スタッフの運動器系トラブル対策
前回の続きです。
6 リフトやスライドボードなどの福祉用具の活用を図る
昨今、老人ホームでは腰痛による退職防止策として、リフトの導入が進んでいます。
訪問介護ではなかなか、そういうわけにはいきませんが、福祉用具相談員とよく話し合い、それぞれの利用者に適した福祉用具を導入してもらうように検討しましょう。
体重の重い利用者など福祉用具の活用が有効なご利用者の場合、ケアマネージャーやご本人によく説明をし、適切な機器の利用を進めるべきでしょう。
そのような我儘は言いにくく、我慢した結果、スタッフが腰を痛めてしまい、サービス提供が継続できなくなった例などが見られます。
スタッフの腰痛予防のための福祉用具の導入は我儘でなく、サービス提供を継続するための適切な方策であると考えるべきです。
7 腰痛対策商品を活用する
最近は腰痛予防の様々な商品が開発されています。
https://innophys.jp/musclesuits(マッスルスーツ)
http://www.morita119.com/rakunie/(腰部サポートウェア)
コストの問題もありますので、導入するかは検討が必要かもしれませんが、いざというときに事業所に一つあると心強いかもしれません。
例えば、おんぶして階段を上がらなければならないようなサービスの時は重宝するかもしれません。
なお、腰痛ベルトなどを日常的に着用することは、筋肉量低下の原因になるため、推奨されません。現場で負荷の高い作業する時だけ着用するのがポイントです。
8 人により業務の内容を調整する
老人ホームではスタッフ全員がある程度一律の業務を実施する必要がありますが、訪問系のサービスの場合スタッフの能力により業務を調整することが可能です。
非力なスタッフには、負荷の軽い業務を回し、負荷の重い業務は体力のあるスタッフに回すことができます。
スタッフの定着のためには、この辺の調整をシフトで行う気遣いが重要になると考えます。また、先にも述べた通り、スタッフが「自分にはこの業務はきつい」と気軽に言える雰囲気が職場にあることが重要でしょう。
業務を適材適所で行っていくためには、女性や男性、若者や高齢者など、バラエティーに富んだスタッフが所属していることが理想ですが、そのためにも、スタッフが職場に定着することが大切になります。
メンタルヘルス ─ 「世話不足の悪循環」の違い
職員のメンタルヘルスは介護事業に限らず、企業が取り組まなければならないこととして、近年クローズアップされています。
しかし、前述したスタッフに対する気遣いが不足していることによる「世話不足の悪循環」をメンタルヘルス対策で解決することはできません。
新人スタッフが仕事のことで悩んでいるのは、厳密に言えばここでいうメンタルヘルスの対象では無いと考えます。
それはスタッフの指導育成体制の問題であり、社内に「職場の悩み相談担当」を設置しても解決しないでしょう。
職場のメンタルヘルスを考える場合、まず、新人スタッフがすぐに辞めない指導育成体制ができている前提で考える必要があります。
精神疾患の職員に対する対応
病気と言えないまでも精神的な負担は退職に直結します。
気分が落ち込むような仕事や職場では継続しようがありませんが、それが仕事や職場によるものかは人によって様々です。
スタッフにとって居心地の良い職場であれば、精神的な負担も最低限なものになるでしょう。しかし、精神疾患はそれだけでは防ぐことはできません。家庭や恋愛など職場とは違う場所に原因がある場合も多いのです。
うつ病や他の精神疾患の状態にあるのに、本人がそれに気づかず(もしくは認めず)医者にかからないために、欠勤や遅刻などを繰り返す場合があります。
このような場合は、適切なメンタルケアが必要になりますが、中小企業の内部だけでは適切な対処はできないでしょう。専門家に任せる必要があります。
費用を負担してあげれば、業務命令として(仕事として)適切な医師の診断を仰ぐことができますので、医師に任せるのがもっともよい方法方です。
本人にどのように説明するかなどは社労士さんと相談すると良いでしょう。
東京都では職場のメンタルヘルスを支援するサイトを開設していますのでご活用ください。
http://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.jp/mental/
年に1回のメンタルヘルスチェックからの業務環境改善
定期健康診断と同様に、年1回スタッフ全員のメンタルヘルスチェックを実施することをお勧めします。チェック表は以下をご活用ください。
http://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.jp/mental/self_care/check.html
ただ単にチェックするだけでなく、結果を業務環境の改善につなげることが重要です。
それがスタッフ定着に繋がります。
また、本人の自覚を促すきっかけにもなります。本当は疲れているのに頑張ってしまっている人や、本人にも気づかない精神の状態をあぶりだしてくれます。
そのため、チェックを人事考課や能力評価と一緒に行うと良いでしょう。
チェック結果について上司と話し合うような仕組みにすることで、より業務環境の改善に繋げることができると考えます。
次回はワークライフバランスについてご説明します。