高齢者の住宅と介護—「不安」という問題 その2

◆元気なうちから抵抗なく入居できて介護の「不安」が無い住宅とは

 

最近になり、新しいコンセプトのアクティブシニア向け分譲マンションが出始めています。筆者の挙げた条件では、キッチン以外の条件はほぼ満たしています。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1103W_R10C14A4EE8000/

分譲マンションですからキッチンの改造も可能でしょう。

 

リンク先は主に夫婦向けにコンセプトされたマンションのようで、イメージとしては今まで一軒家など広い家に住んでいたが、子供も成長し、これから2人で余生を過ごすにあたり、シンプルで不安の無い生活をしたい方向け、といった感じです。前の家を売った資金で買ってくださいということでしょうか。

 

しかし、老後になって、誰でもこの値段の分譲マンションを買えるとは限りません。

例えば夫がサラリーマンをしていた70歳前後のご夫婦の場合、自宅のローンがやっと支払い終わり、後は貯金を切り崩しながらの年金暮らしとなるのが一般的なパターンです。

その時、古い自宅を売却しても、このマンションの購入資金が作れるほどの値段が付くか疑問です。

 

70歳前後で引っ越し、あと20年程度住むのであれば、賃貸の方が得のような気もしますが、リフォームなどを考えると悩むところです。ご夫婦の場合であれば、どちらかが先だった後も住宅の不安が無いという意味では分譲のほうが良いかもしれません。

 

とはいえ、多くの人は老後の資金に不安があり、分譲マンションにはなかなか手が出ないのが現実ではないでしょうか。また分譲は相続税の問題もあります。結局、若いころに購入した住宅に、死ぬまで住み続けた方が、面倒が少ないという判断になりがちです。リフォームによるバリアフリー化ができれば良いですが、できなければ老後の不安は増長してゆきます。

 

20年後、東京の高齢者世帯の44%が一人暮らしと言われています。一人暮らしの高齢者が安心して生活ができる住宅の在り方をもう少ししっかり考えていかなければならないと思います。

 

 

 ◆東京シニア円滑入居賃貸住宅

 

https://www.tokyo-machidukuri.or.jp/sumai/senior.html

国土交通省が主導する高齢者向けの優良賃貸住宅制度です。一般のアパートなどをバリアフリー化し通常は借りにくい高齢者でも賃貸が可能な制度になっています。

こちらは住宅だけですので、介護が必要になった場合は、公的介護サービスを別途依頼する必要があります。

 

こうした優良住宅の多くはアパートやワンルームマンションをバリアフリー化したものが多いようです。家賃は一般的な賃貸アパートの相場よりも、少し高く設定されているような感じがあります。前述のサ高住よりも高いイメージがあるのは、事業者に補助金などの公的支援制度が無いからかもしれません。また、バリアフリー化のリフォームコストも乗っかっているからでしょう。

 

23区内の相場は8万円以上のようです(一部6万円前後もあり)。厚生年金だけで生活する一人暮らしの高齢者にとっては、生活を維持するに、ぎりぎりの値段設定ではないでしょうか。生活保護による家賃補助を受けている高齢者にとっては、区市町村の判断もありますが入居は難しい金額かもしれません。23区内の住宅扶助費は5万円台であり、その程度で入居できる住宅はほんの一部です。

 

 

 ◆高齢者の50%が生活保護なのにその人たちの住宅政策は混沌とした状況

 

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG01H33_R00C16A6CR0000/(生活保護、高齢者が初めて50%超す 厚労省調査)

東京都の生活保護の高齢者は15万人程度いらっしゃるようです。

一方、都では都市型軽費老人ホームという生活保護の人でも入居できる老人ホームの制度を推進しています。現在こうした軽費老人ホームの定員は約4,000人。また、低価格のサ高住や住宅型有料老人ホームに入居している生活保護の高齢者は26年5,140人となっています。ちなみに特養の定員は4万人程度です。

 

すると都では10万人程度の生活保護の高齢者が自宅や賃貸住宅に住んでいることになります。その住環境に関する調査は見つかりませんでした。しかし、あまり良好な住環境でないことは想像できます。全国では単純計算で100万人以上になるでしょうか。

 

厚生労働省は主に生活保護受給者が入所している「無料低額宿泊施設」および「社会福祉各法に法的位置付けのない施設」について、施設数と入所者数を公表しました。

「無料低額宿泊施設」とは、無料または低額な料金で宿泊や食事などができる施設で、都道府県知事への届出により開設できる簡易宿泊所のような施設です。いわゆる、ドヤ街などにある寝床だけしかないような狭隘な宿泊施設が殆どと考えて良いでしょう。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B0%A1%E6%98%93%E5%AE%BF%E6%89%80

 

 

「無料低額宿泊施設」は現在全国に537あり、入所者15,600人中、生活保護受給者数は14,143人。東京都は161施設で、生活保護受給者は3,779人です。

また、「社会福祉各法に法的位置付けのない施設」とは、いわゆる高齢者などを対象にした無届の入所施設です。全国に1,236施設あり、入所する生活保護受給者等の数は16,578人です。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000134572.html

 

そもそも、生活保護の高齢者が増えてしまったのは、日本の年金制度の失敗であり、若いころからまじめに働いて、政府の指示どおりに年金積立してきた人でも、老後に自力で生活できる額の年金がもらえない制度設計自体に問題があると言わざるを得ません。

そもそも、国民の生活を生涯にわたって支える社会保障制度は個人年金の積み立では維持できないことはわかっていたはずです。その歪が高齢者の半数が生活保護という形で表面化しています。

 

よく、生活保護の人を「税金泥棒」扱いする意見を見聞きしますが、まじめに国民年金に加入して働いてきたのに、「税金泥棒」扱いされるのは本当に気の毒だと思います。

さらに言えば、たとえ大企業年金の人でも老後の生活レベルを維持するには額が足りないと言われています。

国民の老後保障は税金を投入しなければ維持できません。そのための消費税増税も先送りになりました。この国の政治は「臭いものには蓋をして」先送りする政治をずっとやってきました。いまだにその姿勢は変わらないような気がします。

 

若者達はまじめに普通に働いていても老後の生活が暗い可能性があることを、感覚的に感じ取っています。将来、年をとってもバリアフリー化したユニバーサルデザインの住宅で安心して生活できることが保障される社会にしなければなりませんが、公共住宅の仕組みは混沌とするばかりです。

 

 

次回は今後の低所得者向け住宅の在り方や、介護ビジネスについて考えます。

 

 

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