介護福祉事業開業ガイド(他事業からの参入編)その1

 

 今回から他の業種から介護福祉事業へ参入する方法についてガイドしたいと思います。

 特に、中小企業事業者が参入しやすい事業ですので、その点を留意してご説明できればと思います。

 

介護福祉事業の参入メリットについて

 

①国の社会保障システムに組み込まれた安定事業である

 高齢者や障害者の生活を保障する仕組みは、先進国では当然のシステムであり、国が責任をもって保障しなければならない事業です。

 そして、我が国はこの分野の整備が他の先進国よりも遅れており、今後さらなる充実が要請されています。

 今のところ筆者が開業をお手伝いした会社のほとんどが継続的に事業を経営しています。

 

②地域に貢献できる事業である

 たとえば、親の代より地域に根差して経営をされているような中小企業であれば、地域における存在感がより増す事業であり、将来にわたり地域での存続を可能にします。

 

③女性が活躍できる職場である

 女性が生き生きと仕事ができる職場を地域に創造することができます。これはワークライフバランスという観点で地域にとって、とても意義があることです。

 

④コスト競争、シェア争いの悩みが少ない

 支援の必要な高齢者や障害者は今後おそらく50年程度増え続けます。誠実なサービス提供を続けていれば、コスト削減に頭を悩ませたり、他社とのシェア争いに巻き込まれることはありません。

 国は社会保障費を抑える目的もあり、病院や施設でケアを受けている高齢者や障害者の在宅ケアを強く推進しています。

 そのため、今以上に在宅ケアニーズが高まっていくことが想定されています。

 

⑤開業コストが極めて安い

 もし、事務所などがすでにあるならば、訪問介護や看護であれば、コストはほぼ人件費だけです。

 保育事業などは施設整備に費用が必要ですが、介護は極めて安価に事業が開始できます。訪問介護などで実績を積んだ上で、規模の大きな事業へと着実に展開していくことで、安定した成長が期待できます。

 

⑥自治体の補助金が使える

 地域密着型のグループホームや小規模多機能などであれば、建築費のほとんどが補助金で賄えます。

 土地をお持ちであれば、他の不動産投資などよりも断然有効な活用ができます。

 

 

では、デメリットは?

 

①あまり儲からない

 会社経営で大成功を狙っているのであれば確かに急成長できる業種ではありません。しかし、長く安定的な事業経営を望むのであれば最適です。

 

②人材確保が難しい

 2016年11月現在、介護職の有効求人倍率は3.4倍です。しかし、まったく求職者が来ないわけではありません。介護事業の場合地域での口コミの評判が物を言う場合があります。働きやすい職場づくりができれば、少しずつ人は集まり定着すると考えます。

 人材の確保と定着のノウハウについてはこちらをご覧ください。

「訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術」https://carebizsup.com/?p=827

 この業界ではスタッフの定着に失敗すると経営ができません。経営がうまくいかない事業者の多くが人材が定着しない会社です。

 

③全くの他業種から参入する場合、何も経験が無くて良いのかという不安

 経営者に経験が無くても、スタッフは有資格者の経験者が集まりますので仕事自体は問題ありません。また、経営者も開業前に介護初任者研修などを受講し、3年から5年経営すれば、概ね業界の姿は見えてくるでしょう。

 基本的には閉鎖性のない業界です。未経験でもやる気さえあれば誰でも参入できます。

 

④仕事が大変そう、3K職場である

 確かに(特別養護)老人ホームでの介護では体力が必要な部分もあります。しかし、在宅援助の場合、多くがそれほど体力を必要とする業務ではありません。訪問介護では70代の女性ヘルパーも活躍しています。

 介護現場の3Kイメージの多くは重度の方々のお世話をする施設介護のイメージと言ってよいでしょう。

 むしろ必要なのは対人援助のスキルや医療や障害の知識であり、そうした能力に優れた事業者であれば、キタナイやキケンは仕事として適切に対処できるものです。

 また将来的には、体力の問題も、福祉機器などの進歩で解消されてくると考えます。

 

 

産業構造が大変化しても生き残るために

 

 これからの50年で日本の産業構造は、それまでの50年に比べ劇的に変化すると考えられます。

 例えば、親の代に会社を興し経営を続けてきたが、このまま同じ事業で会社を継続していけるか、不安に感じている中小企業経営者の方には、特にお勧めしたい事業です。

 起業した地域で少なくとも50年は継続的に事業を営むことができます。

 工場や事務所などの経営資源も再利用できますし、従業員も雇用し続けることが可能です。

 

 次回は、具体的などのような事業参入が可能なのかをご説明します。

 

 

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その9

人材確保にとって重要な事業所のホームページ

 

 これまで、述べてきた働きやすい職場づくりを実践しても、それをアピールしなければ人材は集まってきません。

 また、求人誌やハローワークに載せる求人情報ではどのような職場かを知ってもらうには限界があります。

 そこで活用したいのが会社や事業所のホームページです。

 

 介護事業所のホームページは主に利用者やケアマネージャー向けにサービス内容の紹介や、事業所の場所などを紹介するために作成されていることが多いでしょう。

 しかし、仕事を探している人にとっては、このホームページが非常に重要な情報源となることを認識しなければなりません。 

 仕事を探している人は、求人誌やハローワークで求人情報を見て興味を持った場合、ほとんどの人がその会社や事業所のホームページを検索して、どんな職場なのかを知ろうとします。 

 そんな時、ホームページが事務的な内容でしかない場合、また、働きたいと思わないような内容であった場合、その人は応募することを控えてしまうでしょう。

 ホームページの内容が充実していて、職場の雰囲気が良く伝わってくるようなものであり、「良い雰囲気だな」と思えば応募してくれる確率も高いと言えます。

 

 

無料でホームページを作ることもできる

 

 ホームページを作るにはお金がかかると思っている方も多いでしょうが、無料で作成する方法もあります。

 多少のパソコンの知識があれば作成は可能です。

 もちろん作業時間が必要になりますが、外注で作るにしても、人手不足の悪循環から脱出するためには、多少の投資は必要であると考えます。

 

 現況で筆者が使ったことがある無料ホームページ(ウェッブサイト)では以下のものが使いやすかったと感じています。

 多少広告が入りますが、写真などのコンテンツがあれば簡単にホームページを作成することができ、専用のソフトを使うよりも簡単です。

  https://jp.jimdo.com/

 

 他にも無料で作れるサイトは多くあります。どこにするか選択するヒントとしては、自分の好みのテンプレートがあるかどうかで良いと思います。デザインの趣味などが自社にあっているものを選びましょう。

 https://bge.jp/free-homepage/

 

 

どんなホームページを作るのか

 

 ではどのようなホームページを作れば良いのでしょう。

 一言でいえば、「職場の雰囲気が伝わるホームページ」だと思います。

 

 デザインのかっこいいイカシタホームページである必要はありません。そこで働いているスタッフやご利用者の雰囲気が伝わってくるホームページが、人材確保には有効なホームページだと思います。

 もちろん、これまでに述べてきた働きやすさのアピールもしっかり行いたいものです。

 筆者が関わっている会社の例を以下に紹介します。

 

