これからの障害者福祉サービスの動向

 

 

 障害福祉サービスの利用率が伸び続けています。

「障害者サービス利用率の伸び」

障害福祉サービス等報酬改定検討チーム第1回(H30.8.29) 参考資料

 

 今回は、今後の障害者福祉サービスの動向について分析したいと思います。

 

日本の潜在的障害者

 2018年4月厚生労働省は体や心などに障害がある人の数が約936万6千人との推計を公表しました。この数字は2013年時の調査よりも、149万人増えたことになります。人口比のして6.2%から7.2%へ増えたことになります。
 原因として同省は高齢化の進行に加え、障害への理解が進み、障害認定を受ける人が増えたことも増加要因と分析しているようです。
https://www.asahi.com/articles/ASL495Q7BL49UTFK01W.html

 一方、世界へ目を向けるとどうでしょう、国連の広報サイトには2013年で世界の人口の15%が障害を持って暮らしていると報じています。
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/5820/
 日本の約倍です。これにはどのような意味があるのでしょう?

 世界人口の多くは途上国に住んでいて、医療が進歩していないので障害者が多い? 

 いや、障害者数は医療が発展すればするほど増えます。社会で生きにくい人(障害者)は医療の進歩によりその原因が何らかの障害に起因することが診断されやすくなるからです。
 つまり先進国の方が障害者として認定されやすくなるので、障害者人口は増えます。

 世界各国の障害者割合(20~64 歳人口)を見てみると以下のようになります。

 

 福祉先進国が上位に名を連ねていることが分かります。この時点では日本の統計調査はありませんが、概ね4~5%になると推測されています。つまりイタリアより下、韓国より上です。
 これは何を意味しているのでしょうか?

 

日本の障害者認定の範囲は狭い

 上記の各国の障害者率は、そもそもが障害認定の基準が違うため、このような開きが出てしまうのです。
 日本に比べスウェーデンの方が障害者(社会で生きにくい人)が多いわけではありません。日本に比べスウェーデンの方が障害者として認定される人が多いのです。
 つまり、日本では障害者として認定されない人がスウェーデンでは障害者として認定されているということです。また、日本では障害認定の申請をしない人でも、スウェーデンでは申請をしているとも言えます。

 筆者は引きこもりや不登校、ホームレス、各種依存症などの実社会にうまく適応できず、生きにくい思いをしている人たちも、何らかの障害が認定できると考えています。
 おそらく、スウェーデンではそうした日本では障害者として認識していない人たちも、障害者として認定を受け、社会的な支援を受けることができる態勢ができているのではないかと考えています。

 

閉鎖的国民性が障害者を封じ込める

 こうした障害に対する認識の違いはどこからくるのでしょう?
 一つは、文化や風土の違いからくるものではないかと考えます。韓国も率が低いですが、日本と似たような社会風土であるからではないでしょうか。
 それは「異質性の排除」と「同質性の要求」という閉鎖的社会風土であると思います。
 日本人は「みんなと同じ」といった同質性を要求しがちです。「みんなと同じ、周りと同じであれば安心」といった考え方です。
 反対に異質なものを持つ人を排除し、差別しがちです。「出る釘は打たれる」「誉れは毀りの基」などプラス面でも同様の反応を示します。
 北欧はノーマライゼーションの考えが根付いているので、障害があっても大手を振って社会に出ていけます。

 日本では、障害の子を持つ親はそのことを外にはあまり表したがりません。また、障害児を生んだ母親は嫁ぎ先の家族から非難されたり、自己嫌悪に陥ったりする傾向があり、辛い思いをすることも少なくありません。
 最悪、無理心中などの事態が生じる場合もあります。
 
 つまり、社会にとって異質と考えられる障害を隠そうとするバイアスが働きやすく、結果、適切な診断を受けて障害認定を受けることを避ける方向に働くわけです。
 国としても自ら申請をしない障害者への支援は考えていません。日本の障害者支援制度は申請をして名乗り出なければ支援を受けられない傾向が強く、隠れ障害者がたくさん存在しています。

 

