介護スタッフの有給休暇の取らせ方

 

 

 介護の仕事をしている人の多くが休暇を取りにくいという悩みを抱えています。

 そもそも、4週8休制などの週休二日の場合、他の会社員などであれば休める祭日の休みもありません。

 

 日本人は休みを取るのが下手な民族でもあります。建築業の友人は日曜日しか休みが無く、土曜日は残業扱いだとぼやいていましたが、下請け職人の給与は日当なので、みんな働きたがるため、合わせるしかないということも言っていました。

 

 

人材定着のためには休暇が取りやすいことが重要

 

 介護事業の場合、頑張って加算などを取得しても、賃金を上げることには限界があります。ただでさえ低賃金な職業なのですから、職員を定着されせるためには休暇が取れるということが非常に大切だと感じます。

 

 低賃金でも安定して一生働いていける仕事ですから、それに甘んじて休まないという部分もあるでしょうが、人材不足の折、同じ給与であれば、休みが取りやすい職場を選ぶのは当然です。

 

 筆者は介護福祉業界を目指す学生に、賃金はどこもあまり変わらないので年間の休日が何日あるか、休暇が取得しやすいかを、就職先選びの時チェックするようにアドバイスしています。

 ワークライフバランスの観点からも、働きやすい職場の定義として「休暇の取りやすさ」は最上位にくるのではないかと考えます。

 

 

介護業界は休めないという悪い風潮

 

 しかし人手不足の折、休まれると困るという事情があるのも確かです。

 管理者にしてみれば病気などやむを得ない理由でなければ、できるだけ休んでほしくないというのも本音でしょう。

 

 知り合いの若い事業所管理者は部下の有給休暇申請に、「旅行に行くのに有給使っていいんですか?」と疑問を漏らしていました。

 最初から介護職として働いている人たちは、有休は何か特別な事情が無いと取得できないものであると考えている人も多いようです。

 

 そのような風潮は悪循環となり、いよいよ介護業界から人材を引き離していきます。

 

 

休暇取得促進は国策

 

 労働基準法では有給休暇取得には理由は必要ありません。

 普通に働いている正社員の場合、少なくとも年間10日の有給休暇取得が可能です。パートスタッフも勤務年数に応じて有給休暇を取得する権利を持っています。

 詳しくは社労士さんにお問い合わせください。

 

 筆者が勤めていた東京都(地方公務員)は土日祭日、夏休み年末年始で年間130日程度の休みがありました。さらに加えて有給休暇も積極的に取得するよう上司に言われます。

 有給休暇の取得が進まない部署の管理職は、人事から指導されますから、有休取得目標を設定されたりもしていました。

 「公務員は休むのも仕事」とさえ言う人もいました。

 

 これには国として、国民の休暇日数を増やしたいという国策が背景にあります。我が国は先進国の中では休暇日数が非常に少なく、欧米人から見ると、笑い者になっている部分もあるのです。

 

 「公務員は休みが多くていいな」という人もいますが、公務員が労働者の見本となって積極的に休暇を取得しなくてはいけないのです。

 ただし、忙しい部署では休暇を取得するとその分残業が増えます。その中にはサービス残業(残業手当の予算が足りないため)も多く、有休取得の目標が達成できていない人などは、平日に有休を取得して休日に来てサービス残業する等、バカバカしい事態になっていたりしました。

 

 

有給休暇の計画的な取得

 

 さて、有給休暇を取りやすくするためには、職員一人一人に年間の取得計画を作らせるのが最も簡単な方法です。

 

 正社員であれば年間10日程度の休暇計画を毎年提出させます。日数は勤務年数で増減させても良いでしょう。

 管理者等はその予定を組み込んで、シフトを作成すれば良いのです。

 

 家族持ちの人などは、年末年始や夏休み、ゴールデンウィークなどに休暇を欲しがります。逆に独身の人は、旅行に行くにしても、そうした混雑した時期を避けて休みたいかもしれません。

 

 また、連続した休暇ではなく、月に1日2日コンスタントに休暇を取りたいという人もいるでしょう。そうした職員のニーズをうまく組み合わせて年間の労働シフトが作成できれば、誰もが気兼ねなく休暇が取れるようになります。

 

 もちろん、年末年始など休暇希望が集中してしまう時期もあるでしょう。

 そうした場合は、年末年始手当などを上乗せするとともに、年ごとに交代で休みを取るようにする方法も考えられます。この場合、勤務年数の古い人から休めるようにしてあげると良いと思います。

 

 

休暇取得を処遇改善と考える

 

 簡単な計算をしてみましょう。

 正社員10人の職場であれば、10日の有給休暇により年間100日分、シフトに穴が開きます。それを新規雇い入れ職員で埋めた場合、概ね0.5人分の人件費が必要になります。

 概算で人件費を5%上積みするだけで、10人のスタッフに年間10日の有給休暇が与えられるということです。

 

 この5%の人件費を、処遇改善のための経費としてはどうでしょうか?

 月給30万円の5%アップは31万5千円です。

 休みが取れな分、月給を1万5千円アップさせるよりも、確実に年間10日休める職場の方が、長く働いていける職場だと思います。

 

 

 

ご利用者に対する虐待防止の取り組み

 

 

介護・障害者施設などでのご利用者にたいする虐待が後を絶ちません。

 

 

虐待の要因

 

 虐待の発生要因について、27年度の厚生労働省の調査では、

1位 教育・知識・介護技術等に関する問題(65.6%)

2位 職員のストレスや感情コントロールの問題 (26.9%)

3位 職員の性格や資質の問題(10.1%)

という結果でした。

 

 また、全国に6万7千人の会員を抱える介護職の労働組合「日本介護クラフトユニオン(NCCU)」http://www.nccu.gr.jp/official/index.html

の「高齢者虐待防止に関するアンケート」調査では

1位 業務の負担が多い(54.3%)

2位 仕事上でのストレス(48.9%)

3位 人員不足(42.8%)

 

という結果になっています。

 

 

小規模事業者でも対策は必須

 

 ご利用者に対する虐待行為は、発生した場合、その介護事業者自身の事業そのものに大きな影響をもたらします。

 

 小規模事業者であれば、地域の中で存在していくこと自体ができなくなります。

 

 上記のような調査の結果を見れば、虐待が発生する組織には、職場環境や処遇の問題があることがはっきりしています。

 

 そのような職場では働きにくさゆえに職員が定着せず、恒常的に人員不足の状況が見られます。そのせいで現場でのストレスが常に高い状態にあり、コンプライアンス研修もままならず、虐待が起こりやすい状況と言えるでしょう。

 まさに悪循環です。

 

 介護業界を希望する人材が一向に増えない現在の状況では、今後も介護現場での虐待問題が発生し続けるでしょう。

 

 自らの事業所でそのような問題を発生させないためには、時に、ご利用者の数を制限して、スタッフに負担のかからないような自衛策が求められる場合もあるでしょう。

 

 