 株式会社ケア・プランニング

 http://www.best-kaigo.com/

 株式会社ナック(さんしゃいんヘルパーセンター)

 http://sunshine-helper.com/

 

 ホームページを作る場合のポイントは以下のようになります。

 

1 スタッフの働いている姿が分かる

 写真はできるだけたくさん掲載することをお勧めします。写真が多ければ多いほど雰囲気は伝わりやすいです。

 その際、ご利用者とスタッフの触れ合いの場面など、仕事が楽しく行われている雰囲気が伝わる写真が、多いと良いでしょう。

 なお、ご利用者の写真を掲載する場合は、許諾を得る必要があります。

   「肖像権使用同意書例」

    http://www.caremanagement.jp/?action_download_detail=true&lid=2681

 

2 求人情報のページを必ず設ける

  ここで働きやすさをアピールします。

 

3 事業所の特徴があれば積極的にアピールする

 上に紹介した株式会社ケア・プランニングでは、小規模多機能居宅介護にソフトバンクのペッパーがいてそれが特徴として前面に紹介されています。なんだか楽しそうな職場です

 

4 スマホで見た場合もきちんと伝わるように作成する

 最近はPCを持っていない人もいますので、スマホでも見られるサイトにしなければなりません。

 

 なお、業者に発注する場合、上記のようなコンセプトを明確に伝えないとステレオタイプな、どこにでもあるようなホームページになってしまう場合があります。

 また、更新のたびに料金が発生してしまう場合もありますから、よく相談して発注したほうが良いでしょう。

 自作の場合はそのリスクはありませんので、自作できたらその方が良いかもしれません。

 

 

各種ネット資源を活用する

 

 ホームページは1度作成したら、求人情報以外あまり更新する必要の無いように作成するのが良いと思います。

 そのかわり、FacebookやInstagramなどのSNSを活用し、イベント情報や日々変わる情報をアップしていきます。

 ホームページにリンクしたり埋め込んだりすることで、訪れた人に事業所の動きが伝わるようにしましょう。

 

 また、YouTubeなどに動画をアップしてホームページ埋め込むのも効果的ですホームページ埋め込むのも効果的です。例えば新人スタッフの紹介など、テキストを入力しなくても簡単にできるので便利だと思います。

 

 訪問介護や訪問看護の場合、仕事の現場を撮影した動画があまりネットにアップされていません。

 仕事の内容を知ってもらうためにも、そのような動画を掲載するのもアイデアだと思います。

 

 

 この回、終了。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その8

今回は求人の工夫について紹介します。

 

求人会社(媒体)選びのポイント

 

 求人売り手市場の現在、企業はあの手この手で人材確保をしようとしています。特にパート人材の確保は難しく、飲食系やコンビニは悪戦苦闘している状況のようです。

 

 そんなとき求人会社(媒体)は何を選べばよいか悩むところでしょう。現状では特にパートスタッフに関してはハローワークに求人を出してもほとんど反応は無いでしょう。

 

 求人会社(媒体)選びは地域によっても違いがありますのでどこが良いとは一概には言えませんし、求人業界が好景気で新規参入者も多く玉石混合の状態です。

 介護求人は四六時中求人出ししていなければ、なかなか人が集まらない状況です。継続的に求人を出し続けるためには、ネット求人の方が有利でしょう。

 ポイントは以下のように整理できると思います。

 

1 ハローワークには一応出しておく(3か月ごとに更新)

 最近、ハローワークの求人検索のデータベースにリンクを張って求人情報を掲載している民間サイトが増えています。

 その意味でもハローワークには一応掲載し、定期的に更新しておく姿勢が必要でしょう。更新しないと優先順位が下がってしまいます。

 

2 掲載無料の成功報酬型の求人会社(媒体)を選ぶ

 掲載課金型は掲載料が掛かるだけですが、掲載期間が終わると再度掲載しなければならないので継続的に求人を出すにはコスト負担が大きいです。

 応募課金型は応募があったら課金される仕組みですが、面接まで行ったら課金というように、サクラの応募を排除しているような場合はOKですが、単なるネット上の問い合わせにも課金されるようであれば避けた方が良いでしょう。

 採用成功した場合のみ課金される掲載無料の求人サイトをお勧めします。

 

3 地域で強い会社(媒体)があればそれを選ぶ

 地方では大手でなくても求人情報力の強い会社があるようです。介護事業所は地域密着型ですので、地域の人たちに情報が届きやすい会社(媒体)を選ぶことが重要です。

 首都圏は概ね大手が強いため、そのような会社(媒体)は無いかもしれません。

 

4 高額の祝い金を出すような会社(媒体)は緊急時以外使わない

 昨今、看護師などで高額のお祝い金を出す会社(媒体)がありますが、当然費用は事業者持ちです。祝い金を貰ってすぐに辞めてしまうような人もいるようですので、緊急に人材を確保しなければならないような時以外はあまりお勧めできません。

 

5 広告などの露出の大きい会社(媒体)を選ぶ

 求人事業というのは漁業に似ています。魚がいそうなところに網を張ったり、撒き餌をして魚を捕るのが漁業です。求人事業も仕事を探す人を沢山引き付けている会社(媒体)が一番儲かるのです。

 そのためには効果的に網を張り撒き餌を撒かなければなりません。それが広告です。

 テレビや各種媒体で仕事を探している人にアピールしている会社に、やはり人は集まってきます。

 最近この求人会社の広告よく見るな、という会社があったらそこを利用してみるのも手でしょう。

 もしそこが、成功報酬型の掲載無料サイトであれば、それがベストです。

 

 

求人情報の掲載方法

 

 これまで述べてきた働きやすさなどのポイントをできればアピールしたいものです。

 

 具体的には以下のような感じです。

 

「子育てママのための短時間正社員制度あり!!」

「急な子供の病気で休んでも正社員がしっかりフォーロー!!」(パート向け)

「長期有給休暇取得制度あり(10日の長期休暇が取れます!!)」

「パートさんの有給取得支援制度あり!!」

「初心者・介護無資格者歓迎、丁寧に指導しますので不安なく働けます!!」

 

 などなど、差別化できるポイントをアピールできると良いでしょう。

 

 筆者は研修などで、介護の仕事を探している人に求人情報を見る際、注意する点として以下のことを教えています。

 求人をする際、参考にしてください。

 

1 給与は総額よりも公正さが重要

 給与総額が高くても必要に応じ各種手当が公正に出ていなければ結局同じです。介護事業の給与は収入が介護給付ですからそれほど差別化はできないものです。

 高い給与をアピールしてくる会社よりも残業や資格、研修手当や移動手当などが公正に支払われているかが重要です。

 賃金を公正に支給する仕組みがしっかりとしている会社は、人事がしっかりしており、人事がしっかりしている会社は概ね会社自体もしっかりしています。

 

2 年間休日日数の多い会社は働きやすい

 年間休日日数がほかの会社よりも多い会社を選んだ方が、当然休みが多く働きやすい会社と言えます。

 

