介護福祉事業開業ガイド(他事業からの参入編)その2

 

 

 他業種から介護福祉事業に参入しようとした場合、どのような事業を手掛けていけば良いのか悩むところだと思います。

 今回は沢山ある介護福祉事業のうち、どのような事業が参入しやすいのか。さらにメリットやデメリット、留意点について代表的なものをご紹介します。

 

 

訪問介護

 

 訪問介護事業は最もイニシャルコストが安く、かつニーズも高い事業です。そのために介護事業を始める際には、最初にお勧めしたい事業です。10坪ほどの事務所があって有資格者が確保できれば開業できます。

 

 資格は既存の従業員でも研修を受ければ取得できます。また、経験者を雇用すれば仕事も問題なくこなせると考えます。

 

 また、指定訪問介護事業はそのまま、指定障害者居宅サービス事業を兼業できます。障碍者向けの訪問介護事業ですが、こちらも将来的に非常にニーズが高い事業ですから、お客様が絶えない状況です。

 

 現在、訪問介護事業所では人手不足でお客様の要望に応えられない事業所も多くなっており、開業後すぐに経営が軌道に乗る事業所が多いといえます。

 

 

訪問看護

 

 こちらもイニシャルコストの低い事業ですが、看護師を確保しなければなりません。

 看護師が確保できれば訪問介護と一緒に開業することでシナジー効果があります。

 訪問介護は介護以外に医療保険の業務も可能です。

 

 やはり将来的に非常にニーズの高いサービスであり、ご利用者が途絶えることは無いでしょう。

 医療費の財政負担を減らしていきたい我が国にとって、在宅診療は、今後大きく伸びるサービスです。

 

 また、地域に住んでいる主婦の看護師さんが子育てをしながら働く場所として最適な事業です。そうしたパート看護師をうまく確保できれば、事業は順調に伸びるでしょう。

 

 ただし、訪問看護は病院勤務と異なり、一人で患者さんのご自宅を訪問してサービスを提供しますので、病院でチームでしか働いたことの無い看護師さんにとっては少々ハードルの高い部分がありなす。労務管理の中でそうした不安を払しょくできる工夫が必要になります。

 

 訪問系の事業はスタッフの仕事に対する不安や悩みを解消できるかどうかが人員を定着する上での大きなポイントです。

 

 

通所介護(デイサービス)

 

 介護業界を知らない一般の方にとって通所介護は開業しやすい事業というイメージがあったようです。事実、少し前まで、未経験の事業者が沢山参入してきた経緯があります。

 

 その代表がお泊りデイサービスで、空き家を改造して認知症の方の宿泊を受け入れられる通所介護でした。

 行き場のないお年寄りの受け入れ場所として一時脚光を浴びました。

 事業としても毎日宿泊利用するご利用者がいると、宿泊費をとらなくても、介護給付だけで一人当たり30万円以上の売り上げがあるので、誰でも簡単に開業でき、すぐに経営が軌道に乗るとして、フランチャイズ化もされもてはやされました。

 

 しかし、介護の質や夜間の管理体制などに問題が多く、行政から連泊に制限が出されたり、スプリンクラーなどの設備投資の追加や、地域によっては開業が禁止されたりしたために、いまではほとんど新規開業は見られません。

 

 通所介護は訪問介護などに比べればイニシャルコストが高く、最低でも1500万円程度の設備投資が必要な事業です。

 

 最近の低金利で融資が受けやすいために、リハビリデイサービスなどで、他産業からの参入も多いのですが、地域によっては供給過剰気味であり、小規模多機能などの他のサービスとの競合や介護給付費の減額もあり、最初に手掛ける事業としてはハードルが高い事業と言えます。

 

 自社所有で100平米程度の床面積を低コストで確保できる場合など、条件が合えば検討しても良いでしょう。しかし、その場合でも、訪問介護事業所を併設する等して、通所介護だけを単独で開業しない方が良いと考えます。

 

 ただ、比較的スタッフのが確保しやすい事業ですので、資金や地域ニーズなどとの関係を考慮して検討しても良いでしょう。

 

 

有料老人ホーム

 

 資金が潤沢であり、会社に体力がある場合は新規事業として検討する事業者もあるかもしれません。建設業や不動産業から有料老人ホーム事業に参入した会社も多く、最近ではソニーなど大企業も参入しいます。

 

 筆者としては、有料老人ホーム事業は介護福祉事業というよりも、老後の生活を支えるサービス業としての視点が必要だと考えています。

 

 高級な老人ホームは自費負担も大きいので、お客様が限定的になります。また、逆に住宅型などの場合、低所得者(生活保護者を含む)をターゲットにした事業形態もあります。

 資金力だけでなく、ある程度、高齢者のニーズをマーケッティングする力が必要になります。

 

 また、都心部では介護保険予算の負担が大きいため、包括型の老人ホームの開業を区市町村が制限している場合があります。都心部で在宅生活ができなくなった高齢者が郊外の有料老人ホームに転居するパターンも多く、そうしたニーズを把握しなければなりません。

 

 さらに、サービスの質の管理が重要です。虐待などの問題が発覚すると、退所者やスタッフ離れが起こり事業が立ち行かなくなる場合があります。人手不足の中、スタッフの業務管理・労務管理を疎かにすると経営が困難になりやすいのもデメリットでしょう。

 

 

 次回も様々なサービスについてご紹介します。

 

 

介護福祉事業開業ガイド(他事業からの参入編)その1

 

 今回から他の業種から介護福祉事業へ参入する方法についてガイドしたいと思います。

 特に、中小企業事業者が参入しやすい事業ですので、その点を留意してご説明できればと思います。

 

介護福祉事業の参入メリットについて

 

①国の社会保障システムに組み込まれた安定事業である

 高齢者や障害者の生活を保障する仕組みは、先進国では当然のシステムであり、国が責任をもって保障しなければならない事業です。

 そして、我が国はこの分野の整備が他の先進国よりも遅れており、今後さらなる充実が要請されています。

 今のところ筆者が開業をお手伝いした会社のほとんどが継続的に事業を経営しています。

 

②地域に貢献できる事業である

 たとえば、親の代より地域に根差して経営をされているような中小企業であれば、地域における存在感がより増す事業であり、将来にわたり地域での存続を可能にします。

 

③女性が活躍できる職場である

 女性が生き生きと仕事ができる職場を地域に創造することができます。これはワークライフバランスという観点で地域にとって、とても意義があることです。

 

④コスト競争、シェア争いの悩みが少ない

 支援の必要な高齢者や障害者は今後おそらく50年程度増え続けます。誠実なサービス提供を続けていれば、コスト削減に頭を悩ませたり、他社とのシェア争いに巻き込まれることはありません。

 国は社会保障費を抑える目的もあり、病院や施設でケアを受けている高齢者や障害者の在宅ケアを強く推進しています。

 そのため、今以上に在宅ケアニーズが高まっていくことが想定されています。

 

⑤開業コストが極めて安い

 もし、事務所などがすでにあるならば、訪問介護や看護であれば、コストはほぼ人件費だけです。

 保育事業などは施設整備に費用が必要ですが、介護は極めて安価に事業が開始できます。訪問介護などで実績を積んだ上で、規模の大きな事業へと着実に展開していくことで、安定した成長が期待できます。

 

⑥自治体の補助金が使える

 地域密着型のグループホームや小規模多機能などであれば、建築費のほとんどが補助金で賄えます。

 土地をお持ちであれば、他の不動産投資などよりも断然有効な活用ができます。

 

 

では、デメリットは?