「8050問題」がその典型例

「長期間の引きこもりをしている50代前後の子どもを、80代前後の高齢の親が養い続けている」問題です。その親の介護サービス開始とともにその子供の問題が発覚したりします。
 おそらくその子はなんらかの障害を抱えている可能性が高いのですが、医療などの支援を受けられないできたのです。
 ケアマネージャーはそうしたケースに良く遭遇するものです。しかし、子供への支援は介護ではできません。自治体に問い合わせても対応するセクションが無く、自ら病院に行くなどしない限り、障害福祉の支援は届かないのです。

 

社会に届きにくい障害者の声

 実は障害者は選挙において票になりにくいと言われています。
 高齢者層は積極的に投票に行きますし、介護や年金問題などで候補者も政策を訴えやすいのですが、障害者は投票率も低く(投票に行けない、選挙情報が届かないなど)、候補者もターゲットを絞った政策提言がしにくい現状があります。
 そのため政治に障害者の声が届きにくいのではないかと考えます。
 結果、先述の社会風土の影響もあり、日本の障害者福祉制度は世界標準には程遠いと言われる現状になってしまっているわけです。
 
 しかし、最近になって障害者自らが政治の場に参加し始める動きが見えてきました。
 こうした動きは今後加速していくはずです。
 さらに、障害を隠す社会風土も改善されつつあり、多くの障害者やその家族が外部サービスを積極的に活用し始めています。
 今後、「社会で生きにくい人」に対する支援サービスはさらに拡充されると考えます。
 サービス提供の主体である私たちはそのサービス幅の拡大に備える必要があるでしょう。

 

独立訪問介護士の可能性 その2

 

 優秀な訪問介護士が地域の中で医療と連携して訪問介護サービス提供できるようにしていくのが、独立訪問介護士導入の目標です。

 そのためには、地域にこうした訪問系の医療介護の統合システム・プラットフォームがインフラとして整備されなければなりません。

 

具体的な独立訪問介護士の仕事の様子をシミュレーション

 

 独立訪問介護士は訪問介護のサービス提供責任者としての実績が長く、区市町村の審査などに合格した優秀な登録介護士です。基本的な個人情報は区市町村のシステムに登録され、責任の所在が明確になっていなければなりません。イメージは個人タクシーの運転手に近いかもしれません。

 彼(彼女)は個人事業主であり、株式会社などの法人ではありません。従って事業所を持っておらず、自宅から地域の利用者宅へ出向き、サービスを提供します。

 実施した業務の情報は各種ICT技術によって彼(彼女)の持つタブレットにより把握され記録されます。

 例えばGPSによりどのご利用者宅に何時から何時まで訪問していたかが記録されます。これにより訪問の事実は確認できます。

 また、このシステムは指紋認証などによる本人確認ができないと起動しませんので、第3者が変わって訪問しても業務ができない仕組みになっています。

 

 サービス提供の実績はタブレットから入力され、利用者本人や家族の確認を受けて記録されます。これはケアマネージャーや行政側でも確認することができます。

 訪問の度にその都度確認するのは煩雑でしょうから、特別な場合だけになるかもしれません。もちろん毎月の介護給付の請求時はケアマネージャーが内容を確認する必要があります。

 また、何らかの基準を設けシステム上で業務違反や異常をスクリーニングできるようになればもっと良いでしょう。

 

 これらの業務記録は保険者も見ることができますが、それにより必要に応じて検査を実施し指導することが可能です。また、統計的な分析により地域の介護状況の把握にも役立つでしょう。

 

 毎月の請求作業は、システムの記録から自動生成され、ケアマネが確認した後、国保連に送られ、独立訪問介護士の個人口座に振り込まれます。

 この制度を実際に立ち上げることになった場合は、あらかじめ、税金や社会保険料が調整されて振り込まれるようにした方がベターでしょう。移動手段の自動車など各種必要経費については、一定基準で控除するようにすればよいと思います。

 まあ、年末調整などの個別の調整で確定申告は必要ないはなると思いますが。

 

 仕事は今と同じようにケアマネージャーより入ります。サ担などは今と同じでしょう。ITが進歩してもフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションは大切です。

 

 

地域の医療介護サービスネットワークの充実

 

 現在、介護保険法では利用者は自分の好きな事業者を選択し、契約によりサービスを提供してもらうことを制度の根幹としています。

 独立訪問介護士も法人ではありませんが利用者との契約によりサービス提供を開始します。重要事項の説明と同意などは基本的に今の流れと同じです。

 