NCCUの取り組み

 

 そんな中、前述の日本介護クラフトユニオン(NCCU)は労使関係のある40法人との間で「介護業界の労働環境向上を進める労使の会」を発足させ、「ご利用者虐待防止に関する集団協定」を締結しました。

http://www.nccu.gr.jp/topics/detail.php?SELECT_ID=201708080001

 

 大企業などに勤めた経験が無いと労働組合というものがどういうものか、今一つピンとこない方もいらっしゃるでしょう。

 一般的には会社内の労働者が連帯して、使用者(経営側)に対して労働者の雇用の維持や処遇改善などを交渉していくものです。

 労働組合法により権利保護されています。労働者は誰でも関連する労働組合に加入することが可能です。

 

 小規模な事業者が多い介護業界では、会社単位で労働組合を作ることが難しく、日本介護クラフトユニオンのような職業別の労働組合が必要なわけです。

 

 

虐待防止の具体策を提示

 

 今回締結された「ご利用者虐待防止に関する集団協定」は、労働者側及び使用者である会社側両者の危機感から締結されたものでしょう。

 

 先にも述べたように、虐待の発生は会社の経営自体を危うくします。また、労働者側から見れば、職場環境の改善そのものが虐待の防止ですし、業界全体としても介護人材を増やしていくためには、このような悪いイメージを払しょくしなければなりません。

 

 この協定では労使における虐待防止のための具体的取り組みを提示してくれています。

 この内容はNCCUに関係していない事業者にもとても有効なものだと思いますのでご紹介します。

 

 協定の概要(一部)は以下の通りです。労使はこれらを協同して取り組むとしています。

 

1 ご利用者虐待防止のための教育システムの構築

(1)社会的責任とコンプライアンスを高める研修を行う。

(2)認知症に対する知識と理解のための研修を行う。

(3)介護現場のキーパーソンである管理者のための研修を行う。

 

2 ストレスマネジメントの実践

 ストレスの予防、軽減、解消のためのストレスマネジメントに取り組む

 

3 方針の明確と周知

 法人としてご利用者虐待防止に関する方針を明確化し、従業員に周知する。

 

4 法人内に相談窓口(担当)の設置と周知

 

5 相談担当の教育・研修の実施

 

 虐待防止のために、同様の取り組みを事業所内で行っていくことをお勧めします。

 

 

取り組む場合の留意点

 

 特に重要なのは、3 方針の明確と周知だと筆者は考えます。

 明確な方針を従業員に周知することで法人としての覚悟と責任を明確にします。

 どんなに良いプログラムを構築しても、スタッフが知らなければ役に立ちません。法人が虐待防止に本気で取り組むという姿勢をはっきりと見せる必要があります。

 

 法人本部がそのような表明をすると、現場でそれに逆行するような事態が発生した場合、(例えば人員不足にもかかわらず、管理者が営業成績を伸ばそうとして無理に新規利用者を受け入れ、スタッフの残業や休日出勤が増えているなど)従業員が遠慮なく内部告発できるようになります。

 

 虐待につながるような状態の芽を従業員皆で摘んでいくような雰囲気を作る必要があるでしょう。

 

 また、スタッフに認知症に対する知識が不足している場合、簡単に虐待につながることが多いと思います。

 施設系の事業所などで無資格者のスタッフが働いている場合は、特に注意が必要だと思います。

 暴力など問題行動のある人を理解して、適切なケアができるようになるには、相当の知識とプロ意識が必要だと思います。

 

 はっきり言えば、知識のない人には認知症の介護はできないと考えた方が良いと思います。

 

 

 

地域密着型サービス(GH・小多機能)への参入

 

 

第7期介護保険事業(支援)計画に向けて

 

 全国の自治体で地域の第7期介護保険事業(支援)計画の検討が佳境に入っています。

 平成30年春には全国で、向こう3年間の地域の介護事業計画が発表されます。

 各事業者様においては地域自治体が年内にも公表するパブリックコメントなどを通してその内容を確認していただけますようお勧めいたします。

 

 

向こう3年間の地域密着型サービスの計画が発表されます

 

 第7期介護保険事業(支援)計画で注目したいのは地域密着型サービスの整備計画です。

 特に事業を拡大したい事業者様においては特に注目していただきたいポイントです。

 もしも平成30年度の公募に参加したいということであれば、今から準備をされる必要があると思います。

 

 

地域密着サービスの整備が進んでいない

 

 在宅ケアの拠点となる地域密着型サービスのグループホームや小規模多機能居宅介護事業所などは思ったように建設が進でいない地域があるようです。

 このままでは2025年の必要数を満たさないばかりか、在宅ケアそのもに重大な影響をもたらす可能性があります。

 こうした地域密着型の施設が増えない結果として見えるのは「無届ハウス」など不適切な介護施設の増加です。

 特に低所得者層の高齢者は劣悪な環境で介護を受けなければならない状況が懸念されます。

http://www.koujuuzai.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/05/h28_jigyo3.pdf

 

 

東京都のマッチング事業

 

 要介護度が高くても在宅でケアを実現していくためには、ケアマネージャーなど関係者の能力も重要ですが、必要に応じて柔軟に利用できる施設等社会資源が地域に整備されていなければなりません。

 

 この状況を打開するために、東京都はグループホーム用地のオーナーと事業運営者のマッチング事業を開始しました。

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/06/13/07.html

 小規模多機能にも欲しいマッチング事業ですが、とりあえずグループホームだけのようです。

 グループホームも小規模多機能も介護事業として補助金等のスキームは同じなので、これがうまくいけば、小規模多機能や他の施設系地域密着型サービスにも波及するかもしれません。

 

 

不動産投資としての地域密着型サービスのメリット

 

 都の事業の仕組みは、土地所有者とグループホームを運営する事業者を引き合わせる仕組みになります。

 

 人口減少や都内でも空き家の増加などが進み、未利用地が増えていく傾向にあります。

 しかし、マンションなど収益性の高い不動産投資にはそれなりの広さの土地が必要になりますから、中途半端な広さの土地の場合はなかなか利用方向が定まらないことが多いようです。

 結果、駐車場やアパートなどの不動産投資に向けられる場合も多く、アパート経営投資のCMが盛んに宣伝されています。

 

 100坪程度の土地がある場合、アパート経営がまず最初に思いつくかもしれません。

 しかし、グループホームや小規模もその程度の土地で十分に建設が可能であり、しかも建設費の多くを公的補助金で賄うことが可能です。

 不動産投資としては断然、こちらの方がお得であることは間違え無いでしょう。

 

 しかし、土地オーナーにとって、アパート経営であれば、不動産業者や建設業者に丸投げできますが、介護施設の建設には誰に頼めばよいのかわかりません。得だとわかっていてもなかなか手を出せないのが本音だとは思います。

 

 また、アパート経営関係の営業は積極的で、オーナー側への売り込みも激しく、そちらに流れてしまう傾向は否めません。

 

 