3 月に1回程度研修がある事業者を選ぶ

 これは問い合わせたり面接で聞くしかありませんが、月1回研修のある事業所は各種加算を算定しているはずですから、収入に余裕があり、他の事業所よりもきちんとしていると考えられます。

 

4 各種支援制度が充実している

 資格取得や産休育休などへの支援制度の充実をアピールしている会社はそれだけ社員を大切にしている会社であると言えます。

 

 

 

 次回は求人におけるホームページの重要性について紹介します。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その7

ワークライフバランスとは

 

 日本では主に政府が主導して男女共同参画の観点から進められている運動です。

http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html

 その背景には少子化問題(国力低下の問題)があり、働きながら子育てしやすい社会の構築が目指されている感があります。

 しかし、何も子育てだけがワークライフバランスの「ライフ」に当たるわけではありません。

 

 人によっては当然ワーク=ライフの仕事人間の人もいるわけで、人それぞれのワークライフバランスがあるでしょう。

 

 人材不足の現況、企業としては「多様な働き方を受け入れていく」ことで、人材を確保することが望まれています。

 この「多様な働き方」というのが人それぞれであり、また、人生のそれぞれの場面でも変わってきます。

 

 女性や高齢者、障害者も含め、さらに人生の様々な場面でその人にとって働きやすい働き方というものがあります。それらをできるだけ受け入れて労働力を確保するということが必要になるでしょう。

 

 この記事で述べてきた、スタッフの定着のための様々な方策も、まさにワークライフバランスの充実のための方策と言って良いでしょう。

 

 

介護の職場はワークライフバランスに適した職場

 

 「多様な働き方を受け入れていく」という意味では、介護職場はそれを実現しやすい職場です。その辺のことは既に述べてきました。

 男性の場合、給与が安いという意味で一生の仕事ではないという人もいるかもしれませんが、起業すればそれなりの収入を得ることは可能です。

失敗しない介護・福祉起業

 

 ただ、介護企業側がそのことをしっかり認識し、短時間正社員制など、多様な働き方の設定をしっかりと構築し、さらにそれを周りににアピールしなければあまり意味はありません。

 介護事業が多様な働き方ができる職場であることを、経営者がまず認識しなければ、ワークライフバランスの推進はできないでしょう。

 

 

ワークライフバランスを意識した就労制度とは

 

 では介護事業所としてどのような多様な働き方を設定できるでしょう。以下に例を挙げます。

 

1 短時間正社員

 通常週40時間のところ、週30時間などと短縮しても正社員とする制度です。

 朝晩の保育園の送り迎えなどがあるママさんなどにとってはありがたい制度です。子供に手がかからなくなった時には40時間勤務に切り替えます。

 厚生労働省では「短時間正社員制度導入ナビ」を公開しています。事例紹介では介護事業所の事例も出ていますので参考にしてください。

https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/

 

2 土日祝日休み職員の設定

 訪問介護事業所などは365日営業が多いため、土日祝日が休めないイメージがあります。この点に配慮して、土日祝日が休める正社員制度を設定します。

 ワークライフバランスを意識した場合、このことは大変重要で、子供のいる家庭では土日祝日が休めない場合、家族に対する負担は大きくなります。

 介護職場が人気が無いのはこのことが原因ではないかと筆者は考えています。

 

3 有給休暇の取得奨励制度(パートスタッフも含む)

 有給休暇を計画的に取得させる制度です。

 例えば、年間10日以上の有給休暇取得計画を毎年社員に提出させます。これはパートスタッフにも適用されることが重要です。

 管理者はそれを前提に、年間のシフトなどを設定します。休暇がかぶってしまうような場合はずらしてもらう必要も出るでしょうが、その辺はスタッフ同士で調整しあうような仕組みにすると良いでしょう。

 パートスタッフの場合、勤務年数によって取得できる有休休暇日数が法律で決まっています。支給される給与は、通常その人が1日に貰う給与や平均給与を適用するようです。 

 訪問系介護事業所では高齢のパートスタッフも多く働いています。こうした方々にとってはこの制度はとても人気があります。

 日本人は休むのが苦手な民族のようです。しかし、人生100年時代、人生を楽しみながら長く働くためには長期休暇がもらえることはとても重要なことだと思います。

 

4 産休・育休・介護休業制度の周知と復帰の奨励

 中小企業の場合、女性に子供ができると仕事を辞めなくてはならないという風潮もあるようです。また、子供を産んだ後も育てながら仕事に復帰することに困難さを感じる場合もあります。

 先に挙げた短時間正社員制度などを導入し、妊娠時や復帰後の勤務軽減など、子育てしながら働きやすい職場を社員にアピールすることが大事です。

 若い人たちは産休・育休制度自体があることを知らなかったりします。求人の段階から子育て支援の整備された会社であることをアピールし、管理者などが説明していくと良いでしょう。

 周りに産休・育休・介護休業を取得して復帰したスタッフがいるとより効果的だと思います。

 

5 長期休業の取得制度

 例えば、勤続5年以上の場合、最長1年間、無給にて休業できるというような制度です。学校に通うような場合は、2年から4年に増やす規定も可能でしょう。

 しかし、現在の日本の労働制度の場合、休業中の社会保険の問題などがあり、若干導入はしにくいようです。今後の制度改善が望まれます。

 

 いくつか例を上げさせていただきましたが、上記の制度類を導入するには、職場に人的な余裕があることが大切です。そのためにもスタッフの定着の好循環を生み出していかなければならないでしょう。

 

 なお、このような制度を導入するためには就労規則などを改正しなければなりません。その費用を助成してくれる制度があります。

 また、介護労働者の負担軽減の助成金や仕事と家庭の両立のための助成金もあります。詳しくは社労士に相談いただければと思います。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/teityaku_kobetsu.html

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

 

 

次回は、求人のための工夫について紹介します。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その2

スタッフ世話不足悪循環

 

 サ責や管理者が現場に出ずっぱりの事業所の場合、訪問スタッフが現場で対応に困った時、すぐに携帯電話で相談したくてもサ責や管理者が携帯電話に出られない状況がよくあります。

 

 自分一人で対応できない場合、適切な相談と指導が受けられず、スタッフは途方に暮れてしまうかもしれません。新人スタッフであればそれが原因で職場を辞めてしまうこともあると考えます。

 

 現状では、人手不足で、サ責や管理者がサービスに出なければ、とてもご利用者の対応ができないという事業者が多いのではないかと考えます。

 深刻な介護人材不足がそのような状況を作り上げているのですが、場合によっては収益率を上げるために、責任者が現場に出なければならないという事情もあるかもしれません。

 

 しかし、これがスタッフが定着しない悪循環を作り出します。

 筆者はこれを「スタッフ世話不足悪循環」と呼んでいます。

 

【スタッフ世話不足悪循環】

人手不足(又は収益増圧力)→責任者が現場に出ずっぱり→スタッフの世話ができない→スタッフの不安増幅→スタッフが辞めてしまう→スタッフが定着しない→人手不足

 

 

 

訪問系スタッフが安心して働けるようにするためには相談指導体制の構築が重要

 

 まずは、なんとかして【スタッフ世話不足悪循環】から抜け出さなければなりません。

 そのためにはサ責や管理者の訪問回数を減らすのですが、それなりの覚悟が必要になると考えます。

 