 しかし、一点だけ特別事項として、契約を結んだ訪問介護士が病気や事故などで、急遽訪問サービスの提供ができなくなった場合、ケアマネージャーの判断により、他の事業所や独立訪問介護士から緊急でサービス提供をできるようにする規定を、新たに盛り込む必要があるでしょう。

 

 複数の訪問ヘルパーがいる事業所であれば、担当のヘルパーが急遽行けなくなったとしても代役を立てることが比較的簡単ですが、独立訪問介護士の場合はそうはいきません。

 地域の介護人材ネットワークの中でそうした事態に対応できるような体制を整える必要があります。そのための法的整備が必要でしょう。

 

 このようにICT活用による地域の医療介護ネットワークが整備され、個人による独立のケアサービスが出現すると、これまでの個別の契約によるサービス提供という形もすこし変わってくるかもしれません。

 ITネットワークにより、地域のケア人材ネットワークも強化され、地域全体で利用者のケアを提供するような体制になっていくでしょうし、その方が利用者にとっても社会資源の効率的な活用(社会コストの低減)の面にとってもメリットがあることだと思います。

 

 また、訪問介護だけでなく訪問診療や訪問看護についても同様の仕組みを、同じネットワークの中で構築することになります。その際、訪問診療医はあらかじめカルテ共有などをして、地域の訪問診療医であれば当番制で、誰でも、夜間の緊急対応などができるようにすべきでしょう。

 こうした柔軟で効率的な地域ケアネットワークが今後求められると考えます。

 

 一つ懸念があるとすれば、複数の区市町村に渡って仕事をする場合、システムが変わってしまう可能性があることです。複数の保険者に登録していると、複数のタブレットを持ち歩かなければならなくなるかもしれません。

 セキュリティー面で端末による個人管理をした方が安全だからですが、技術が進歩すればタブレット一つでアプリケーションを切り替えれば済むようになるかもしれません。

 

この項終わり。

 

 

 

独立訪問介護士の可能性 その1

 

 筆者は今般、一般財団法人ニューメディア開発協会から委嘱を受け「在宅医療・訪問介護向けスマート端末検討会」の委員として参加することになりました。
http://www2.nmda.or.jp/archives/2571/

 ここでの議論とは少し異なりますが(というよりずっと未来の話になりますが)、介護福祉サービスのIT化が進んだ場合、独立訪問介護士という新しいサービス形態が可能ではないかと思い当たり、少し考えたいと思います。

 

独立訪問介護士とは

 現在、訪問介護サービスを提供するためには、法人を設立し、事務所を借りて確保し、介護福祉士などのサービス提供責任者を雇用しなければ、都道府県の指定を受けることはできません。

 これは公的なサービスを提供するにあたり、責任のある運営主体を確保するためです。
 登記された法人が事業所を開設してサービスを提供することで、責任の所在を明確にし、利用者の不利益にならないようにする目的があると思います。

 しかし、経験と実績を積んだ優秀な介護福祉士などが個人で訪問介護サービスを提供する事業ができないか。それを可能にするのが、独立訪問介護士です。
 例えば医師免許を持つ医師は個人で医業を営むことができます。ただし今のところ診療所を持たないと開業はできないようです。筆者は、訪問診療医は診療所を持たなくても、開業できるようにするべきだと考えますが、古い制度を引きずったままで変わる気配はありません。

 この先、IT技術が進歩し、各種専門業務の適切な管理が可能になり、法人設立や事業所が無くても、責任を担保した形で仕事ができるようになれば、事業所などが無くてもPCとタブレットだけで仕事が完了できる時代が来ていると考えます。

 つまり、独立訪問介護士は自宅から利用者の家を訪問しサービスを提供しますが、それらサービス情報のすべてがIT環境で処理され、例えばケアマネや自治体、ご家族が正確にそのサービス提供状況を把握でき、介護士の仕事を管理できることで可能になるものです。
 もちろん、介護だけでなく訪問診療医や訪問看護師も同様に事業所を持たない形での営業が可能になると考えます。

 

