小規模デイサービスの営業マニュアル その2

 

7 ケアマネ営業のノウハウ

 保険者である区市町村の介護予防のインセンティブ制度(国が区市町村ごとの介護予防の成果を評価する制度)が始まると、おのずと、ケアマネジャーも利用者の目標達成など、仕事の成果が求められるようになって行きます。
 成果にコミットしてくれる事業所は、益々ケアマネからの紹介が多くなっていくでしょう。具体的には、要介護度を悪化させない効果的なサービスを提供してくれる事業所になりますが、そのためにも事業所の専門的な能力が問われるようになります。また、臨機応変な対応が柔軟にできる事業所も信頼を獲得できるでしょう。

 ケアマネージャーの対応のポイントを上げます。

⦿「人と人」のつながりを大切に

 各ケアマネさんにはそれぞれ特徴や傾向があります。自分の事業所にマッチしたケアマネさんは何人も利用者を送ってくれます。
顔の見える営業で「人と人」のつながりを作れると良いでしょう。

⦿最初の機会を大切にする

 初めてご利用者をお願いされた場合は、全力でサービスを提供できるよう努力します。最初のケースが成功すると二人目の紹介に繋がります。

⦿困難事例が来ても誠実に対応する

 開業当初はスタッフにも余裕があるので対応が可能である場合があります。困難事例に対応すると信頼がグッと増します。

⦿通所介護計画書を必ず渡すこと

 計画書の内容に自信が無い場合はケアマネとよく相談しましょう。

⦿月1回は情報提供を

 ご利用者の情報は月に1度簡潔にまとめて報告します(A4一枚)。その際、ケアマネが必要な情報を適切に報告できるように、ケアマネとのコミュニケ―ションを密にし、しっかりニーズを把握しておく必要があります。
 基本的にはケアプランの目標に対して、利用者様がどうだったかを報告します。その際、サービス提供上どのような工夫や努力を行ったか、どのような変化があったかを必ず書きます。
 ケアマネは毎月のモニタリング業務で利用者の変化を確認する義務がありますから、こうした情報が非常に重要になります。特に認知症のご利用者等、自身で状態を表現できないご利用者の場合は、事業者からの情報は大変重要です。

⦿その他のポイント

① ケアマネが悩んでいることに、自分のデイサービスがどのような解決策を提供できるかを考える。
② 営業ノートを作成し、相談した相手先、相談された内容などをメモしておく。これにより地域のニーズの傾向が見えてくる。
③ 地域のニーズに対応できるデイサービスにカスタマイズしてゆく。

 

8 その他各種営業手法

① 訪問営業

 どうしてもお話がしたいケアマネがいる場合は事前にアポイントを取りましょう。それ以外は飛び込みでチラシや名刺などを配布する方法で良いでしょう。
介護業界は「いい噂」も「悪い噂」も伝播しやすいことを念頭に置き、誠実に営業を行っていきましょう。

② 内覧会・見学会

 新規事業所の場合は開業前に内覧会を実施します。ケアマネが仕事の合間にちょこっと寄れるように平日1週間ぐらいの期間があると良いでしょう。また、地域とのイベントや家族会などでも見学できるようにしましょう。
その他、利用者との同伴見学は何時でも受けられるようにしなければなりません。

③ FAX営業

 同報FAXによる営業は、満員であったが、空きができたときは有効です。小規模な事業所は少しでも空きを埋めなければなりませんので、空きが出たら地域の営業先に同法FAXで「空き情報」を送ります。

④ ブログやSNSを活用した営業

 可能であれば、日々の活動をSNSやブログで配信します。これはケアマネへの営業としてだけでなく、ご利用者様のご家族様への安心感を醸成することにつながります。
毎日でなくても週に1度など、事業所の様子が分かるトピック的な記事でかまいません。

⑤ サービス提供票の配布時に毎月の報告

 毎月の報告は提供票と一緒に送るようにすると効率的です。余裕が無いときはファックスでも良いですが、最初は足を運んで配布する方がベターです。

⑥ カジュアルな勉強会をする

 介護に関する気軽な勉強会を開催して、新たなケアマネとつながります。例えば、外部から専門の講師を招き自デイサービスとかかわりの深い勉強会を実施します。
 例:ユマニチュード・音楽療法・コグニサイズ・要介護者の筋トレなど

 

9 加算の取得

 処遇改善加算や個別機能訓練加算などの各種加算は積極的に取得すべきです。
 利用者の自己負担額が高くなるために、遠慮してしまう事業者も多いようですが、前述通り、今後はケアプランの目標管理が厳しくなってきます。そうした時、ケアマネとしては少しでも成果が上げられる事業を使わざるを得ません。
 「成果が上げられる事業所=質の高いサービスを提供できる事業所」ですから、その意味で加算は一つの指標になります。
 事業所ごとのサービスの特徴に合った加算は必ず取得するように努力しましょう。

 

 

小規模デイサービスの営業マニュアル その1

 

 今回の改正により小規模デイサービスの閉鎖が増えていると言われています。
 筆者のイメージでは、元お泊りデイサービス系の民家型デイサービスや、乱立するリハビリデイサービス(正確にはリハビリでは無く機能訓練です)が苦戦しているイメージがあります。
 特に家賃などの固定費の高い都心部では小規模事業者は非常に経営が厳しいでしょう。
今後生き残っていくためにはどのような経営戦略や営業戦略が必要なのか、今回は特に営業面でのノウハウについて考えてみたいと思います。

 その前に、経営上押さえておかねばならないことを少し整理します。

 