運営業者も人手不足で積極的になれない

 

 介護事業者にとっても運営を請け負うためにはスタッフを揃えなければなりませんから、現在の人材不足の状況下では、請け負っても人を揃えられない恐れがあるために、やりたくても安易に手を出せない状況があるでしょう。

 

 アパート経営の場合、入居者が入らずに収益が上がらなくても、基本的に建築業者等が不利益を請け負うことはありません。立ててしまえばそれで収益になるわけですから、営業も積極的になるわけです。

 

 その点、グループホームなどは入居者がいなければ不利益は運営事業者が負うことになります。まして必要な人員が揃えられなければ、開業すらできないのです。そうしたデメリットがあるために手を挙げない運営業者も多いのでしょう。

 

 

公募では地域密着の地元の事業者が優先される傾向も

 

 第7期の計画が発表されれば資金力のある大手介護事業者がこぞって公募に参加するでしょう。大手はスケールメリットにより人材不足でもなんとか人を揃えられる力があります。

 ただし、既に大手が開業している地域では、同じ事業者が参入することは無いようです。公募の選定でも地元の事業者が優先される傾向はあるようです。

 

 地域に根差して介護事業を営んできた中小事業者にとっては事業を拡大するチャンスです。100坪ほどの土地が借りられれば事業化できます。初期費用の融資は必要になりますが、公募に選定されれば地元の金融機関は融資してくれるでしょう。開業すれば補助金が出ますので返済はそれで可能です。

 

 実は、人員については、もし開業時に揃えられなければ、開業日が遅れるだけのことです。グループホームの場合、1ユニットだけ開業というケースもあります。

 

 もし興味があれば、今すぐにでも地域自治体の担当課に相談されることをお勧めします。

 

 

 

混合介護で生活援助はどう変わるのだろう(訪問介護)

 

軽度者の生活援助が保険外へ

 

 介護予防・日常生活支援総合事業が始まり、要支援者の生活援助が、介護給付以外のサービスに変わりつつあります。

 

 日常生活支援総合事業の生活援助は単価も安く、既存の訪問介護事業で対応するには見合わないという声もあり、自治体によってはシルバー人材センターなどの対応に切り替わっているところもあります。

 

 流れとして単なる生活援助のみの介護は無くなる方向なのでしょうか?重度の方は別としても軽度の利用者の生活援助をどうしていくのか、訪問介護事業所経営の観点から考えてみたいと思います。

 

 

人手不足で生活援助だけの仕事に対応ができない

 

 現在、訪問介護は人手不足で、身体介護でさえも対応できない場合があるのに、単価の安い生活援助はもう対応できないという声をよく聞きます。

 

 身体介護に付随した生活援助は仕方ないとして、軽度者の生活援助はもう昔のようには提供できなくなっている実態があると考えます。

 

 この流れは国の介護保険から生活援助を切り離す方向とも合致しており、自立支援に繋がらない生活介護は減っていく方向なのでしょう。

 

 

訪問介護は重度者向けのサービスが中心に

 

 もともと訪問介護員は、家政婦からの転職も多く、介護保険制度発足時は生活援助が盛んに提供されてきた経緯もあります。要支援者の部屋の掃除も昔は普通にケアプランに載せられますが、今はなかなか難しい状況でしょう。

 

 訪問介護事業所の経営者の中には生活援助のみの利用者は断って、身体介護中心にサービス提供をしたい意向も強くなっています。

 また、医療的ケアなどレベルの高い訪問介護をサービスの中心に据えることで、生活援助をほとんど行わない事業所もあります。

 

 実は、医療的ケアに積極的に対応すると、障害者サービスを含め、その依頼だけで手が一杯で、通常の訪問介護には対応できない状況になる場合もあるようです。

 それだけ重度者向けサービスは不足しているのかもしれません。

 

 実際その方が収益性も高く、筆者はこれからの訪問介護はレベルの高いサービスを提供することで生活援助は行わない方向で経営したほうが良いと考えています。

 

 

混合介護における生活援助の位置づけは?

 

 国は次期改正に向けて、保険外のサービスと介護保険サービスを組み合わせて提供する混合介護について検討しています。

 訪問介護事業では保険外の生活援助をどのように組み合わせるかが大きなテーマとなっているでしょう。

 

 先に述べた通り、今後の訪問介護事業所はできるだけ重度者向けのサービスを充実させ、身体介護中心の提供体制になる方向であると考えます。

 

 しかし、訪問介護が生活援助を行わない場合、だれがどのようにそのサービスを提供し、介護保険制度や障害者福祉制度の中での位置づけがどうなるのか疑問が多いでしょう。

 また、そのサービスが混合介護として訪問介護事業に組み込まれるのでしょうか?

 しかし、それであれば、現在でも行っている生活援助を自費化したサービスと何が違うのでしょうか?

 さらに、現状では経営的に生活援助のサービスは合わないわけですから、そのような混合介護に意味があると思えません。

 

 

保険外・低コストの家事代行事業との連携

 

 保険外の生活援助サービスを外部の独立したサービス事業者が実施するとすればどうでしょう?(これを混合介護というのか疑問ですが)

 

 確かに、買い物代行や掃除といったサービスは訪問介護員である必要はありません。それは軽度の利用者だけでなく、重度の利用者でも同様でしょう。

 

 そうした簡易なサービスがケアマネジメントの中で社会資源として位置づけられ、適切に提供されれば、提供主体は学生のアルバイトでも構ないわけです。

 

 しかし、自宅に訪問して提供する以上は、訪問介護と同様に手順書的なものが必要にはなるでしょう。その場合、訪問介護事業所とのどのような協働体制を築けば良いのでしょうか?

 

 例えば、低コストで保険外サービスを提供できる家事代行事業者が、訪問介護事業所と連携し、無資格のアルバイトによる生活援助も、訪問介護計画書の中でその自立支援の役割が適切に位置づけられることができ、さらに、訪問介護員の管理の元でサービス提供ができれば、保険外の低コストの生活援助も可能かもしれません。

 

 しかし、それを実現するためには、

 保険外事業者と介護事業の調整を誰がどうやるのか?