独立訪問介護士のメリット

1 訪問介護職の収入増加

 例えば東京の訪問介護の場合、9時から18時の勤務時間で、1日5件(各1時間程度)のサービス提供が一般的です。
 サービス給付を見ると、1時間で4,000円から5,000円程度ですから、1日に20,000円から25,000円の給付になります。月20日稼働で40万円から50万円の給付になります。
 独立訪問介護士の場合これらの給付がダイレクトに収入になります。年収にして500万円以上が期待できるでしょう。
 法人に勤務する訪問介護士の場合、事務所の家賃や管理費にコストがかかりますので、頑張っても正社員で30万円程度の給与しか貰えません。しかし独立であれば、かなり安定した収入になります。

2 優秀な訪問介護士の増加

 現在、訪問介護の仕事は少しレベルの高いパート仕事として認識されていると思われます。しかし、安定的な収入が得られるとすれば、それなりの人材が流入してくることが考えられます。
 後で述べますがそもそも、独立訪問介護士になるにはそれなりの知識とスキルが無ければ務まりません。介護職の地位の向上にも貢献するでしょう。

3 地域の在宅介護力のレベルアップ

優秀な人材が増えれば、当然のこと介護の仕事そのもののレベルアップになるのは当然です。

4 社会コストの低減

 現在の介護事業開業のためには法人設立や事業所賃貸費・管理費など無駄なコストが多くかかります。そうしたコストを、介護職の収入にできるようにするのが独立介護士の意義でしょう。
 この制度は国の給付額を上げずに、つまり税金を使わずに介護職の処遇を改善する非常に有効な手段となりえます。また、施設介護から在宅介護への流れを強化することにもなり、在宅医療の拡大にもつながると考えます。

 

独立訪問介護士を可能にするには

 こうした介護士を可能にするためには、IT技術の進展が必要ですがそれ以外にも制度の整備を必要とします。
 まずはこの特別な資格を得るための個人としての能力要件が必要でしょう。優秀な介護士でなければなることはできないと考えます。

独立訪問介護士の人的要件

1 訪問介護のサービス提供責任者としての実績(例えば5年以上など)
2 ITスキル(実地研修などの裏付けが必要)
3 区市町村による能力評価と登録

 次に、こうした介護士が働けるITを中心とした環境が区市町村に整備や国による制度化が図られなくてはなりません。

環境要件

1 区市町村が医療・介護連携システムなどを導入し、サービス提供の情報管理および従事者の業務管理が適切にできる体制にある。
2 国として資格や任用要件を制度化する。
3 その他ITによる医療・介護・福祉人材の地域ネットワークの構築

次回はこれらの要件をもう少し詳しく説明します。

介護福祉サービスのIT活用と課題

 

現場業務は増える一方 効率化とは程遠く

 自民党の「厚生労働行政の効率化に関する国民起点プロジェクトチーム(PT)」は、現在、自治体ごとに異なる申請書類形式の統一化を検討する専門のワーキンググループを、社会保障審議会介護保険部会の下に設置することを明らかにしました。
https://www.fukushishimbun.co.jp/topics/22123

 総合事業など区市町村設置の事業が増えるにつれ、介護事業所は複数の区市町村におなじような書類を何度も出さなくてはならない状況が広がっています。

 例えば、東京都足立区で訪問介護と障害居宅と総合事業の訪問型サービスを開業する場合、都へ介護と障害の2つの申請、足立区に総合事業の申請、さらに葛飾区や荒川区で総合事業を行うのであれば、それぞれに申請をしなければなりません。
 内容的にはほとんど同じ書類なのですが、5か所の役所に書類を提出する必要があるのです。総合事業が始まる前は2か所でOKでした。まったく時代に逆行しており、本当に無駄なことです。

 これは行政制度上、それぞれに指定権限があるためそうなってしまうのです。ちなみに、処遇改善加算の書類も同様で、毎年の計画報告をそれぞれ5か所に提出する必要があります。変更届なども同様です。さらに悪いことにそれぞれの提出書類の書式が異なっているため、いちいち別々の対応を求められます。

 

自治体の業務も増えている

 こうした作業はサービス事業者側の業務量を増大させるとともに、自治体側の業務量も増大させています。介護現場では直接の価値創造(サービスの質の向上)には何らつながらず、労働時間が増えるだけですし、自治体職員の労働量も増え税金が無駄に使われていると言っていいでしょう。