 新規利用者のアセスメントやサービス担当者会議などで、まったく外に出ないことは不可能ですが、朝や夕方などサービス利用の多い時間帯、新人スタッフが単独で業務に入っている時や、困難ケースなどでトラブルの発生が予想される場合など、連絡が入ってくる可能性がある時間帯だけでも、できるだけ電話に出られるように工夫することが必要です。

 もしも、サービス提供責任者が複数在籍していたり、サービス提供責任者でなくても利用者情報に詳しいベテランのスタッフなどがいる場合は、シフトを工夫して、相談を受けられる誰かが必ず事務所で待機できるように体制を整備すると良いと思います。

 

 また、特に新人スタッフに対しては仕事に自信が持てるように、仕事の不安を払しょくできるような相談指導体制を作ることが重要かと考えます。

 事業所の中堅以上の職員はそのことを強く意識しながら新人スタッフに当たるように事業所内のコンセンサスとして確立したいものです。

 

 

気軽に相談できる雰囲気作り

 

 新人スタッフの世話では、管理者やサービス提供責任者だけでは目が行き届かない部分もあります。そのため、在籍するスタッフが全員、新人の相談に積極的に乗れる組織作りができると良いと思います。

 

 単独で仕事をしている訪問系サービスの場合、どうしても他人の仕事に無関心になりがちです。気軽に誰にでも相談できる雰囲気作りをするために、スタッフが溜まりやすい休憩場所や事務仕事を共同でできるような事務室を作るのも良いでしょう。

 

 

相談指導体制の整備には情報共有体制の整備から

 

 訪問介護の特定事業所加算ではスタッフが利用者情報を共有することが求められていますが、訪問系サービスでは、この情報共有体制の構築が相談指導体制を充実させるための要件となってきます。

 

 もしも、現場のスタッフからSOSの連絡があり、事務所に他のスタッフがいて、そのスタッフが実際にその利用者に直接サービスを提供したことが無くても、利用者について少しでも情報があれば、完璧でないとしてもなんとか対応が取れる可能性があります。

 

 事務所にいるスタッフが利用者ファイルの介護経過やアセスメントなどにより状況を把握し、スタッフ同士で話ができることは、現場スタッフにとって非常に心強いことでしょう。一人で現場で悩むよりもずっと安心感があります。

 

 

情報共有体制に必要な利用者ファイル作り

 

 スタッフが悩んだ時、利用者ファイルを見ればヒントが見つかるようなファイル作りが必要です。

 そのために、利用者ファイルにはあらゆる情報ファイリングしておくことが大切になるでしょう。

 サービス提供責任者は現場からの利用者情報を逐一吸い上げ、ファイリングすることが重要です。サ責の第一の仕事は詳細な利用者情報のファイリングと言っても良いほどです。

 そのため、個人ファイルの最初になんでも書き込める用紙をファイリングしておくと良いと思います。記事とともに日付と記入者を必ず書いておきます。

 

 

現状ではネットやクラウドなどでは詳細な情報蓄積は難しい

 

 ネットを使って利用者情報を現場でもスマホなどで見られるようにすることは情報共有のための方法として有効でしょう。

 しかし、紙のファイルとネット上の情報が二つある場合は、情報が分散し、現場で必要な情報が手に入らない場合がありますので注意が必要です。

 

 現状では、スタッフ間でネットで情報伝達をしたとしても、最終的には紙のファイルに一元集約し管理したほうが効率的に情報管理ができるのではないかと考えます。

 

 ネットでの一元管理するためには、利用申込書からアセスメント、診断書や保険証、薬剤情報などもすべてデジタル化してネットにアップする必要があります。作業が煩雑ですしデジタルスキルに秀でた人でないとなかなか管理ができません。

 

 利用者に関する情報はメモも含めてすべてファイリングするやり方が、今のところもっともすぐれた情報共有方法だと考えます。

 

 

効率的なスタッフ会議の開き方

情報共有及びケアカンファレンスとしてのスタッフ会議はスタッフ間の連携を密にする意味でとても有効です。開き方については前回の記事をご覧ください。

 →訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方

 

 

次回はパートスタッフの定着術についてもう少し詳しく説明します。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その1

 

 

現状では訪問系サービスの収益アップにはパートの活用が肝

 

 訪問介護や訪問看護事業では、正社員によりサービス提供するよりも、登録のパートスタッフにできるだけ仕事をしてもらった方が事業収益上プラスになります。

 

 地域や加算により違いますが、例えば身体2(1時間以内)で約4,000円の給付がある場合、パートスタッフであれば人件費が時給換算で1,500円から1,800円といったところでしょう。

 

 しかし、社員の場合、1日、5時間程度訪問サービスができるとして、単純計算で

 一月100時間×4,000円=400,000円の収益になりますが、社会保険や賞与、必要経費を考慮すると人件費としては300,000円程度が必要になると思いますので、収益率はパートスタッフより少なくなります。

 

 これは訪問看護でも同様のことが言えます。

 つまり、訪問系の介護サービスの場合、現状ではパートスタッフが増えた分だけ、収益率が増すビジネス構造となっています。

 

 

しかし労働環境の流れはパート→正社員化?

 

 もちろん、パートスタッフが増えることはサービスの質の低下につながる場合もありますので、きちんとした研修や指導が必要です。そうした質の低下をさせずに、パートスタッフを獲得し定着させることが、今のところ訪問系事業所経営の要諦となっています。

 

 しかし、国は非常勤や契約労働者の正社員化を目指して労働政策を進めている傾向があります。一方で、主婦や高齢な労働者の中には正社員よりもパート労働者として働きたいというニーズもいまだ強く今後の労働環境の方向性は不透明です。

 

 主婦の場合、夫の扶養範囲や所得税控除、社会保険加入の関係でパート労働の方がメリットが大きかったりしますので、年収100万円程度に収入を押さえたいというニーズも強くあります。

 

 とはいえ、人口減少社会の中で、国は年収制限を撤廃して労働力を確保したい方向です。これに対し、主婦やパート労働者に頼っている業界などのからの反対は強く、綱引きが続いている状況です。

 ファミレスやスーパーコンビニなどの業界では、パートスタッフがいなくなれば根本的にビジネスモデルを変えなければなりません。この点は訪問系介護サービス業界も同様のことが言えるでしょう。

 

 パート労働者の扱いがどうなるか注視していく必要があります。

 

 

今後は柔軟な就労環境の構築が重要

 

 筆者は、いずれパート年収上限の撤廃がありえると考えています。

 しかし、もしも、パート年収上限を撤廃し、仮にすべての訪問介護員を正社員化するのであれば、訪問介護給付は今より20パーセント程度増加させなければならないと考えます。

 そうしなければ、事業者の撤退が相次ぐでしょう。介護保険制度の訪問介護サービスは継続できず、日本の在宅介護は崩壊します。

 

 日本のパート労働者を正社員化するためには、日本の労働者全体の賃金の上昇を前提としなければならないと考えます。

 