 訪問介護事業所にとってどんなメリットがあるのか?(なにがしかインセンティブがなければ誰も連携しません)

 保険外事業者に収益性は見込めるのか?(見込めなければ誰も参入しません)

 など、多様な問題があり、それらをクリアする枠組みを厚生労働省が提示できるのか、いささか疑問です。

 

 今のところ、ダスキンやベアーズといった家事代行ビジネスはプレミア感のある高付加価値なサービスモデルが主流になっています。

 高齢者や障害者に必要な家事代行は、そのようなプレミアムなものではないでしょう。国中が人材不足の中で、簡易で低コストの家事代行ビジネスモデルが成り立つか、IT活用するなど民間の力がなければ不可能な気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

介護職の外国人技能実習制度で人材不足は解消するか

 

 今回は、今年中に導入される予定の、外国人による介護職技能実習制度について考えてみたいと思います。

 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147660.html

「外国人技能実習制度への介護職種の追加について」

 

 

 外国人技能実習制度とは

 

 この制度は平成5年に創設されました。

 簡単に説明すると、国際協力事業であり、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としていす。

 これまで、農業・漁業・建設業・各種製造業などで受け入れが行われてきました。

 最長5年間の在留が可能ですが、その後は帰国して自国の産業に貢献することが求められています。

 昨今、一部悪質な受け入れ企業により、賃金の未払いなどの人権侵害行為があり、今年度から実習生保護強化などの面で制度の見直しが行われました。

 ここに介護事業が加わることになります。

 

 

 国内の人材不足対策ではない

 

 国は、この制度が、決して日本国内の労働力不足を外国人で補充して解消することを目的としたものでないことを明言しています。

 制度上、在留期間も最長5年であり、その後は帰国しなければなりません。実習終了後の継続在留許可は認められていないのです。

 

 しかし、今回、介護職に関わる議論を見てみると、将来、はっきりとした介護人材供給の制度にしたいという意思が見え隠れします。

 

 それがはっきりしたのが、別に発表された介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格の付与です。

 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150881.html

「介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格「介護」の創設について」

 

 これは、外国人が介護福祉士の試験に合格し、継続的に介護職として働いている間は在留許可が下りるという制度です。

 

 今のところは、介護福祉士の専門学校等に通う必要があり、外国人実習生には適用されないようですが、将来、実習生が介護福祉士試験に合格した場合も認められるのではないかと考えられます。

 

 つまり5年間実習生として働いている間に勉強し、介護福祉士試験に合格した外国人を、継続的に介護人材として確保するという狙いです。

 

 

実習生の受け入れをするにはどうすればいいのか

 

 外国人実習生を受け入れるには、監理団体を通して行います。監理団体は商工会や公益法人、協同組合などで、営利目的の団体ではありません。

 「介護 外国人実習生 監理団体」で検索するといくつかの団体がヒットしますので探してみてください。

 

 実習生の受け入れには先の人権侵害問題もあり、いろいろな取り決めがあります。また、入管などの手続きもありますので大変複雑な業務が必要になります。監理団体はそうした業務を受け入れ企業と実習生の間に入って取り扱います。また、受け入れ組織に対する指導チェックも行いますので、当然、料金がかかります。

 

 つまり、手続きには結構な時間がかかるようです。また、実習生は現地で日本語教育を1年ぐらい受ける必要があります。介護職についてはまだ制度は始まっていませんので、受け入れたくてもすぐに受け入れることはできません。関心のある方は各監理団体に問い合わせてください。

 

 

実習生のコミュニケーション能力はどれくらい?

 

 介護職にはある程度の日本語の能力が求められます。

 国は入国時、日本語能力試験のN4レベルを求めていますが、実際に業務をするにはN3レベルが必要と言われています。

 

 N4は「基本的な日本語を理解することができる」レベルです。

 【読む能力】

・基本的な語彙や漢字を使かって書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。

 【聞く能力】

・日常的な場面で、ややゆっくりと話なされる会話であれば、内容がほぼ理解できる。

   

 N3レベルとは「日常的な場面で使つかわれる日本語をある程度理解することができる」レベルです。

 【読む能力】

・日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。

・新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。

・日常的な場面で目にする範囲の難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。

 【聞く能力】

・日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話しの具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。

 

 

 実習生はN4レベルで入国できますが、1年程度でN3に受からなければなりません。

 基本的には、現地でN4レベルまでの日本語能力を身につけてから日本に来ますが、日本に来てからも日本語の勉強を継続しなければなりません。

 

 もし、介護福祉士試験を受験するにはその上のN2レベル以上(新聞など難しい文章を読んで理解できるレベル)の日本語が必要になるでしょう。

 

 

訪問系事業は今のところ受け入れ不可

 

 訪問介護事業所等の受け入れは今のところ認められていません。これはコミュニケーション能力の問題や、日本文化や生活の理解が進まないと、サービスがうまく提供できないであろうということと、一人で訪問するわけですから実習生に対する不利益が起きる可能性が懸念されるからです。

 

 国がイメージしている受け入れ先は、施設系のチームで働くような職場でしょう。実習生が戸惑ってもすぐに指導者がフォローできるような体制が必要だからだと考えます。

 

 

受け入れ法人の条件は?

 

 経営が一定程度安定している機関として、原則として設立後3年を経過している機関に限定しています。その他以下の条件があります。

・ 受入れ人数の上限として、小規模な受入機関(常勤職員数 30 人以下)の場合、常勤職員総数の 10%までとする。つまり、常勤職員が10人であれば受け入れ人数は1人までです。

・ 受入れ人数枠の算定基準として、「常勤職員」の範囲を「主たる業務が介護等の業務である者」に限定する。

・ 技能実習指導員の要件として、介護職として5年以上の経験を有する介護福祉士等を求める。

 

 なお、給与に対する補助金はありませんが、厚生労働省関係の助成金が利用できる可能性があります。監理団体に問い合わせると良いでしょう。

 

 

小規模事業者にはあまりメリットは無い?

 

 結局、介護職の常勤職員が10名程度の小さな企業の場合、1人の実習生しか受け入れができません。そのために、先に述べた煩雑な業務を行い、さらに監理団体に費用を払うことはあまりメリットは無いかもしれません。

 

 大規模な企業や社会福祉法人がある程度の規模で実習生を受け入れることはメリットがあるでしょう。

 

 小規模事業者にとってメリットが出てくるのは、こうした実習生達が介護福祉士に合格し、継続的に介護職として働けるようになってからだと思います。おそらくそうなれば訪問介護などでも働けるでしょう。

 

 つまり5年先にこの制度によって、外国人介護職がどれだけ増えているかがキーになると思います。

 

 

 

介護事業所の人事評価の在り方について その2

 

今回は人事評価の評価基準についてです。

 

客観的な評価基準を設定するのは難しい

 

 一般的なサラリーマンの人事評価では、評価基準は以外に漠然としたものになっているようです。

 例えば、コミュニケーション能力や企画力、リーダーシップなどが売上などの業績評価と合わせて評価され、処遇に反映される仕組みが多いでしょう。

 

 一言でいうと、「組織に対する貢献度」が評価されると言って良いかと思います。

 しかし、貢献度と言われても客観的な基準を作ることはとても難しいのも事実です。ですから、人事評価は深いものなのです。

 

 

売上だけを評価基準にはできない

 

 たとえば学校の試験など、正解が明確であれば評価もしやすいでしょう。しかし、仕事では何が正解かということが、はっきりしない場合があり、売り上げ一つとっても本人の能力や努力とは別に、結果が出てしまう場合があります。

 

 たとえば、ファミリーレストランチェーンの店ごとの売り上げを評価して、売り上げの高いお店の店長のボーナスを沢山出したとしましょう。

 しかし、レストランの場合、立地条件や業務規模などの環境により、集客力は店長の力量とは別に決まってしまう場合があります。

 

