平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その3

 今回は新しく設定された(キャリアパス要件Ⅲ)について説明したいと思います。

 

新しく追加されたキャリアパス要件Ⅲ

 

 介護職員の平均給与を上げていくための政策として、処遇改善加算が今後も上がって行くかどうかは、介護報酬の基準額の見直しとのバランスで検討されるのでしょう。

 しかし、今回の要件追加を見ると、要件の小出しのように見えますので、今後も加算アップは行われると考えています。

 

 ただ、現状で、たとえば訪問介護の特定事業所加算の要件と処遇改善加算の要件がかぶっている部分があり、二重加算になっている状況も見受けられますから、この辺の整理は行われるような気がします。

 

キャリアパス要件Ⅲの内容は?

 

次のイ及びロの全てに適合すること。

 

介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準

に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次の一から

三までのいずれかに該当する仕組みであること。

 

 イでは3つの要件が示され、そのうちいずれかに該当していれば良いので、今後すべてに該当する要件が加わる可能性があり、加算のアップを行える余白を残しています。

 

 それぞれについて説明いします。

 

経験に応じて昇給する仕組み

「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること

 

 こちらは要件Ⅰの「イ 介護職員の任用の際における職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。」に似ていますが、こちらは職階の設定を求めているのであり、毎年昇給するような定期昇給の仕組みは求めていません。リンク

 

 新要件では、継続的にその会社で働いている人に、定期昇給の仕組みを求めていると言えます。もちろん毎年上がる仕組みでなくとも、3年ごとに昇給でもOKなのですが、一般的には毎年昇給するのが多いと思われます。

 

 また、他の介護会社に転職した場合など、介護の実務経験などを鑑みた(経験年数)給与設定をしなさいということも求めています。

 

 介護士や看護師など同業転職の多い職種では、転職のたびに給与がリセットされてしまう傾向がありますので、他の同業転職した場合でも、実務経験年数を考慮してほしいということでしょう。

 

 これを設定するには給料表を作成する方法が一般的です。

 例として「東京都職員給料表」をリンクしておきます。

東京都職員給料表

 縦軸に「号給」があり横軸に「職務の級」がありますが、「職務の級」が係長などの職階を意味します。そして縦軸の「号給」が定期昇給の区分割になります。これがいわゆる基本給と言われるもので、この上に、資格手当などの手当てが乗っていきます。

 毎年、通常に業務を遂行できた職員は上の号給にアップします。それがいわゆる定期昇給です。

 さらに、中途採用者は経験に応じて適当な号給からスタートとなります。どの号給からスタートするかは個別に判断されます。

 

資格等に応じて昇給する仕組み

「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組みであること。ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。

 

 これは資格手当についての要件ですが、単純に手当を乗せるだけでなく、昇給する仕組となっていますから、職階も資格によって上がる仕組みになっていると良いと思います。

 例えば上の東京都のように1級から5級に職階が分かれている場合、

 無資格、介護初任者研修修了者、ヘルパー2級  →  1級職

 実務者研修修了者               →  2級職

 介護福祉士                  →  3級職

 

 という風に昇給昇格していく仕組みであると良いと思います。

 これと同時に、介護福祉士手当のような資格手当の付与があるとベターであると思います。

 

 ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。というのは、既に資格を取得し、就職してきた人も同様の処遇をしなさいということだと考えられます。

 つまり、介護福祉士の資格を持って就職した人は上の職階の例でいえば3級職からスタートしなさいということです。

 

 たとえば、介護福祉士の専門学校を卒業して入社してきた若い新入社員は3級職の低い号給からの基本給スタートになります。

 

 

一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み

「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。

 

 この要件の中ではもっともハードルの高い要件です。今回の要件設定では3つある要件のどれかを満たしていればよく、本要件が満たされていなくても、新Ⅰは算定できます。

しかし、今後さらなる処遇改善加算の上乗せがあるとするならば、必ずこの要件もクリアしなければⅠは取れないということになるでしょう。

 

 この要件を満たすためには、通常、賃金規定に「定期昇給」要件を明文化します。

 通常は1年間、問題なく業務を遂行できれば定期昇給する」と明文化すれば良いのですが、1年間、問題なく業務を遂行できれば」とは何ぞやということになります。

 

 昇給させるためには、その職員が1年間、問題なく業務を遂行できたかどうかを評価する必要があるのです。

 

 その評価をどのようにするか?

 それが一般的には「人事評価」というものです。

 「実技試験」が入っているのはキャリア段位制度との連携を考慮に入れてのことだと思いますが、現状、キャリア段位制度を定期昇給に反映させるには無理があります。

 なぜなら、定期昇給の評価は毎年、全職員を評価しなければならないからです。今のところキャリア段位制度のアセッサーによる評価を全員に適用することは不可能です。

 

 「介護事業所における人事評価」については次回で詳しく説明します。

 

 

イの内容について、就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

こちらは要件Ⅰの「 イ及びロの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。」と同様の内容です。

平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その1

 

 次回は「介護事業所における人事評価」のやり方について例をご紹介します。

 

 

 

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