 20パーセントというのは、具体的には身体2(1時間以内)であれば5,000円程度の給付です。そうすれば、訪問介護員の給与は今のケアマネージャー程度になり、共働きの既婚女性などが働きやすい職業になると考えます。

 

 蛇足ですが、そもそも、ケアマネージャーよりも訪問介護員の方が給与が安いという考え方はそろそろ変えた方が良いのではないかと考えています。

 家事援助が別のサービスに移行し、訪問介護員は身体介護や医療的ケアなど高度なサービスに特化すれば、20パーセントの賃金上昇は吸収できるのではないでしょうか。

 

 訪問介護のサービス内容の高度化と給付上昇を同時に行えば、訪問回数が減りますので、スタッフ不足も解消するかもしれません。正社員化しても日本の訪問介護サービスがとん挫することは避けられるでしょう。

 

 とはいえ、現状のビジネスモデルとしてはパートスタッフを活用するべきですし、訪問系の事業者としてはパートさんを確保し定着させる方策に取り組まなければならないと思います。

 

 また、パートさん獲得定着の取り組みは、正社員の獲得定着の取り組みにも繋がります。今後は、週休3日制や短時間正社員などの制度が整備され、多様な働き方ができる社会になってくると考えていますので、労働者のライフスタイルに応じた柔軟な就労環境の構築がスタッフ獲得の肝となってきます。

 

 

 

訪問系スタッフは不安を感じやすい

 

 それでは現状でのスタッフの獲得定着について、何が重要なのでしょうか。

 

 通所介護や施設サービスと異なり、訪問スタッフは概ね一人で利用者を訪問し、サービス提供をしなければなりません。

 サービス提供責任者や管理者が同行訪問し指導をしますが、最初の方だけです。

 一方、ご利用者の状態は日々変化するものであり、その変化に対応した適切なサービスを提供することが求められますので、訪問介護員や訪問看護師はそれなりの知識と技術が必要となります。

 

 しかし、知識や技術がしっかりしていても一人では対応に悩むことは当然あります。施設など複数でサービス提供している現場であれば、その場で他のスタッフに相談し、対応することができますが、一人ではそうもいきません。当然、仕事に対する不安を抱えることになります。

 

 一人前の訪問スタッフとしてご利用者宅で不安を抱えずに仕事ができるようになるためには、場数が必要ですし、育成にはきめ細かい指導が必要になってきます。そうでなければ、スタッフはずっと不安を抱えたまま働くことになり、職場の定着率は低くなります。

 

 スタッフの定着にはこの不安をいかに解消し、安心して働けるようにするかが重要となります。

 

 次回は訪問系スタッフが安心して働ける職場づくりについて紹介します。

 

 

訪問介護事業所の障害者福祉サービスへの参入 メリットとノウハウ その2

前回の続きです。

 

高齢者サービスと障害者福祉サービスの違い

 

 さて、介護職として、高齢者介護以外経験がない場合、障害者介護は不安に感じるかもしれません。しかし、介護認定を受けている高齢者も障害者には変わりありません。障害の原因が加齢によるものであるだけです。

 もちろん障害の種類によって状況は様々です。そうした障害の理解は学ばなくてはならないでしょう。しかし、介護福祉士であればそうした障害の種別は一通り学んでいるはずです。介護の研修カリキュラムは高齢者以外の障害種別も基本的に網羅していますで、担当した障害者の状況についてきちんとアセスメントし勉強すれば、知識としては十分に対応できると考えます。

 高齢者との大きな違いは、比較的活動性や自立意識が高いため、介護者との関係が対等な場合があります。また、介護サービスを活用しようという意識が高いこと。身体障害者の場合、多くは障害受容のトレーニングを受けていおり、障害とともに生きていくことの覚悟がしっかりできているため。非常にスムーズなサービス提供が可能な一方、精神障害の方などコミュニケーションに課題を抱えている場合も多いので(頻繁に電話がかかってくるなど)、高齢者よりも受容的な態度が必要になるケースも多いようです。

 いずれにしても一人ひとりの心身の状況をしっかりアセスメントして課題解決のアプローチをすることは高齢者となんら変わりはありません。

 

 

利用者獲得方法 

 

 高齢者介護サービスの場合、地域包括やケアマネ事務所へ個別の営業を積んでいかなければ仕事の依頼は来ませんが、障害者サービスの場合は地元自治体の障害福祉担当に挨拶に行くだけで仕事の依頼が来る場合があります。また、高齢者の居宅支援事業所と同じような相談支援事業所があります。高齢者と違い一人の相談支援員が受け持てる利用者数が多く、一人の相談支援員から次から次と依頼がある場合もあります。地域の事業所数も少ないため営業先も少なくて済みます。中には訪問系障害者サービスの事業指定の公示を見て早々に電話をしてくる担当者もいらっしゃいます。地域によっては高齢者以上に需給バランスがひっ迫している状況もあるようです。

 ちなみに、平成26年度全国の訪問介護事業所の数は33,991に対し、障害者の居宅介護事業所数は19,872です。しかし、指定は取っていても実際には障害者サービスの依頼を受けていない(人手不足で受けられない)事業所も多いようです。

 

 

医療的ケアの取り組みにより、特定事業所加算Ⅰの取得 

 

 喀痰吸引や胃瘻などの医療的ケアはハードルの高いサービスと考えている訪問事業者も多いかと思います。しかし、実際にはご家族が日常的に行っているケアであり、介護福祉祉士が適切な研修を受けて行えば、決して難しいケアではありません。

 ケアの研修(3号研修)も基本的な研修は2日で終わりますし、直接ご利用者に対する実地研修もそれほど負担ではありません。

 医療的ケアができるということは、すなわち利用者が重度になるということです。すると、重度者を多くケアしている事業所に加算できる特定事業所加算Ⅰ(20%)が取得できる可能性が出てきます。これは収益上、大きなメリットになると考えます。

 実際、国の方針もあり、病院や施設から在宅生活を目指している障害者の方が沢山いらっしゃいます。そうした方への医療的ケアニーズは非常に高く、事業者が足りない状況と言えるでしょう。

 また、重度利用者は毎日ケアが必要であり、業務のボリュームも大きく、スタッフさえ確保すれば、安定した収益を上げられる仕事であると考えます。

 

 

連携する訪問看護ステーションがあるとメリット大 

 

 これまで施設や病院で暮らさざるを得なかった重度障害者の在宅ケアを実現していくには、家族負担の大きかった医療的ケアを訪問介護員により行っていくことがとても重要です。

 医療的ケアの実地研修にはそのご利用者のケアを行っている訪問看護ステーションの協力が無ければ実施できません。訪問看護師に医療的ケア教員講習(1日)を受けてもらう必要もあります。このため、連携する訪問看護ステーションがあるとサービス提供がスムーズに行えるでしょう。

 既に医療的ケア教員受講者の多くいる訪問看護ステーションと連携できればメリットは大きくなります。さらに、訪問看護師との業務の連携が綿密にできれば、利用者にとって利便性の高いサービスが提供できるでしょう。

 そのため、医療的ケアを多く実施している訪問介護事業所では事業を拡大して訪問看護ステーションに参入しようとしている事業をも多いようです。

 

 

