通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その4

◆事業運営上必ず整備しなければならない書類Ⅱ

 

今回は業務上必要な書類のうち利用者ファイルの中身についてご説明します。

 

(1)利用者に関する各種書類(基本情報・アセスメントなど)

 

利用者に関する書類は利用者ごとに少し厚めのファイルに整理しておくことが大切です。きちんとしたファイリングできていると、実地指導の際も印象が良く、きちんとやっている事業所として評価してもらえます。

 

以下は、利用者ごとにファイリングしておきたい書類の一覧になります。

 

①連絡記録(支援経過)

個人ファイルの最初の部分に、ご利用者に関する情報や記録をなんでも書き込めるノート形式の用紙を付けておくと良いと思います。

 

ご本人やご家族からのお休みの連絡や、ちょっとした相談、ケアマネージャーへの連絡等をメモします。この記録は連絡の記録であるだけでなく、支援経過にもなりますので、ケアを検討する際、とても重要な情報になります

 

記載する項目は

〇 日付

〇 時間

〇 相手(ケアマネやご利用者)

〇 内容及び対応

〇 受付者氏名

です。

 

いわゆる連絡簿と同じですが、一冊のノートの連絡簿ですべてのご利用者を一まとめに記録するよりも、ご利用者一人一人で連絡簿を分けた方が、記録としては利用価値があります。

まとめたノートですと、支援経過にはなりにくく、実地指導などでは記録が分けられていた方が、この事業所は良いケアをしている印象を得るでしょう。

 

②利用申込書

ケアマネージャーから利用申込書を頂くのが通常の流れかと思います。

利用申込書の内容は特に決まりはありません。

利用を始めるに際して、事業所としてケアマネージャーに提供してほしい情報が簡潔に記入できる様式にすることが望ましいでしょう。

 

あまり、ケアマネージャーに負担をかけない方が営業的にも良いと思いますが、既往歴などの知っておかなければならないアセスメント情報は取得したいものです。

できるだけ簡便に書けるように、チェック式にするなど様式を工夫してください。

様式のひな型はネット上に沢山ありますので使いやすい物を修正して利用しましょう。

 

また、ケアマネージャーが許してくれればケアマネージャーの実施したアセスメントの情報を参考に頂くことも有効です。

しかし、アセスメントはあくまで通所介護事業者が実施しなければならないものですので、ケアマネからのアセスメントをそのまま、自分の実施したアセスメントにしてはいけません。

 

③被保険者証(再掲)

原本確認・絶えず最新のものを保管するよう注意してください。

 

④居宅サービス計画書(1)第1表

第1表には計画に対する利用者の同意の署名捺印欄がない場合があります。

また、サービス担当者会議で渡される計画書原本に署名捺印が未記入の場合があります。署名捺印欄に署名捺印が無い場合は、プラン決定後ファックスなどで署名捺印があるものを送ってもらった方が良いでしょう。

 

1表の様式そのものに署名捺印欄が無い場合は、「サービス担当者会議の要点の写し」に計画が同意された旨の記載があれば良いでしょう。

もしこの記載も無い場合、または原案を修正した場合などは、別途、同意を得たことを確認できる書類が必要ですので、ケアマネージャーから同意書などの写しを貰う必要があります。

 

また、利用期間のものがすべてそろっている必要があります。長くご利用されているご利用者の場合、抜けている場合があります。絶えず最新のものを保管するようにしましょう。

 

利用の長い方のファイルは煩雑になりがちです。古い書類は時々整理して、2年以上前の書類は、年度ごとに全員別ファイルにまとめておいても良いでしょう。5年たったら廃棄するスケジュールで良いと思います。

 

⑤居宅サービス計画書(2)第2表

2表では、通所介護計画書との整合性が問題になります。

通所介護サービスを利用する目的と長期目標・短期目標が、通所介護計画書の利用内容や長期・短期目標と合っている必要があります。

 

ただし、通所介護計画書の長期・短期目標の記載内容がケアプランに一字一句同じである必要はありません。より具体的な記載内容になっているなど、整合性が取れていればOKです。

 

当然、ケアプランに無いサービスが通所介護計画書にあってはなりません。

例えば入浴が必要なのに2表に記載がない場合は、修正してもらう必要があります。入浴サービスの記載がない場合は、入浴加算の返還になります。

 

⑥居宅サービス計画書(3)第3表(週間サービス計画表)

こちらも、通所介護計画書と合っている必要があります。違っている場合は必ず修正してもらいます。

また、保険給付単位のサービス提供時間と計画書の所要時間が合っていないと、給付単位を修正し返還しなければならない場合もありますので、注意しましょう。

 

⑦居宅サービス計画書第4表(サービス担当者会議の要点の写し)

サービス担当者会議に出席していない場合は、かならず「サービス担当者に対する照会(依頼)内容等 が記載されていることを確認します。

 

