介護事業所の人事評価の在り方について その1

今後、人事評価は必要になる

 

 今年度の処遇改善加算の新Ⅰのキャリアパス要件に人事評価の項目が入りました。

 現状では人事評価を実施しなくても新Ⅰを算定することは可能ですが、今後、さらに加算がアップする場合には、職員の評価を適切に実施し昇給・昇格する仕組みが要件になると考えられます。

 

 キャリパス要件では「実技試験や人事評価」という表現になっていますが、介護職の仕事を評価するには実技は当然入ってきますので、実技評価を含んだ人事評価と考えて良いでしょう。

 

人事評価とは

 

 人事評価は組織が業務を推進していく上で、職員の仕事を適切に評価し、賃金やボーナスなどに反映させ、効率的で安定的な組織運営と業務推進を目指して行われるものです。

 人事考課や業績評価、能力評価などいろいろな呼ばれ方をしますが、いずれにしても、組織に貢献している人を評価し、貢献していない人を罰する、信賞必罰の考え方がベースにあると言えます。

 

 中小企業ではよく、優秀な人が辞めてしまい、あまり能力のない人が残ってしまうということを言われます。

 これは、能力を適切に評価し、処遇を高めることをしないために、起こります。また、優秀な人には仕事が集中するにもかかわらず、それに見合った処遇がされないことに不満を持つことも良くあります。

 介護事業所でもこの傾向はみられることでは無いでしょうか。

 

人事評価を導入するには

 

 人事評価を導入するには、人事専門のコンサルタントに依頼することも可能ですが、業種によって評価内容や方法が異なるため、自社の事業に完璧にマッチした制度を構築するには、相当の作業が必要です。

 また、人事評価制度は組織運営を最適化するためのツールでもあり、職員の能力を評価し処遇に反映さていく過程で、組織を効率化し、生産性を最大化する効果も求められてくる場合があります。

 経営学の中でも深く研究されている分野でもあり、中小企業が取り組むにはハードルが高すぎる面もあります。

 従って専門のコンサルタントに頼み、レベルの高い制度を導入するには、かなりの費用が掛かってしまうことを、ご承知ください。

 

 ここでは、まず簡潔に導入できる方法を考えたいと思います。

 シンプルな人事評価制度でも、導入効果は大きく、スタッフのモチベーションアップや組織課題の解決に貢献しますので、導入は大変意義があると筆者は考えています。

 

 処遇改善加算に対応したシンプルな人事評価制度の導入サーポートもCare Biz Supportで行っていますのでお問い合わせくださればと思います。

 

シンプルな人事評価制度の2つの評価方法

 

 通常、介護事業所には一般職員と管理職がいます。この職員区分で評価方法を変える必要があります。

 

  • 一般職員(現場で直接介護サービスを提供する職員)

 訪問介護事業所でいえば、訪問介護スタッフやサービス提供責任者(一部管理職である場合もあり)

【評価方法】

 一般職員は介護サービスの提供能力や組織人としての行動能力を評価します。これは介護技術や、組織内における円滑な業務の遂行能力(コミュニケーション能力など)や貢献度の評価になります。

 

  • 管理職(事業所のマネジメントや、会社のマネジメントに関わる職員)

 いわゆる課長級の管理者や部長級の職員、またその他の役員

【評価方法】

 管理職の評価は「業績評価」です。

 「業績評価」は事業所の売り上げや、会社の組織目標を達成できたか(新規事業所を適切に立ち上げたかなど)が評価の対象になります。

 

 処遇改善加算の要件では、まず一般職員の評価が求められていると考えて良いでしょう。

 

 実は、管理職の評価は簡単です。年度当初に目標を設定し、年度末にそれが達成できたかを役員会議などで評価すればそれで終わりです。

 

 難しいのは一般職員の評価の方であり、適切な評価ができないと、組織の生産性が低下してしまいます。

 

 一般職員の評価を実施するのは直属の管理職です。管理職にとっては部下の一般職員に頑張ってもらわないと、自らの業績目標が達成できないわけですから、その評価は仕事としてまじめに取り組まなければならない事柄になります。

 

 

まず会社の人事評価規定を作成する

 

 人事評価を導入するには、まず、それにかかわる規程類を整備しなければなりません。

 例として、「東京都職員の人事考課に関する規程」ご紹介しておきます。

 

http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012590001.html(東京都職員の人事考課に関する規程)

 

 私は東京都の教育委員会で実際に6,000人程度の職員の人事考課業務に携わっていました。

 介護の仕事は公的サービスですから、公務員の人事評価制度を準用することが可能です。この規程におけるポイントを整理すると以下のようになります。

 

