通所介護 実地指導で準備しておきたい書類ガイド その1

 

今回は、通所介護事業所の実地指導で準備しなければならない書類ガイドです。

行政の実地指導では「人員基準」「設備基準」「運営基準」に基づき業務チェックがされますが、各基準の文言を見てもどのような書類をチェックされるのか、明確ではありません。

 

我が国の行政業務は「文書主義」という形式をとっており、様々な活動や行為の事実根拠を記録された「文書」により確定させる方式を取っています。

従って、介護事業所の様々な活動も文書により説明しなくてはならず、口頭では根拠になりません。

いくら適切に事業運営を行っていても、記録された文書で説明できなければ認めてもらえません。

 

通常、行政が実地指導に入る時には、事前に準備するべき書類を指示してきますが、必ずしもすべての書類を指示してくるわけではなく、「人事関係書類」などというように、一括りで指示してくる場合も多いようです。

 

ここではそうした書類について網羅的にガイドさせていただきます。

以下は主に株式会社で必要な書類です。

また、今回は通所介護事業所に限定しましたが、他の事業所でも同様の書類が必要ですので参考にしてください。

 

◆会社経営上必ず必要な書類

(1)定款

定款には事業「目的」が記されており、この「目的」が適切かどうかチェックされます。

 

小規模通所介護から地域密着通所介護に移行した場合は修正が必要になります。また、将来、総合事業に移行する際も変更が必要ですので併せて変更登記しておく方が良いでしょう。

以下は介護事業を経営する際の定款の「目的」標記例です。

ただし、介護予防及び地域密着型・生活支援総合事業については各区市町村により指示がありますので、そちらをご確認してください。

サービス名 定款への記載
訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売 介護保険法に基づく居宅サービス事業
夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、地域密着型通所介護事業 介護保険法に基づく地域密着型サービス事業
居宅介護支援 介護保険法に基づく居宅介護支援事業
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設 介護保険法に基づく施設サービス事業(公益法人のみ)
介護予防訪問介護、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護、介護予防特定施設入居者生活介護、介護予防福祉用具貸与、特定介護予防福祉用具販売 介護保険法に基づく介護予防サービス事業
介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護 介護保険法に基づく地域密着型介護予防サービス事業
介護予防・日常生活支援総合事業(訪問型) 介護保険法に基づく第1号訪問事業
介護予防・日常生活支援総合事業(通所型) 介護保険法に基づく第1号通所事業
介護予防支援 介護保険法に基づく介護予防支援事業

 

(2)就業規則

小さな会社(従業員10人以下)でも就業規則は作成したほうが良いと思います。理由は職員の処遇を規定するものであり、処遇改善などの根拠になるものだからです。作成していない場合は実地指導で作成するように指導されることが多いと思います。

また、正社員だけでなくパート職員の就業規則も別途作成したほうがベターかと思います。

就業規則では以下の規定がチェックされます。

 

①勤務時間

正社員=常勤職員の勤務時間がチェックされます。この勤務時間は、いわゆる常勤換算の基準になるもので、通常週40時間以内で規定されていなければなりません。

 

②健康診断の規定

労働安全衛生法では一人でも(常時雇用するパートを含む)従業員を雇用している場合は会社負担により、従業員に年1回健康診断を実施しなければならないことになっています。

介護保険法とは関連しませんが、介護事業所として職員の感染症予防などの観点から、毎年、全ての従業員実施されていることが望ましく、実地指導で指摘される場合もあります。

法定の健康診断については以下を参照してください。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf

 

③個人情報保護

職員が職務上知りえた利用者や家族の個人情報をみだりに外部に漏らさないことを規定していなければなりません。

また、採用の際、その約束を「誓約書」の形で提出させる必要があります。場合によってはこの誓約書をチェックされる場合もあります。

サンプルは以下の通りです。

              個人情報保護に関する誓約書

株式会社  〇〇

代表取締役         殿

 

私、「氏名:               」(以下、「甲」という。)は、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57条)及び株式会社〇〇(以下、「乙」という。)の「個人情報保護規程」の各条項を遵守し、業務遂行することを約束し、本誓約書を提出するものとする。

 

(情報の定義)

第1条 本誓約書における「情報」とは、文書及び口頭並びに物品を問わず、乙並びに乙の利用者、利用者の保護者及び身元引受人等、利用者に関係するすべての個人(以下、「利用者等」という。)より開示された乙の個人情報を含む内部情報及び乙の利用者等に関する一切の情報をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当するものについては、この限りではない。

(1) 相手方から開示された時点で、すでに公知となっているもの。

(2) 相手方から開示された後、自らの責めによらず公知となったもの。

(3) 正当な権限を有する第三者から、開示に関する制限なく開示されたもの。

 

(機密保持)

第2条 甲は、前条に規定する情報について、乙の代表者からの指示なくしては、その情報開示の権限を有しない第三者に漏洩又は開示してはならない。

 

(情報の返還)

第3条 甲は、乙に在職していた間に、甲が保有する乙及びその利用者等から開示された情報に係る記録及びそれを基に作成された一切の資料・媒体を、退職日までに速やかに返還しなければならない。

 

(有効期間)

第4条 本誓約の有効期間は、本誓約書の提出日より退職日以降○年とする。

 

(損害賠償)

第5条 本誓約に違反し、乙の利用者等に損害を与えた場合、乙の就業規則第○○条に規定する制裁の有無にかかわらず、損害賠償の責を免れないものとする。

 

以上、本誓約の成立の証として、本誓約書を1通作成し、甲は乙に記名捺印の上、提出するものとする。

 

平成   年   月   日

(誓約者)  住所:                        

氏名:                       印

 

④昇進・昇格などの規定

処遇改善加算Ⅰを取得している場合は、キャリアパス要件の中で必ず規定がなければなりません。

内容は次に述べる賃金規定とリンクしている必要があります。

 

(3)賃金規定

①昇給などの基準

こちらも、処遇改善加算Ⅰを取得している場合は、規定がなければなりません。

 

②処遇改善加算手当の規定

処遇改善加算をどのように支給するかの規定を定めるよう求められる場合があります。

これまで、処遇改善加算の支給方法は「処遇改善加算計画書」の職員への周知によりその支給方法を知らせる形式がとられてきましたが、今後、賃金規定の中で明確に規定することが求められるようになると思いますので、規定していない場合は早めに規定したほうが良いでしょう。

 

次回、順次、必要な書類についてご説明していきます。

 

 

 

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