 集客の厳しい支店を任されている店長がどんなに頑張っても、前述の売り上げの高い支店には負けてしまうこともあるでしょう。

 

 人事評価において後者の店長を低く評価し、前者の店長を高くしたら、どうなるでしょう。頑張っても売り上げの伸びないお店を任されている店長は、不満を持つに違いありません。

 

 大手出版社では儲からない純文学を漫画の売り上げが支えていると言われています。しかし、社員の給与は漫画も純文学も変わらないそうです。漫画の編集者ばかりが高給だったら、誰も純文学の編集者をやりたがりません。すると、日本の文学が衰退してしまうということにもなりかねないのです。

 

公務員は人事評価によるボーナス査定は無い

 

 一般的な公務員には業績評価によりボーナスに差がつくことはありません。期末手当や勤勉手当などと呼び、一律同じ月数(大体5か月分ぐらい)の金額が支給されます。

 従って人事評価によってボーナスが変わるということは無く、一般の会社員とは性質が少し異なります。

 

 介護事業の場合も、管理職以外は人事評価によりボーナスを変化させることはあまり好ましくないと筆者は考えます。

 人事評価はあくまで毎年の昇給や昇格(職級を上げるかどうか)の判断に用いられるべきであり、ボーナスの額に反映させない方が良いでしょう。

 

 現実には年の売上げ高によってボーナスの額は変わりますので、なかなか人事評価で増やしたり減らしたりすることも難しいと思いますので、大丈夫だとは思いますが、一般職の処遇については、ある程度一定であった方が、不満は出ないと考えます。

 

介護の一般職員の評価基準

 

 評価基準や評価項目に悩むときりがありません。

 できるだけシンプルに人事評価を導入して、組織の能力を向上させるには、基準も外部のものを活用していけばよいと思います。

 

 幸い、厚生労働省が在宅介護職の評価基準を作成しています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093927.html

「職業能力評価シート(在宅介護業)」

 

 今のところ訪問・通所・訪問入浴しかありませんが、今後、他の業種の評価基準が追加されることを願います。

 

 使い方は「職業能力評価シート(在宅介護業)」に含まれていますので、参考にしてください。

 なお、評価項目によっては、その職員が実際に行っていない項目も含まれています。その場合はその項目の評価はできませんので、無理して評価する必要はありません。評価指標としては○や×を付けず、-などにして評価の合算には加えない方が良いでしょう。

 

 

管理職が普段、部下の仕事ぶりを見てい無い場合は?

 

 管理職が評価する場合、実際にはその職員の仕事ぶりを日常的に見ていない場合があります。その場合は、自己評価のあと、実際に仕事ぶりを知っている直属の上司(リーダーや主任など)に当たる職員に評価をしてもらい、その上司とよく意見交換し評価を決定すると良いでしょう。

 

 人事評価で管理職でない職員が部下を評価する仕組みは形式的にあまり好ましくありません。

 人事評価はその管理職が管理する組織の評価に最終的につながってきますので、管理職が責任をもって行わなければなりません。

 

 また、普段はあまり一緒に仕事をしない管理職が、一般職員と年に1回仕事のことを話し合うことで、普段身近に居る直属の上司には言いにくいことも言える場合があります。

 その上司に対する不満もその一つです。それにより管理職は組織の問題点や弱点を発見することになりますし、職員にとっては不満の解消にもなります。

 

 

人事評価を実施するシンプルな目的

 

 人事評価を実施する目的をまとめてみましょう。

 先に述べたように組織の生産能力を向上させるための人事評価は、考えれば考えるほどきりがなく難しくなります。中小企業が取り組むにはハードルが高すぎます。

 従って、以下のような目的で実施するのだと、できるだけ簡単に考えて、導入することがポイントになります。あまり難しく考えないことです。

 

【中小企業が人事評価を導入するシンプルな目的】

 

① 年に1度管理職と職員が仕事のことについて話し合う場として実施する

② 毎年の昇給が適当かどうかを判断するために実施する

③ 昇格ができるかどうかを判断するために実施する

 

 以上の3つの目的で実施することにしてください。それ以上のことを考えると難しくなります。

 

 

評価者に対する講習は要らないのか

 

 「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」では評価者は講習を受け「アセッサー」という資格を取得しなければ、評価ができません。

 このアセッサーは評価を公正適切に行うために設定されていますが、人事評価を実施するために、評価者がこのアセッサーの講習を受ける必要はありません。

 

 職場の人事評価制度は上のような目的のために実施します。一方、「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」は介護職員の資質の向上を目的に実施されるもので、趣旨が異なります。

 「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」は言わば職場研修(OJT)が主眼です。アセッサーは仕事上、職員に何が足りないかを正確に見抜き、さらにはそれを教えてゆく能力が必要となります。

 

 一方、人事評価の目的は上記の目的ですので、組織や職員が納得して進められればそれで良いのです。

 

 

 この項終わり。

 

 

 

介護事業所の人事評価の在り方について その1

今後、人事評価は必要になる

 

 今年度の処遇改善加算の新Ⅰのキャリアパス要件に人事評価の項目が入りました。

 現状では人事評価を実施しなくても新Ⅰを算定することは可能ですが、今後、さらに加算がアップする場合には、職員の評価を適切に実施し昇給・昇格する仕組みが要件になると考えられます。

 

 キャリパス要件では「実技試験や人事評価」という表現になっていますが、介護職の仕事を評価するには実技は当然入ってきますので、実技評価を含んだ人事評価と考えて良いでしょう。

 

人事評価とは

 

 人事評価は組織が業務を推進していく上で、職員の仕事を適切に評価し、賃金やボーナスなどに反映させ、効率的で安定的な組織運営と業務推進を目指して行われるものです。

 人事考課や業績評価、能力評価などいろいろな呼ばれ方をしますが、いずれにしても、組織に貢献している人を評価し、貢献していない人を罰する、信賞必罰の考え方がベースにあると言えます。

 

 中小企業ではよく、優秀な人が辞めてしまい、あまり能力のない人が残ってしまうということを言われます。

 これは、能力を適切に評価し、処遇を高めることをしないために、起こります。また、優秀な人には仕事が集中するにもかかわらず、それに見合った処遇がされないことに不満を持つことも良くあります。

 介護事業所でもこの傾向はみられることでは無いでしょうか。

 

人事評価を導入するには

 

 人事評価を導入するには、人事専門のコンサルタントに依頼することも可能ですが、業種によって評価内容や方法が異なるため、自社の事業に完璧にマッチした制度を構築するには、相当の作業が必要です。

 また、人事評価制度は組織運営を最適化するためのツールでもあり、職員の能力を評価し処遇に反映さていく過程で、組織を効率化し、生産性を最大化する効果も求められてくる場合があります。