1 家賃などの固定費に見合った経営

 営業の話に入る前に、デイサービスの経営において家賃などの固定費が非常に重要になることを押さえておかなければなりません。現在生き残っている事業所については収支バランス上何とかなっているでしょうが、新規に立ち上げる場合などはできるだけ安い固定費に抑えるよう注意しなければなりません。
 小規模デイサービスの場合は月の家賃が15万円を超えると厳しくなると考えるべきでしょう。

 

2 収支シミュレーションでは利用者の平均介護度は要介護1以下で設定

 また、収支シミュレーションをする場合は、利用者の平均介護度は1程度を目安に収支を計算します。要介護3以上の利用者は特別養護老人ホームの入居資格があり、想定利用者像としては高すぎると思います。
 もちろん、3以上の利用者も対応できるようにサービス設定を行う必要はありますが、収支バランス上は要介護1平均で計算すべきです。
 機能訓練重視でも、看護師が在籍していたり、機械浴施設などがあれば要介護3以上の利用者を対象にできますが、収支計画上は低めに設定すべきでしょう。

 

3 デイサービスの3大機能を確認

 

 営業をする前に、自社デイサービスの特徴を明確化する必要があります。分析については次に説明しますが、サービスの特徴を明確化する前に、以下の3大機能を疎かにしないことが重要です。
デイサービスでは以下の機能を、基本的にどれも疎かにしてはいけません。最低限この3大機能は提供できることが、原則になります。

① 元気になる機能訓練
※運動だけでなく会話やレクリエーション活動を含む、またそのためのバイタルチェックによる健康管理も重要
② レスパイト
※外出による家族の負担軽減だけでなく、自宅での生活も改善させることで家族の負担が軽減する
③ 入浴・食事などの在宅機能の補完
※自宅でできないことを代わりに提供することで在宅での生活が可能になる視点を持つこと

 

4 サービス特徴の確認

 

 次に、自社デイサービスの特徴を明確化します。そのために、SWOT分析が役立ちます。これは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)
を分析して、自社サービスの特徴を明確化する手法です。

① 強み(Strength)の分析
・機能訓練加算など加算を取得している=その部分に強みがある
・在籍スタッフの資格や能力が他に比べ差別的であり、強い
・施設の特徴が差別的である(居心地の良い環境など)
・利用者が来たくなるサービス特性を持っている

② 弱み(Weakness)の分析
・スタッフの入れ替わりが激しい
・お風呂が無い
・スタッフの資格や能力で劣勢にある
・利用者の要介護度が低い、又は収入率が低い

③ 機会(Opportunities)の分析
・地域に足りない(需要が高い)デイサービス機能(例えば機能訓練重視型など)がある
・地元行政が力を入れている分野がある(認知症対応や機能訓練など)
・将来、高齢者は増加(低下)傾向

④ 脅威(Threats)の分析
・報酬改定による収益源
・デイサービスが乱立し過当競争
・人材不足、賃金の上昇圧力

これらの分析を行った上で、自デイサービスの「売り」を明確化しましょう。

 

5 デイサービス営業のポイント

 

 営業をする場合は以下のポイントを押さえてください。

① デイサービスの「強み」を可視化し、ケアマネに強みをどのように伝えるかを考える。強みやターゲットなるご利用者像、サービス内容を1分以内、30秒以内に説明できるように練習が必要です。
② 営業先には何度も通う。最低月に1回
③ 営業のたびに配布ツールを変える
 例:月間行事スケジュール・典型的利用者さんのケース事例・新人スタッフの紹介・新サービス情報・企画イベントの情報 等
④ ケアマネや担当者と話ができなくても我慢強く足を運ぶ。
※ケアマネは忙しく留守がちのことも多いですし、忙しく話を聞いてくれない場合も多いでしょう。それでも毎回パンフなどを配布します。
⑤ 新規開業の場合は、新規事業所であることをアピールする。ケアマネは新事業所の情報は必ずチェックします。

 

6 主な営業先

 

①ケアマネージャー
第一に地域の居宅介護支援事業所が営業の本命です。地域のケアマネージャの信頼に応えることが、利用者確保の第一歩でしょう。

②地域包括支援センター
地域包括支援センターの営業は主に要支援の方をご紹介してくれます。営業方法としてはケアマネと同じですが、介護予防の書類(計画書やアセスメント)は地域によって違いますので、よく話を聞く必要があります。

③医療機関(病院)
主にメディカルソーシャルワーカー(MSW)やリハビリスタッフなどに営業を行います。
特に、回復期リハビリテーション病院など、退院後のケアの在り方を考えることが重要な退院支援型の医療施設はスムーズな在宅復帰に対応できる事業所を探しています。

④介護老人保健施設
 こちらも、退所後の受け入れ態勢が重要になりますので、医療機関と同様の対応が必要になります。

⑤ 地域住民への営業
総合事業としての区市町村の取り組みや老人クラブなどでの予防事業など、様々な取り組みが行われています。そうした情報を行政から入手し、パンフレットを配布しておきます。
特に機能訓練を強みとする事業所は予防からのお付き合いが重要になります。

 

その2に続く

デイサービスでつかえる転倒予防手帳

 

 

 国立長寿医療研究センターが公表した「転倒予防手帳」はデイサービスなどでぜひ活用してほしいものです。
www.ncgg.go.jp/hospital/news/20171222.html

 

転倒予防手帳をご利用者に配布

 

 特に機能訓練を重視しているデイサービスではこの手帳によるセルフチェックがそのままアセスメントになります。またデイサービスに来ていない時、ご自宅で過ごし方や運動についてのアドバイスになると思います。
 ぜひご利用者に配布して活用していただければと思います。