 権限が区市町村に移ることは時代の流れですからどうしようもないのですが、国はそれぞれの自治権限を尊重するあまり、業務を丸投げしてしまっているのでこうなるのでしょう。社会保障審議会でこうした無駄を改善する方向で議論してほしいものです。

 ちなみに訪問看護事業は都道府県に指定申請すると自動的に国の厚生局に情報が行き、医療保険の訪問看護も指定が下りる形になっています。
 やればできるのです。できれば介護だけでなく、障害者や児童福祉の分野もリンクした形での議論が欲しいところです。
 最低でも、都道府県の訪問介護の指定を取ったら、障害居宅の指定も下りるようにするべきでしょう。

 

千葉県柏市の「カシワニネット

 介護福祉分野でもIT化による業務の効率化は少しずつ進んでいるようですが、自治体(区市町村)や地域の医師会が連携してこなければ本質的な効率化は進みません。

 千葉県柏市では、医療・介護連携情報共有システム(カシワニネット)を導入し、先駆的な取り組みを行っています。
http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/061510/p047140.html

 自治体・医療・介護がそれぞれ情報を共有できるようになっており、特にケアマネ業務における連携・調整作業の効率化に大きな成果を上げているようです。
 たとえば、医師からの情報提供はケアマネにとって面倒な作業の一つですが、ネットワーク内で比較的簡単に行えるようです。
 自治体への各種申請・報告作業も同一ネットワーク内で可能になっており、業務効率化に資していると考えられます。

 たとえばこれを進めていくことで、事業所のサービス提供状況などが共有化されれば実地指導の調査などもネットワーク内で可能になり、自治体にとっても非常に有効でしょう。
 さらに都道府県が連携すればさらに良いシステムになるのですが、残念ながら現状では市内のみの稼働のようです。

 情報共有システム自体は民間企業が開発したものです。自治体のシステム開発は昔からそうなのですが、それぞれの自治体内でのみ稼働するものになりやすく、同じようなシステムをそれぞれの自治体が独自に導入している状況のため無駄が多いと言われています。 
 しかし公共事業としての税金の利用は政治的な利権を伴うので、現在の日本では国全体で同じシステムを導入することは難しいでしょう。

 

IT化には区市町村がキーマン

 介護福祉サービスのステークホルダーである、自治体や国保連、現場とのネットワーク環境のガイドラインを国は作る必要がありますが、やっと腰を上げたところでしょうか。
(医療情報関係のガイドラインはあります)

 おそらくそうしたガイドラインの無いまま、自治体や現場がそれぞれ独自のIT導入を進めていくと、各ステークホルダーの連携はどんどん難しくなっていくかもしれません。

 現状では区市町村が一番のキーマンでしょう。柏市のように区市町村が積極的な自治体では業務の効率化が進み、自治体ごとの差が大きく出るかもしれません。
もし私がケアマネージャであれば、情報の共有システムが進んでいる自治体で働きたいものです。これは利用者になった場合でも同じかもしれません。

 

現場のITリテラシーの問題

 一方で、介護福祉現場のITリテラシー(IT活用能力)の向上も課題として挙げられます。
介護現場で進む高齢化の問題がニュースになりましたが(訪問介護員の40%が60歳以上「全労連」調査)、訪問介護員などがタブレット端末などを使いこなせる能力が無ければ、情報共有は進みません。
 なにしろ、介護スタッフが最も利用者に近く、情報を把握する上で最も重要な役割を担っています。

 サービス事業所で独自でIT化を進めようとしても、スタッフが対応できず、研修する手間もかかるため、現場レベルでのIT化はなかなか進まない状況が見えます。
しかし、柏市のようなシステムが導入されれば、現場では使わざるを得ない状況が生まれるでしょう。さらに自治体がITの研修をしてくれれば、非常にありがたいと考える事業者は多いはずです。

 IT化による業務の効率化は、国及び自治体、そして地元の医師会が大きなキーマンになっています。
 今後、現場レベルでは、地元の自治体の動向をよく観察しておく必要があると思います。

介護福祉業の人材確保対策 その2

 

 今回は、前回の就労環境を整えても、どのように求人でアピールすればよいのかを考えたいと思います。

 その前に、前回の説明の補足として以下のテキストもご参照ください。

「訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術」

 上述のような努力を事業所が実践するということが前提の求人の在り方です。

 

