中小企業による介護事業参入ガイド その3-金属加工からの参入で月商300万円以上

◆工業団地の中の介護事業所

 

筆者がお世話させていただいている株式会社ナックは神奈川県綾瀬市で金属加工を営んでいる製造業の企業です。

http://www.kk-nac.co.jp/

 

近隣は流通倉庫や工場が並ぶ工業団地。介護事業所があるようなイメージはありません。

しかし、2014年に開業以来、3年たらずで、月の売り上げが300万円を超える訪問介護事業所に成長しました。

事業所名は「さんしゃいんヘルパーセンター」。訪問介護事業と障害者居宅介護事業を行っています。

http://sunshine-helper.com/

 

さんしゃいんヘルパーセンターとしての従業員は常勤非常勤併せて20名程度ですが、製造部門も合わせると、40名程度。社員の数名は介護部門と製造部門を兼務しています。

 

 

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外観は金属加工会社です

 

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事務所は共用

 

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事務所の隣には加工済みのアルミホイールが並ぶ

 

◆最小限の資源投資で継続的な事業化に成功

 

円高などによる製造業不況の中、株式会社ナックの中島社長は、社会に貢献できる事業として、今後の成長が期待できる介護事業の参入を決めました。

 

自分の会社でどんな介護事業ができるのか、筆者にもご相談頂きました。ナックが参入する介護事業として筆者が提案したのは、訪問介護事業・障害者居宅サービス事業でした。理由は以下の通りです。

 

1 最小の投資で事業化できる

事業用地などがあれば、老人ホームなどの経営が可能かもしれませんが、そうした資源はありません。最小の事業投資で実現できる介護事業としては訪問介護事業が最適です。

 

2 事務所などの施設設備を製造業と共用できる

事務所は製造部門と共用できます。椅子や机も同様です。相談室は社長室を活用しました。

 

3 人材を製造業とも共用できる

事務所は同じですので、訪問介護員が金属加工の職員と兼務できます。事務職員も同様です。最小の人材投資で事業を効率的に進めることができます。

 

金属加工の仕事は受注により業務量が大きく変わります。仕事が無いときは工場が休業になってしまう場合もあります。人材の有効活用はこうした製造業にとっては大きな課題でしょう。

 

自動車業界などの製造業では、製造部門の契約職員や派遣職員の問題が近年クローズアップされました。繁忙期には有期契約職員を雇用し、仕事の無い時期には解除することで効率的に人材を活用する方法です。リーマンショック以降の就職氷河期には大きな問題となりました。

 

介護事業は、今のところ正社員を望む職員は基本的に正社員化できる事業です。介護と製造業をミックスすることで安定的な就労環境を実現できます。

 

4 障害者居宅サービス事業も同時に実施できる

介護保険による訪問介護事業は同時に、障害者向けの訪問介護事業を経営できます。障害者向けの居宅サービスは、近年法的な整備がされ利用率が大きく伸びており、収益の期待できる事業でした。

 

5 訪問介護・障害者居宅サービス事業はサービス供給不足である

訪問介護事業者の多くが人材不足などにより、サービス供給が需要に追い付いていないと感じています。特に障害者居宅サービスは利用申し込みを断っている事業者も多く、供給が追い付いていません。従って現在、必ず仕事のある事業になっています。

 

 

◆社長自ら資格を取得

 

介護事業に参入するにあたり、社長をはじめ主要な職員がまず介護職員初任者研修を取得しました。それにより、介護とは何かということの基本を学びました。

 

介護事業に参入するのであれば、やはり経営者は介護とは何かを学ぶ必要があります。また、訪問介護員は介護職員初任者研修修了者でなければなりませんので、この資格は必須です。

 

ちなみに、東京都では会社の社長でも無料で資格のとれる、資格取得支援事業があります。近年、介護人材不足に対応した行政の支援事業が多く実施されていますので、こうした事業を活用することをお勧めします。

http://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/kaigojinzaikakuho.html

 

ただし、訪問介護事業所に配置しなければならないサービス提供責任者は、介護職員実務者研修の修了者、もしくは介護福祉士でなければなりません。介護職員実務者研修は現状では取得に6か月程度必要です。

 

もし、既存の職員の中に介護現場経験がある職員がいない場合は、新規に現場経験のあるサービス提供責任者を採用する方がベターでしょう。

 

その際、できるだけ優秀なサービス提供責任者を採用するために、周辺の相場より良い待遇で求人を出すことが重要です。

 

ナックでも新規にサービス提供責任者を採用して、訪問介護事業をスタートさせました。

 

 

◆成長の秘密は人材確保

 

訪問介護事業では職員採用がそのまま収益につながる事業です。適切な業務を行っている事業所であれば、人がいる分、必ず仕事が入ってくるのです(それだけサービス供給が不足している)。さんしゃいんヘルパーセンターはこれにより、毎年順調に利用者数を伸ばしていきました。

 

訪問介護事業は夜勤の無い介護事業の中では最も給与水準の高い事業です。国から支給される介護職員処遇改善加算でも、最も加算額が多く、時間当たりの介護報酬も高くなっています。

 

さんしゃいんヘルパーセンターでは周辺の訪問介護事業所よりも高めの報酬設定と好待遇により職員採用を進め、介護人材難の中、新たに10名以上の職員の採用に成功しています。また、都心部では難しい自動車での訪問が可能であることが地域的なメリットです。さらに職員に余裕があるということは、休みも比較的取りやすいことにつながりました。

 

こうした余裕のある経営ができるのも、製造部門との経営資源の共有化による低コストな事業所運営にあると考えます。

 

 

 

 

◆質の高いサービス提供により収益増

 

訪問介護事業では質に高いサービスを提供すると、さらに介護報酬を加算できるしくみがあります。特定事業所加算という報酬で、さんしゃいんヘルパーセンターでは2番目に高いレベルの特定事業所加算Ⅱを取得して収益の向上を図っています。

 

質の高いサービスの実現は当然ながら、地域からの信頼につながります。地域から信頼される事業所には仕事が集まってきます。

 

ここで重要なのは質の高いサービスを提供するには人的な余裕が必要だということです、人的にひっ迫している事業所ではサービス提供責任者などが多忙で、サービス管理がおろそかになりがちです。

具体的には訪問スタッフの相談にのれなくなったりすることで、スタッフの不満が大きくなり、離職率が高くなります。そのため、さらにサービスの質が低下する、悪循環が発生します。

さんしゃいんヘルパーセンターではこれを好循環にするために以下のようなサイクルを意識して事業運営を行っています。
 

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介護事業成長させる「好循環」のサイクル

 

 
最初の立ち上げ時にできるだけ投資を抑えたことで、良い循環に持ち込めたのかもしれません。

さらに人的に余裕のあるレベルの高いサービスの提供は、スタッフの労働意欲の向上にもつながります。

 

今後の課題は、非常勤のパートさんを活用することで、さらに収益率の高い事業にしていくことです。

 

 

 

 

 

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