 

①あまり儲からない

 会社経営で大成功を狙っているのであれば確かに急成長できる業種ではありません。しかし、長く安定的な事業経営を望むのであれば最適です。

 

②人材確保が難しい

 2016年11月現在、介護職の有効求人倍率は3.4倍です。しかし、まったく求職者が来ないわけではありません。介護事業の場合地域での口コミの評判が物を言う場合があります。働きやすい職場づくりができれば、少しずつ人は集まり定着すると考えます。

 人材の確保と定着のノウハウについてはこちらをご覧ください。

「訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術」https://carebizsup.com/?p=827

 この業界ではスタッフの定着に失敗すると経営ができません。経営がうまくいかない事業者の多くが人材が定着しない会社です。

 

③全くの他業種から参入する場合、何も経験が無くて良いのかという不安

 経営者に経験が無くても、スタッフは有資格者の経験者が集まりますので仕事自体は問題ありません。また、経営者も開業前に介護初任者研修などを受講し、3年から5年経営すれば、概ね業界の姿は見えてくるでしょう。

 基本的には閉鎖性のない業界です。未経験でもやる気さえあれば誰でも参入できます。

 

④仕事が大変そう、3K職場である

 確かに(特別養護)老人ホームでの介護では体力が必要な部分もあります。しかし、在宅援助の場合、多くがそれほど体力を必要とする業務ではありません。訪問介護では70代の女性ヘルパーも活躍しています。

 介護現場の3Kイメージの多くは重度の方々のお世話をする施設介護のイメージと言ってよいでしょう。

 むしろ必要なのは対人援助のスキルや医療や障害の知識であり、そうした能力に優れた事業者であれば、キタナイやキケンは仕事として適切に対処できるものです。

 また将来的には、体力の問題も、福祉機器などの進歩で解消されてくると考えます。

 

 

産業構造が大変化しても生き残るために

 

 これからの50年で日本の産業構造は、それまでの50年に比べ劇的に変化すると考えられます。

 例えば、親の代に会社を興し経営を続けてきたが、このまま同じ事業で会社を継続していけるか、不安に感じている中小企業経営者の方には、特にお勧めしたい事業です。

 起業した地域で少なくとも50年は継続的に事業を営むことができます。

 工場や事務所などの経営資源も再利用できますし、従業員も雇用し続けることが可能です。

 

 次回は、具体的などのような事業参入が可能なのかをご説明します。

 

 

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その9

人材確保にとって重要な事業所のホームページ

 

 これまで、述べてきた働きやすい職場づくりを実践しても、それをアピールしなければ人材は集まってきません。

 また、求人誌やハローワークに載せる求人情報ではどのような職場かを知ってもらうには限界があります。

 そこで活用したいのが会社や事業所のホームページです。

 

 介護事業所のホームページは主に利用者やケアマネージャー向けにサービス内容の紹介や、事業所の場所などを紹介するために作成されていることが多いでしょう。

 しかし、仕事を探している人にとっては、このホームページが非常に重要な情報源となることを認識しなければなりません。 

 仕事を探している人は、求人誌やハローワークで求人情報を見て興味を持った場合、ほとんどの人がその会社や事業所のホームページを検索して、どんな職場なのかを知ろうとします。 

 そんな時、ホームページが事務的な内容でしかない場合、また、働きたいと思わないような内容であった場合、その人は応募することを控えてしまうでしょう。

 ホームページの内容が充実していて、職場の雰囲気が良く伝わってくるようなものであり、「良い雰囲気だな」と思えば応募してくれる確率も高いと言えます。

 

 

無料でホームページを作ることもできる

 

 ホームページを作るにはお金がかかると思っている方も多いでしょうが、無料で作成する方法もあります。

 多少のパソコンの知識があれば作成は可能です。

 もちろん作業時間が必要になりますが、外注で作るにしても、人手不足の悪循環から脱出するためには、多少の投資は必要であると考えます。

 

 現況で筆者が使ったことがある無料ホームページ(ウェッブサイト)では以下のものが使いやすかったと感じています。

 多少広告が入りますが、写真などのコンテンツがあれば簡単にホームページを作成することができ、専用のソフトを使うよりも簡単です。

  https://jp.jimdo.com/

 

 他にも無料で作れるサイトは多くあります。どこにするか選択するヒントとしては、自分の好みのテンプレートがあるかどうかで良いと思います。デザインの趣味などが自社にあっているものを選びましょう。

 https://bge.jp/free-homepage/

 

 

どんなホームページを作るのか

 

 ではどのようなホームページを作れば良いのでしょう。

 一言でいえば、「職場の雰囲気が伝わるホームページ」だと思います。

 

 デザインのかっこいいイカシタホームページである必要はありません。そこで働いているスタッフやご利用者の雰囲気が伝わってくるホームページが、人材確保には有効なホームページだと思います。

 もちろん、これまでに述べてきた働きやすさのアピールもしっかり行いたいものです。

 筆者が関わっている会社の例を以下に紹介します。

 

 株式会社ケア・プランニング

 http://www.best-kaigo.com/

 株式会社ナック(さんしゃいんヘルパーセンター)

 http://sunshine-helper.com/

 

 ホームページを作る場合のポイントは以下のようになります。

 

1 スタッフの働いている姿が分かる

 写真はできるだけたくさん掲載することをお勧めします。写真が多ければ多いほど雰囲気は伝わりやすいです。

 その際、ご利用者とスタッフの触れ合いの場面など、仕事が楽しく行われている雰囲気が伝わる写真が、多いと良いでしょう。

 なお、ご利用者の写真を掲載する場合は、許諾を得る必要があります。

   「肖像権使用同意書例」

    http://www.caremanagement.jp/?action_download_detail=true&lid=2681

 