4 子育てママにアピールする求人広告の在り方

 求人広告としては前述の求人対策の内容をアピールします。

 若い主婦向けにはやはりネットの求人サイトを利用する方が良いでしょう。

 主婦専用の求人サイトでなくとも、若者が集まりやすい求人サイトに子育てママが働きやすい環境であることを具体的にアピールします。

 また、パート求人広告は地域密着ですから、それぞれの地域の子育て事情を考慮した広告の出し方が必要だと考えます。

 具体的なコピーとしては以下のようなものです。

 ⦿ 保活ママサポート。4月入園に向けた働き方を相談します。

(12月ぐらいに出すと良いでしょう)

 ⦿ 家族の都合で急な休みでも大丈夫

 (管理者やサービス提供責任者が柔軟に対応します)

 ⦿ 未経験無資格の方歓迎。面倒見の良い担当者が一から不安なく働けるように指導します。

 無資格の方に資格を無料で取得してもらえるようにするのは必須です。

 自治体によって補助金や資格取得支援事業がありますので必ず活用しましょう。

 

5 自事業所ホームページの充実

 子育てママ向けの求人だけでなく、すべての求人活動で必要なのが、自事業所のホームページの充実です。

 介護福祉事業所のホームページは中々充実させる暇やお金が無いという方も多いかもしれません。

 自事業所のホームページはご利用者やそのご家族、ケアマネージャーさん向けに作っているかもしれませんが、そうではなく、仕事を探している人向けに作ることが重要です。

 ケアマネや利用者向けに作っても費用対効果から言ってあまり意味はありません。それよりも求人者向けに充実させる方が、人材確保の大きな助けになります。

 ホームページのコンテンツは、サービス内容や事業所の一次情報(住所や電話など)を乗せただけの、一般的で凡庸なホームページでは求人者にはアピールしません。

 求人情報があっても、給与や処遇など一般的な情報しか掲載していなければ、ほとんど引っ掛かってこないでしょう。

 ポイントは「ここで働きたい!」と思わせるホームページ作りです。

 

 筆者は魚釣りが好きです。

 多少語弊があることを覚悟して言いますが、中小企業の人材募集は魚釣りに似ていると思います。

 特に疑似餌を使うルアーフィッシングは、いかに魚(応募者)に餌(職場)をアピールするかが重要であり、凡庸なルアーには見向きもしませんし、同じルアーを使い続けると、見切られてしまい、ほとんど食いつかなくなります。

 つまり、魚にいかにルアーを魅力的に見せるかが釣果に繋がるのです。

 求人も同じで、処遇や職場の雰囲気など応募者にいかにアピールするかが成果に繋がります。

 そもそもあまり事業所ごとに職場の差別化が測りにくいのが、介護福祉事業の宿命です。

 職種にしても給与にしても、あまり変わり映えの無い餌が大量に世の中に漂っており、求人者としてはどれに食いつけばよいのか判断ができない状態なのです。

 ちなみに、人材紹介会社などは、大きな巻き網漁船のようなもので、巨大な網を使って大量に人材を確保しようとします。そのために、広告費に膨大な経費を使い、少しでも多くに人の目に留まるようにします。

 アルバイトなどの求人情報会社が頻繁にテレビCMを流しているのはそのためです。顧客である人材募集企業に少しでも多くの求人応募者を集めるためには、相当の広告が必要になります。

 しかし、中小企業ではそんなに広告費を使うことはできません。

 しかも、募集の対象者は事業所の周辺地域に住む人達だけです。大きな網は必要ありません。少ないターゲットに的確に届く求人が必要ですが、狭い地域といえどもターゲットはどこにいるか分かりませんので、ネット上手に活用して、アクセスしてくれるのを待つしかないのです。

 

6 どのように自社サイトに誘導するのか

 介護業界で長く働いている人であれば、給与や休日など処遇関係の情報を見て、実体験から職場の良し悪しをある程度判断できるかもしれません。特に正社員で働きたい人は、ハローワークなどの詳細な求人情報を見て検討するでしょう。

 しかし、介護業務の経験の無い、ましてや無資格の人にとってどのような事業所が自分に合っているかなど分かる由もありません。

 特にパートの若いママさんなどの場合、フィーリングやライフスタイルに合っているかが重要になりますので、文字による情報よりもビジュアルや動画などの情報が重要になります。

