居宅内の図面なども必要に応じて作成すれば良く、必ず作らなければならに項目ではありません。

 

 最低限アセスメントで必要な情報は以下の情報です。

 

 ①アセスメント実施年月日(最初に状況把握を始めた日)

 ②アセスメント実施者(サ責)

 ③基本情報(氏名・年齢・要介護度など)

 ④ADL

 ⑤IADL

 ⑥疾病関係情報

 ⑦本人や家族の意向

 

 

 アセスメントシートは上記の内容が記載できればどんなものでもOKです。

 以下は日本介護福祉士会のものです。集めなければならない情報が沢山ありますが、これらすべてを揃えなければいけない訳ではありませんのでご留意ください。

 http://www.jaccw.or.jp/katsudo_reports/yoshiki.php

 

 

次回は被保険者証や計画書などをご説明します。