 経営学の中でも深く研究されている分野でもあり、中小企業が取り組むにはハードルが高すぎる面もあります。

 従って専門のコンサルタントに頼み、レベルの高い制度を導入するには、かなりの費用が掛かってしまうことを、ご承知ください。

 

 ここでは、まず簡潔に導入できる方法を考えたいと思います。

 シンプルな人事評価制度でも、導入効果は大きく、スタッフのモチベーションアップや組織課題の解決に貢献しますので、導入は大変意義があると筆者は考えています。

 

 処遇改善加算に対応したシンプルな人事評価制度の導入サーポートもCare Biz Supportで行っていますのでお問い合わせくださればと思います。

 

シンプルな人事評価制度の2つの評価方法

 

 通常、介護事業所には一般職員と管理職がいます。この職員区分で評価方法を変える必要があります。

 

  • 一般職員(現場で直接介護サービスを提供する職員)

 訪問介護事業所でいえば、訪問介護スタッフやサービス提供責任者(一部管理職である場合もあり)

【評価方法】

 一般職員は介護サービスの提供能力や組織人としての行動能力を評価します。これは介護技術や、組織内における円滑な業務の遂行能力(コミュニケーション能力など)や貢献度の評価になります。

 

  • 管理職(事業所のマネジメントや、会社のマネジメントに関わる職員)

 いわゆる課長級の管理者や部長級の職員、またその他の役員

【評価方法】

 管理職の評価は「業績評価」です。

 「業績評価」は事業所の売り上げや、会社の組織目標を達成できたか(新規事業所を適切に立ち上げたかなど)が評価の対象になります。

 

 処遇改善加算の要件では、まず一般職員の評価が求められていると考えて良いでしょう。

 

 実は、管理職の評価は簡単です。年度当初に目標を設定し、年度末にそれが達成できたかを役員会議などで評価すればそれで終わりです。

 

 難しいのは一般職員の評価の方であり、適切な評価ができないと、組織の生産性が低下してしまいます。

 

 一般職員の評価を実施するのは直属の管理職です。管理職にとっては部下の一般職員に頑張ってもらわないと、自らの業績目標が達成できないわけですから、その評価は仕事としてまじめに取り組まなければならない事柄になります。

 

 

まず会社の人事評価規定を作成する

 

 人事評価を導入するには、まず、それにかかわる規程類を整備しなければなりません。

 例として、「東京都職員の人事考課に関する規程」ご紹介しておきます。

 

http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012590001.html(東京都職員の人事考課に関する規程)

 

 私は東京都の教育委員会で実際に6,000人程度の職員の人事考課業務に携わっていました。

 介護の仕事は公的サービスですから、公務員の人事評価制度を準用することが可能です。この規程におけるポイントを整理すると以下のようになります。

 

【人事評価規定を作成する際のポイント】

 

 ①一般職員の評価は直属の管理職が行う。

 ②毎年実施する。

 ③毎年同じ期日(10月1日など)に職員がみずからの職務能力について自己評価をする。

 ④職員の自己評価に基づいて、管理職が同様の評価をする。

 ⑤人事評価の内容を確認しながら、職員と管理職が面談し、評価内容や仕事のことについて話し合う(必ず1対1)。

 ⑥面談の内容は秘密厳守

 ⑦上記の過程を通じて、その職員のその年の評価が確定する(できるだけ納得してもらう)。

 

 なお、公務員では直属の上司以外の2次評価がありますが、介護事業所ではこれは必要ないでしょう。

 

 

 

重要ポイントは自己評価と面談

 

 毎年、職員が自分の仕事を自己評価し、管理職と面談することは、日頃の仕事では見えてこない様々な課題が見えてきますし、それを解決する糸口にもなります。

 

 面談では直接の仕事のことだけではなく、家庭のことや将来の目標なども話されると良いと思います。

 この際、管理職は秘密厳守をあらかじめ職員に説明しておく必要があります。

 

 人事評価を実施することで、職員にとって居心地の良い職場づくりも可能になってきます。

 説明と納得により、仕事の不満も解消しますし、不満が残る場合は、どうすれば解決できるかを考える端緒になります。

 

 これらは基本的に正社員に対する制度ですが、パート職員も年に1回みずからの介護技術を自己評価してもらい、上司(この場合は管理職でなくても良い)と面談することで、継続的な雇用につながると考えます。

 

 このように人事評価を導入することは大きな効果を上げると考えます。

 

 しかし、一般職員の評価をするには評価基準を設定しなければなりません。

 次回は、介護職の評価基準をどうすればよいかをご説明します。

 

 

 

 

平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その3

 今回は新しく設定された(キャリアパス要件Ⅲ)について説明したいと思います。

 

新しく追加されたキャリアパス要件Ⅲ

 

 介護職員の平均給与を上げていくための政策として、処遇改善加算が今後も上がって行くかどうかは、介護報酬の基準額の見直しとのバランスで検討されるのでしょう。

 しかし、今回の要件追加を見ると、要件の小出しのように見えますので、今後も加算アップは行われると考えています。

 

 ただ、現状で、たとえば訪問介護の特定事業所加算の要件と処遇改善加算の要件がかぶっている部分があり、二重加算になっている状況も見受けられますから、この辺の整理は行われるような気がします。

 

キャリアパス要件Ⅲの内容は?

 

次のイ及びロの全てに適合すること。

 

介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準

に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次の一から

三までのいずれかに該当する仕組みであること。

 

 イでは3つの要件が示され、そのうちいずれかに該当していれば良いので、今後すべてに該当する要件が加わる可能性があり、加算のアップを行える余白を残しています。

 

 それぞれについて説明いします。

 

経験に応じて昇給する仕組み

「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること

 

 こちらは要件Ⅰの「イ 介護職員の任用の際における職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。」に似ていますが、こちらは職階の設定を求めているのであり、毎年昇給するような定期昇給の仕組みは求めていません。リンク

 

 新要件では、継続的にその会社で働いている人に、定期昇給の仕組みを求めていると言えます。もちろん毎年上がる仕組みでなくとも、3年ごとに昇給でもOKなのですが、一般的には毎年昇給するのが多いと思われます。

 

 また、他の介護会社に転職した場合など、介護の実務経験などを鑑みた(経験年数)給与設定をしなさいということも求めています。

 

 介護士や看護師など同業転職の多い職種では、転職のたびに給与がリセットされてしまう傾向がありますので、他の同業転職した場合でも、実務経験年数を考慮してほしいということでしょう。

 

 これを設定するには給料表を作成する方法が一般的です。

 例として「東京都職員給料表」をリンクしておきます。

東京都職員給料表

 縦軸に「号給」があり横軸に「職務の級」がありますが、「職務の級」が係長などの職階を意味します。そして縦軸の「号給」が定期昇給の区分割になります。これがいわゆる基本給と言われるもので、この上に、資格手当などの手当てが乗っていきます。

 毎年、通常に業務を遂行できた職員は上の号給にアップします。それがいわゆる定期昇給です。

 さらに、中途採用者は経験に応じて適当な号給からスタートとなります。どの号給からスタートするかは個別に判断されます。

 