2 求人情報のページを必ず設ける

  ここで働きやすさをアピールします。

 

3 事業所の特徴があれば積極的にアピールする

 上に紹介した株式会社ケア・プランニングでは、小規模多機能居宅介護にソフトバンクのペッパーがいてそれが特徴として前面に紹介されています。なんだか楽しそうな職場です

 

4 スマホで見た場合もきちんと伝わるように作成する

 最近はPCを持っていない人もいますので、スマホでも見られるサイトにしなければなりません。

 

 なお、業者に発注する場合、上記のようなコンセプトを明確に伝えないとステレオタイプな、どこにでもあるようなホームページになってしまう場合があります。

 また、更新のたびに料金が発生してしまう場合もありますから、よく相談して発注したほうが良いでしょう。

 自作の場合はそのリスクはありませんので、自作できたらその方が良いかもしれません。

 

 

各種ネット資源を活用する

 

 ホームページは1度作成したら、求人情報以外あまり更新する必要の無いように作成するのが良いと思います。

 そのかわり、FacebookやInstagramなどのSNSを活用し、イベント情報や日々変わる情報をアップしていきます。

 ホームページにリンクしたり埋め込んだりすることで、訪れた人に事業所の動きが伝わるようにしましょう。

 

 また、YouTubeなどに動画をアップしてホームページ埋め込むのも効果的ですホームページ埋め込むのも効果的です。例えば新人スタッフの紹介など、テキストを入力しなくても簡単にできるので便利だと思います。

 

 訪問介護や訪問看護の場合、仕事の現場を撮影した動画があまりネットにアップされていません。

 仕事の内容を知ってもらうためにも、そのような動画を掲載するのもアイデアだと思います。

 

 

 この回、終了。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その8

今回は求人の工夫について紹介します。

 

求人会社(媒体)選びのポイント

 

 求人売り手市場の現在、企業はあの手この手で人材確保をしようとしています。特にパート人材の確保は難しく、飲食系やコンビニは悪戦苦闘している状況のようです。

 

 そんなとき求人会社(媒体)は何を選べばよいか悩むところでしょう。現状では特にパートスタッフに関してはハローワークに求人を出してもほとんど反応は無いでしょう。

 

 求人会社(媒体)選びは地域によっても違いがありますのでどこが良いとは一概には言えませんし、求人業界が好景気で新規参入者も多く玉石混合の状態です。

 介護求人は四六時中求人出ししていなければ、なかなか人が集まらない状況です。継続的に求人を出し続けるためには、ネット求人の方が有利でしょう。

 ポイントは以下のように整理できると思います。

 

1 ハローワークには一応出しておく(3か月ごとに更新)

 最近、ハローワークの求人検索のデータベースにリンクを張って求人情報を掲載している民間サイトが増えています。

 その意味でもハローワークには一応掲載し、定期的に更新しておく姿勢が必要でしょう。更新しないと優先順位が下がってしまいます。

 

2 掲載無料の成功報酬型の求人会社(媒体)を選ぶ

 掲載課金型は掲載料が掛かるだけですが、掲載期間が終わると再度掲載しなければならないので継続的に求人を出すにはコスト負担が大きいです。

 応募課金型は応募があったら課金される仕組みですが、面接まで行ったら課金というように、サクラの応募を排除しているような場合はOKですが、単なるネット上の問い合わせにも課金されるようであれば避けた方が良いでしょう。

 採用成功した場合のみ課金される掲載無料の求人サイトをお勧めします。

 

3 地域で強い会社(媒体)があればそれを選ぶ

 地方では大手でなくても求人情報力の強い会社があるようです。介護事業所は地域密着型ですので、地域の人たちに情報が届きやすい会社(媒体)を選ぶことが重要です。

 首都圏は概ね大手が強いため、そのような会社(媒体)は無いかもしれません。

 

4 高額の祝い金を出すような会社(媒体)は緊急時以外使わない

 昨今、看護師などで高額のお祝い金を出す会社(媒体)がありますが、当然費用は事業者持ちです。祝い金を貰ってすぐに辞めてしまうような人もいるようですので、緊急に人材を確保しなければならないような時以外はあまりお勧めできません。

 

5 広告などの露出の大きい会社(媒体)を選ぶ

 求人事業というのは漁業に似ています。魚がいそうなところに網を張ったり、撒き餌をして魚を捕るのが漁業です。求人事業も仕事を探す人を沢山引き付けている会社(媒体)が一番儲かるのです。

 そのためには効果的に網を張り撒き餌を撒かなければなりません。それが広告です。

 テレビや各種媒体で仕事を探している人にアピールしている会社に、やはり人は集まってきます。

 最近この求人会社の広告よく見るな、という会社があったらそこを利用してみるのも手でしょう。

 もしそこが、成功報酬型の掲載無料サイトであれば、それがベストです。

 

 

求人情報の掲載方法

 

 これまで述べてきた働きやすさなどのポイントをできればアピールしたいものです。

 

 具体的には以下のような感じです。

 

「子育てママのための短時間正社員制度あり!!」

「急な子供の病気で休んでも正社員がしっかりフォーロー!!」(パート向け)

「長期有給休暇取得制度あり(10日の長期休暇が取れます!!)」

「パートさんの有給取得支援制度あり!!」

「初心者・介護無資格者歓迎、丁寧に指導しますので不安なく働けます!!」

 

 などなど、差別化できるポイントをアピールできると良いでしょう。

 

 筆者は研修などで、介護の仕事を探している人に求人情報を見る際、注意する点として以下のことを教えています。

 求人をする際、参考にしてください。

 

1 給与は総額よりも公正さが重要

 給与総額が高くても必要に応じ各種手当が公正に出ていなければ結局同じです。介護事業の給与は収入が介護給付ですからそれほど差別化はできないものです。

 高い給与をアピールしてくる会社よりも残業や資格、研修手当や移動手当などが公正に支払われているかが重要です。

 賃金を公正に支給する仕組みがしっかりとしている会社は、人事がしっかりしており、人事がしっかりしている会社は概ね会社自体もしっかりしています。

 

2 年間休日日数の多い会社は働きやすい

 年間休日日数がほかの会社よりも多い会社を選んだ方が、当然休みが多く働きやすい会社と言えます。

 

3 月に1回程度研修がある事業者を選ぶ

 これは問い合わせたり面接で聞くしかありませんが、月1回研修のある事業所は各種加算を算定しているはずですから、収入に余裕があり、他の事業所よりもきちんとしていると考えられます。

 