 最近、膨大なCM展開をしているindeedという求人検索サイトがあります。

 こちらは今までの求人サイトと違い、例えば「足立区 介護 パート」などと検索すると、足立区周辺の介護のパート求人を検索して出してくれます。

 Googleに検索ワードを入力すれば、該当する求人情報をIndeedが表示してくれるわけです。仕事を探している人はその検索画面から、各求人サイトに行き、求人内容をチェックします。

 ネット上のパート求人情報を地域限定で探している人は、多くの人がこの方法で、情報を探しているかもしれません。わざわざマイナビバイトなどのサイトから地域を限定して探している人は、どんどん少なくなっているでしょう。

 仕事を探している人はそこから、気になった求人情報のサイトにアクセスするわけですが、問題はここからです。

 応募者は求人情報サイトの情報だけで応募することはありません。

 多くの人たちがそのサイトにリンクが貼ってある(もしくは会社名などを検索して)事業所のホームページアクセスするはずです。どんな事業所か知りたいからです。

 この時、開いた事業所のサイトが凡庸なもので、どのような事業所か伝わってこなければ、もう応募することは無いでしょう。

 ここで「この職場で働いてみたい」と思わせることが大変重要なのです。

 お金を沢山出せば、有料求人情報サイトに写真や動画を沢山掲載し、雰囲気を伝えることができますが、いかんせんお金がかかります。

 できるだけ、自社サイトに誘導して雰囲気を伝えるようにすることが重要になります。

 そこで「この職場で働いてみたい」と思われれば応募に繋がります。

 

7 どのようなホームページが採用につながるのか

 では「ここで働きたい」と思わせるホームページとはどのようなものでしょうか?

 いくつかサンプルのリンクを貼っておきます。

 「楽しそう」「若い人が多い」「子育て中でもやっていけそう」などと思ってもらえる工夫が必要です。

 そのために、まず職場の雰囲気が伝わる写真や動画をふんだんに盛り込みましょう。

サンプル

①私が昔働いていた会社です。ペッパー君などを使い職場の楽しい雰囲気が伝わるよう工夫しています。これにより、若い人の応募が増えました。

http://www.best-kaigo.com/

②上と同じ会社ですが訪問看護でママさんナースを募集しています。子育て支援をアピールし小さなお子さんを持つナースが増えました。

http://www.best-kaigo.com/job/nurse-info.html

③こちらは筆者がコンサルをさせて頂いている、訪問介護事業所です。若い人中心のイメージと、子育て支援、障害者ヘルパーの具体的な仕事内容を掲載しています。

先日、未経験の子育てママさんパート二人応募があり大きな戦力になっているようです。

http://sunshine-cs.com/recruit/

 最後に、求人情報サイトはできるだけ切れ目なく利用することをお勧めします。

 できるだけ低価格で長い期間掲載できるサイトが良いでしょう。また、自社ホームページにリンクが貼れるサイトが良いのですが、リンクを貼らせてくれないサイトもありますので注意しましょう。

 Indeedはハローワークのインターネット情報も検索しますので、ハローワークについても3カ月おきに情報を更新し、絶えず求人情報が生きている状態にすることが大切です(3か月以上古い情報は後の方に行ってしまい検索がかかりにくい)。

この章終わり。

 

介護福祉業の人材確保対策 その1

 

1 介護福祉業界の人材不足は深刻

 

 いよいよ介護職員不足が深刻化しています。

 特に訪問介護(障害の居宅介護サービス等を含む)での人員が不足しており、地域によってはサービスが供給できない事態も発生しているかもしれません。

 

 現在、各業界企業の採用意欲は非常に高く、若者を中心に社会全体で人手不足が発生しています。

 そうした中、外国人や高齢者・専業主婦の活用などが各方面で進められていますが、介護・福祉事業の希望者は減る一方であり、新たな人材発掘は難しい状況のように見えます。

 外国人技能実習生制度が始まりましたが、語学力のハードルが高く、現場に迎え入れられるのはかなり先のことになりそうです。

 さらに、中国や韓国など高齢化の問題が顕在化してきている国々に行ってしまっているという声も聴きます。これらの国は語学力のハードルが低いようです。

 

