キャリアパス要件Ⅱについて
この要件はスタッフ研修に関する要件です。
加算を算定するにはスタッフの研修をしっかりやらなければなりません。
次のイ及びロの全てに適合すること。
イ 介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び一又は二に掲げる具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。
「介護職員の職務内容等を踏まえ」ということは、訪問介護や通所介護、そのスタッフが働いている事業所の仕事の内容を踏まえてということですが、実際には、介護福祉士試験の科目に対応した研修を実施すればOKであると思います。
【介護福祉士試験の科目】
1 領域:人間と社会
人間の尊厳と自立
人間関係とコミュニケーション
社会の理解
2 領域:介護
介護の基本
コミュニケーション技術
生活支援技術
介護過程
3 領域:こころとからだのしくみ
発達と老化の理解
認知症の理解
障害の理解
こころとからだのしくみ
3 領域:医療的ケア
医療的ケア
4 総合問題
(ケーススタディー・事例検討)
5 実技試験
(各種介護技術)
詳しくは以下を参照ください。
http://www.sssc.or.jp/kaigo/kijun/attachment.html
特にパートスタッフが多い事業所では毎年繰り返し上記の内容を研修することが良いでしょう。それがサービスの質の向上につながります。
事業所の研修としては月に1回この科目を中心に研修会を実施するのがベストです。
その研修会を中心に、たとえば、管理者やサービス提供責任者、生活相談員、機能訓練の担当者などは、職務に対応した「専門的な研修」を受けると良いと思います。
「専門的な研修」は、事業所内で実施するのは難しいですから、外部の研修、例えば区市町村や社会福祉協議会が実施する研修、民間で実施している研修に参加すると良いと思います。
専門の研修は、年1回でもOKです。
実は月1回研修会を実施すると、特定事業所加算など他の加算が算定できるようになります。この点の説明は以下をご参照ください。
この研修会は「介護職員と意見を交換しながら」となっていますが、基本的には
「利用者のニーズに応じた良質なサービスを提供するために、介護技術、コミュニケーション能力、協調性、問題解決能力、マネジメント能力等の向上に努める。」
といった一般的な内容でOKです。もちろんスタッフからのリクエストに応えた研修内容にしても構いません。
さらに認知症のご利用者が多いグループホームや小規模多機能居宅介護であれば、ユマニチュードなどの特別な認知症の研修を実施しても良いでしょう。
つまり、スタッフが自分たちの介護サービスの向上につながる研修を自分たちで実施していく姿勢が必要になります。
そしてその際、スタッフ一人一人が、自分に今足りない技術・知識の獲得するための目標を設定することが大切です。
「資質向上の目標及び一又は二に掲げる具体的な計画を策定し」というのは、その目標と研修計画を(基本毎年)作成し、実施していくことです。
具体的な「資質の向上の計画(目標を含む)」例を以下に紹介しますので、参考にしてください。
https://carebizsup.com/wp-content/uploads/2017/01/f45ce2a97fb957ab75f2512496ffcfea.pdf
なお、毎月の研修を実施する場合は以下の点に留意することが重要です。
「毎月の研修を実施する場合の留意点」
① 時間外に実施する場合は、正社員には残業手当、パート職員には研修手当などの金銭的補助を実施する。「研修の機会を確保」
② 必ず、出欠表と研修資料を保管しておく(実地指導でチェックされます)。
③ 欠席者には補講を実施する。もしくは事業所ごとなど数班に分けて必ず全員が受講する体制を確保し、補講の実施記録を保管しておく(実地指導でチェックされます)。
一 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT 等)するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。
ここでのポイントは「介護職員の能力評価」です。
「介護職員の能力評価」は様々な方法があり、また、キャリアパス要件Ⅲに出てくる「実技試験」や「人事評価」とも被ってきますので、この研修の要件の部分では、研修と連携している形態で実施するのが良いと思います。
例えば、キャリア段位制度などを利用することも可能ですが、パートスタッフまでは無理ですし、人事評価もしかりです。
パートスタッフまで含めた能力評価を実施するには、先に例示した「資質の向上の計画(目標を含む)」のように、年間の研修計画に付随して、スタッフ個別の目標を設定し、その目標が達成されているかどうかを管理者などが評価する方法が良いと思います。
二 資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。
ここでは先に挙げた、「毎月の研修を実施する場合の留意点」を実施するとともに、外部の「専門的な研修」に参加するための費用負担や休暇(有給休暇)の付与を実施することになります。
また、実務者研修の受講のための費用を会社が負担することや、介護福祉士の試験対策のための費用負担もこれに該当します。
最近では、実務者研修の費用を地域行政が補助してくれる制度もあります。この補助制度を利用することも、この要件に該当するでしょう。
ロ イについて、全ての介護職員に周知していること。
この要件があるのは、つまりパートスタッフも含めて、全員に実施しなさいということです。
ただし、この全員というのは介護職員だけで事務職や看護職・ケアマネージャーなどは該当しませんのでご注意ください。
厳密に言えば、研修を実施することを全員に周知していれば良く、参加しないスタッフがいても構わないように感じます。
例えばパートスタッフが研修に参加できないという事態は現実に起こりえます。
この際、そのスタッフが全体研修に参加しなければならないということを認識しており、それでもなんらかの事情で参加できないということであれば、実地指導などであまりお咎めが無いということも言えます。
まず、正社員については確実に研修を実施するようにしましょう。
これは職務命令であり、資質の向上を怠る社員は罰しなければなりません。
パートスタッフにもできるだけ参加してもらえるよう、継続的に働きかけることが大切でしょう。少しずつでも参加してくれれば、次第にそれが社風となり、必ず良い方向に向かっていくと思います。
そのためにも研修手当の補助は非常に重要だと考えます。
次回は、新たに設定されたキャリアパスⅢについてご説明します。