今回は、今年中に導入される予定の、外国人による介護職技能実習制度について考えてみたいと思います。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147660.html
「外国人技能実習制度への介護職種の追加について」
外国人技能実習制度とは
この制度は平成5年に創設されました。
簡単に説明すると、国際協力事業であり、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としていす。
これまで、農業・漁業・建設業・各種製造業などで受け入れが行われてきました。
最長5年間の在留が可能ですが、その後は帰国して自国の産業に貢献することが求められています。
昨今、一部悪質な受け入れ企業により、賃金の未払いなどの人権侵害行為があり、今年度から実習生保護強化などの面で制度の見直しが行われました。
ここに介護事業が加わることになります。
国内の人材不足対策ではない
国は、この制度が、決して日本国内の労働力不足を外国人で補充して解消することを目的としたものでないことを明言しています。
制度上、在留期間も最長5年であり、その後は帰国しなければなりません。実習終了後の継続在留許可は認められていないのです。
しかし、今回、介護職に関わる議論を見てみると、将来、はっきりとした介護人材供給の制度にしたいという意思が見え隠れします。
それがはっきりしたのが、別に発表された介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格の付与です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150881.html
「介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格「介護」の創設について」
これは、外国人が介護福祉士の試験に合格し、継続的に介護職として働いている間は在留許可が下りるという制度です。
今のところは、介護福祉士の専門学校等に通う必要があり、外国人実習生には適用されないようですが、将来、実習生が介護福祉士試験に合格した場合も認められるのではないかと考えられます。
つまり5年間実習生として働いている間に勉強し、介護福祉士試験に合格した外国人を、継続的に介護人材として確保するという狙いです。
実習生の受け入れをするにはどうすればいいのか
外国人実習生を受け入れるには、監理団体を通して行います。監理団体は商工会や公益法人、協同組合などで、営利目的の団体ではありません。
「介護 外国人実習生 監理団体」で検索するといくつかの団体がヒットしますので探してみてください。
実習生の受け入れには先の人権侵害問題もあり、いろいろな取り決めがあります。また、入管などの手続きもありますので大変複雑な業務が必要になります。監理団体はそうした業務を受け入れ企業と実習生の間に入って取り扱います。また、受け入れ組織に対する指導チェックも行いますので、当然、料金がかかります。
つまり、手続きには結構な時間がかかるようです。また、実習生は現地で日本語教育を1年ぐらい受ける必要があります。介護職についてはまだ制度は始まっていませんので、受け入れたくてもすぐに受け入れることはできません。関心のある方は各監理団体に問い合わせてください。
実習生のコミュニケーション能力はどれくらい?
介護職にはある程度の日本語の能力が求められます。
国は入国時、日本語能力試験のN4レベルを求めていますが、実際に業務をするにはN3レベルが必要と言われています。
N4は「基本的な日本語を理解することができる」レベルです。
【読む能力】
・基本的な語彙や漢字を使かって書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
【聞く能力】
・日常的な場面で、ややゆっくりと話なされる会話であれば、内容がほぼ理解できる。
N3レベルとは「日常的な場面で使つかわれる日本語をある程度理解することができる」レベルです。
【読む能力】
・日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。
・新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。
・日常的な場面で目にする範囲の難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。
【聞く能力】
・日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話しの具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。
実習生はN4レベルで入国できますが、1年程度でN3に受からなければなりません。
基本的には、現地でN4レベルまでの日本語能力を身につけてから日本に来ますが、日本に来てからも日本語の勉強を継続しなければなりません。
もし、介護福祉士試験を受験するにはその上のN2レベル以上(新聞など難しい文章を読んで理解できるレベル)の日本語が必要になるでしょう。
訪問系事業は今のところ受け入れ不可
訪問介護事業所等の受け入れは今のところ認められていません。これはコミュニケーション能力の問題や、日本文化や生活の理解が進まないと、サービスがうまく提供できないであろうということと、一人で訪問するわけですから実習生に対する不利益が起きる可能性が懸念されるからです。
国がイメージしている受け入れ先は、施設系のチームで働くような職場でしょう。実習生が戸惑ってもすぐに指導者がフォローできるような体制が必要だからだと考えます。
受け入れ法人の条件は?
経営が一定程度安定している機関として、原則として設立後3年を経過している機関に限定しています。その他以下の条件があります。
・ 受入れ人数の上限として、小規模な受入機関(常勤職員数 30 人以下)の場合、常勤職員総数の 10%までとする。つまり、常勤職員が10人であれば受け入れ人数は1人までです。
・ 受入れ人数枠の算定基準として、「常勤職員」の範囲を「主たる業務が介護等の業務である者」に限定する。
・ 技能実習指導員の要件として、介護職として5年以上の経験を有する介護福祉士等を求める。
なお、給与に対する補助金はありませんが、厚生労働省関係の助成金が利用できる可能性があります。監理団体に問い合わせると良いでしょう。
小規模事業者にはあまりメリットは無い?
結局、介護職の常勤職員が10名程度の小さな企業の場合、1人の実習生しか受け入れができません。そのために、先に述べた煩雑な業務を行い、さらに監理団体に費用を払うことはあまりメリットは無いかもしれません。
大規模な企業や社会福祉法人がある程度の規模で実習生を受け入れることはメリットがあるでしょう。
小規模事業者にとってメリットが出てくるのは、こうした実習生達が介護福祉士に合格し、継続的に介護職として働けるようになってからだと思います。おそらくそうなれば訪問介護などでも働けるでしょう。
つまり5年先にこの制度によって、外国人介護職がどれだけ増えているかがキーになると思います。