訪問介護で特定事業所加算を算定している場合、実地指導チェックされる書類について

特定事業所加算の根拠となる書類・記録について

 

【根拠となる記録・書類】

(1)体制要件

①「年間研修計画」「個別研修計画」「研修報告書・出欠簿(研修参加を確認できるもの)」「補講実施報告書」等、職場内研修の実態が分かる書類

  • 注意点:

事業所の研修体制及び、訪問介護員(非常勤を含むすべての訪問介護員)ごとの研修計画、当該研修計画に基づく研修の実施状況(又は実施予定)が確認できる書類です。例えば以下のような計画書が必要です。

例:個別研修計画

訪問介護員ごとの研修計画は、当該訪問介護員と管理者やサービス提供責任者が共通認識を持って作成すると良いでしょう。その人の具体的な課題を克服するような内容で計画にします。例のように、社内研修を月に1回、定期的に開催し、個別の研修計画と連携させます。例では個別の目標に対して年間計画で、本人が該当する研修の担当となり、自ら知識を深め、技術を磨くようになっています。なお、その際、勤務の都合等で出席できなかった職員の補講状況についても確認できることが必要です。

 

②ケアカンファレンス=ケース検討会議の「会議日程表」「会議次第」「会議議事録」「利用者に関する情報を伝達した文書(会議資料等)」「会議出席者名簿」等会議の実態が分かる書類

  • 注意点:

利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達、又は当該訪問介護事業所における訪問介護員等の技術指導を目的とした会議が定期的に開催されていることが、確認できる書類になります。

毎月の研修の際に同時に開催すると良いと考えます。具体的には毎月ケアプランの更新者を中心に心身状況の確認、目標達成状況、サービス内容の変更などの確認を行うと良いでしょう。また、その際にヒヤリハット報告や困難事例検討会なども併せて開催し、その資料や記録を保管しておきます。

朝礼、夕礼で情報伝達などを行っている場合は、その内容を簡潔にノートなどに記録しておくと良いでしょう。

 

③「サービス手順書(指示書)」「サービス提供記録」「業務報告(日報)」など

  • 注意点:

サービス提供責任者が、当該利用者を担当する訪問介護員等に対し、当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を、文書等の確実な方法により伝達してから開始するとともに、サービス提供終了後、担当する訪問介護員等から適宜報告を受けていることを、確認できる書類です。

サービス提供責任者が作成したサービス手順書には担当する訪問介護員の確認サインや押印があると良いでしょう。業務報告(日報)はサービス提供責任者ごとにノートにしても良いですし、メールでも構いませんが、サービス提供責任者ごと又は利用者ごとに印刷し、ファイルしておくことが大切です。

訪問介護員にその日の業務内容について記載してもらう際、以下の事項について変化があった場合は必ず記載するように留意してもらいます(「前回のサービス提供時の状況」を除く)。こうした報告は複数回訪問する場合でも、1日1回取りまとめて記録して構いません。

☆利用者のADLや意欲

☆利用者の主な訴えやサービス提供時の特段の要望

☆家族を含む環境

☆前回のサービス提供時の状況

☆その他サービス提供に当たって必要な事項

いずれにしても、ご利用者の変化など、職員同士が情報伝達を行う場合は、必ず文書(fax・メール可)により行い、それらをサービス提供責任者が確認した旨の記録(サインなど)をした上で、保存整理しておく必要があります。

※ご利用者に変化があった場合の報告文書例

担当訪問介護員 → 担当サービス提供責任者

報告事例_01

 

④非常勤を含む全ての訪問介護員が「健康診断を実施したことがわかる書類・記録」(予定の場合は計画書等)

  • 注意点:

具体的には受診医療機関から発行される健康診断受診者の名簿や受診表(所属するすべての訪問介護員が受診していることを確認できる内容であること)と医療機関への受診料を当該事業者が支払ったことが認められる領収書などです。年一回するたびに毎年保管します。

 

⑤「緊急時等における対応方法」が明示された書類

こちらは通常、重要事項説明書に明記されていると考えます。

 

(2)人材要件

①「職員の履歴書」「労働契約書又は労働条件通知書」「賃金台帳」「出勤簿」「労働者(職員)台帳」等職員の実態が把握できる書類

  • 注意点:

非常勤を含むすべての訪問介護員についてそろえておくことが必要です。これらは会社役員の場合でもサービス提供を行っている人の分はそろえる必要があります。社長でも管理者などを兼務する場合は、最低、出勤記録は必要です。

 

②すべての訪問介護員の「取得資格証(写)」

  • 注意点:

職員が上位資格を取得した場合は速やかに実物の資格証等で確認し、写しを保管します。写しには管理者等原本を確認した人のサインや印と日付を記入しておくとなお良いです。

 

③「サービス提供責任者の実務経歴書」等

  • 注意点:

当該事業所での実務経歴は資格証や労働契約書等の日付などにより確認できますが、他事業所からの転職者は実務経歴証明書を前職場から発行してもらう必要があります。

 

(3)重度要介護者等対応要件

①全利用者の「介護保険証(写)」(算定期間を通じて)

 介護保険証の写しには原本を確認した日付と確認者のサイン等があると良いでしょう。

 

②「認知症該当利用者の主治医意見書(写)」

 日常生活自立度のランクを確認します。ケアマネから頂く必要があるかもしれません。

 

③「利用者名簿と要介護度分布のわかる集計表」(月毎)

 月毎に整備しておく必要があります。基準を下回る月があった場合は、算定できません。また、届け出が必要になります。

 

④たんの吸引等の業務を行うための登録証(該当事業所のみ)

 

【特定事業所加算(Ⅰ)の場合】

上記書類のすべてを整備しておく必要があります。

【特定事業所加算(Ⅱ)の場合】

上記書類の(1)(2)を整備しておく必要があります。

【特定事業所加算(Ⅲ)の場合】

上記書類の(1)(3)を整備しておく必要があります。

 

【本加算の意義】

 特定事業所加算は質の高いサービスを提供していることにより、クオリティーの高い事業所を差別化するための加算と考えて良いでしょう。しかしながら利用者の負担も高くなりますから、この加算を取ったとしても利用者増につながらない場合があるのが玉に傷です。算定している場合実地指導では必ずチェックされます。

 

 

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