4 各種支援制度が充実している

 資格取得や産休育休などへの支援制度の充実をアピールしている会社はそれだけ社員を大切にしている会社であると言えます。

 

 

 

 次回は求人におけるホームページの重要性について紹介します。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その5

 

スタッフの健康管理は事業者の責務

 

 労働安全衛生法では、事業者は常時雇用する職員に会社負担で定期健康診断を受診させる義務があります。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf

 

 常時雇用する職員とは概ね週30時間以上働く、契約期間の定めのない労働者で、パートスタッフも含みます。

 

 訪問系のパートスタッフの場合、週30時間以上の労働実態が無いため(1日の訪問時間が6時間以上ないと週30時間を超えることができない)、事業者によっては健康診断を実施していない場合もあるようです。

 しかし、訪問介護の場合は週30時間以下のパートスタッフも含めて会社負担で健康診断を受診しないと、特定事業所加算を算定できないことはご存知でしょう。

 

 訪問看護でもサービス提供体制強化加算を算定するためには同様に事業者負担で定期健康診断を実施する必要があります。

 

 いずれにしても、介護事業においてはスタッフの健康管理は事業者の負担で、事業者の責任で進めていく必要があると考えます。

 

 ただ、パートスタッフは扶養者の保険で定期健康診断を受診したり、40歳以上の人の場合区市町村の特定検診を受診している場合があります。

 

 この場合は事業者の実施する健康診断を受診せずに、それぞれのスタッフが受診する健康診断の自己負担部分の費用を事業者が負担してあげればOKです。

 

 なお、労働安全衛生法では、健康診断の結果(健康診断票のコピー)を、保存しておかなくてはなりません。

 

 

スタッフの定着には腰痛など運動器系トラブル予防が大切

 

 定期健康診断は主に内蔵系の生活習慣病などの検査が中心になります。

 

 しかし、介護スタッフには腰痛や関節炎、肉離れなどの運動器系トラブルに見舞われることが多く、これは辞職の原因に直結します。

 

 腰痛などの運動器系トラブルはその人の身体的な特徴によるものが多く、また、年齢による違いも大きいでしょう。

 

 中年女性や高齢者にパートスタッフとして大いに働いてもらわなければならない介護事業では、スタッフの運動器系トラブルをできるだけ減らすことが、スタッフ定着のための重要な方策になります。

 

 しかし、腰痛などの原因は複雑であり、様々な原因があるため人それぞれ対策が異なる場合があります。

 厚生労働省では社会福祉施設の介護従事者の腰痛予防対策を冊子にしています。内容はかなり専門的で複雑ですが、腰痛予防のストレッチなどは参考になるでしょう。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000092614.pdf

 

 ただ、これはあくまで老人ホームなどの一定の環境での対策です。訪問系の現場ではそのまま導入することは難しいでしょう。

 そこで、スタッフの腰痛などの運動器系トラブルに対する簡単な対策を以下にまとめてみました。これだけで、全てのスタッフの腰痛や運動器系トラブル予防ができるわけではありませんが、少しは辞職の防止につながるとは思います。

 

【スタッフの運動器系トラブル対策】

 

1 負荷の高いサービス提供前にストレッチなどの準備体操を義務付ける

2 ボディメカニクス研修などを定期的に実施する

3 スタッフの運動習慣を支援する仕組みを整える

4 体組成計などにより個人の筋肉量を計測する

5 研修等で個人の栄養管理の啓発を行う(特にタンパク質)

6 リフトやスライドボードなどの福祉用具の活用を図る

7 腰痛対策商品を活用する

8 人により業務の内容を調整する

 

1 始業前に腰痛体操などの準備体操を実施する

 

 訪問先で、移乗などの筋肉に負担がかかるサービスの前には、必ずストレッチなどの準備体操を実施することを、業務の手順の中に加え義務付けます。

 筋肉系のトラブルの場合、筋肉が温まっていない状態での急な負荷が原因になることが多く、負荷の高い介護をする前には、必ず実施するようスタッフに指導します。

 準備体操は、できれば訪問先の家の中に入る前に実施すると良いでしょう。ご利用者の前で行うと、ご利用者がつらい気持ちになってしまうかもしれません。

 

2 ボディメカニクス研修などを定期的に実施する

 

 年に1回は集合研修で行い、同行訪問などの時も現場でしっかりボディメカニクスの原則を確認すると良いでしょう。

 

3 スタッフの運動習慣を支援する仕組みを整える

 

 スタッフの腰痛予防や運動器系トラブルに対する研修の中で、日常的な運動の奨励をする一方、スタッフが気軽に参加できるトレッキング会や街歩き会などを社内で開催したり、スタッフが地域スポーツに参加するための補助金を出すなど、スタッフの運動習慣獲得に対する支援を進めることも良いことでしょう。

 介護予防の観点からも40歳ぐらいからの運動習慣は重要視されています。中年以上のスタッフには特に意識してもらうことが重要でしょう。

 

4 体組成計などにより個人の筋肉量を計測する

 

 ご存知のように高齢になれば筋肉量は減っていきます。筋肉量の減少が運動器系のトラブルに直結することは明らかですから、スタッフが筋肉量を計測し、自分の筋肉量が平均より少ないのか多いのかを知ることは、運動器系トラブルを予防する第1歩になります。

 

5 研修等で個人の栄養管理の啓発を行う(特にタンパク質)

 

 筋トレなどの運動をしなくても、必要なタンパク質量を適切に摂取すれば、筋肉は増えます(その代わり体脂肪が減ります)。ですから、日々の食事でタンパク質をどのくらい摂取すべきかをスタッフ研修などで意識付けさせます。

 なお、運動で身体を動かす習慣がある方は、1日に

自分の体重×1.2~1.3g (例:体重70kg×1.3=1日に必要な目安91g)

 摂取しなければなりません。

 ちなみに、91g摂取するには、赤身の牛ステーキ500g、牛乳なら3リットル程度必要です。

 

 昨今の研究でどうやら、若い人は炭水化物を摂取しても筋肉に変える能力がああるが、年を取ると、タンパク質を直接摂取しないと体脂肪ばかり増えて筋肉量が減っていく傾向があるようです。

(サルコぺニアの原因 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/sarcopenia/about.html

 中年以上のスタッフには特にこの点を意識付けする必要があるでしょう。

 

次回はこの続きとメンタルヘルスについて説明します。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その4

パートスタッフにとって居心地の良い職場づくり

 

前回の続きです。

 

パートスタッフは報酬の高さよりも居心地の良さを優先します。

 

【居心地の良い職場の指標】

4 自身の生活(子育てや家族)やライフスタイルとうまくマッチングしている

 