【人事評価規定を作成する際のポイント】

 

 ①一般職員の評価は直属の管理職が行う。

 ②毎年実施する。

 ③毎年同じ期日(10月1日など)に職員がみずからの職務能力について自己評価をする。

 ④職員の自己評価に基づいて、管理職が同様の評価をする。

 ⑤人事評価の内容を確認しながら、職員と管理職が面談し、評価内容や仕事のことについて話し合う(必ず1対1)。

 ⑥面談の内容は秘密厳守

 ⑦上記の過程を通じて、その職員のその年の評価が確定する(できるだけ納得してもらう)。

 

 なお、公務員では直属の上司以外の2次評価がありますが、介護事業所ではこれは必要ないでしょう。

 

 

 

重要ポイントは自己評価と面談

 

 毎年、職員が自分の仕事を自己評価し、管理職と面談することは、日頃の仕事では見えてこない様々な課題が見えてきますし、それを解決する糸口にもなります。

 

 面談では直接の仕事のことだけではなく、家庭のことや将来の目標なども話されると良いと思います。

 この際、管理職は秘密厳守をあらかじめ職員に説明しておく必要があります。

 

 人事評価を実施することで、職員にとって居心地の良い職場づくりも可能になってきます。

 説明と納得により、仕事の不満も解消しますし、不満が残る場合は、どうすれば解決できるかを考える端緒になります。

 

 これらは基本的に正社員に対する制度ですが、パート職員も年に1回みずからの介護技術を自己評価してもらい、上司(この場合は管理職でなくても良い)と面談することで、継続的な雇用につながると考えます。

 

 このように人事評価を導入することは大きな効果を上げると考えます。

 

 しかし、一般職員の評価をするには評価基準を設定しなければなりません。

 次回は、介護職の評価基準をどうすればよいかをご説明します。

 

 

 

 

平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その3

 今回は新しく設定された(キャリアパス要件Ⅲ)について説明したいと思います。

 

新しく追加されたキャリアパス要件Ⅲ

 

 介護職員の平均給与を上げていくための政策として、処遇改善加算が今後も上がって行くかどうかは、介護報酬の基準額の見直しとのバランスで検討されるのでしょう。

 しかし、今回の要件追加を見ると、要件の小出しのように見えますので、今後も加算アップは行われると考えています。

 

 ただ、現状で、たとえば訪問介護の特定事業所加算の要件と処遇改善加算の要件がかぶっている部分があり、二重加算になっている状況も見受けられますから、この辺の整理は行われるような気がします。

 

キャリアパス要件Ⅲの内容は?

 

次のイ及びロの全てに適合すること。

 

介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準

に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次の一から

三までのいずれかに該当する仕組みであること。

 

 イでは3つの要件が示され、そのうちいずれかに該当していれば良いので、今後すべてに該当する要件が加わる可能性があり、加算のアップを行える余白を残しています。

 

 それぞれについて説明いします。

 

経験に応じて昇給する仕組み

「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること

 

 こちらは要件Ⅰの「イ 介護職員の任用の際における職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。」に似ていますが、こちらは職階の設定を求めているのであり、毎年昇給するような定期昇給の仕組みは求めていません。リンク

 

 新要件では、継続的にその会社で働いている人に、定期昇給の仕組みを求めていると言えます。もちろん毎年上がる仕組みでなくとも、3年ごとに昇給でもOKなのですが、一般的には毎年昇給するのが多いと思われます。

 

 また、他の介護会社に転職した場合など、介護の実務経験などを鑑みた(経験年数)給与設定をしなさいということも求めています。

 

 介護士や看護師など同業転職の多い職種では、転職のたびに給与がリセットされてしまう傾向がありますので、他の同業転職した場合でも、実務経験年数を考慮してほしいということでしょう。

 

 これを設定するには給料表を作成する方法が一般的です。

 例として「東京都職員給料表」をリンクしておきます。

東京都職員給料表

 縦軸に「号給」があり横軸に「職務の級」がありますが、「職務の級」が係長などの職階を意味します。そして縦軸の「号給」が定期昇給の区分割になります。これがいわゆる基本給と言われるもので、この上に、資格手当などの手当てが乗っていきます。

 毎年、通常に業務を遂行できた職員は上の号給にアップします。それがいわゆる定期昇給です。

 さらに、中途採用者は経験に応じて適当な号給からスタートとなります。どの号給からスタートするかは個別に判断されます。

 

資格等に応じて昇給する仕組み

「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組みであること。ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。

 