 他の産業が人材確保のために給与水準を上げているのに対して、介護職員の給与水準は処遇改善加算が改定されたとしても、見劣りするのはいかし方がありません。

 特に都市圏では大企業の求人に比べ、かなり不利な状況になり、特に正社員の人材は待遇の良い産業に流れてしまっています。

 

 パート分野でも時給の上昇が進んでいますので、比較的有利であった介護事業のパートも魅力的でなくなっています。

 特に訪問介護のパートは時給が高いものの、業務の難易度が高いためか人材が集まりません。訪問介護を中心とした介護事業の人材発掘をしなければ、地域の介護福祉事業が立ち行かなくなるでしょう。

 

 

2 小さな子供を育てているママさんの活用

 

 そんな中、注目されているのが小さなお子さんを育てているママさんの活用です。

 小さなお子さんがいるお母さんは以下の理由により、就業が難しい事実があります。

 

 ① 核家族化が進み、お母さんが働きに出ると子供の面倒を見る人がいない。特に都市圏ではその傾向が強い。

 ② 保育園不足により地域によってはパートタイム勤務だと保育園に入れない(かといってフルタイム勤務は難しい)。

 ③ 子供の急な病気に対応するために、突然仕事を休まなければならない時があり、職場に迷惑をかけてしまう。

 ④ 母子家庭の場合、行政からの手当などの関係で収入制限があり働き方に調整が必要

 

 などでしょうか?

 

 こうした問題をクリアして、子育てママさんの隙間時間をいかに労働に充ててもらえるか、事業者が工夫することがママさんの活用には大切になります。

 

 子育てをしているとはいえ、子供が保育園に行っている人や、親に面倒を見てもらっている人、専業主婦など事情は様々です。そういた事情に柔軟に対応して働いてもらえるようにしなければならないでしょう。

 

 たとえば訪問介護の場合、サービスに入れる時間に働いてもらえばいいので、シフトでそれぞれのママさんに働きやすい時間で働いてもらえるので有利と言えるでしょう。

 他の事業でも工夫次第でそのような対応が取れると考えます。

 

 

3 子育てママさんを支援する求人対策

 

(1) 保活サポート

 保育園に入園する活動が「保活」です。前述の通り保育園に入園するには就労状況など地域により様々な条件があります。そうした条件に対応した働き方ができるように事業所もサポート体制を取らなければなりません。

 保活サポートの対策としては以下のようなポイントがあります。

 ① 事業所周辺地域の保育園環境・保活環境を調べる(就労条件や保育園の空き状況など)

 ② 一般的に4月入園が有利なので、その数か月前から求人を出し、事業所が保活サポートすることを訴える。

 ③ 地域の行政(区市町村)の子育て支援手当などの政策を調べ、それに対応した就労環境を用意する。

 ④ 育児ママさん対応の求人サイトの利用する。

   例:しゅふJOB https://part.shufu-job.jp/tokyo

 

(2)休日手当を充実させる

 旦那さんがいる家庭では、逆に休日・夜間の方が働きやすいという人もいるかもしれません。そうした主婦にアピールするよう休日・夜間手当を充実させる方法があります。

 訪問介護の場合、休日・夜間は社員対応であったり、パートさんが入れないことが多いと思います。休日・夜間手当を充実することで、パートさんが入りやすい環境を作ります。

 

(3)ライフスタイルに合わせた就業形態

 売り手市場の労働スタイルとしては、会社側が就労者のライフスタイルに合わせていくことが必要になります。

 特にパートワーカーは髪を染めたり、服装が自由であったり、ピアスやマニュキアがOKであったりと、ライフスタイルを受け入れてくれる仕事を選ぶ傾向があります。それは主婦でも変わらないと思います。

 障害福祉の事業の場合、利用者自身が若い人もいますので、相手によっては服装などを気にしない人も多いと思います。利用者に応じてサービス提供先のマッチングを考えれば、働く人のスタイルに合わせた仕事があるかもしれません。

 さらに、家族優先のライフスタイルを積極的に受け入れる就労環境を整えることは必然です。いわゆる「ワークライフバランス」の考え方ですが、これは正社員でも同様の処遇でなければならないでしょう。

 

次回に続く。