 パートスタッフは基本的に地元の人が殆どであり、地域の働きやすい職場で、長く定着して働くことを望んでいます。

 共働きの主婦など、子育てや家庭のことなど自分のライフスタイルにマッチした働き方が地域でできることが重要なのです。

 そのことを前提に、事業所運営をしなければなりません。

 

 なお、このことは正社員についてもある程度言えることです。また、パートから正社員に登用される道(主婦の場合は子育てが終わったらケアマネージャーとして働きたいなどのニーズがあります)があるとさらに良いと思います。

 

 介護事業所は、地域の職場として安定した就労環境を提供する義務があると考えてください。

 大企業などは都心に事務所を持ち、郊外から通勤する労働者により事業運営をしていますが、それはビジネス機会や給与などの面でそれだけのメリットがあるからです。

 また、若い労働者にとっては都会の華やかなオフィスで仕事をすることに憧れや、喜びを持っているかもしれません。

 しかし、介護事業はそもそもが地域密着の事業であり、都会に事業所を集中できるような性質のものではありません。あくまで、地域の人たちの手によって地域の人たちにサービスを提供する形態が事業の基本になります。

 

 ライフスタイルにマッチした職場(=居心地の良い職場)としての条件は以下のようなことがあげられます。

 

① 小さい子供を育てる主婦の場合、急な子供の病気に対応する必要があり、そのような場合、仕事を急に休むことができる。

② 保育園の送り迎えなどの時間が取れる(短時間勤務が可能)

③ 労働日や時間がある程度自由に選べる

④ 土日祝日は確実に休める(子育てをしている人にとって休日は子供の相手をしなければなりません)

⑤ 産休育休や病気休暇等の後でも復帰しやすい(そういうことが気軽に相談できる)

⑥ 旅行などに行きたい場合、長期休暇を取りやすい(リタイアした高齢者などには働きやすい)

 

 

仕事が人に合わせる職場づくり

 

 基本的には、労働者が家庭や趣味、そうした人生の中で優先したい事を優先しながら仕事ができる環境が望ましいと言えます。

 

 人生100年時代が来ると言われ始めました。そうすると人は80歳ぐらいまで働かなければならないと言われ始めています。

 これからは、今までのように、65歳までは仕事の人生、65歳からは余生というような分け方はできなくなるでしょう。

 おそらく、人が仕事に合わせるのでなく、仕事が人に合わせる必要が出てくると考えます。

 

 地域の職場としての介護事業所はそのように、仕事が人にあわせるような働き方ができる職場として、機能させることができると考えます。

 主婦や高齢の労働者にとってはそのような職場が望まれていると考えます。

 

 さて、仕事が人に合わせられるような職場づくりをするには正社員が活躍しなければなりません。パートスタッフがフレキシブルに働くためにはその穴を正社員で埋めるしか無いのです。

 

 つまり子供の急な病気で休まなくてはならないパートママの穴を、正社員でカバーできる体制作りが必要になります。

 そのため、先の「世話不足の悪循環」でも述べた通り、サービス提供責任者や管理者は現場にあまり出ず、そうした急なトラブルのカバーに回る必要があり、それが普通であるような職場作りが求められます。

 正社員がパートのカバーを柔軟にでき、お互いに助け合うような雰囲気が職場にできると、大変居心地の良い職場になると考えます。

 

 

5 肉体的・精神的な負担が少ない

 

 つまり、ストレスの少ない職場ですが、そのためには、個々の職員の職能や技術にマッチした仕事ができることが重要です。

 また、日頃から職員の健康管理について会社が支援する体制も重要になってきます。

 

 介護は肉体的にきつい部分がある仕事です。腰痛などにより離職を余儀なくされる場合もあり、体力のない人にとっては継続が難しい場合もあります。

 

 身体介護(移乗・入浴・排せつ介助など)は女性や高齢のスタッフにとっては肉体的な負担となります。パートスタッフにとって働きやすい職場にするためには、そうした肉体的な負担について、「できる・できない」を気軽に訴えることができる職場が居心地の良い職場でしょう。

 

 「○○さんの入浴介助は私には少し負担が大きい」と気軽に言えることが大切なのです。もし、頼まれた仕事が肉体的にきついのに、それを訴えられない雰囲気がある場合、そのスタッフはやがて辞めてしまうでしょう。

 まじめな人であればなんとか克服して、仕事を全うしようとするかもしれませんが、実際に腰を痛めるなどして仕事ができなくなれば結果は一緒です。

 

 精神的な負担は「世話不足の悪循環」でも述べた通りです。仕事の悩みはすぐに解消されるよう、気軽に相談できる体制が必要になります。

 

 健康管理については体力づくりや怪我の予防も含めて、本人任せにせず会社が支援することが重要になりますが、健康診断以外にどのような支援があるでしょうか?

 

 次回はスタッフの健康管理について解説します。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その2

スタッフ世話不足悪循環

 

 サ責や管理者が現場に出ずっぱりの事業所の場合、訪問スタッフが現場で対応に困った時、すぐに携帯電話で相談したくてもサ責や管理者が携帯電話に出られない状況がよくあります。

 

 自分一人で対応できない場合、適切な相談と指導が受けられず、スタッフは途方に暮れてしまうかもしれません。新人スタッフであればそれが原因で職場を辞めてしまうこともあると考えます。

 

 現状では、人手不足で、サ責や管理者がサービスに出なければ、とてもご利用者の対応ができないという事業者が多いのではないかと考えます。

 深刻な介護人材不足がそのような状況を作り上げているのですが、場合によっては収益率を上げるために、責任者が現場に出なければならないという事情もあるかもしれません。

 

 しかし、これがスタッフが定着しない悪循環を作り出します。

 筆者はこれを「スタッフ世話不足悪循環」と呼んでいます。

 

【スタッフ世話不足悪循環】

人手不足(又は収益増圧力)→責任者が現場に出ずっぱり→スタッフの世話ができない→スタッフの不安増幅→スタッフが辞めてしまう→スタッフが定着しない→人手不足

 

 

 

訪問系スタッフが安心して働けるようにするためには相談指導体制の構築が重要

 

 まずは、なんとかして【スタッフ世話不足悪循環】から抜け出さなければなりません。

 そのためにはサ責や管理者の訪問回数を減らすのですが、それなりの覚悟が必要になると考えます。

 

 新規利用者のアセスメントやサービス担当者会議などで、まったく外に出ないことは不可能ですが、朝や夕方などサービス利用の多い時間帯、新人スタッフが単独で業務に入っている時や、困難ケースなどでトラブルの発生が予想される場合など、連絡が入ってくる可能性がある時間帯だけでも、できるだけ電話に出られるように工夫することが必要です。