 これは資格手当についての要件ですが、単純に手当を乗せるだけでなく、昇給する仕組となっていますから、職階も資格によって上がる仕組みになっていると良いと思います。

 例えば上の東京都のように1級から5級に職階が分かれている場合、

 無資格、介護初任者研修修了者、ヘルパー2級  →  1級職

 実務者研修修了者               →  2級職

 介護福祉士                  →  3級職

 

 という風に昇給昇格していく仕組みであると良いと思います。

 これと同時に、介護福祉士手当のような資格手当の付与があるとベターであると思います。

 

 ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。というのは、既に資格を取得し、就職してきた人も同様の処遇をしなさいということだと考えられます。

 つまり、介護福祉士の資格を持って就職した人は上の職階の例でいえば3級職からスタートしなさいということです。

 

 たとえば、介護福祉士の専門学校を卒業して入社してきた若い新入社員は3級職の低い号給からの基本給スタートになります。

 

 

一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み

「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。

 

 この要件の中ではもっともハードルの高い要件です。今回の要件設定では3つある要件のどれかを満たしていればよく、本要件が満たされていなくても、新Ⅰは算定できます。

しかし、今後さらなる処遇改善加算の上乗せがあるとするならば、必ずこの要件もクリアしなければⅠは取れないということになるでしょう。

 

 この要件を満たすためには、通常、賃金規定に「定期昇給」要件を明文化します。

 通常は1年間、問題なく業務を遂行できれば定期昇給する」と明文化すれば良いのですが、1年間、問題なく業務を遂行できれば」とは何ぞやということになります。

 

 昇給させるためには、その職員が1年間、問題なく業務を遂行できたかどうかを評価する必要があるのです。

 

 その評価をどのようにするか?

 それが一般的には「人事評価」というものです。

 「実技試験」が入っているのはキャリア段位制度との連携を考慮に入れてのことだと思いますが、現状、キャリア段位制度を定期昇給に反映させるには無理があります。

 なぜなら、定期昇給の評価は毎年、全職員を評価しなければならないからです。今のところキャリア段位制度のアセッサーによる評価を全員に適用することは不可能です。

 

 「介護事業所における人事評価」については次回で詳しく説明します。

 

 

イの内容について、就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

こちらは要件Ⅰの「 イ及びロの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。」と同様の内容です。

平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その1

 

 次回は「介護事業所における人事評価」のやり方について例をご紹介します。

 

 

 

平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その2

 

キャリアパス要件Ⅱについて

 

 この要件はスタッフ研修に関する要件です。

 

 加算を算定するにはスタッフの研修をしっかりやらなければなりません。

 

 

次のイ及びロの全てに適合すること。

 

介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び一又は二に掲げる具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。

 

 

 「介護職員の職務内容等を踏まえ」ということは、訪問介護や通所介護、そのスタッフが働いている事業所の仕事の内容を踏まえてということですが、実際には、介護福祉士試験の科目に対応した研修を実施すればOKであると思います。

 

【介護福祉士試験の科目】

 

1 領域:人間と社会

   人間の尊厳と自立

   人間関係とコミュニケーション

   社会の理解

2 領域:介護

   介護の基本

   コミュニケーション技術

   生活支援技術

   介護過程

3 領域:こころとからだのしくみ

   発達と老化の理解

   認知症の理解

   障害の理解

   こころとからだのしくみ

3 領域:医療的ケア

   医療的ケア

4 総合問題

   (ケーススタディー・事例検討)

5 実技試験

   (各種介護技術)

 

 詳しくは以下を参照ください。

http://www.sssc.or.jp/kaigo/kijun/attachment.html

 

 特にパートスタッフが多い事業所では毎年繰り返し上記の内容を研修することが良いでしょう。それがサービスの質の向上につながります。

 

 事業所の研修としては月に1回この科目を中心に研修会を実施するのがベストです。

 その研修会を中心に、たとえば、管理者やサービス提供責任者、生活相談員、機能訓練の担当者などは、職務に対応した「専門的な研修」を受けると良いと思います。

 

 「専門的な研修」は、事業所内で実施するのは難しいですから、外部の研修、例えば区市町村や社会福祉協議会が実施する研修、民間で実施している研修に参加すると良いと思います。

 専門の研修は、年1回でもOKです。

 

 実は月1回研修会を実施すると、特定事業所加算など他の加算が算定できるようになります。この点の説明は以下をご参照ください。

 http://carebizsup.com/?p=811

 

 この研修会は「介護職員と意見を交換しながら」となっていますが、基本的には

 