障害者福祉サービスの新たなフィールドへの展開

 

 訪問系の障害福祉サービス事業を手掛けることで、障害福祉サービスのフィールドをさらに広げていくことも期待できます。

 相談支援や就労支援事業はまだまだ不十分であり、特に、精神障害者の社会参加のサポートはかなり遅れているのではないかと考えます。

「障害福祉サービスの体系」厚生労働省

 

 訪問系のサービスから将来、新たなサービス事業へ拡大していくことは経営戦略の面で有望であると考えます。

 最近では児童デイサービスのチェーン展開をする会社も現れていますが、障害福祉サービスは地域自治体との関係が重要です。地域にどのようなサービスが不足しているのか自治体に取材してから事業展開を考えることが必要であると思います。

 最後に、障害者介護を専門に働いている介護人材がいます。そうした人材はこの分野への興味も強く、そうしたスタッフとの出会いが新たな事業フィールドへの展開を可能にしてくれる場合もあるでしょう。

 この回終わり。

 

訪問介護事業所の障害者福祉サービスへの参入 メリットとノウハウ その1

在宅障害者福祉サービスにビジネスチャンス

 

 近年、障害者福祉に関する法整備が進み、それまで家族や医療・公的機関だのみだった障害者介護で、民間サービスが広く利用できるようになりました。

 これまでは一生病院や施設暮らしであった重度の障害者の方でも、在宅サービスを受けながら、家族と生活できるようになるなど、積極的な利用が広がりつつあります。

 そうしたなか、これをビジネスチャンスとして、事業を拡大している民間企業も多く表れてきており、先にご紹介した製造業から参入して3年足らずで月商300万円を超える売り上げを上げている、サンシャインヘルパーセンターも業務の半分が障害者サービスとなっています。障害者サービスが事業成長をけん引してきたと言っても過言ではないでしょう。

 ここでは、従来の高齢者向け訪問介護事業所が訪問系障害福祉サービスに参入するメリットやノウハウについご紹介したいと思います。

 

 

訪問介護と訪問系障害福祉サービスの兼業

 

 指定訪問介護事業所は同時に訪問系の障害者福祉サービスの事業指定も申請できます。

 居宅介護(障害者訪問介護)・重度訪問介護は特に研修などは必要なく、訪問介護事業所の人的資源をそのまま利用して、事業を行うことが可能であり、高齢者とは別の収益源として期待できます。事業所によっては高齢者よりも障害者サービスのウェートが大きくなっている事業所もあります。

 居宅介護、重度訪問介護の他にも視覚障害者のガイドヘルパーである同行援護や知的障害者(児)の行動援護も開業可能ですが、同行援護は、今後、同行援護従業者養成研修を修了することが要件になります。また、行動援護は知的障害者(児)の実務経験が必要になりますので、高齢者の訪問介護事業指定基準をクリアしただけでは開業はできません。

 また、自治体によっては障害児向けの通学支援などの移動支援サービスを独自に導入している場合があり、このサービスを受託することは概ね可能であると考えます(自治体により要件が異なる場合あり)。

 

 

新規立ち上げの事業所にはメリット大

 

 すでに訪問介護事業を開業されている経営者の中には「人手不足で高齢者の訪問介護だけで手一杯。とても障害者の対応までするのはムリ!」という事業者もいらっしゃるかもしれません。しかし、新規に訪問介護事業所を開業する場合は、障害福祉サービスも同時に開業することは大きなメリットがあります。

 現状、訪問系の障害福祉サービスでは、開業当初の利用者が少ない時期に、比較的容易に仕事の依頼が来る可能性が大きく、場合によっては長時間などボリュームの大きなサービス依頼が来ることもあり、経営上非常に助かる部分があります。

 というのも、訪問系の障害福祉サービスは「毎日」や「1日6時間」など一人の利用者に対してのサービスボリュームが大きいケースがあり、特に重度訪問では複数のサービス事業所が共同でサービス提供しているケースもあり、場合によっては事業者足りない状況もあるからです。ただし、長時間サービスでは多少時間単価は低くなります。また、高齢者と同様、最初は困難ケースが回ってくることも多いでしょう。

 一方で、若年の障害者も多いですから、一度サービスに入ると、固定利用者として長い間サービスが継続することもあります。

 

 

障害福祉サービスは今後も拡大が予想されます

 

 実は、我が国の障害福祉サービスはまだまだ不十分であり、社会保障給付の額でもヨーロッパなどの福祉先進国からはかなり後れを取っている状況です。日本では、長い間、障害者支援の主体は家族や行政が中心であり、民間などの外部サービスを利用した広い支援体制がなかなか整わない状況が続いていました。欧米ではノーマライゼーションの考え方が浸透しており、障害により障害者が不利益を被ることは、社会システムに問題があり、障害者は外部サービスを積極的に活用して、自立した生活をする権利があるとされています。

 日本は2014年に「障害者の権利に関する条約」を批准し、制度面でやっと国際標準に到達したといえる状況です。今後、障害福祉サービスのさらなる充実を図ることが国策となっていると考えます。

 

障害福祉サービスの増加率

 

 国民保健団体連合会のデータから、ここ4年のサービスの伸びを見てみましょう。

 訪問系サービスを含めて少しずつ利用が増えています。特に障害児の利用の伸びは非常に大きくなっています。

 こうしたサービス利用の拡大は、国の法律が変わり、今まで障害者ではなかった新たな障害者が増加したり、病院や施設から在宅生活へのシフト、また、今まで外部サービスを利用してこなかった障害者が積極的にサービスを利用し始めたことが要因だと考えます。

 特に障害児を持つ家庭では、家族が直接支援していた状況から、一気に外部サービスを使い始めたという感があり、大変大きな伸びになっています。もちろん、訪問介護事業所の提供する障害福祉サービスでも障害児へのサービスは可能です。

 また、福祉先進国ではそもそもの障害認定の方法が異なり、日本では障害者とみなされない人も多くが障害者としてサービスを受けられる環境があります。(※1)日本でも前述の北欧並みにノーマライゼーションの考え方が浸透すれば、サービスの利用はさらに増えると考えます。

 

≪参考資料≫

http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/18879202.pdf

※1:国際比較からみた日本の障害者政策の位置づけ −−国際比較研究と費用統計比較からの考察−− 勝 又 幸 子(国立社会保障・人口問題研究所)

 

 

次回は具体的に訪問介護事業所が障害者福祉サービスに参入する際のノウハウについてご説明したいと思います。

 

 

 

中小企業による介護事業参入ガイド その3-金属加工からの参入で月商300万円以上

◆工業団地の中の介護事業所

 

筆者がお世話させていただいている株式会社ナックは神奈川県綾瀬市で金属加工を営んでいる製造業の企業です。

http://www.kk-nac.co.jp/

 

近隣は流通倉庫や工場が並ぶ工業団地。介護事業所があるようなイメージはありません。

しかし、2014年に開業以来、3年たらずで、月の売り上げが300万円を超える訪問介護事業所に成長しました。

事業所名は「さんしゃいんヘルパーセンター」。訪問介護事業と障害者居宅介護事業を行っています。

http://sunshine-helper.com/

 