 もしも、サービス提供責任者が複数在籍していたり、サービス提供責任者でなくても利用者情報に詳しいベテランのスタッフなどがいる場合は、シフトを工夫して、相談を受けられる誰かが必ず事務所で待機できるように体制を整備すると良いと思います。

 

 また、特に新人スタッフに対しては仕事に自信が持てるように、仕事の不安を払しょくできるような相談指導体制を作ることが重要かと考えます。

 事業所の中堅以上の職員はそのことを強く意識しながら新人スタッフに当たるように事業所内のコンセンサスとして確立したいものです。

 

 

気軽に相談できる雰囲気作り

 

 新人スタッフの世話では、管理者やサービス提供責任者だけでは目が行き届かない部分もあります。そのため、在籍するスタッフが全員、新人の相談に積極的に乗れる組織作りができると良いと思います。

 

 単独で仕事をしている訪問系サービスの場合、どうしても他人の仕事に無関心になりがちです。気軽に誰にでも相談できる雰囲気作りをするために、スタッフが溜まりやすい休憩場所や事務仕事を共同でできるような事務室を作るのも良いでしょう。

 

 

相談指導体制の整備には情報共有体制の整備から

 

 訪問介護の特定事業所加算ではスタッフが利用者情報を共有することが求められていますが、訪問系サービスでは、この情報共有体制の構築が相談指導体制を充実させるための要件となってきます。

 

 もしも、現場のスタッフからSOSの連絡があり、事務所に他のスタッフがいて、そのスタッフが実際にその利用者に直接サービスを提供したことが無くても、利用者について少しでも情報があれば、完璧でないとしてもなんとか対応が取れる可能性があります。

 

 事務所にいるスタッフが利用者ファイルの介護経過やアセスメントなどにより状況を把握し、スタッフ同士で話ができることは、現場スタッフにとって非常に心強いことでしょう。一人で現場で悩むよりもずっと安心感があります。

 

 

情報共有体制に必要な利用者ファイル作り

 

 スタッフが悩んだ時、利用者ファイルを見ればヒントが見つかるようなファイル作りが必要です。

 そのために、利用者ファイルにはあらゆる情報ファイリングしておくことが大切になるでしょう。

 サービス提供責任者は現場からの利用者情報を逐一吸い上げ、ファイリングすることが重要です。サ責の第一の仕事は詳細な利用者情報のファイリングと言っても良いほどです。

 そのため、個人ファイルの最初になんでも書き込める用紙をファイリングしておくと良いと思います。記事とともに日付と記入者を必ず書いておきます。

 

 

現状ではネットやクラウドなどでは詳細な情報蓄積は難しい

 

 ネットを使って利用者情報を現場でもスマホなどで見られるようにすることは情報共有のための方法として有効でしょう。

 しかし、紙のファイルとネット上の情報が二つある場合は、情報が分散し、現場で必要な情報が手に入らない場合がありますので注意が必要です。

 

 現状では、スタッフ間でネットで情報伝達をしたとしても、最終的には紙のファイルに一元集約し管理したほうが効率的に情報管理ができるのではないかと考えます。

 

 ネットでの一元管理するためには、利用申込書からアセスメント、診断書や保険証、薬剤情報などもすべてデジタル化してネットにアップする必要があります。作業が煩雑ですしデジタルスキルに秀でた人でないとなかなか管理ができません。

 

 利用者に関する情報はメモも含めてすべてファイリングするやり方が、今のところもっともすぐれた情報共有方法だと考えます。

 

 

効率的なスタッフ会議の開き方

情報共有及びケアカンファレンスとしてのスタッフ会議はスタッフ間の連携を密にする意味でとても有効です。開き方については前回の記事をご覧ください。

 →訪問介護「特定事業所加算」で必要なスタッフ会議の進め方

 

 

次回はパートスタッフの定着術についてもう少し詳しく説明します。

 

 

訪問系サービスのスタッフ獲得術・定着術 その1

 

 

現状では訪問系サービスの収益アップにはパートの活用が肝

 

 訪問介護や訪問看護事業では、正社員によりサービス提供するよりも、登録のパートスタッフにできるだけ仕事をしてもらった方が事業収益上プラスになります。

 

 地域や加算により違いますが、例えば身体2(1時間以内)で約4,000円の給付がある場合、パートスタッフであれば人件費が時給換算で1,500円から1,800円といったところでしょう。

 

 しかし、社員の場合、1日、5時間程度訪問サービスができるとして、単純計算で

 一月100時間×4,000円=400,000円の収益になりますが、社会保険や賞与、必要経費を考慮すると人件費としては300,000円程度が必要になると思いますので、収益率はパートスタッフより少なくなります。

 

 これは訪問看護でも同様のことが言えます。

 つまり、訪問系の介護サービスの場合、現状ではパートスタッフが増えた分だけ、収益率が増すビジネス構造となっています。

 

 

しかし労働環境の流れはパート→正社員化?

 

 もちろん、パートスタッフが増えることはサービスの質の低下につながる場合もありますので、きちんとした研修や指導が必要です。そうした質の低下をさせずに、パートスタッフを獲得し定着させることが、今のところ訪問系事業所経営の要諦となっています。

 

 しかし、国は非常勤や契約労働者の正社員化を目指して労働政策を進めている傾向があります。一方で、主婦や高齢な労働者の中には正社員よりもパート労働者として働きたいというニーズもいまだ強く今後の労働環境の方向性は不透明です。

 

 主婦の場合、夫の扶養範囲や所得税控除、社会保険加入の関係でパート労働の方がメリットが大きかったりしますので、年収100万円程度に収入を押さえたいというニーズも強くあります。

 

 とはいえ、人口減少社会の中で、国は年収制限を撤廃して労働力を確保したい方向です。これに対し、主婦やパート労働者に頼っている業界などのからの反対は強く、綱引きが続いている状況です。

 ファミレスやスーパーコンビニなどの業界では、パートスタッフがいなくなれば根本的にビジネスモデルを変えなければなりません。この点は訪問系介護サービス業界も同様のことが言えるでしょう。

 

 パート労働者の扱いがどうなるか注視していく必要があります。

 

 

今後は柔軟な就労環境の構築が重要

 

 筆者は、いずれパート年収上限の撤廃がありえると考えています。

 しかし、もしも、パート年収上限を撤廃し、仮にすべての訪問介護員を正社員化するのであれば、訪問介護給付は今より20パーセント程度増加させなければならないと考えます。