「利用者のニーズに応じた良質なサービスを提供するために、介護技術、コミュニケーション能力、協調性、問題解決能力、マネジメント能力等の向上に努める。」

 

 といった一般的な内容でOKです。もちろんスタッフからのリクエストに応えた研修内容にしても構いません。

 さらに認知症のご利用者が多いグループホームや小規模多機能居宅介護であれば、ユマニチュードなどの特別な認知症の研修を実施しても良いでしょう。

 つまり、スタッフが自分たちの介護サービスの向上につながる研修を自分たちで実施していく姿勢が必要になります。

 

 そしてその際、スタッフ一人一人が、自分に今足りない技術・知識の獲得するための目標を設定することが大切です。

「資質向上の目標及び一又は二に掲げる具体的な計画を策定し」というのは、その目標と研修計画を(基本毎年)作成し、実施していくことです。

 

 具体的な「資質の向上の計画(目標を含む)」例を以下に紹介しますので、参考にしてください。

http://carebizsup.com/wp-content/uploads/2017/01/f45ce2a97fb957ab75f2512496ffcfea.pdf

 

 なお、毎月の研修を実施する場合は以下の点に留意することが重要です。

 

「毎月の研修を実施する場合の留意点」

 ① 時間外に実施する場合は、正社員には残業手当、パート職員には研修手当などの金銭的補助を実施する。「研修の機会を確保」

 ② 必ず、出欠表と研修資料を保管しておく(実地指導でチェックされます)。

 ③ 欠席者には補講を実施する。もしくは事業所ごとなど数班に分けて必ず全員が受講する体制を確保し、補講の実施記録を保管しておく(実地指導でチェックされます)。

 

 

資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT 等)するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。

 

 ここでのポイントは「介護職員の能力評価」です。

 

 「介護職員の能力評価」は様々な方法があり、また、キャリアパス要件Ⅲに出てくる「実技試験」「人事評価」とも被ってきますので、この研修の要件の部分では、研修と連携している形態で実施するのが良いと思います。

 

 例えば、キャリア段位制度などを利用することも可能ですが、パートスタッフまでは無理ですし、人事評価もしかりです。

 パートスタッフまで含めた能力評価を実施するには、先に例示した「資質の向上の計画(目標を含む)」のように、年間の研修計画に付随して、スタッフ個別の目標を設定し、その目標が達成されているかどうかを管理者などが評価する方法が良いと思います。

 

 

資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。

 

 ここでは先に挙げた、「毎月の研修を実施する場合の留意点」を実施するとともに、外部の「専門的な研修」に参加するための費用負担や休暇(有給休暇)の付与を実施することになります。

 

 また、実務者研修の受講のための費用を会社が負担することや、介護福祉士の試験対策のための費用負担もこれに該当します。

 

 最近では、実務者研修の費用を地域行政が補助してくれる制度もあります。この補助制度を利用することも、この要件に該当するでしょう。

 

 

イについて、全ての介護職員に周知していること。

 

 この要件があるのは、つまりパートスタッフも含めて、全員に実施しなさいということです。

 ただし、この全員というのは介護職員だけで事務職や看護職・ケアマネージャーなどは該当しませんのでご注意ください。

 

 厳密に言えば、研修を実施することを全員に周知していれば良く、参加しないスタッフがいても構わないように感じます。

 

 例えばパートスタッフが研修に参加できないという事態は現実に起こりえます。

 この際、そのスタッフが全体研修に参加しなければならないということを認識しており、それでもなんらかの事情で参加できないということであれば、実地指導などであまりお咎めが無いということも言えます。

 

 まず、正社員については確実に研修を実施するようにしましょう。

 これは職務命令であり、資質の向上を怠る社員は罰しなければなりません。

 

 パートスタッフにもできるだけ参加してもらえるよう、継続的に働きかけることが大切でしょう。少しずつでも参加してくれれば、次第にそれが社風となり、必ず良い方向に向かっていくと思います。

 

 そのためにも研修手当の補助は非常に重要だと考えます。

 

 次回は、新たに設定されたキャリアパスⅢについてご説明します。

 

 

 

 

平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その1

 

強化された新たなキャリアパス要件

 

 今年度から新たな処遇改善加算の加算率になり、新Ⅰの訪問介護では8.6%から13.7%となりました。従来に比べ5.1%の給与アップになります。

 

 単純に(旧Ⅰの処遇改善加算を上乗せしたうえで)これまで月給200,000円であれば、210,200円に増えるわけですが、今後も介護職員の処遇改善は継続されると考えます。

 

 その分、利用者負担が重くなる方向でしょうが、日本の介護サービスを継続していくにはいかし方がない部分もあると思います。

 