4表に自事業所の照会内容が記載されていない場合もありますから、できれば照会された際の文書を控えておくと良いでしょう。

 

⑧アセスメント1(基本的な情報)

通所介護のアセスメントの内容には特に決まりはありませんが、必ず、自事業所で実施しなければなりません。ケアマネジャーからアセスメントシートを貰えてもそれでアセスメントを実施したことにはなりません。

 

必ず何らかの様式を使い利用者の心身の状況を把握することが必要ですので注意しましょう。

 

以下はケアマネージャーが行うアセスメントの「課題分析標準項目」です。こうした項目が入っているアセスメントシートを入手し利用しましょう。

 

1.基本情報に関する項目

No. 標準項目名 項目の主な内容(例)
1 基本情報(受付、利用者等基本情報) 居宅サービス計画作成についての利用者受付情報(受付日時、受付対応者、受付方法等)、利用者の基本情報(氏名、性別、住所、電話番号等の連絡先)、利用者以外の家族等の基本情報について記載する項目
2 生活状況 利用者の現在の生活状況、生活歴等について記載する項目
3 利用者の被保険者情報 利用者の被保険者情報(介護保険、医療保険、生活保護、身体障害者手帳の有無等)について記載する項目
4 現在利用しているサービスの状況 介護保険給付の内外を問わず、利用者が現在受けているサービスの状況について記載する項目
5 障害老人の日常生活自立度 障害老人の日常生活自立度について記載する項目
6 痴呆性老人の日常生活自立度 痴呆性老人の日常生活自立度について記載する項目
7 主訴 利用者及びその家族の主訴や要望について記載する項目
8 認定情報 利用者の認定結果(要介護状態区分、審査会の意見、支給限度額等)について記載する項目
9 課題分析(アセスメント)理由 当該課題分析(アセスメント)の理由(初回、定期、退院退所時等)について記載する項目

2.課題分析(アセスメント)に関する項目

No. 標準項目名 項目の主な内容(例)
10 健康状態 利用者の健康状態(既往歴、主傷病、症状、痛み等)について記載する項目
11 ADL ADL(寝返り、起きあがり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄等)に関する項目
12 IADL IADL(調理、掃除、買物、金銭管理、服薬状況等)に関する項目
13 認知 日常の意思決定を行うための認知能力の程度に関する項目
14 コミュニケーション能力 意思の伝達、視力、聴力等のコミュニケーションに関する項目
15 社会との関わり 社会との関わり(社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感等)に関する項目
16 排尿・排便 失禁の状況、排尿排泄後の後始末、コントロール方法、頻度などに関する項目
17 褥瘡・皮膚の問題 褥瘡の程度、皮膚の清潔状況等に関する項目
18 口腔衛生 歯・口腔内の状態や口腔衛生に関する項目
19 食事摂取 食事摂取(栄養、食事回数、水分量等)に関する項目
20 問題行動 問題行動(暴言暴行、徘徊、介護の抵抗、収集癖、火の不始末、不潔行為、異食行動等)に関する項目
21 介護力 利用者の介護力(介護者の有無、介護者の介護意思、介護負担、主な介護者に関する情報等)に関する項目
22 居住環境 住宅改修の必要性、危険個所等の現在の居住環境について記載する項目
23 特別な状況 特別な状況(虐待、ターミナルケア等)に関する項目

 

ただし、通所介護の場合、上記以外に、「機能訓練」や「口腔機能」のアセスメントが必要になる場合があります。加算を取得している場合は必ず必要です。加算を取得している場合に必要な書類は最終回にご説明します。

 

⑨アセスメント2(サービスを利用してから調査する体力測定など)

サービスを開始してから実施する体力測定の内容もアセスメントになります。

機能訓練加算を加算していない場合でも、体力測定を実施している事業所は多いのではないでしょうか。

 

通所介護での運動は今後ますます重要になります。認知症のご利用者の多い事業所でも積極的に運動サービスを提供する必要がありますので、通所介護事業所であれば、できるだけ体力測定を実施したいものです。

 

体力測定は、毎月、継続的に実施することで重要なモニタリングになります。長期・短期目標の評価材料にもなります。

 

事業所によってはこうした記録を個別ファイルにせず、他の利用者と一緒にファイルしている場合がありますが、できれば個別にファイルしておいた方がケアの内容が良くわかり、実地指導などでは好印象につながるでしょう。

 

標準的な測定の項目は以下の通りです。

〇握力

〇開眼片足立ち時間

〇5m間(通常・最大)歩行

〇Timed up go

〇下肢筋力(可能であれば)

 

実際の測定方法については以下のマニュアルをご参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1d.pdf

「運動器の機能向上マニュアル」東京都老人総合研究所

 

 

次回は、通所介護計画書など業務上必要な書類の続きをご説明します。

 

 

 

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