資格等に応じて昇給する仕組み

「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組みであること。ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。

 

 これは資格手当についての要件ですが、単純に手当を乗せるだけでなく、昇給する仕組となっていますから、職階も資格によって上がる仕組みになっていると良いと思います。

 例えば上の東京都のように1級から5級に職階が分かれている場合、

 無資格、介護初任者研修修了者、ヘルパー2級  →  1級職

 実務者研修修了者               →  2級職

 介護福祉士                  →  3級職

 

 という風に昇給昇格していく仕組みであると良いと思います。

 これと同時に、介護福祉士手当のような資格手当の付与があるとベターであると思います。

 

 ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。というのは、既に資格を取得し、就職してきた人も同様の処遇をしなさいということだと考えられます。

 つまり、介護福祉士の資格を持って就職した人は上の職階の例でいえば3級職からスタートしなさいということです。

 

 たとえば、介護福祉士の専門学校を卒業して入社してきた若い新入社員は3級職の低い号給からの基本給スタートになります。

 

 

一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み

「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。

 

 この要件の中ではもっともハードルの高い要件です。今回の要件設定では3つある要件のどれかを満たしていればよく、本要件が満たされていなくても、新Ⅰは算定できます。

しかし、今後さらなる処遇改善加算の上乗せがあるとするならば、必ずこの要件もクリアしなければⅠは取れないということになるでしょう。

 

 この要件を満たすためには、通常、賃金規定に「定期昇給」要件を明文化します。

 通常は1年間、問題なく業務を遂行できれば定期昇給する」と明文化すれば良いのですが、1年間、問題なく業務を遂行できれば」とは何ぞやということになります。

 

 昇給させるためには、その職員が1年間、問題なく業務を遂行できたかどうかを評価する必要があるのです。

 

 その評価をどのようにするか?

 それが一般的には「人事評価」というものです。

 「実技試験」が入っているのはキャリア段位制度との連携を考慮に入れてのことだと思いますが、現状、キャリア段位制度を定期昇給に反映させるには無理があります。

 なぜなら、定期昇給の評価は毎年、全職員を評価しなければならないからです。今のところキャリア段位制度のアセッサーによる評価を全員に適用することは不可能です。

 

 「介護事業所における人事評価」については次回で詳しく説明します。

 

 

イの内容について、就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

こちらは要件Ⅰの「 イ及びロの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。」と同様の内容です。

平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その1

 

 次回は「介護事業所における人事評価」のやり方について例をご紹介します。

 

 

 

平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その2

 

キャリアパス要件Ⅱについて

 

 この要件はスタッフ研修に関する要件です。

 

 加算を算定するにはスタッフの研修をしっかりやらなければなりません。

 

 

次のイ及びロの全てに適合すること。

 

介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び一又は二に掲げる具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。

 

 

 「介護職員の職務内容等を踏まえ」ということは、訪問介護や通所介護、そのスタッフが働いている事業所の仕事の内容を踏まえてということですが、実際には、介護福祉士試験の科目に対応した研修を実施すればOKであると思います。

 

【介護福祉士試験の科目】

 

1 領域:人間と社会

   人間の尊厳と自立

   人間関係とコミュニケーション

   社会の理解

2 領域:介護

   介護の基本

   コミュニケーション技術

   生活支援技術

   介護過程

3 領域:こころとからだのしくみ

   発達と老化の理解

   認知症の理解

   障害の理解

   こころとからだのしくみ

3 領域:医療的ケア

   医療的ケア

4 総合問題

   (ケーススタディー・事例検討)

5 実技試験

   (各種介護技術)

 

 詳しくは以下を参照ください。

http://www.sssc.or.jp/kaigo/kijun/attachment.html

 

 特にパートスタッフが多い事業所では毎年繰り返し上記の内容を研修することが良いでしょう。それがサービスの質の向上につながります。

 

 事業所の研修としては月に1回この科目を中心に研修会を実施するのがベストです。

 その研修会を中心に、たとえば、管理者やサービス提供責任者、生活相談員、機能訓練の担当者などは、職務に対応した「専門的な研修」を受けると良いと思います。

 

 「専門的な研修」は、事業所内で実施するのは難しいですから、外部の研修、例えば区市町村や社会福祉協議会が実施する研修、民間で実施している研修に参加すると良いと思います。

 専門の研修は、年1回でもOKです。

 

 実は月1回研修会を実施すると、特定事業所加算など他の加算が算定できるようになります。この点の説明は以下をご参照ください。

 https://carebizsup.com/?p=811

 

 この研修会は「介護職員と意見を交換しながら」となっていますが、基本的には

 

「利用者のニーズに応じた良質なサービスを提供するために、介護技術、コミュニケーション能力、協調性、問題解決能力、マネジメント能力等の向上に努める。」

 

 といった一般的な内容でOKです。もちろんスタッフからのリクエストに応えた研修内容にしても構いません。

 さらに認知症のご利用者が多いグループホームや小規模多機能居宅介護であれば、ユマニチュードなどの特別な認知症の研修を実施しても良いでしょう。

 つまり、スタッフが自分たちの介護サービスの向上につながる研修を自分たちで実施していく姿勢が必要になります。

 

 そしてその際、スタッフ一人一人が、自分に今足りない技術・知識の獲得するための目標を設定することが大切です。

「資質向上の目標及び一又は二に掲げる具体的な計画を策定し」というのは、その目標と研修計画を(基本毎年)作成し、実施していくことです。

 

 具体的な「資質の向上の計画(目標を含む)」例を以下に紹介しますので、参考にしてください。

https://carebizsup.com/wp-content/uploads/2017/01/f45ce2a97fb957ab75f2512496ffcfea.pdf

 

 なお、毎月の研修を実施する場合は以下の点に留意することが重要です。

 

「毎月の研修を実施する場合の留意点」

 ① 時間外に実施する場合は、正社員には残業手当、パート職員には研修手当などの金銭的補助を実施する。「研修の機会を確保」

 ② 必ず、出欠表と研修資料を保管しておく(実地指導でチェックされます)。

 ③ 欠席者には補講を実施する。もしくは事業所ごとなど数班に分けて必ず全員が受講する体制を確保し、補講の実施記録を保管しておく(実地指導でチェックされます)。

 

 

資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT 等)するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。

 

 ここでのポイントは「介護職員の能力評価」です。

 

 「介護職員の能力評価」は様々な方法があり、また、キャリアパス要件Ⅲに出てくる「実技試験」「人事評価」とも被ってきますので、この研修の要件の部分では、研修と連携している形態で実施するのが良いと思います。

 

 例えば、キャリア段位制度などを利用することも可能ですが、パートスタッフまでは無理ですし、人事評価もしかりです。

 パートスタッフまで含めた能力評価を実施するには、先に例示した「資質の向上の計画(目標を含む)」のように、年間の研修計画に付随して、スタッフ個別の目標を設定し、その目標が達成されているかどうかを管理者などが評価する方法が良いと思います。