 要支援の方の場合、デイサービスの利用時間も限られている場合が多く、ご自宅での運動の意識付けが重要になります。
機能訓練指加算を算定する場合は、指導員がご自宅に訪問し、自宅でできる運動の提案なども必要になります。そうした場合の手助けになると考えます。

※機能訓練指加算の算定要件には 
「機能訓練指導員等が利用者の居宅を訪問した上で,個別機能訓練計画を作成し,その後3月ごと に1回以上,利用者の居宅を訪問した上で,当該利用者又はその家族に対して,機能訓練の内容 と個別機能訓練計画の進捗状況等を説明し,訓練内容の見直し等を行っていること」

 

デイサービスのサービスとしての「転倒予防」

 

 デイサービスの利用者は下肢筋力の低下による歩行機能障害を抱えている方が多いでしょう。「歩ける」「歩けない」の違いは要介護認定における重要なポイントです。高齢者の場合自力歩行が安定してできることが、その人の生活の中での活動性を支えていると言っても過言ではありません。

 「転倒」はそうした活動性を奪う最大の要因となっています。高齢者に多い大腿骨や腰椎の骨折の原因の多くが転倒です。ですから、デイサービスの提供サービスとして「転倒予防」を掲げることは至極自然なことだと考えます。

 

デイサービスでの運動だけでなく日常生活の中での意識付けが重要

 

 転倒予防には運動だけではなく、ご本人の意識の改革も含まれます。
 要支援のお年寄りの中には腰や膝痛のため歩くことを嫌がる方も多いようです。中には膝が痛いので自転車に乗って買い物に行き、転倒して大腿骨を骨折するケースなどがあります。デイサービスではそうした日常生活でのリスクの意識付けも重要であると考えます。

 デイサービスで下肢筋力の強化がプランニングされている場合は、必ず「転倒リスク」を伴っています。機能訓練指導員はご本人に、きちんと「転倒予防」の意識を強く持って生活することを訴える必要があると考えます。
 

今後重視される高齢者の栄養管理

 

 今回の転倒予防手帳には栄養に関するチェックは盛り込まれていないようですが、下肢筋力低下をもたらすフレイルやサルコペディアの原因の一つにはバランスの悪い栄養摂取があります。

 転倒予防には下肢筋力の強化を中心とした運動訓練が必要ですが、それを効果的に実行力のある形で実施するためには、タンパク質を中心とした適切な栄養摂取が必要と考えられています。

 甘い物や脂質の摂りすぎによる肥満と共に筋力低下が起こると、高齢者の活動性は極端に低下してしまいます。これを防ぐには早い時期からの日常的な食事に関する介入が必要なのですが、実はこの分野は日本ではあまり進んでいない状況です。

 在宅の場合、自治体の保健師や管理栄養士による栄養指導は行っていますが、疾病による栄養管理が必要な方以外の一般の方までカーバーできる状況ではありません。

 最近になって食品会社などが積極的に筋力を維持向上させるためのアミノ酸サプリ(タンパク質)宣伝を始めていますが、サプリメントも良いですが、まず日頃の食事の改善が重要であると思います。

 フレイルの状態で転倒を起こした場合は歩行が困難になる可能性が高く。まずフレイルにならないことが重要ですが、そのためには運動と適切な栄養摂取が欠かせません。

 

デイサービスでも栄養指導は必要

 

 身長160センチの方の場合、概ね1日60グラムのタンパク質摂取が必要と言われています。
 この量は、牛もも肉にすれば300グラム。木綿豆腐にすると2丁半。牛乳だと2リットル近い量になります。
 高齢者の場合、かなり意識しないと摂取出来ない量です。そのためにサプリメントに頼らなければならない現実もあります。
 
 デイサービスでも「日本人の食事摂取基準」などを利用し、バランスの良い食事をとることを呼び掛けていくべきでしょう。
 www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

 以下の紹介するデイサービスでは「転倒予防」のための様々な取り組みを行っています。参考にしていただければと思います。
 東京都台東区「転倒予防」デイサービス ライブリー
www.best-kaigo.com/business/lively/

 

 

 

介護福祉事業開業ガイド(他事業からの参入編)その2

 

 

 他業種から介護福祉事業に参入しようとした場合、どのような事業を手掛けていけば良いのか悩むところだと思います。

 今回は沢山ある介護福祉事業のうち、どのような事業が参入しやすいのか。さらにメリットやデメリット、留意点について代表的なものをご紹介します。

 

 

訪問介護

 

 訪問介護事業は最もイニシャルコストが安く、かつニーズも高い事業です。そのために介護事業を始める際には、最初にお勧めしたい事業です。10坪ほどの事務所があって有資格者が確保できれば開業できます。

 

 資格は既存の従業員でも研修を受ければ取得できます。また、経験者を雇用すれば仕事も問題なくこなせると考えます。

 

 また、指定訪問介護事業はそのまま、指定障害者居宅サービス事業を兼業できます。障碍者向けの訪問介護事業ですが、こちらも将来的に非常にニーズが高い事業ですから、お客様が絶えない状況です。

 

 現在、訪問介護事業所では人手不足でお客様の要望に応えられない事業所も多くなっており、開業後すぐに経営が軌道に乗る事業所が多いといえます。

 

 

訪問看護

 

 こちらもイニシャルコストの低い事業ですが、看護師を確保しなければなりません。

 看護師が確保できれば訪問介護と一緒に開業することでシナジー効果があります。

 訪問介護は介護以外に医療保険の業務も可能です。

 