 筆者は介護事業を営む上で、加算は積極的に取得し、よりレベルの高いサービスを目指すべきだと考えて、事業をサポートさせていただいております。

 

 そこで今回は、新たなⅠを取得するための要件として、強化された新しいキャリアパス要件も含め、処遇改善加算算定のためのキャリアパス要件全般について、改めてご説明させていただきます。

 

 

キャリアパス要件Ⅰ

 

 すでに設定されている要件ですが、新しいキャリアパスとの区別をするためにも内容をご説明します。

 

次のイ、ロ及びハの全てに適合すること。

 

介護職員の任用の際における職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。

 

 「任用」とは、その仕事をしてらうことを言います。

 ご存知のように処遇改善加算は、実際に介護サービスを提供している職員にしか支給できません(事務やケアマネージャーは対象では無い)。その意味で介護職員としての「任用」要件を定めている必要があります。

 

 よくある例としては、職務の難易度に応じて職位を階層化することです。この階層をキャリアパスと言います。

 一般の会社では、平社員、主任、係長、課長、部長などといった出世の階段がありますがこれのことを言います。

 

 介護現場では

 

①一般介護職 ②主任 ③リーダー職(係長級) ④管理者(課長級) ⑤事業部長

 

などという職階が考えられます。

 

【例1】訪問介護事業所

 

 ①訪問介護員(ヘルパー2級・初任者) ②主任訪問介護員(実務者・介護福祉士) ③サービス提供責任者 ④管理者 ⑤事業部長

 

【例2】通所介護事業所

 

 ①介護職(無資格、ヘルパー2級・初任者) ②主任介護職(実務者・介護福祉士) ③生活相談員(介護職兼務)④管理者 ⑤事業部長

 

 これらの任用要件を定めていなければならないのですが、要件Ⅰではただ定めていれば良く、客観的な基準などの明確化は求められていません。

 

 また、実際に会社にその職階の人がいなくても構いません。例えば会社の規模がまだ小さく「事業部長」が居なくても設定されていれば良いのです。今後会社が成長した場合にそのような職の人が任用されることを想定していればOKです。

 

 これは、基本的には就業規則や賃金規定で定めますが、多くの場合は賃金規定に定めていることが多いでしょう。

 

 旧Ⅰでは職階への任用を、例えば社長や事業部長が「経験や職務能力を評価して任用する」としていても構いません。

 

 単に下線のことが賃金規定などに規定されていれば良いことになります。

 

 

イに掲げる職位、職責又は職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。

 

 イで上げた職階に応じて、基本給が定められていることを求めています。

 つまり、出世したら給料が上がる仕組みです。

 

 例えば、月給(月の基本給)が

 一般介護職     200,000円

 主任        250,000円

 リーダー職(係長級)300,000円

 管理者       350,000円

 事業部長      400,000円

 

 という風に分かれて上がって行けばよく、毎年昇給するような定期昇給の仕組みは求められていません。

 

 この職階による給与設定は基本給でなければならず、賞与などの一時金で設定してはいけません。

 

 ちなみに、厚生労働省は処遇改善加算による介護職の処遇改善は、できるだけ、基本給のアップで行うよう指示しています。

 介護職の基本給をなんとか他の業種並みにしたいという国の施策的な要望が背景にあります。

 

 この規定は、パート職員についいてはとくに求めていませんので、基本的には正社員だけ定めていれば良いようです(自治体によっては求めてくる場合があるかもしれません)。

 

 ただ、非常勤職員でも主任級の仕事をしている人に、他の介護職パートよりも高い時給を払っている場合などはこの規定にあたります。

 

 

イ及びロの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

 

 会社の就業規則や賃金規定は社員に公開されていなければなりません。これは「就業規則の周知義務」といい、労働基準法で定められています。

 

第106条

「使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」

 

 賃金規定は就業規則に付属するものですから、同様に周知義務があります。

 

 つまり、この規定はわざわざ設定しなくても、労基法で決まっているわけですから、事業者は就業規則や賃金規定を社員に周知しなければならないのです。

 

 ところが、就業規則には会社にとって不利な、休暇の規定や休業等の規定が書いてあり、そういう制度を職員に知られたくないという経営者の意向が働きやすく、社員が特に求めなければ就業規則を見せない事業者もいるようです。

 

 こうした風潮は職員の会社に対する不信感を増長させる可能性がありますし、社員の定着率を下げます。ファイルにして職場に置いておくなどして、積極的に周知する必要があるでしょう。

 

 

次回はその他のキャリアパスについて解説します。