さんしゃいんヘルパーセンターとしての従業員は常勤非常勤併せて20名程度ですが、製造部門も合わせると、40名程度。社員の数名は介護部門と製造部門を兼務しています。

 

 

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外観は金属加工会社です

 

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事務所は共用

 

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事務所の隣には加工済みのアルミホイールが並ぶ

 

◆最小限の資源投資で継続的な事業化に成功

 

円高などによる製造業不況の中、株式会社ナックの中島社長は、社会に貢献できる事業として、今後の成長が期待できる介護事業の参入を決めました。

 

自分の会社でどんな介護事業ができるのか、筆者にもご相談頂きました。ナックが参入する介護事業として筆者が提案したのは、訪問介護事業・障害者居宅サービス事業でした。理由は以下の通りです。

 

1 最小の投資で事業化できる

事業用地などがあれば、老人ホームなどの経営が可能かもしれませんが、そうした資源はありません。最小の事業投資で実現できる介護事業としては訪問介護事業が最適です。

 

2 事務所などの施設設備を製造業と共用できる

事務所は製造部門と共用できます。椅子や机も同様です。相談室は社長室を活用しました。

 

3 人材を製造業とも共用できる

事務所は同じですので、訪問介護員が金属加工の職員と兼務できます。事務職員も同様です。最小の人材投資で事業を効率的に進めることができます。

 

金属加工の仕事は受注により業務量が大きく変わります。仕事が無いときは工場が休業になってしまう場合もあります。人材の有効活用はこうした製造業にとっては大きな課題でしょう。

 

自動車業界などの製造業では、製造部門の契約職員や派遣職員の問題が近年クローズアップされました。繁忙期には有期契約職員を雇用し、仕事の無い時期には解除することで効率的に人材を活用する方法です。リーマンショック以降の就職氷河期には大きな問題となりました。

 

介護事業は、今のところ正社員を望む職員は基本的に正社員化できる事業です。介護と製造業をミックスすることで安定的な就労環境を実現できます。

 

4 障害者居宅サービス事業も同時に実施できる

介護保険による訪問介護事業は同時に、障害者向けの訪問介護事業を経営できます。障害者向けの居宅サービスは、近年法的な整備がされ利用率が大きく伸びており、収益の期待できる事業でした。

 

5 訪問介護・障害者居宅サービス事業はサービス供給不足である

訪問介護事業者の多くが人材不足などにより、サービス供給が需要に追い付いていないと感じています。特に障害者居宅サービスは利用申し込みを断っている事業者も多く、供給が追い付いていません。従って現在、必ず仕事のある事業になっています。

 

 

◆社長自ら資格を取得

 

介護事業に参入するにあたり、社長をはじめ主要な職員がまず介護職員初任者研修を取得しました。それにより、介護とは何かということの基本を学びました。

 

介護事業に参入するのであれば、やはり経営者は介護とは何かを学ぶ必要があります。また、訪問介護員は介護職員初任者研修修了者でなければなりませんので、この資格は必須です。

 

ちなみに、東京都では会社の社長でも無料で資格のとれる、資格取得支援事業があります。近年、介護人材不足に対応した行政の支援事業が多く実施されていますので、こうした事業を活用することをお勧めします。

http://www.tcsw.tvac.or.jp/jinzai/kaigojinzaikakuho.html

 

ただし、訪問介護事業所に配置しなければならないサービス提供責任者は、介護職員実務者研修の修了者、もしくは介護福祉士でなければなりません。介護職員実務者研修は現状では取得に6か月程度必要です。

 

もし、既存の職員の中に介護現場経験がある職員がいない場合は、新規に現場経験のあるサービス提供責任者を採用する方がベターでしょう。

 

その際、できるだけ優秀なサービス提供責任者を採用するために、周辺の相場より良い待遇で求人を出すことが重要です。

 

ナックでも新規にサービス提供責任者を採用して、訪問介護事業をスタートさせました。

 

 

◆成長の秘密は人材確保

 

訪問介護事業では職員採用がそのまま収益につながる事業です。適切な業務を行っている事業所であれば、人がいる分、必ず仕事が入ってくるのです(それだけサービス供給が不足している)。さんしゃいんヘルパーセンターはこれにより、毎年順調に利用者数を伸ばしていきました。

 

訪問介護事業は夜勤の無い介護事業の中では最も給与水準の高い事業です。国から支給される介護職員処遇改善加算でも、最も加算額が多く、時間当たりの介護報酬も高くなっています。

 

さんしゃいんヘルパーセンターでは周辺の訪問介護事業所よりも高めの報酬設定と好待遇により職員採用を進め、介護人材難の中、新たに10名以上の職員の採用に成功しています。また、都心部では難しい自動車での訪問が可能であることが地域的なメリットです。さらに職員に余裕があるということは、休みも比較的取りやすいことにつながりました。

 

こうした余裕のある経営ができるのも、製造部門との経営資源の共有化による低コストな事業所運営にあると考えます。

 

 

 

 

◆質の高いサービス提供により収益増

 

訪問介護事業では質に高いサービスを提供すると、さらに介護報酬を加算できるしくみがあります。特定事業所加算という報酬で、さんしゃいんヘルパーセンターでは2番目に高いレベルの特定事業所加算Ⅱを取得して収益の向上を図っています。

 

質の高いサービスの実現は当然ながら、地域からの信頼につながります。地域から信頼される事業所には仕事が集まってきます。

 

ここで重要なのは質の高いサービスを提供するには人的な余裕が必要だということです、人的にひっ迫している事業所ではサービス提供責任者などが多忙で、サービス管理がおろそかになりがちです。

具体的には訪問スタッフの相談にのれなくなったりすることで、スタッフの不満が大きくなり、離職率が高くなります。そのため、さらにサービスの質が低下する、悪循環が発生します。

さんしゃいんヘルパーセンターではこれを好循環にするために以下のようなサイクルを意識して事業運営を行っています。
 

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介護事業成長させる「好循環」のサイクル

 

 
最初の立ち上げ時にできるだけ投資を抑えたことで、良い循環に持ち込めたのかもしれません。

さらに人的に余裕のあるレベルの高いサービスの提供は、スタッフの労働意欲の向上にもつながります。

 

今後の課題は、非常勤のパートさんを活用することで、さらに収益率の高い事業にしていくことです。

 

 

 

 

 

中小企業による介護事業参入ガイド その2 - 介護報酬改定の逆風

 

 

◆これまでの介護保険制度の変遷

 

日本の医療・介護・年金などの社会保障制度は財政的にひっ迫していることは、この業界の方でなくてもご存知のでしょう。

 

各方面で財源を節約する制度改正が毎年のように行われています。介護保険制度も概ね3年に一度大きな改正があり、前回の改正は 2015年(翌年から実施)でした。これまでの改正の主な経緯を見ると以下のようになります。なお、改正の実施はすべて翌年からになります。

 

(1)2005年改正

●「予防重視型システムへの転換」

・要支援者への「予防給付」を創設

・要支援者のケアマネジメントを「地域包括支援センター」で実施

・区市町村による介護予防事業(地域支援事業)を実施

・特養等の食費・居住費、自己負担化

・地域密着型サービスの創設 など

 