 やはり将来的に非常にニーズの高いサービスであり、ご利用者が途絶えることは無いでしょう。

 医療費の財政負担を減らしていきたい我が国にとって、在宅診療は、今後大きく伸びるサービスです。

 

 また、地域に住んでいる主婦の看護師さんが子育てをしながら働く場所として最適な事業です。そうしたパート看護師をうまく確保できれば、事業は順調に伸びるでしょう。

 

 ただし、訪問看護は病院勤務と異なり、一人で患者さんのご自宅を訪問してサービスを提供しますので、病院でチームでしか働いたことの無い看護師さんにとっては少々ハードルの高い部分がありなす。労務管理の中でそうした不安を払しょくできる工夫が必要になります。

 

 訪問系の事業はスタッフの仕事に対する不安や悩みを解消できるかどうかが人員を定着する上での大きなポイントです。

 

 

通所介護(デイサービス)

 

 介護業界を知らない一般の方にとって通所介護は開業しやすい事業というイメージがあったようです。事実、少し前まで、未経験の事業者が沢山参入してきた経緯があります。

 

 その代表がお泊りデイサービスで、空き家を改造して認知症の方の宿泊を受け入れられる通所介護でした。

 行き場のないお年寄りの受け入れ場所として一時脚光を浴びました。

 事業としても毎日宿泊利用するご利用者がいると、宿泊費をとらなくても、介護給付だけで一人当たり30万円以上の売り上げがあるので、誰でも簡単に開業でき、すぐに経営が軌道に乗るとして、フランチャイズ化もされもてはやされました。

 

 しかし、介護の質や夜間の管理体制などに問題が多く、行政から連泊に制限が出されたり、スプリンクラーなどの設備投資の追加や、地域によっては開業が禁止されたりしたために、いまではほとんど新規開業は見られません。

 

 通所介護は訪問介護などに比べればイニシャルコストが高く、最低でも1500万円程度の設備投資が必要な事業です。

 

 最近の低金利で融資が受けやすいために、リハビリデイサービスなどで、他産業からの参入も多いのですが、地域によっては供給過剰気味であり、小規模多機能などの他のサービスとの競合や介護給付費の減額もあり、最初に手掛ける事業としてはハードルが高い事業と言えます。

 

 自社所有で100平米程度の床面積を低コストで確保できる場合など、条件が合えば検討しても良いでしょう。しかし、その場合でも、訪問介護事業所を併設する等して、通所介護だけを単独で開業しない方が良いと考えます。

 

 ただ、比較的スタッフのが確保しやすい事業ですので、資金や地域ニーズなどとの関係を考慮して検討しても良いでしょう。

 

 

有料老人ホーム

 

 資金が潤沢であり、会社に体力がある場合は新規事業として検討する事業者もあるかもしれません。建設業や不動産業から有料老人ホーム事業に参入した会社も多く、最近ではソニーなど大企業も参入しいます。

 

 筆者としては、有料老人ホーム事業は介護福祉事業というよりも、老後の生活を支えるサービス業としての視点が必要だと考えています。

 

 高級な老人ホームは自費負担も大きいので、お客様が限定的になります。また、逆に住宅型などの場合、低所得者(生活保護者を含む)をターゲットにした事業形態もあります。

 資金力だけでなく、ある程度、高齢者のニーズをマーケッティングする力が必要になります。

 

 また、都心部では介護保険予算の負担が大きいため、包括型の老人ホームの開業を区市町村が制限している場合があります。都心部で在宅生活ができなくなった高齢者が郊外の有料老人ホームに転居するパターンも多く、そうしたニーズを把握しなければなりません。

 

 さらに、サービスの質の管理が重要です。虐待などの問題が発覚すると、退所者やスタッフ離れが起こり事業が立ち行かなくなる場合があります。人手不足の中、スタッフの業務管理・労務管理を疎かにすると経営が困難になりやすいのもデメリットでしょう。

 

 

 次回も様々なサービスについてご紹介します。

 

 

(次期改正)通所介護の焦点は?

 

 通所介護事業における次期改正の焦点は、機能訓練と栄養管理に関わる見直しになるのではないかと言われています。

 

機能訓練が適切に行われていない

 

 機能訓練については、特に、小規模デイサービス(=地域密着型サービス)におけるの取り組みが手薄であり、デイサービスの基本性能である「生活機能の維持向上」が図られていないのではないかという議論がされています。

 

 実際、通常規模や大規模デイサービスにくらべ、小規模デイサービスでは機能訓練加算の取得率が低く、適切な機能訓練が行われていないのではないかという疑義があるようです。

 

 制度の規定では、加算を取得していなければ、機能訓練指導員を配置すればよく、実地指導などでも、加算を所得していない事業所の機能訓練の内容をチェックすることは無いようです。

 

 もともと、小規模デイサービスの利用者は認知症の利用者が多く、機能訓練も脳トレやリクリエーション活動が主で、筋トレなどの運動系の活動は多く無いという事情もあるでしょう。

 

 しかし、機能訓練の目的はリハビリテーションではなく「生活機能の維持向上」が目的ですから、その観点に立った機能訓練は行われなければならないという考えが厚生労働省にはあると思います。

 

 

認知症の利用者にも運動系の機能訓練は必要

 

 介護保険制度が施行されてから、通所介護事業所で提供される機能訓練の方法論も大きく進化してきていると考えます。

 今となっては認知症だから運動系の機能訓練はやらなくても良いという考え方はナンセンスでしょう。

 たとえレスパイトがサービスの中心であったとしても、ただテレビを見せているだけのデイサービスなど今や皆無だとは思います。

 