 そうしなければ、事業者の撤退が相次ぐでしょう。介護保険制度の訪問介護サービスは継続できず、日本の在宅介護は崩壊します。

 

 日本のパート労働者を正社員化するためには、日本の労働者全体の賃金の上昇を前提としなければならないと考えます。

 

 20パーセントというのは、具体的には身体2(1時間以内)であれば5,000円程度の給付です。そうすれば、訪問介護員の給与は今のケアマネージャー程度になり、共働きの既婚女性などが働きやすい職業になると考えます。

 

 蛇足ですが、そもそも、ケアマネージャーよりも訪問介護員の方が給与が安いという考え方はそろそろ変えた方が良いのではないかと考えています。

 家事援助が別のサービスに移行し、訪問介護員は身体介護や医療的ケアなど高度なサービスに特化すれば、20パーセントの賃金上昇は吸収できるのではないでしょうか。

 

 訪問介護のサービス内容の高度化と給付上昇を同時に行えば、訪問回数が減りますので、スタッフ不足も解消するかもしれません。正社員化しても日本の訪問介護サービスがとん挫することは避けられるでしょう。

 

 とはいえ、現状のビジネスモデルとしてはパートスタッフを活用するべきですし、訪問系の事業者としてはパートさんを確保し定着させる方策に取り組まなければならないと思います。

 

 また、パートさん獲得定着の取り組みは、正社員の獲得定着の取り組みにも繋がります。今後は、週休3日制や短時間正社員などの制度が整備され、多様な働き方ができる社会になってくると考えていますので、労働者のライフスタイルに応じた柔軟な就労環境の構築がスタッフ獲得の肝となってきます。

 

 

 

訪問系スタッフは不安を感じやすい

 

 それでは現状でのスタッフの獲得定着について、何が重要なのでしょうか。

 

 通所介護や施設サービスと異なり、訪問スタッフは概ね一人で利用者を訪問し、サービス提供をしなければなりません。

 サービス提供責任者や管理者が同行訪問し指導をしますが、最初の方だけです。

 一方、ご利用者の状態は日々変化するものであり、その変化に対応した適切なサービスを提供することが求められますので、訪問介護員や訪問看護師はそれなりの知識と技術が必要となります。

 

 しかし、知識や技術がしっかりしていても一人では対応に悩むことは当然あります。施設など複数でサービス提供している現場であれば、その場で他のスタッフに相談し、対応することができますが、一人ではそうもいきません。当然、仕事に対する不安を抱えることになります。

 

 一人前の訪問スタッフとしてご利用者宅で不安を抱えずに仕事ができるようになるためには、場数が必要ですし、育成にはきめ細かい指導が必要になってきます。そうでなければ、スタッフはずっと不安を抱えたまま働くことになり、職場の定着率は低くなります。

 

 スタッフの定着にはこの不安をいかに解消し、安心して働けるようにするかが重要となります。

 

 次回は訪問系スタッフが安心して働ける職場づくりについて紹介します。

 

 

訪問介護事業所の障害者福祉サービスへの参入 メリットとノウハウ その2

前回の続きです。

 

高齢者サービスと障害者福祉サービスの違い

 

 さて、介護職として、高齢者介護以外経験がない場合、障害者介護は不安に感じるかもしれません。しかし、介護認定を受けている高齢者も障害者には変わりありません。障害の原因が加齢によるものであるだけです。

 もちろん障害の種類によって状況は様々です。そうした障害の理解は学ばなくてはならないでしょう。しかし、介護福祉士であればそうした障害の種別は一通り学んでいるはずです。介護の研修カリキュラムは高齢者以外の障害種別も基本的に網羅していますで、担当した障害者の状況についてきちんとアセスメントし勉強すれば、知識としては十分に対応できると考えます。

 高齢者との大きな違いは、比較的活動性や自立意識が高いため、介護者との関係が対等な場合があります。また、介護サービスを活用しようという意識が高いこと。身体障害者の場合、多くは障害受容のトレーニングを受けていおり、障害とともに生きていくことの覚悟がしっかりできているため。非常にスムーズなサービス提供が可能な一方、精神障害の方などコミュニケーションに課題を抱えている場合も多いので(頻繁に電話がかかってくるなど)、高齢者よりも受容的な態度が必要になるケースも多いようです。

 いずれにしても一人ひとりの心身の状況をしっかりアセスメントして課題解決のアプローチをすることは高齢者となんら変わりはありません。

 

 

利用者獲得方法 

 

 高齢者介護サービスの場合、地域包括やケアマネ事務所へ個別の営業を積んでいかなければ仕事の依頼は来ませんが、障害者サービスの場合は地元自治体の障害福祉担当に挨拶に行くだけで仕事の依頼が来る場合があります。また、高齢者の居宅支援事業所と同じような相談支援事業所があります。高齢者と違い一人の相談支援員が受け持てる利用者数が多く、一人の相談支援員から次から次と依頼がある場合もあります。地域の事業所数も少ないため営業先も少なくて済みます。中には訪問系障害者サービスの事業指定の公示を見て早々に電話をしてくる担当者もいらっしゃいます。地域によっては高齢者以上に需給バランスがひっ迫している状況もあるようです。

 ちなみに、平成26年度全国の訪問介護事業所の数は33,991に対し、障害者の居宅介護事業所数は19,872です。しかし、指定は取っていても実際には障害者サービスの依頼を受けていない(人手不足で受けられない)事業所も多いようです。

 

 

医療的ケアの取り組みにより、特定事業所加算Ⅰの取得 

 

 喀痰吸引や胃瘻などの医療的ケアはハードルの高いサービスと考えている訪問事業者も多いかと思います。しかし、実際にはご家族が日常的に行っているケアであり、介護福祉祉士が適切な研修を受けて行えば、決して難しいケアではありません。

 ケアの研修(3号研修)も基本的な研修は2日で終わりますし、直接ご利用者に対する実地研修もそれほど負担ではありません。

 医療的ケアができるということは、すなわち利用者が重度になるということです。すると、重度者を多くケアしている事業所に加算できる特定事業所加算Ⅰ(20%)が取得できる可能性が出てきます。これは収益上、大きなメリットになると考えます。

 実際、国の方針もあり、病院や施設から在宅生活を目指している障害者の方が沢山いらっしゃいます。そうした方への医療的ケアニーズは非常に高く、事業者が足りない状況と言えるでしょう。

 また、重度利用者は毎日ケアが必要であり、業務のボリュームも大きく、スタッフさえ確保すれば、安定した収益を上げられる仕事であると考えます。

 

 

連携する訪問看護ステーションがあるとメリット大 

 