(2)2008年改正

●「法令遵守等の業務管理体制の整備」(2007年のコムスン事件を受けて)

・事業者の立入検査制度の強化

・不正事業者の処分逃れ対策防止 など

 

(3)2011年改正

●「地域包括ケアシステムの推進」

・医療と介護の連携の強化(介護職員等による痰の吸引等の実施など)

・サービス付き高齢者向け住宅の供給を促進

・地域密着型サービスの拡大推進 など

 

(4)2014年改正

●「地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化」

・予防給付を区市町村の地域支援事業に移行

・特別養護老人ホームの入居基準、要介護3以上へ

・一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げ など

 

(5)2018年改正(予想)

●「介護保険費のさらなる節約」

・自己負担枠の拡大(福祉用具など)

・区市町村の役割強化(地域支援事業の拡大)

・区市町村間の競争制導入

 

各年の改正には介護給付費の改正がセットになっており、介護職員の処遇改善対策が毎年強化されています。これまでの改正の流れをまとめると、国の政策の方向性は以下のようになります。

 

●介護保険制度の流れ

①介護保険財源の節約(お金のかからない在宅サービスを優遇)

②介護サービスの質の向上(要介護度を悪化させないサービスを優遇)

③区市町村の役割強化(競争の導入)

 

 

◆流れを見失うと介護事業は失敗する

 

前の回でご紹介した、東京商工リサーチによる2016年1-9月の「老人福祉・介護事業」の調査によると、この時期の介護事業者の倒産理由は以下のようになっています。

 

(1)販売不振51件(前年比2倍増)

(2)事業上の失敗10件(おそらくは人材の流失による事業継続困難)

(3)設備投資過大5件(デイサービスなどの施設開設の際の投資過大)

 

それぞれの原因の中で目立つのは、本業不振のため異業種からの参入失敗(6件)や過小資本でのFC加盟(3件)など、事前準備や事業計画が甘い経営が目立っています。

 

筆者が想像するに、事業を閉じた多くの業者は前述の介護保険制度の流れが見えていなかったのではないかと考えています。

 

 

◆消費者ニーズではなく介護ニーズを見極める

 

一般的な商行為と異なり、介護業界では「消費者ニーズ」ではなく「介護ニーズ」を見極めなければなりません。

 

前述のお泊りデイサービスの例を見てみましょう。

 

お泊りデイサービスは民家型のデイサービスに自費で宿泊ができるサービスで、認知症の要介護の高齢者の家族を中心に、消費者ニーズが高いサービスでした。

 

具体的には、認知症の高齢者の家族の介護負担が大きく、自宅同居が難しくなり、特養は一杯で入居できず、有料老人ホームやグループホームは値段が高くて利用できないケースなどがあげられます。

 

定員10人の小規模事業所でも、毎日宿泊する利用者が3人いれば介護報酬も含めて100万円以上の売り上げが上がり黒字化できるために、FC加盟も含め新規に参入する事業者が多かったサービスです。

 

月数万円の自己負担をすれば、長期間の利用が可能で、高齢者を預けたい家族に人気がありました。その意味では消費者ニーズにマッチしたサービスと言えます。

 

しかし、ここにおける介護ニーズは消費者ニーズとは異なります。具体的な介護ニーズを上げると以下のようになります。

①認知症高齢者に必要なのは、認知症を悪化させず、安心安全に生活できる環境である

②認知症高齢者本人と家族の関係に問題がありそれを解消する必要がある

③行政として防火対策も含め介護の質を保証したいニーズがある

 

お泊りデイサービスは上記のような介護ニーズを解消する仕事をするわけではありません。介護保険制度はこのような介護ニーズを解消する役割を、第一にケアマネージャーに課しています。

 

ケアマネージャーは上記の介護ニーズに蓋をして、消費者ニーズを優先し、安易にお泊りデイサービスを利用するべきではないのです。介護ニーズを叶えるために、一時的にお泊りデイサービスを利用することは良いとしても、継続的に利用することは問題があります。それで介護ニーズが解消されたとは言えないということです。

 

私のお付き合いしている在宅介護事業者のケアマネ事務所では約200名の在宅介護のご利用者をお世話していますが、ここ数年、デイサービスのお泊りを利用しているご利用者は居ません。

 

多くのケアマネージャーは現在、安易なお泊りデイサービスの利用で介護ニーズがかなえられるとは考えていません。同様のサービスを提供する小規模多機能居宅介護の広がりもあり、本サービスは次第に利用者を減らしていきました。

 

 

◆機能特化型デイサービスの苦戦

 

2014年の改正で通所介護の基本報酬が大きく引き下げとなりました。特に、予防給付の引き下げが大きくこれにより倒産に追い込まれた事業者も多いようです。

 

筆者はこの改正により、リハビリ(機能訓練)や入浴専門のいわゆる機能特化型のデイサービスが大きな影響を受けたと考えています。

 

一方で認知症高齢者の積極的な受入れを評価する認知症加算や、中重度者の受入れを評価する中重度者ケア体制加算、個別機能訓練加算などが増額されています。

 

国がこのような介護報酬改定を行った理由もやはり介護ニーズとのマッチングにあると思います。

 

介護ニーズに照らしてデイサービスの役割は概ね以下のように定義できます。

①体力・認知機能低下の予防による要介護度悪化防止

②レスパイトケア(家族の介護負担軽減)

③社会的な孤立の解消や健全な精神活動の促進

 

これらの役割をまとめると「在宅生活を維持するためのサービス提供」と定義しても良いでしょう。

デイサービスでは介護ニーズを叶えるために、機能訓練・食事の提供・健康管理・入浴・口腔ケア・利用者同士の会話・レクリエーション・生きがいづくりなどのサービスを提供します。

 

機能特化型のデイサービスでは、機能訓練や入浴など限定的なサービスのみの提供になるため、デイサービスに期待されている介護ニーズの一部しか解消していないことになります。

 

国としてはデイサービスに上記の介護ニーズをできるだけ多く解消することを望んでいます。逆に言えば多くの高齢者には上記のような介護ニーズがあるにもかかわらず、一部しか解消しないと思われるサービスの報酬を減らしたわけです。

 

また、倒産理由にあるように、リハビリ系デイサービスはトレーニングマシンなどの設備投資が過大になる傾向があります。さらに、お風呂が無い事業所が多いため、入浴ニーズがない軽度の高齢者が多く利用することになりますので、予防給付が減らされたことが大打撃となっています。

 

機能訓練が不要な要介護高齢者など居ませんので、デイサービスを開業するならリハビリ系のデイサービスだという風潮が広がったようで、このサービスは乱立状態にあります。そのため過当競争に陥っている状況も見て取れます。

 

なぜか経営者の中には、オリジナルなビジネスモデルを多地域にチェーン展開することが良いビジネスだという考えがあるようです。しかし、どんなに革新的なサービスでも上述の介護ニーズを解消する役割が無ければ、介護事業としては失敗します。

 

 

次回は人材不足で苦戦する訪問介護に製造業から参入し成功している会社の事例をご紹介します。