 認知症予防の機能訓練として、例えばしりとりをしながら踏み台昇降をする二重課題トレーニングなどが、認知症予防に効果があることが実証されてきています。

 小規模で認知症の利用者が大いという理由だけで、機能訓練はあまり熱心ではないということは通じなくなっているのも事実です。

 

 機能訓練というと=リハビリと考えている方も多いようですが、デイサービスでの機能訓練は医療リハビリとは異なります。その方法論はバラエティーに富んだものとなっていると考えます。

 

 

個別機能訓練計画が義務化される可能性も

 

 国が通所介護サービスの機能訓練を強化したいと考えた場合、個別の機能訓練計画を必須にする可能性もあるでしょう。

 

 現在の通所介護計画書の内容に機能訓練計画を盛り込むような形かもしれないですが、いずれにしても、デイサービスの利用者には必ず計画的な機能訓練サービスの提供が義務付けられる可能性は十分あると考えます。

 

 筆者は、認知症の利用者であろうが、ほとんどの高齢者には筋力の維持向上のための運動系のトレーニングが必要であると考えていますので、機能訓練計画の義務化には賛成です。

 

 

機能訓練計画が義務となった場合の対応は?

 

 個別機能訓練を計画的に実施していない、小規模なデイサービスの運営者は、途方に暮れてしまうかもしれません。

 

 しかし、個別機能訓練はそれほど難しいものではないと考えます。

 

 かつて筆者が開発に関与した「転倒防止」デイサービスhttp://www.best-kaigo.com/business/library/

は、介護予防リハビリデイサービスというイメージではなく、重度の要介護の方にも運動系の機能訓練サービスを提供するというコンセプトで開発しました。

 

 そのため、お風呂を設置し、時間も一般的なリハビリデイサービスの2部制でなく5-7時間の1日サービスの提供としています。

 

 実は、要介護の高齢者にとっては、週2日、デイサービスに来て、5時間程度椅子に座っているだけで相当な体幹のトレーニングとなり、脊柱起立筋等の強化に繋がります。

 

 体幹の強化はそのまま自宅での生活の維持向上に結び付きます。

 つまり、要介護の高齢者にとってはデイサービスに来て座っているだけで、機能訓練になるのです。

 

 また、運動もリハビリデイサービスのようなマシーントレーニングをしなくてはならないと思ってしまいますが、実際は椅子からの立ち上がり運動だけでも十分なのです。

 逆に言えば自宅でもできる簡単な運動をデイサービスで覚えてもらい、自宅でも行うよう働きかけるのです。

 

 機能訓練計画はそのようなことを計画的に提供していることを説明できればそれでOKであると考えます。

 

 そう考えれば、機能訓練が義務化されたとしてももそれほど怖くはないとおもいます。

 ほとんどの高齢者にとって下肢筋力の維持向上のための運動は有効です。そこをベースにして、個別の利用者にマッチしたプログラムを作ればよいと思います。

 

 

総合的な栄養管理は誰もやっていない

 

 現在の日本の医療福祉制度では、高齢者の食生活を管理する仕組みは適切に整備されていません。

 

 老人ホームなどであれば食事の管理は行き届いていますが、在宅での食事の管理は手付かずの状態でしょう。

 

 特に介護予防の段階での食事管理は誰も介入できている状況ではなく、包括による基本チェックはあっても、何をどのくらい食べているかまでは誰もきちんと見ていません。

 

 最近になり、血中アルブミン濃度など、高齢者のタンパク質摂取不足が注目され始めていますが、介護保険制度の発足時は高齢者の栄養管理がどうあるべきかの方向性が明確でなかったと考えます。

 

 そのため通所介護の栄養改善加算も管理栄養士による専門性の高い加算となり、取得している事業所があまりありません。

 

 

通所介護での総合的な栄養管理は困難

 

 現状では、在宅高齢者が何をどれぐらい食べており、どのような栄養素が不足しているかを調べるのは、ケアマネージャーの仕事でしょう。

 

 ケアマネジメントにおける総合的な栄養管理の在り方が確立していない現状では、通所介護での栄養管理をどのようにしていくかは考えられない状況ではないか思います。

 

 従って、次期改正で栄養改善加算が改正されるとしても、多くの通所介護事業所には影響がないような気がしています。

 

 しかし、機能訓練面から考えると、タンパク質の摂取量は重要です。

 筋力の維持向上に熱心な通所介護事業所の中には、運動後に、必須アミノ酸(タンパク質)飲料を提供している事業所もあります。

https://www.ajinomoto.co.jp/nutricare/public/products/amino_care40/

 

 前述の「転倒予防デイサービス」でも、体力の維持向上のためにタンパク質の摂取を利用者に勧めています。

 

 筋力を維持向上させる面での栄養管理の取り組みは今のうちから行っていくべきではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その3

◆事業運営上必ず整備しなければならない書類

 

 既に整備されている事業所も多いとは思いますが、ときどき内容を確認し、事業所の実態と整合性が取れているかを見ておくことも大切ではないかと思います。

 

(1)指定申請書の写し

 

指定申請書には以下のものを含みます。以下の内容に変更があった場合は変更届を提出していなければなりません。

 

①履歴事項全部証明書(申請時)

②事業所の平面図

③運営規程(利用料その他の費用、実施地域等の確認)

④従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表(管理者・生活相談員・看護師などの氏名及び兼務関係が明示されている)

⑤上記の従業員に関わる資格証

⑥労働者派遣会社と事業者との派遣に関する契約書の写し(看護師・機能訓練指導員等)

⑦建築物の法令適格確認書類

 

そもそも、指定申請書は申請時に写しを保管しておくことが大切です。そのことの説明が申請時に無い場合もありますので、新規申請時には注意しなければならない事項です。

 