 これまで施設や病院で暮らさざるを得なかった重度障害者の在宅ケアを実現していくには、家族負担の大きかった医療的ケアを訪問介護員により行っていくことがとても重要です。

 医療的ケアの実地研修にはそのご利用者のケアを行っている訪問看護ステーションの協力が無ければ実施できません。訪問看護師に医療的ケア教員講習(1日)を受けてもらう必要もあります。このため、連携する訪問看護ステーションがあるとサービス提供がスムーズに行えるでしょう。

 既に医療的ケア教員受講者の多くいる訪問看護ステーションと連携できればメリットは大きくなります。さらに、訪問看護師との業務の連携が綿密にできれば、利用者にとって利便性の高いサービスが提供できるでしょう。

 そのため、医療的ケアを多く実施している訪問介護事業所では事業を拡大して訪問看護ステーションに参入しようとしている事業をも多いようです。

 

 

障害者福祉サービスの新たなフィールドへの展開

 

 訪問系の障害福祉サービス事業を手掛けることで、障害福祉サービスのフィールドをさらに広げていくことも期待できます。

 相談支援や就労支援事業はまだまだ不十分であり、特に、精神障害者の社会参加のサポートはかなり遅れているのではないかと考えます。

「障害福祉サービスの体系」厚生労働省

 

 訪問系のサービスから将来、新たなサービス事業へ拡大していくことは経営戦略の面で有望であると考えます。

 最近では児童デイサービスのチェーン展開をする会社も現れていますが、障害福祉サービスは地域自治体との関係が重要です。地域にどのようなサービスが不足しているのか自治体に取材してから事業展開を考えることが必要であると思います。

 最後に、障害者介護を専門に働いている介護人材がいます。そうした人材はこの分野への興味も強く、そうしたスタッフとの出会いが新たな事業フィールドへの展開を可能にしてくれる場合もあるでしょう。

 この回終わり。

 

日常生活支援総合事業と指定申請

Care Biz Supportが開業支援させていただいている、

なでしこケア様が6月1日墨田区向島に訪問介護事業所をオープンしました。

http://www.nadecare.co.jp/

おめでとうございます。

 

なでしこケア様は墨田区の日常生活支援総合事業も実施する予定ですが、

各区市町村の日常生活支援総合事業に新規開業で参入するためには、

各区市町村個別に事業の指定申請をしなければなりません。

この新規指定申請事務は事業所にとって大きな負担ですね。

介護事業参入者を増やしていかなければならない現状で、

事業者の負担を増やすことはいかがなものかと思います。

都道府県の指定申請によってみなし指定にするべきだと思います。

それに、区市町村の事務担当者にも大きな負担でしょう。

考え直してもらいたいです。

 

Care Biz Supportでは新規に訪問介護・通所介護事業所の開業サポートをさせていただく場合、

区市町村の日常生活支援総合事業の指定申請を1区市町村のみサービスさせていただきます。

 

その日常生活支援総合事業ですが、各区市町村によりその取り組みはかなり温度差があるようです。

お客様の話から、何も取り組んでいない市などもあるようです。

介護予防の観点から各保険者は住民の介護度を上げず老化を防ぐ努力をしなければなりません。

住民の介護度が上がる➡保険給付が増える➡厚生労働省からペナルティーが来る、

みたいな流れの中で日常生活支援総合事業は計画実施しなければならないのですが、

あまり取り組みに熱心でない自治体は住民の要介護度がそれほど高くないのかもしれません。

とはいえ、財政的にはどこも厳しいはずですから、単に介護保険事業担当の人手不足かもしれません。

 

総合事業は概ね二つの事業にわかれているようです。

一つはリハビリ、体力強化系の事業。もう一つはボランティアやシルバー人材センターなどの安価なマンパワーを利用したお年寄りの生活支援です。

後者は家事援助が中心で今後、予防の家事援助はこちらに移行するものと考えられますが、

全国的に人手不足の折、安価なマンパワーの利用は虫が良いよような気もします。

現状、要支援のお年寄りの家事支援は、足や腰が痛くて買い物や掃除などの家事がままならない方に提供されている傾向があると思います。

こうした方への支援は単なる家事手伝いではなく、できることはやってもらう支援にしなければなりませんが、

総合事業の家事援助は単なる家事手伝いになる恐れがあります。

それでは介護予防にならないのではないかという声がいずれ上がってくるような気もします。

 

もうひとつのリハビリは運動支援と言い換えてもよいと思います。

これに栄養管理など総合的な体力強化のプログラムが加わり、いつまでも元気で暮らしていけるよう支援するものになるのでしょう。

お年寄りの体力を維持強化して、要介護にしないためには運動だけでなく食事の管理も大変重要です。

必要なカロリーは摂取していてもたんぱく質やミネラル・ビタミン摂取が不足して、

栄養失調になっているお年寄りが大変多いと聞きます。

軽度の認知症により偏食傾向になったり、買い物が億劫でコンビニ食だけで暮らしているお年寄りも多いのではないでしょうか?

こうした、生活を総合的に支援しようというのが総合支援事業ですが、毎日の食事をしっかり管理するのはなかなか難しいことではないかと思います。

運動は週2回程度、デイサービスなどで行えば十分に効果は期待できますが、

日々の食事は別の介入方法を考えないと、特に独居のお年寄りにはなかなか良い対策ができないような気がします。

 

配食弁当を利用することはバランスの良い食事を継続する意味では効果的な方法かもしれませんが、

お年寄りによっては味に飽きてしまったり、好みに合わなかったりで辞めてしまう人も多いようです。

食事習慣は長年積み重ねられた習慣であり、新しい環境になじむ対応力の落ちたお年寄りにとって、

改善することが難しい習慣であると思います。

要介護になって介護サービスが厚く入れるようになれば色々な対策がとれるとは思いますが、

要支援の方や未認定の方には介入が難しい部分だと思います。

 

現在行われている管理栄養士による特定健診・特定保健指導は主に生活習慣病を予防するための栄養指導です。

太りすぎやメタボリックシンドローム対策が主眼になっており、高齢者の体力低下を防ぐ意味での栄養管理はまだ広まってはいません。

先に述べたように介護予防のための栄養管理は運動管理と組み合わせて行う必要がありますが、

今のところそのような公的プログラムは試行段階で、スタンダードな方法論が確立されているわけではなさそうです。

逆に食品会社やライザップのようなフィットネス関連企業の方が積極的に高齢者向けの「食と運動」のプログラムや情報を提供しています。

https://activesenior-f-and-n.com/

http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/120401432/?ST=health

地域の「食と運動」にどのように自治体が関与していくのか、今後の取り組みが注目されます。