 

 

資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。

 

 ここでは先に挙げた、「毎月の研修を実施する場合の留意点」を実施するとともに、外部の「専門的な研修」に参加するための費用負担や休暇(有給休暇)の付与を実施することになります。

 

 また、実務者研修の受講のための費用を会社が負担することや、介護福祉士の試験対策のための費用負担もこれに該当します。

 

 最近では、実務者研修の費用を地域行政が補助してくれる制度もあります。この補助制度を利用することも、この要件に該当するでしょう。

 

 

イについて、全ての介護職員に周知していること。

 

 この要件があるのは、つまりパートスタッフも含めて、全員に実施しなさいということです。

 ただし、この全員というのは介護職員だけで事務職や看護職・ケアマネージャーなどは該当しませんのでご注意ください。

 

 厳密に言えば、研修を実施することを全員に周知していれば良く、参加しないスタッフがいても構わないように感じます。

 

 例えばパートスタッフが研修に参加できないという事態は現実に起こりえます。

 この際、そのスタッフが全体研修に参加しなければならないということを認識しており、それでもなんらかの事情で参加できないということであれば、実地指導などであまりお咎めが無いということも言えます。

 

 まず、正社員については確実に研修を実施するようにしましょう。

 これは職務命令であり、資質の向上を怠る社員は罰しなければなりません。

 

 パートスタッフにもできるだけ参加してもらえるよう、継続的に働きかけることが大切でしょう。少しずつでも参加してくれれば、次第にそれが社風となり、必ず良い方向に向かっていくと思います。

 

 そのためにも研修手当の補助は非常に重要だと考えます。

 

 次回は、新たに設定されたキャリアパスⅢについてご説明します。

 

 

 

 

平成29年度処遇改善加算 新Ⅰのキャリアパス要件について その1

 

強化された新たなキャリアパス要件

 

 今年度から新たな処遇改善加算の加算率になり、新Ⅰの訪問介護では8.6%から13.7%となりました。従来に比べ5.1%の給与アップになります。

 

 単純に(旧Ⅰの処遇改善加算を上乗せしたうえで)これまで月給200,000円であれば、210,200円に増えるわけですが、今後も介護職員の処遇改善は継続されると考えます。

 

 その分、利用者負担が重くなる方向でしょうが、日本の介護サービスを継続していくにはいかし方がない部分もあると思います。

 

 筆者は介護事業を営む上で、加算は積極的に取得し、よりレベルの高いサービスを目指すべきだと考えて、事業をサポートさせていただいております。

 

 そこで今回は、新たなⅠを取得するための要件として、強化された新しいキャリアパス要件も含め、処遇改善加算算定のためのキャリアパス要件全般について、改めてご説明させていただきます。

 

 

キャリアパス要件Ⅰ

 

 すでに設定されている要件ですが、新しいキャリアパスとの区別をするためにも内容をご説明します。

 

次のイ、ロ及びハの全てに適合すること。

 

介護職員の任用の際における職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。

 

 「任用」とは、その仕事をしてらうことを言います。

 ご存知のように処遇改善加算は、実際に介護サービスを提供している職員にしか支給できません(事務やケアマネージャーは対象では無い)。その意味で介護職員としての「任用」要件を定めている必要があります。

 

 よくある例としては、職務の難易度に応じて職位を階層化することです。この階層をキャリアパスと言います。

 一般の会社では、平社員、主任、係長、課長、部長などといった出世の階段がありますがこれのことを言います。

 

 介護現場では

 

①一般介護職 ②主任 ③リーダー職(係長級) ④管理者(課長級) ⑤事業部長

 

などという職階が考えられます。

 

【例1】訪問介護事業所

 

 ①訪問介護員(ヘルパー2級・初任者) ②主任訪問介護員(実務者・介護福祉士) ③サービス提供責任者 ④管理者 ⑤事業部長

 

【例2】通所介護事業所

 

 ①介護職(無資格、ヘルパー2級・初任者) ②主任介護職(実務者・介護福祉士) ③生活相談員(介護職兼務)④管理者 ⑤事業部長

 

 これらの任用要件を定めていなければならないのですが、要件Ⅰではただ定めていれば良く、客観的な基準などの明確化は求められていません。

 

 また、実際に会社にその職階の人がいなくても構いません。例えば会社の規模がまだ小さく「事業部長」が居なくても設定されていれば良いのです。今後会社が成長した場合にそのような職の人が任用されることを想定していればOKです。

 

 これは、基本的には就業規則や賃金規定で定めますが、多くの場合は賃金規定に定めていることが多いでしょう。

 

 旧Ⅰでは職階への任用を、例えば社長や事業部長が「経験や職務能力を評価して任用する」としていても構いません。

 

 単に下線のことが賃金規定などに規定されていれば良いことになります。

 

 

イに掲げる職位、職責又は職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。

 

 イで上げた職階に応じて、基本給が定められていることを求めています。

 つまり、出世したら給料が上がる仕組みです。

 

 例えば、月給(月の基本給)が

 一般介護職     200,000円

 主任        250,000円

 リーダー職(係長級)300,000円

 管理者       350,000円

 事業部長      400,000円

 

 という風に分かれて上がって行けばよく、毎年昇給するような定期昇給の仕組みは求められていません。

 

 この職階による給与設定は基本給でなければならず、賞与などの一時金で設定してはいけません。

 

 ちなみに、厚生労働省は処遇改善加算による介護職の処遇改善は、できるだけ、基本給のアップで行うよう指示しています。

 介護職の基本給をなんとか他の業種並みにしたいという国の施策的な要望が背景にあります。

 

 この規定は、パート職員についいてはとくに求めていませんので、基本的には正社員だけ定めていれば良いようです(自治体によっては求めてくる場合があるかもしれません)。

 

 ただ、非常勤職員でも主任級の仕事をしている人に、他の介護職パートよりも高い時給を払っている場合などはこの規定にあたります。

 

 

イ及びロの内容について就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

 

 会社の就業規則や賃金規定は社員に公開されていなければなりません。これは「就業規則の周知義務」といい、労働基準法で定められています。

 

第106条

「使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」

 

 賃金規定は就業規則に付属するものですから、同様に周知義務があります。

 

 つまり、この規定はわざわざ設定しなくても、労基法で決まっているわけですから、事業者は就業規則や賃金規定を社員に周知しなければならないのです。

 

 ところが、就業規則には会社にとって不利な、休暇の規定や休業等の規定が書いてあり、そういう制度を職員に知られたくないという経営者の意向が働きやすく、社員が特に求めなければ就業規則を見せない事業者もいるようです。

 

 こうした風潮は職員の会社に対する不信感を増長させる可能性がありますし、社員の定着率を下げます。ファイルにして職場に置いておくなどして、積極的に周知する必要があるでしょう。

 

 

次回はその他のキャリアパスについて解説します。