 

(2)変更届の写し

 

上記、指定申請書関係の変更届の写しです。こちらも提出時は必ず写しを保管しておくように注意しなければなりません。

変更届が必要な場合の変更内容は以下の通りです。

 

①会社登記事項の変更(会社名、本社住所・電話・FAX番号、代表者及び役員、代表者及び役員の住所)

②事業所(施設)の名称・住所・レイアウト・改築・電話番号・FAX番号など

③管理者の氏名及び住所

④生活相談員、看護職員、機能訓練指導員

⑤運営規程(営業日、営業時間、サービス提供日、サービス提供時間、単位数、利用定員、従業者数、通常の事業の実施地域、利用料等)

 

営業日等が増加した場合は生活相談員などの人員補充が必要な場合があります。

 

変更届については各担当行政にご確認ください。東京都の場合は以下を参照ください。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/tuutitou/7_tuukai.html

 

 

(3)運営規程

 

運営規定の内容は実態に合っている必要があります。運営規定の変更届を行わずに勝手に営業時間等を変更してはいけません。

 

また、従業員数が変更している場合は変更届を出さなければならない場合があります。

自治体によって対応は異なるようですが、東京都の場合は申請時に以下のような記載をして有れば変更届は必要ないようです。

 

通所介護従事者

 

生活相談員 1名以上

介護職員 1名以上

看護職員 1名以上

 

運営規定に添付される利用料金は、介護保険料が改定になるたびに変更する必要がありますが、自治体により変更届が不要な場合がありますので、確認しましょう。

 

 

(4)契約書

 

契約書の内容については特に国として定めたものはありませんが、介護保険サービスが利用者と事業者の契約により提供されることや、サービス提供に関わる合意内容の明確化や紛争の防止を考慮し、わかりやすい内容であることが望まれます。

自治体によってひな型を提供している場合がありますので、確認したほうが良いでしょう。また、各種モデル契約書も出回っていますので、上述のポイントを押さえたわかりやすい物を利用することをお勧めします。

 

なお、自治体により、利用者及び事業者の利便性を考慮し、同一事業者が、(介護予防も含め)複数の種類のサービスを提供する場合、1つの契約書(共通契約書)により契約可能な場合があります。

 

同じ会社なのにケアマネや訪問介護・通所介護・福祉用具の担当者が次から次へと契約書を取り出して契約している風景を見ますが、利用者にとっては手間なことですから、共通契約書を利用することは良いことだと思います。

 

 

(5)重要事項説書(契約書別紙等)

 

重要事項説明書の内容は運営規定にプラスアルファした内容であることが一般的です。こちらもひな型や自治体からの提供がありますので「わかりやすい物」を利用したいところです。

ただし、基本的な事項は適切に説明できないければなりませんから、以下の事項は押さえておかなければなりません。

 

①事業者(法人)の概要

②利用する事業所の概要

③事業の目的と運営の方針

④提供するサービスの内容

⑤営業日

⑥営業時間及びサービス提供時間

⑦事業所の職員体制(従業者の職種、勤務の形態・人数等)

⑧サービス提供の担当者(生活相談員)及びその管理責任者(管理者)名

⑨利用料金

【通所介護費】

支給限度額を超えてサービスを利用する場合は、超えた額の全額負担

【加算】

延長加算、入浴介助加算、個別機能訓練加算、サービス提供体制強化加算、介護職員

処遇改善加算などの要件および額

【減算】

減算の要件(送迎を行わない場合の減算など)、減算額

【介護予防通所介護費】

【加算】運動器機能向上加算など

【自費料金】昼食、おやつなど

⑩キャンセル料

⑪支払い方法

⑫緊急時における対応方法

利用者の主治医、医療機関の名称、所在地、電話番号、緊急連絡先(家族等)、氏名(利用者との続柄)、電話番号

⑬事故発生時の対応

⑭苦情相談窓口

⑮サービスの利用にあたっての留意事項

⑯非常災害対策

⑰説明者氏名

⑱利用者署名捺印

 

なお、運営規定と重要事項説明書は相談室等にわかりやすく掲示する必要があります。

 

 

(6)個人情報の使用に関する同意書

 

ご利用者とご家族の代表者それぞれから署名捺印を頂き、同意を得る必要があります。

なお、この同意書の内容(利用範囲や保管方法など)は前述の「個人情報保護規定」に基づいて作成される必要があります。

個人情報の同意書と個人情報保護規定を別々に作成している場合は、内容に整合性があるか確認したほうがよろしいでしょう。

 

 

(7)被保険者証の写し

 

ご利用者の被保険者証は原本を確認し、写しを保管しておく必要があります。コピーをとった場合は、そのコピーに「○年○月○日 原本確認 ○○(確認者氏名捺印)」と記載しておくと良いでしょう。

また、期限が過ぎていたりする場合がありますから、必ず最新のものを保管しておくよう注意しましょう。

 

 

(8)事業所の宣伝・説明内容がわかるもの(パンフレット・ポスター・広告等)

 

虚偽や誇大な宣伝・広告が行われていないかチェックされます。作成している場合は隠さない方が良いと思います。

あまり知られていませんが、「病気が治る」や「認知症が良くなった」などの宣伝をすると各種医事法や消費者関係法令に抵触する場合がありますので、注意しましょう。

 

 

次回は、業務運営上必要な書類をさらに詳しくご説明します。

 

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類 ガイド その2

◆会社経営上必ず必要な書類Ⅱ

 

