ワークライフバランスとは
日本では主に政府が主導して男女共同参画の観点から進められている運動です。
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html
その背景には少子化問題(国力低下の問題)があり、働きながら子育てしやすい社会の構築が目指されている感があります。
しかし、何も子育てだけがワークライフバランスの「ライフ」に当たるわけではありません。
人によっては当然ワーク=ライフの仕事人間の人もいるわけで、人それぞれのワークライフバランスがあるでしょう。
人材不足の現況、企業としては「多様な働き方を受け入れていく」ことで、人材を確保することが望まれています。
この「多様な働き方」というのが人それぞれであり、また、人生のそれぞれの場面でも変わってきます。
女性や高齢者、障害者も含め、さらに人生の様々な場面でその人にとって働きやすい働き方というものがあります。それらをできるだけ受け入れて労働力を確保するということが必要になるでしょう。
この記事で述べてきた、スタッフの定着のための様々な方策も、まさにワークライフバランスの充実のための方策と言って良いでしょう。
介護の職場はワークライフバランスに適した職場
「多様な働き方を受け入れていく」という意味では、介護職場はそれを実現しやすい職場です。その辺のことは既に述べてきました。
男性の場合、給与が安いという意味で一生の仕事ではないという人もいるかもしれませんが、起業すればそれなりの収入を得ることは可能です。
ただ、介護企業側がそのことをしっかり認識し、短時間正社員制など、多様な働き方の設定をしっかりと構築し、さらにそれを周りににアピールしなければあまり意味はありません。
介護事業が多様な働き方ができる職場であることを、経営者がまず認識しなければ、ワークライフバランスの推進はできないでしょう。
ワークライフバランスを意識した就労制度とは
では介護事業所としてどのような多様な働き方を設定できるでしょう。以下に例を挙げます。
1 短時間正社員
通常週40時間のところ、週30時間などと短縮しても正社員とする制度です。
朝晩の保育園の送り迎えなどがあるママさんなどにとってはありがたい制度です。子供に手がかからなくなった時には40時間勤務に切り替えます。
厚生労働省では「短時間正社員制度導入ナビ」を公開しています。事例紹介では介護事業所の事例も出ていますので参考にしてください。
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/
2 土日祝日休み職員の設定
訪問介護事業所などは365日営業が多いため、土日祝日が休めないイメージがあります。この点に配慮して、土日祝日が休める正社員制度を設定します。
ワークライフバランスを意識した場合、このことは大変重要で、子供のいる家庭では土日祝日が休めない場合、家族に対する負担は大きくなります。
介護職場が人気が無いのはこのことが原因ではないかと筆者は考えています。
3 有給休暇の取得奨励制度(パートスタッフも含む)
有給休暇を計画的に取得させる制度です。
例えば、年間10日以上の有給休暇取得計画を毎年社員に提出させます。これはパートスタッフにも適用されることが重要です。
管理者はそれを前提に、年間のシフトなどを設定します。休暇がかぶってしまうような場合はずらしてもらう必要も出るでしょうが、その辺はスタッフ同士で調整しあうような仕組みにすると良いでしょう。
パートスタッフの場合、勤務年数によって取得できる有休休暇日数が法律で決まっています。支給される給与は、通常その人が1日に貰う給与や平均給与を適用するようです。
訪問系介護事業所では高齢のパートスタッフも多く働いています。こうした方々にとってはこの制度はとても人気があります。
日本人は休むのが苦手な民族のようです。しかし、人生100年時代、人生を楽しみながら長く働くためには長期休暇がもらえることはとても重要なことだと思います。
4 産休・育休・介護休業制度の周知と復帰の奨励
中小企業の場合、女性に子供ができると仕事を辞めなくてはならないという風潮もあるようです。また、子供を産んだ後も育てながら仕事に復帰することに困難さを感じる場合もあります。
先に挙げた短時間正社員制度などを導入し、妊娠時や復帰後の勤務軽減など、子育てしながら働きやすい職場を社員にアピールすることが大事です。
若い人たちは産休・育休制度自体があることを知らなかったりします。求人の段階から子育て支援の整備された会社であることをアピールし、管理者などが説明していくと良いでしょう。
周りに産休・育休・介護休業を取得して復帰したスタッフがいるとより効果的だと思います。
5 長期休業の取得制度
例えば、勤続5年以上の場合、最長1年間、無給にて休業できるというような制度です。学校に通うような場合は、2年から4年に増やす規定も可能でしょう。
しかし、現在の日本の労働制度の場合、休業中の社会保険の問題などがあり、若干導入はしにくいようです。今後の制度改善が望まれます。
いくつか例を上げさせていただきましたが、上記の制度類を導入するには、職場に人的な余裕があることが大切です。そのためにもスタッフの定着の好循環を生み出していかなければならないでしょう。
なお、このような制度を導入するためには就労規則などを改正しなければなりません。その費用を助成してくれる制度があります。
また、介護労働者の負担軽減の助成金や仕事と家庭の両立のための助成金もあります。詳しくは社労士に相談いただければと思います。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/teityaku_kobetsu.html
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html
次回は、求人のための工夫について紹介します。