訪問看護の実地指導・検査対策 その1

 

訪問看護の指導検査対策について研修を依頼されましたので、準備の意味も含めて、記事にしてみたいと思います。

指導検査は実地検査とも申しますが、当ホームページでも対策の概要について紹介しています。

 

介護事業の場合、どのような事業でも基本的には都道府県と区市町村がそれぞれ検査に入ってきます。

 

それぞれの役所の検査はほぼ似たような内容ですが、それぞれ立場が異なります。

 

≪都道府県の検査≫

主に事業を指定した立場から(地域密着型・総合事業を除く)検査

➡各事業の指定基準に基づいた検査

≪区市町村の検査≫

主に介護保険の保険者の立場からの検査

➡適切な介護報酬算定管理(請求)をしているかの検査

※地域密着型や総合事業、施設事業を除く

 

すべての介護保険事業について以上のフレームは変わりません。

そして、検査は4つの基準に基づき実施されることになります。

1 人員に関する基準(人員基準)

2 設備に関する基準(設備基準)

3 運営に関する基準(運営基準)

4 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(算定基準)

以上の4つです。

 

当然、訪問看護事業所にもこのフレームにより検査が入りますが、都道府県は主に1~3について、

区市町村は4について、集中的にチェックしてきます。

これは先に述べた、それぞれの立場の違いからくるものです(指定権者と保険者)。

 

各基準におけるチェックポイント

さて、訪問看護の実地検査においてそれぞれの基準がどのようにチェックされるのか、

そのポイントと完備しておかなければならない書類等について、押さえておきましょう。

なお、ここでは病院や診療所の訪問看護ではなく、いわゆる「指定訪問看護ステーション」について、

説明することとします(定期巡回・小規模多機能に併設する訪問看護も除きます)。

1 人員に関する基準(人員基準)

人員基準のポイントは2点です。

(1) 看護職員(訪問看護員)は常勤換算で2.5人

(2) 管理者は常勤で保健師または看護師でなければならない

ここでよく問題になるのは、「常勤換算」ということです。

「常勤換算」とは訪問看護員として従事しているスタッフの稼働時間を足しあげて、

常勤職員が労働するべき時間(通常週40時間~35時間程度)で割った数字ですが、

詳しくは「常勤換算計算シート」(ダウンロード➡常勤換算計算シート 病院用ですが介護でも同じです)をご覧ください。

 

以下、人員基準で注意するべき点を上げておきます。

① 管理者は看護職員として換算できない

② 訪問看護サービスを提供していない時間は換算できない(移動時間を除く)

だとすると、小さな事業所や立ち上げたばかりの事業所で2.5人は無理ではないかと思えます。

まず、管理者の管理業務は1日1時間でもかまいません。

のこりの7時間は訪問看護員として働いていることにできます。

また、利用者が少なく実働時間を足しあげても2.5人にならない場合、

実態として訪問看護員が待機状態であり、利用者がいればいつでもサービスに入れる状態であれば、

実働時間と同じであるとみなしてよいことになっています。

しかし、待機状態になっていない場合(例えばどこかに出かけていたりしている場合)は換算できませんので注意しましょう。

ちなみに、このポイントは訪問介護の場合も同様です。

 

もしも、常勤換算で2.5人分を満たしていない場合は最悪の場合は指定取り消しの可能性もありますので、大変重要な基準です。

スタッフの勤務状態は適切に管理する必要があり、管理がずさんだと行政側が怪しみ、細かいところまで突っ込んでチェックされますので、

以下に挙げる書類は適切に完備しておく必要があります。

≪完備すべき書類≫

① スタッフ全員の免許証の写し

② スタッフ全員の出勤簿

③ 毎月の「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」 見本ダウンロード➡ 勤務形態一覧

④ 訪問シフト表

⑤ サービス提供表などのサービス提供実績がわかる書類

以下、場合によってはチェックされる書類(上の書類で怪しいところがある場合など)

① スタッフ全員の雇用契約書(労働条件通知書)

② スタッフ全員の給与明細または給与支払いを証明できる書類(銀行振り込み票など)

③ 登録スタッフの連絡先(場合によっては本人に勤務実態を確認される)

 

 

2 設備に関する基準(設備基準)

次に設備基準のポイントです。

(1) 事務室が共用の場合は、訪問看護ステーションとしての専用区画が必要

(2) 相談スペース・感染症予防の手洗い所・鍵付き書庫の完備

 

注意すべき点は以下の通り。

① 相談スペースは遮音効果のあるパーテーション(カーテンはダメ)により相談者(利用者など)の

プライバシーが適切に保護できるようになっている

② 感染症予防の手洗い所は実態として感染症予防効果が期待できる設備でなければならない

①については、個室が確保できていればOKですが、フロアーをパーテーションで区切って相談スペースとしている場合、模様替えなどによって、指定申請時と変わってしまっていることがよくあります。

東京都などでは指定申請時に写真により厳しくチェックされるポイントです。

もしも、適切でない場合は改善するように指導されます。

 

②については手洗い所が給湯スペースなどである場合、本当に感染症予防の手洗いが適切にできるかチェックされます。

また、トイレ内の手洗い所は認められない場合もあります。

手洗い場所に消毒液やペーパータオルがきちんとあるか確認しましょう。

 

設備基準に書類チェックはありません。

すべて現場の立ち入り検査によりチェックされます。

指導検査の連絡が来たら上のようなポイントをチェックし、適切でない場合は改善しておくようにします。

 

残りの基準の説明は次回行います。

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