今回は訪問介護の実地指導などでチェックされる各種加算について、整備しておきたい書類などを中心にご説明したいと思います。
必要な書類は事項ごと、利用者ごとにファイルし、日頃から整理しておくと良いでしょう。
介護報酬の加算は算定していても実地指導等で認められなければ、介護報酬の返還になる場合もあります。つまり、加算申請を受理されたからといって、その実態に即した客観的な記録が無ければ、加算は認められないということです。
まず訪問介護事業所、整備すべき必須書類・記録は以下の通りです。これらは原則としてかならずチェックされます(必須書類)。
①訪問介護計画書
②介護給付費請求書
③介護給付費明細書
④サービス提供票、別表
⑤サービス提供証明書(発行している場合)
続いてQ&A形式で加算ごとに必要な書類についてご説明します。書類の名称については主に一般的な名称を使用しています。
Q1:初回加算の根拠となる書類・記録について
A1:
【根拠となる記録・書類】
①「ケアプラン」(当該「訪問介護計画書」にかかわる)
留意点:ケアプランに基づきサービス提供責任者により訪問介護計画書が適切に作成されている必要があります。初回加算を算定している場合は必ず新しい訪問介護計画書が作成されなければなりません。不適切な場合は初回加算が認められないことも考えられます。
②「サービス提供の記録」
留意点:サービス提供責任者が訪問した日時とアセスメント等、状況の把握を行った記録になります。訪問日時や時間は訪問介護サービスの提供時間と同じである必要はありません。
③「利用者の支援経過などサービス導入経緯に関する記録」(同一利用者に初回加算を複数回算定した場合)
留意点:本利用者が新規の利用、過去2か月に当該訪問介護事業所から訪問介護サービスを提供されていないこと、又は、要支援からの要介護への変更など、初回加算の要件を満たしていることが確認できる記録です。再利用の場合、例えば「○月○日~△月△日まで入院によりサービス停止」など、支援経過が記入されていることが必要です。
なお、過去2か月とは月体位の計算であり、例えば、4月20日に訪問介護を開始した場合、同年の2月1日以降に当該事業所からサービス提供を受けていない必要があります。
【本加算の意義】
新しいご利用者に「訪問介護計画書」を作成するための、業務負担に対して支払われる報酬と考えて良いでしょう。なお、前提として料金表や重要事項説明書により加算の説明がされている必要があります。これは他の加算についても同様です。また、初回加算は算定することができる場合は公平性の観点から必ず加算するようにしなければなりません。
Q2:処遇改善加算の根拠となる書類・記録について
A2:
処遇改善加算については新たなⅠが設定され、訪問介護では8.6%という高い加算が設定されるようになりました。これは介護における訪問介護の重要性を鑑みての設定であると思います。以下はこの処遇改善Ⅰを算定する場合のケースです。
【根拠となる記録・書類】
以下は算定期間を通じて整備しておく必要があります。
①「介護職員処遇改善計画書」および「職員への周知方法」がわかるもの
職員向けの通知文書や職場での掲示状況がわかるものなどです。
②「賃金台帳」「給与明細等」原則全職員分
賃金の改善状況が分かる書類です。
③その他以下の書類をチェックされる場合もあります。
「介護職員の処遇改善に関する実績報告書」
「労働保険料等納付証明書(原本)」
「就業規則」
「賃金規定」及びそれらの職員への周知の方法が確認できるもの
「介護職員の資質の向上の支援に関する計画の実施状況がわかるもの(研修計画の実施状況)」
「キャリアパス関係書類」などです。
賃金規定では昇給昇格の仕組みがしっかり規定されている必要があります。
賃金規定で規定されていても実態として職員に周知されていなかったり、実際にそのように運用されていない場合は、加算の返還を命じられる場合もあります。
処遇改善加算の必要書類は通常、計画提出時に揃えて提出していますので、後からそろえるという種類のものではありません。ただし、研修だけは実施状況をチェックされますので、研修の出席簿、研修教材、その他研修の実施状況がわかる書類を整えておく必要があります。
【本加算の意義】
介護職員の賃金改善のための加算ですが、併せて職員の育成体制などを整備することを求めています。広い意味で介護職員の社会的地位の向上を目指していますので、国としても職員への周知を徹底し、より意識を高めてもらいたいのでしょう。
Q3:早朝・夜間・深夜加算の根拠となる書類・記録について
A3:
【根拠となる記録・書類】
①ケアプラン及び必須書類
留意点:当然ながらケアプランに時間設定が無ければ算定できません(緊急時訪問を除く)。
深夜から早朝にかけての訪問では少しでも深夜の時間帯にサービスを開始していれば、深夜加算を算定できますが、そうした時間設定でのサービスが必要な理由、利用者・ケアマネージャーとの合意事項についてはサ担録などで明確に文書化しておき、写しを貰っておく必要があります。
また、加算の対象となる時間のサービス提供時間が全体のサー ビス時間に占める割合がごくわずかな場合においては、この加算は算定できません。
よく問題になるのが、下線部のごくわずかな時間とはどの程度の時間かということです。1時間のサービス時間の中で30分が加算対象時間であればOKなのでしょうか?
実地指導では自治体によって判断が分かれる部分もあるようです。少なくとも全体の時間の1/2以上が加算の時間になっていれば大丈夫だと思いますが、不安な場合は保険者の自治体に確認する方が良いでしょう。
【本加算の意義】
早朝・夜間・深夜労働に対する割増賃金の意義を持ちます。
次回は、特定事業所加算についてご説明します。