介護・福祉事業を行う際の融資や補助金について少し調べてみました。
以下は、2016年7月現在の情報です。
1 日本政策金融公庫の融資
世界的な金融緩和状態、日本でもマイナス金利の状況になり、現在、融資がかつてないほど受けやすい状況になっています。
政府としても、起業や新規設備投資にお金を回し経済を活性化させ成長に導きたい意向が強く、日本政策金融公庫でもそうした融資に力を入れているようです。
政策金融公庫では介護や福祉などのソーシャルビジネスに対する融資枠を特別に設けていて、新規に介護福祉事業を始める場合、通常年利1.45%の低金利で資金調達できます。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/social/yushi.html
https://www.jfc.go.jp/n/rate/riritsu_1ran_m.html (利率一覧:担保を付けるとさらに利率が安くなります)
事業経営を自己資金のみで経営される方も多いですが、企業の場合、融資を受けることで事業運営にメリットがあるといわれています。
以下は政策金融公庫で融資を受けた方々のアンケートです。融資を受けて良かったことを回答しています。
会社経営経験の無い方が起業する場合、どうしてもシビアな資金管理ができず、自己資金が潤沢な場合は奔放な経営になってしまう場合も多いようです。融資を受けることで収支に関してシビアになり、金融機関からの事業チェックも受けますので、引き締まった経営ができるとも言われています。
介護福祉事業の場合、融資を受けるには管轄自治体からの事業指定が下りる必要があります。政策金融公庫の創業融資の場合、事業指定が下りれば基本的(過去に返済トラブルなどが無いことが前提です)には融資審査に通るようです。
また、融資を受けるためには創業計画を提出する必要がありますが、指定申請時に作成する収支予算書と経営計画書を利用できますので、比較的簡単です。
2 区市町村の創業融資
区市町村の創業融資は自治体によりさまざまですが、利子を自治体が負担してくれる場合もあります。また、自治体の融資には信用保証料というものが必要ですが、これについても補助制度があります。
区市町村の創業融資を利用する場合は、事業地の区市町村に早めに尋ねてみることをお勧めします。各自治体によって制度が様々で、会社設立のための登録免許税を軽減する制度もあります。会社設立前、起業を検討している段階で相談に行った方が良いでしょう。
以下いくつか事例をご紹介します。ただし、これらは28年度の融資制度です。自治体の融資制度は年度により変わりますので、最新のものをご確認ください。
台東区(利子を区が全額負担)
中野区(商店街で開業すると利子を全額負担)
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/162000/d014367.html
品川区(区の特定創業支援事業に認定されると3年間無利子)
http://www.city.shinagawa.tokyo.jp/hp/menu000025000/hpg000024959.htm
特定創業支援事業者に認定されると会社設立の登録免許税が軽減される自治体は多いです。研修受講などの要件がありますから、起業を検討する段階から開業する地域の自治体に相談に行きましょう。
足立区(2.5%までは利子を補給)
https://www.city.adachi.tokyo.jp/chusho/shigoto/chushokigyo/documents/h28sougyou.pdf
葛飾区(利子負担0.3% 保証料30万まで補助)
http://www.city.katsushika.lg.jp/business/1000071/1005377.html
区市町村の融資は実際に事業を開始していないと受けられないものもあります。政策金融公庫と自治体の融資は併用できます。どちらから先に借りるかは、各自治体の融資制度によりますが、設立資金を公庫、運転資金(主に人件費)を自治体と分けても良いかもしれません。
3 創業に使える補助金
次にご紹介するのは融資ではなく創業補助金の情報です。
新たなニースを創り出す創業に対して、中小企業庁が補助金を用意しています。
創業・第二創業補助金 https://sogyo-hojo-28.jp/
この補助金は、前述の「認定特定創業支援事業を受ける者の事業」のみを対象としていますから、自治体で認定を取ってからの応募となります。
採択されるかどうかは、いかに新奇性と成長性があるかにかかっていますが、Care Biz Supportでは本補助金の応募支援も行っていますのでぜひご相談ください。
各種公募・補助金事業への応募サポート
介護保険のみを収入源とする介護事業のみでは採択の見込みは少ないですが、新たな取り組みを合わせてニーズを創造するような事業であれば、採択の可能性はあります。
この補助金を利用するにはコツがあります。応募期間があり、起業のタイミングをそれにうまく合わせなければなりません。
平成28年度の場合、応募期間が4月中です。また、4月1日以降に起業する場合に限りますので、すでに開業している場合は応募できません。
平成29年度も同じようなスケジュールと予想できます。この補助金を利用したい方は、4月ぐらいに会社設立予定で起業をスケジューリングした方が良いでしょう。
補助率は2/3ですから事業費の1/3は自己負担する必要があります。また、補助金交付後も事業報告など事業運営を管理されますので、しっかりした実現性のある事業計画でなければなりません。単なる机上のアイディアではだめだということです。
以下 平成28年度東京都の介護関係で採択された事例です。(全134件中)
◎介護保険法に基づく訪問介護事業と一般旅客自動車運送事業(福祉限定)の移送サービスを融合させた生活総合支援事業の展開
◎障害のある子どもたちに対する関係機関等と連携した療育事業の実施
◎介護家族と介護士を繋ぐC to Cマッチングサービスの構築
◎障害者、高齢者の移動手段(自動車、電動車椅子)の開発と製造、販売
この他、高齢者向けのフィットネスビジネスもちらほら見えますので、そうしたものとの介護事業を組み合わせられればチャンスはあります。
4 介護資格取得の支援事業
自治体が介護関係の資格を取得する支援を行っています。ここでは東京都の支援事業をご紹介します。この他、区市町村や道府県でも支援事業がありますので、各自治体にお問い合わせください。
東京都社会福祉協議会(東京都福祉人材センター)の各種事業
◎介護職員初任者研修資格取得支援事業
http://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/kaigojinzaikakuho.html#shikaku
介護職場の体験をして介護初任者研修修了資格を無料で取得できる事業です。起業予定の方でも参加可能です。
◎トライアル雇用事業
http://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/kaigojinzaikakuho.html#trial
介護事業所で働きながら介護職員初任者研修の資格を取得できる事業です。期間は最大6か月でその間は契約社員として介護現場で働きます(当然給料も出ます)。介護経験の無い方で介護起業を考えている方も参加できます。ただし、事業参加するためには他の仕事に就いていないことが前提となります。
◎介護福祉士等修学資金貸付事業
http://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/kashitsuke.html
こちらは介護現場で働いている方向けの事業です。介護福祉士の国家試験を受けるために受講必須となっている、介護職員実務者研修の受講費用の貸付制度です。
ただし、介護福祉士合格後、介護事業に5年以上勤務した場合は、返還が免除されます。