強化された新たなキャリアパス要件
今年度から新たな処遇改善加算の加算率になり、新Ⅰの訪問介護では8.6%から13.7%となりました。従来に比べ5.1%の給与アップになります。
単純に(旧Ⅰの処遇改善加算を上乗せしたうえで)これまで月給200,000円であれば、210,200円に増えるわけですが、今後も介護職員の処遇改善は継続されると考えます。
その分、利用者負担が重くなる方向でしょうが、日本の介護サービスを継続していくにはいかし方がない部分もあると思います。
筆者は介護事業を営む上で、加算は積極的に取得し、よりレベルの高いサービスを目指すべきだと考えて、事業をサポートさせていただいております。
そこで今回は、新たなⅠを取得するための要件として、強化された新しいキャリアパス要件も含め、処遇改善加算算定のためのキャリアパス要件全般について、改めてご説明させていただきます。
キャリアパス要件Ⅰ
すでに設定されている要件ですが、新しいキャリアパスとの区別をするためにも内容をご説明します。
次のイ、ロ及びハの全てに適合すること。
イ 介護職員の任用の際における職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。
「任用」とは、その仕事をしてらうことを言います。
ご存知のように処遇改善加算は、実際に介護サービスを提供している職員にしか支給できません(事務やケアマネージャーは対象では無い)。その意味で介護職員としての「任用」要件を定めている必要があります。
よくある例としては、職務の難易度に応じて職位を階層化することです。この階層をキャリアパスと言います。
一般の会社では、平社員、主任、係長、課長、部長などといった出世の階段がありますがこれのことを言います。
介護現場では
①一般介護職 ②主任 ③リーダー職(係長級) ④管理者(課長級) ⑤事業部長
などという職階が考えられます。
【例1】訪問介護事業所
①訪問介護員(ヘルパー2級・初任者) ②主任訪問介護員(実務者・介護福祉士) ③サービス提供責任者 ④管理者 ⑤事業部長
【例2】通所介護事業所
①介護職(無資格、ヘルパー2級・初任者) ②主任介護職(実務者・介護福祉士) ③生活相談員(介護職兼務)④管理者 ⑤事業部長
これらの任用要件を定めていなければならないのですが、要件Ⅰではただ定めていれば良く、客観的な基準などの明確化は求められていません。
また、実際に会社にその職階の人がいなくても構いません。例えば会社の規模がまだ小さく「事業部長」が居なくても設定されていれば良いのです。今後会社が成長した場合にそのような職の人が任用されることを想定していればOKです。
これは、基本的には就業規則や賃金規定で定めますが、多くの場合は賃金規定に定めていることが多いでしょう。
旧Ⅰでは職階への任用を、例えば社長や事業部長が「経験や職務能力を評価して任用する」としていても構いません。
単に下線のことが賃金規定などに規定されていれば良いことになります。
ロ イに掲げる職位、職責又は職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。
イで上げた職階に応じて、基本給が定められていることを求めています。
つまり、出世したら給料が上がる仕組みです。
例えば、月給(月の基本給)が
一般介護職 200,000円
主任 250,000円
リーダー職(係長級)300,000円
管理者 350,000円
事業部長 400,000円
という風に分かれて上がって行けばよく、毎年昇給するような定期昇給の仕組みは求められていません。
この職階による給与設定は基本給でなければならず、賞与などの一時金で設定してはいけません。
ちなみに、厚生労働省は処遇改善加算による介護職の処遇改善は、できるだけ、基本給のアップで行うよう指示しています。
介護職の基本給をなんとか他の業種並みにしたいという国の施策的な要望が背景にあります。
この規定は、パート職員についいてはとくに求めていませんので、基本的には正社員だけ定めていれば良いようです(自治体によっては求めてくる場合があるかもしれません)。
ただ、非常勤職員でも主任級の仕事をしている人に、他の介護職パートよりも高い時給を払っている場合などはこの規定にあたります。
ハ イ及びロの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。
会社の就業規則や賃金規定は社員に公開されていなければなりません。これは「就業規則の周知義務」といい、労働基準法で定められています。
第106条
「使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」
賃金規定は就業規則に付属するものですから、同様に周知義務があります。
つまり、この規定はわざわざ設定しなくても、労基法で決まっているわけですから、事業者は就業規則や賃金規定を社員に周知しなければならないのです。
ところが、就業規則には会社にとって不利な、休暇の規定や休業等の規定が書いてあり、そういう制度を職員に知られたくないという経営者の意向が働きやすく、社員が特に求めなければ就業規則を見せない事業者もいるようです。
こうした風潮は職員の会社に対する不信感を増長させる可能性がありますし、社員の定着率を下げます。ファイルにして職場に置いておくなどして、積極的に周知する必要があるでしょう。
次回はその他のキャリアパスについて解説します。