(3)個人情報保護規定

 個人情報規定はその法人における個人情報の取り扱いを規定したもので、個人情報保護法に基づいて作成される必要があります。個人情報を扱う介護事業所としては整備しておいた方が良い文書であり、実地指導で作成するように指導される場合もあるでしょう。

 厚生労働省から「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン」が出ていますので、ご参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/250329fukusi.pdf

 また、具体的な規定のサンプルは以下をご参照ください。

http://www.pref.osaka.lg.jp/fukushisomu/kojinjoho-fukushi/

 

(4)組織規定等

 複数の事業所を経営している場合は、法人組織の全体がわかる規定や組織図などを要求される場合があります。

 これは特に兼務関係などをチェックする場合、組織規定に基づいて調査する必要があるからです。

 会社全体の組織図は、新入社員などへの説明に便利ですので、複数の事業所がある場合は整備しておく方が良いでしょう。

 

(5)従業員名簿 (労働者台帳等)

 従業員の基本情報は入社時に一般的な様式で提出してもらうのが普通でしょう。しかし労働基準法では労働者名簿に記入しなければならない事項として、

●性別●住所●従事する業務の種類●雇入の年月日●退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む●死亡の年月日及びその原因 

が挙げられています。

 

厚生労働省のホームページに雇用関係の各種書式見本がありますので参考にしてみてください。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/

 

(6)労働条件通知書(雇用契約書)

 介護関係の通知書の見本が、介護労働安定センターのホームページに掲載されていますので参考にしてください。

 http://www.dosuru.kaigo-center.or.jp/yousiki.html

 

 労働条件通知書には明示しなければならない必須事項がありますのでご確認ください。

  • 労働契約の期間に関する事項 ●就業場所、 従事すべき業務に関する事項●始業・終業の時刻、 休憩時間、 休日、 休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項(シフト)●所定労働時間を超える労働、休日労働の有無●賃金の決定、計算 ・ 支払方法、賃金の締切り・支払の時期、 昇給に関する事項●初任給の金額、諸手当の金額の明示●退職・解雇(事由及び手続等)に関する事項●雇用契約終了事由の全事項

 

 

(7)賃金台帳、給付明細書、給与振り込み明細

 当然ですが、賃金台帳と給与明細は実際に従業員に支給している内容と同じでなければなりません。

 特に処遇改善加算を取得している場合は、その内容が明示されていることが必要になります。

 注意点として管理職でも現場で介護業務に従事している場合は処遇改善手当てを支給しなければなりません。逆に、介護業務に従事していない職員に本手当を支給してはいけません。異動で事務職員になった人などに手当が支給されていないか確認しておく必要があります。

 給与振り込み明細は生活相談員などが架空の職員ではないかと疑われる場合、チェックされます。きちんと雇用され給与が支払われているかを確認します。

 

(8)職員履歴書

 採用時に提出してもらう履歴書です。労働条件通知書や従業員名簿などと一致している必要がありますが、引っ越しや婚姻などにより住所や名前が変わっている場合は住民票など変更が確認できる文書の徴取保管が必要です。

 

(9)資格証明書

 資格証明書は原本で確認することが求められています。控えのコピーに「〇月〇日原本確認」と記入し、確認者の印鑑が押されていると完璧でしょう。

 

(10)職員出勤簿

 タイムカードなど客観的な記録となっているものが望ましいですが、給与計算用に使っているソフトから出力した出勤簿でも、給与の支払い実績(賃金台帳の内容)との整合性が取れていれば大丈夫でしょう。

 注意点としては役員などで出勤記録を取っていない場合、その役員が介護現場に出ている時(従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表に名前が載っている場合)は、役員の出勤記録も適切に残しておく必要があります。

 

 

(11)会計関係書類

 介護保険事業では事業ごとに会計を区分して決算処理をすることが義務付けられています。詳細については以下のサイトをご覧ください。

http://www.wam.go.jp/wamappl/bb05Kaig.nsf/vAdmPBigcategory20/1A5D0E228DA623954925703600278835?OpenDocument

 依頼している会計士がこの規定を知らない場合があります。上記サイトの文書を印刷してお付き合いしている会計士に見せると良いでしょう。

 事業ごとの収支を決算処理していない場合は、実地指導で修正を指導される場合があります。

 

(12)設備備品台帳

 税務署に提出する決算書類で減価償却の計算用の設備備品台帳ではだめな場合があります。事業所ごとに必要な設備や備品を一覧にしたものがあれば良いのですが、実際の実地指導では直接現場で書庫や送迎車(車検証)などを確認する場合が多いので、一覧表を作成しなくても良いかもしれません。

 作成するように指導された場合は作成すれば良いでしょう。

 

 以上が介護事業を経営するうえで必ず必要な書類です。次回は実際の通所介護運営において整備しておかなければならない書類です。

 

 

 

 

通所介護 実地指導で準備しておきたい書類ガイド その1

 

今回は、通所介護事業所の実地指導で準備しなければならない書類ガイドです。

行政の実地指導では「人員基準」「設備基準」「運営基準」に基づき業務チェックがされますが、各基準の文言を見てもどのような書類をチェックされるのか、明確ではありません。

 

我が国の行政業務は「文書主義」という形式をとっており、様々な活動や行為の事実根拠を記録された「文書」により確定させる方式を取っています。

従って、介護事業所の様々な活動も文書により説明しなくてはならず、口頭では根拠になりません。

いくら適切に事業運営を行っていても、記録された文書で説明できなければ認めてもらえません。

 

通常、行政が実地指導に入る時には、事前に準備するべき書類を指示してきますが、必ずしもすべての書類を指示してくるわけではなく、「人事関係書類」などというように、一括りで指示してくる場合も多いようです。

 

ここではそうした書類について網羅的にガイドさせていただきます。

以下は主に株式会社で必要な書類です。

また、今回は通所介護事業所に限定しましたが、他の事業所でも同様の書類が必要ですので参考にしてください。

 

◆会社経営上必ず必要な書類

(1)定款

定款には事業「目的」が記されており、この「目的」が適切かどうかチェックされます。

 

小規模通所介護から地域密着通所介護に移行した場合は修正が必要になります。また、将来、総合事業に移行する際も変更が必要ですので併せて変更登記しておく方が良いでしょう。

以下は介護事業を経営する際の定款の「目的」標記例です。

ただし、介護予防及び地域密着型・生活支援総合事業については各区市町村により指示がありますので、そちらをご確認してください。

サービス名 定款への記載
訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売 介護保険法に基づく居宅サービス事業
夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、地域密着型通所介護事業 介護保険法に基づく地域密着型サービス事業
居宅介護支援 介護保険法に基づく居宅介護支援事業
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設 介護保険法に基づく施設サービス事業(公益法人のみ)
介護予防訪問介護、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護、介護予防特定施設入居者生活介護、介護予防福祉用具貸与、特定介護予防福祉用具販売 介護保険法に基づく介護予防サービス事業
介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護 介護保険法に基づく地域密着型介護予防サービス事業
介護予防・日常生活支援総合事業(訪問型) 介護保険法に基づく第1号訪問事業
介護予防・日常生活支援総合事業(通所型) 介護保険法に基づく第1号通所事業
介護予防支援 介護保険法に基づく介護予防支援事業

 

(2)就業規則

小さな会社(従業員10人以下)でも就業規則は作成したほうが良いと思います。理由は職員の処遇を規定するものであり、処遇改善などの根拠になるものだからです。作成していない場合は実地指導で作成するように指導されることが多いと思います。

また、正社員だけでなくパート職員の就業規則も別途作成したほうがベターかと思います。

就業規則では以下の規定がチェックされます。

 

①勤務時間

正社員=常勤職員の勤務時間がチェックされます。この勤務時間は、いわゆる常勤換算の基準になるもので、通常週40時間以内で規定されていなければなりません。

 

②健康診断の規定

労働安全衛生法では一人でも(常時雇用するパートを含む)従業員を雇用している場合は会社負担により、従業員に年1回健康診断を実施しなければならないことになっています。

介護保険法とは関連しませんが、介護事業所として職員の感染症予防などの観点から、毎年、全ての従業員実施されていることが望ましく、実地指導で指摘される場合もあります。

法定の健康診断については以下を参照してください。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf

 

③個人情報保護

職員が職務上知りえた利用者や家族の個人情報をみだりに外部に漏らさないことを規定していなければなりません。

また、採用の際、その約束を「誓約書」の形で提出させる必要があります。場合によってはこの誓約書をチェックされる場合もあります。

サンプルは以下の通りです。

              個人情報保護に関する誓約書

株式会社  〇〇

代表取締役         殿

 

私、「氏名:               」(以下、「甲」という。)は、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57条)及び株式会社〇〇(以下、「乙」という。)の「個人情報保護規程」の各条項を遵守し、業務遂行することを約束し、本誓約書を提出するものとする。

 

(情報の定義)

第1条 本誓約書における「情報」とは、文書及び口頭並びに物品を問わず、乙並びに乙の利用者、利用者の保護者及び身元引受人等、利用者に関係するすべての個人(以下、「利用者等」という。)より開示された乙の個人情報を含む内部情報及び乙の利用者等に関する一切の情報をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当するものについては、この限りではない。

(1) 相手方から開示された時点で、すでに公知となっているもの。

(2) 相手方から開示された後、自らの責めによらず公知となったもの。

(3) 正当な権限を有する第三者から、開示に関する制限なく開示されたもの。

 

(機密保持)

第2条 甲は、前条に規定する情報について、乙の代表者からの指示なくしては、その情報開示の権限を有しない第三者に漏洩又は開示してはならない。

 

(情報の返還)

第3条 甲は、乙に在職していた間に、甲が保有する乙及びその利用者等から開示された情報に係る記録及びそれを基に作成された一切の資料・媒体を、退職日までに速やかに返還しなければならない。

 

(有効期間)

第4条 本誓約の有効期間は、本誓約書の提出日より退職日以降○年とする。

 

(損害賠償)

第5条 本誓約に違反し、乙の利用者等に損害を与えた場合、乙の就業規則第○○条に規定する制裁の有無にかかわらず、損害賠償の責を免れないものとする。

 

以上、本誓約の成立の証として、本誓約書を1通作成し、甲は乙に記名捺印の上、提出するものとする。

 

平成   年   月   日

(誓約者)  住所:                        

氏名:                       印

 

④昇進・昇格などの規定

処遇改善加算Ⅰを取得している場合は、キャリアパス要件の中で必ず規定がなければなりません。

内容は次に述べる賃金規定とリンクしている必要があります。

 

(3)賃金規定

①昇給などの基準

こちらも、処遇改善加算Ⅰを取得している場合は、規定がなければなりません。

 

②処遇改善加算手当の規定

処遇改善加算をどのように支給するかの規定を定めるよう求められる場合があります。

これまで、処遇改善加算の支給方法は「処遇改善加算計画書」の職員への周知によりその支給方法を知らせる形式がとられてきましたが、今後、賃金規定の中で明確に規定することが求められるようになると思いますので、規定していない場合は早めに規定したほうが良いでしょう。

 

次回、順次、必要な書類についてご説明していきます。